クラスメイトKがドジっ娘の世界にて大暴れ!? 作:ちびっこ&ひばりの
「たのもー!」
相変わらずうるさい。兄にランニングを誘う笹川了平の声でまた起こされた。そもそも毎日毎日走りこみしてどうするんだ。
「……?」
首をひねる。同じようなことを以前にも考えた気がする。謎キャラの出現や雲雀恭弥の誕生日会などがあったが、もしかして今までのは夢だったのかもしれない。つまり、ディーノに背中をポンポンされたのも夢だったということになる。
「よし」
思わずガッツポーズする。あの恥ずかしいのは夢だったのだ。素晴らしい。
上機嫌になり目が覚めたので、軽い足取りでリビングに向かうとお母さんに声をかけられた。
「サクラちゃん、休みなのに早起きね」
今日は休みだっただろうか。夢のせいで日にちの感覚がおかしくなっているのだろう。そもそも休みの日でも早起きする時はするぞ。マンガの発売日とかにな。
まぁせっかくの休みなのだ。ダラダラしマンガを読もう。
部屋でマンガを読んでいると兄が部屋に入ってきた。何度も思うが、ノックしろ。
「サクラ、今日からの新作ケーキがあるよ! 時間があるなら、来ればいい!」
わざわざ声をかけたのは売り切れる可能性があるからだろう。残った時は買って帰ってくれるしな。
「ん、わかった」
「楽しみに待ってるよ!」
兄はスキップしながら去っていった。動きにはもうツッコミしないが、扉は閉めていけ。
昼ご飯を食べ終わったので、兄の働いてるラ・ナミモリーヌへ向かう。15時ごろに行けば、邪魔になるのはわかるからな。それに、新作ケーキがなくなるかもしれない。
「キャアアアアア!! ポチごめんなさいぃぃ!!」
何の声だと思い、探したことに後悔した。犬に頭を噛まれている人なんて初めて見たし、その噛まれている人物が夢で見たドジ体質の子だったのだ。……今日が振り替え休日ということには薄々気付いていたさ。直視したくなかっただけである。
しかし、これはどうしたものか。このまま放置すれば後味が悪い。が、私に助けるのは多分無理だ。ハリセンで殴ってもいいが、私が襲われるのは困る。
私が悩んでる間に、勝手に犬が離れたようだ。……リードをつけているということは自分の家の犬なのか。驚きしか出てこない。
とにかく、昨日のこともあるからな。面倒だが、犬に噛まれてベトベトになってる彼女を助けてあげることにしよう。
「……大丈夫か?」
「えっ………。ひッ……!?」
私が声をかけると彼女は驚き、あとずさろうとして踵をつまずかせ、さらに後ろに転んだと同時に壁に頭をぶつけていた。……関わらないほうが彼女のためな気がしてきた。
「だだだ、大丈夫です。いいいつものことですから、気にしないでください……」
どこが大丈夫なのだろうか。口には出さないが、犬くさいぞ。
「……近くに兄が働いてる店がある。タオル、借りれると思う」
戸惑ってる彼女を無視し、犬のリードをひったくる。彼女が持ってると嫌な予感しかしないからな。
店についたが、犬をどうしようかと考える。飲食店に動物はよくないはずだ。彼女にリードを渡して兄を呼んでもいいが、ドジを発動させてもらっては困る。
少し店の前で悩んでいると扉が開く。
「待っていたよ! サクラ!」
「……よく気付いたな」
兄は厨房?にいるはずだ。それなのに、私が来たことにすぐ気付いたのだ。驚かないほうが無理がある。
「サクラの匂いがしたからね」
ドン引きである。もちろん、私と一緒に居た彼女もドン引きしているようだ。
「冗談さ! 店の子が教えてくれたのだよ」
彼女はほっとしたような顔をしたが、私は未だドン引き中である。まだ私はこの店に数回しか来ていないはずだ。当然のように顔を覚えられてることが変なのだ。恐らく兄が私の写真を何度も見せたのだろう。勘弁してほしい。
「おや? 君は確か電柱の時の……」
「この間はありがとうございました」
どうやら兄と彼女は会ったことがあるようだ。それも会話の流れをみると、彼女は兄の前でもドジを発動したらしい。本当に困った体質である。
「ふむふむ。なんとなくわかったよ! また彼女が危ない目にあい、心優しいサクラが見て見ぬフリが出来なかったんだね! 流石、僕が愛して止まない妹だ!」
なぜだろう。間違っているわけでもないし、褒められているはずなのに嬉しくない。恐らく最後の一言が余計だったのだろう。残念すぎる。
「少し待ってるがいい! 確か、サクラの服があったはずだからね」
「なぜ私の服を持っている!?」
「もしサクラが転んだときに困るじゃないか」
当然のような顔をして話す兄をみて、納得しかけた。大丈夫だったのは「結局部屋に入って、取ってきたってことだよね……」と彼女が呟いたからである。やはり兄は変態だった。
「悪いが、店に動物はダメだからね。大人しくここで待ってるのだよ」
あっさりと兄は彼女の犬を手なずけ、店の裏で大人しく伏せをさせていた。相変わらず兄は好かれやすいな。
彼女は遠慮していたが、店のシャワーを使わせてもらえることになったようだ。私はわざわざ待つ必要がない気もするが、ケーキを食べる用事もある。1人残されるのは戸惑うと思い、ほんの少しゆっくりと味わうことにした。
「サクラ、美味しいかい?」
「ん。さっぱりしていいかも」
5月に旬がくるフルーツは多いからな。この時期のフルーツタルトは美味しい。それに下のタルトも微妙に凝ってる気がする。
「クレームダマンドを入れて焼いてるからね。そこにテンパリングしたクーベルチュールを表面にコーティング、更にクレームパティシエールをフルーツの接着として絞って、最後にフルーツをナパージュで艶出ししているんだ。サクラが思ったとおり、少し手が込んでるよ」
兄が嬉しそうに語っているが、私にはさっぱりである。
「おっと、彼女が出てきたようだね」
兄に言われ、後ろを向く。彼女の姿が普通のTシャツに短パンだったことにほっとする。変な服だった時はどうしようかと思った。
「君もこちらに来たまえ。ケーキを用意するよ」
「えぇ!? そんな、大丈夫ですよ」
兄は彼女の言葉に全く耳を貸す気はないようで、厨房?に入っていった。しょうがないので、困り果てた彼女に声をかける。
「気にしなくていい。兄のおごりだ」
彼女はまだ遠慮しているようだが、その必要はない。私なんてサイフすら持ってきていないのだ。兄がおごるのはもう決定事項である。もちろん、愉快な人物だからではない。わざとである。
「それに君が気に入れば、リピーターになる可能性もあるしな」
ここまで言えば、彼女は納得したようで私の前に座った。
「待たせたね!」
「あ、ありがとうございます」
待つこともなく、兄がケーキを持ってきた。しかし、そのまま厨房に戻って行った。忙しくなったのかもしれないし、私達に気を遣ったかもしれない。もし気を遣ったのなら、引き止めればよかったな。私に話題を出せというのはハードルが高いぞ。
「……食べれば?」
「はっ、ハイ! い、いただきますっ」
とりあえず食べるように促した。これでしばらくは会話をしなくても大丈夫なはずだ。
紅茶を飲んでいると、彼女は兄の作ったケーキを美味しそうに食べていた。悪い気はしない。つい、声をかけてしまう。
「美味しいか?」
「はい、とても…!」」
「……それは、良かった」
ジッと彼女に顔を見られたので、口周りにクリームがついてるのかもしれない。鏡がほしい。
「お手洗い」
彼女の返事を聞き、席を立つ。さっさとトイレに行こう。
特に顔には何もついていなかった。謎である。少し首をひねりながら、席に戻ろうとすれば騒がしい声が聞こえた。
「ずりぃ! ねーちゃん! 一人だけここのケーキ食いに来てッ!」
いったい今度はなんだ。少し溜息をつきながら、彼女のところに向かう。
「あっ! ごっ、ごめんなさい! お店、騒がしくしちゃって……。こいつは私の弟なんですけど、ポチを見つけて入ってきたみたいで………」
「そう」
「うおっ! 初めて見た、リアル貞子」
「蒼哉ッ! なんてこと先輩に言ってるのよ! その、本当にごめんなさいッ!!」
子どもがいったことなのだ。特に私は気にならない。だが、これ以上店で騒ぐのはやめてほしい。兄に迷惑がかかる。
「ちょっと待ってろ。兄に頼んでくる」
いい位置に頭があったので、つい撫でながら言ってしまった。ディーノがすぐに私の頭を撫でるのがわかる気がする。
従業員の人に兄を呼んでもらい頼めば、「サクラの友達なんだ。当然だよ!」と言われた。別に友達ではないのだが。面倒なので、ここは否定せず礼を言った。
「スペシャルバージョンだよ!」
小学生ぐらいの子どもと教えたため、兄は張り切ったらしい。ケーキがドンっと乗ったパフェだった。……私が食べたい。今度、作ってもらおう。
「レディ達にはこっちを用意したよ」
流石、兄だ。クッキーを持ってくれるとは、グッジョブである。
「パフェを食べてすぐにはきついだろう? 君の分は包んでるから持って帰ればいい」
兄はどこまで気が利くのだろうか。さっきまで文句を言っていた彼女の弟なんて、すっかり兄に懐いてしまったようだ。
「あぁああ……。もう、本当にいろいろごめんなさい……」
「あれのどこで、渋々やってるように見えるんだ」
兄は偉そうに「美味しいだろ! 僕が作ったのさ!」と彼女の弟に言っているからな。それを見て彼女は笑っていた。兄も楽しんでるとわかったのだろう。
「じゃあね! ねーちゃんと貞子さん」
「貞子じゃないサクラだ!」
「えーと、ねーちゃんとサクラさん、ポチの散歩はオレと桂にーちゃんで行ってくるから」
なぜ兄も一緒にするのだろうか。休憩時間らしいので好きにすればいいと思うが、やはり謎である。心配で彼女もついていこうとしたようだが、男同士で行くことに意味があるらしい。もう好きにすればいいと思う。
「サクラ、気をつけて帰るんだよ!」
「ん」
返事をして思い出す。ドジ体質の彼女を置いて行くのはまずい気がする。しょうがない、送ることにするか。
「家、どっち」
「え?」
「服のこともあるし、一緒に行く」
洗って返しに行くといわれたが、それでは意味がない。それ以前に、返しに来る時に、私の服が大変なことになる気がする。結局、私が譲らなかったため、彼女が折れる形になった。
油断していると並んで歩いていたはずの彼女が視界から消える。転んだり、電柱にぶつかったりするのだ。もう手をひいて歩いてあげたほうがいいかもしれない。
「手を――」
「何してるの?」
貸しなよと転んだ彼女に言おうとしたが、美声が聞こえたので振り向く。やはり声の主は雲雀恭弥だった。
「へっ!? ひゃっ……、雲雀さん…!?」
奇声のような声を上げ、雲雀恭弥から距離をとる彼女に驚く。昨日はそんな反応をしなかったはずだが。ちなみに、彼女は距離をとった時、壁に後頭部をぶつけていた。
ゴンっという音がしたので、心配になる。大丈夫だろうか。彼女の顔を見ると泣きそうな顔で真っ赤だった。
チラっと雲雀恭弥の顔を見ると不機嫌そうだった。
2人の反応をみて、なんとなくわかった。大方、あの後に何かあったのだろう。進展という意味で。
「……リア充め」
ボソッと呟いたため、聞こえなかったようだ。危ないところである。
2人の邪魔になるのは野暮である。さっさと立ち去ろう。
「どこへ行くんだい?」
「……彼女の面倒は君がいるからいいだろ」
「どうして僕が?」
雲雀恭弥の言葉に呆れた顔しか出来なかった。彼は天然でお姫様抱っこをしたのか。
「なら、彼女を1人で帰らせればいいだけの話だろ」
「…………風紀が乱れるからね。今回は特別だよ。ドジっ娘」
「うぅ……、はい……」
その特別はいったい何度目なんだとツッコミたい。咬み殺されるので我慢するが。
2人を放置して、私は帰ることにする。しかし、雲雀恭弥の声がいいのはわかるが、彼のどこかいいのだろうか。私にはさっぱりである。
雲雀恭弥と付き合うぐらいなら――。
「なにを考えてるんだ」
一瞬、ある人物の顔が浮かんだが、あほらしくなった。相手が原作キャラとなれば、余計にあほらしくなる。
「――なさい」
「ん?」
声が聞こえた気がする。しかし、周りには誰もいない。気のせいだろうか。
「う……」
視界が歪み、気持ち悪くなってきた。慌てて壁に寄りかかる。少し楽になるかと思ったが、どんどん具合が悪くなる。ついに視界が真っ暗になった。