クラスメイトKがドジっ娘の世界にて大暴れ!? 作:ちびっこ&ひばりの
雲雀さんから補習への強制参加を告げられるとあっという間に時間が流れ、ゴールデンウィークへと突入した。
ワイワイキャッキャと母と蒼哉が私を放置して、ゴールデンウィーク初日に里へと旅立って行った。その姿を呪いながら、三度目の補習へ出向くため現在重い足取りで通学の歩みを進めている。
ああ、楽しいハズのゴールデンウィークがどうしてこんなことに………。
「危ないよ」
「きゃっ」
気分が沈んでいたところにいきなり腕を掴まれたので、驚いてそんな声を出すと咄嗟に顔を上げた。
「すまなかったね。いきなり女性に触れるのは失礼だが、電柱にぶつかりそうだったからね。助けないという選択肢は僕の辞書にはなかったのだよ。大丈夫かい?」
そこには外国人のような端整な顔立ちをした綺麗な男の人が、心配してこちらの様子を窺っているようだった。
そして彼の言う通り私の眼前には電柱の硬いコンクリートの表面があって、瞬間顔がサーッと青ざめた。
危ないところを助けてもらい、私はすぐにお兄さんにお礼を言う。そのお兄さんは爽やかな笑顔で満更でもないようだ。それにしてもカッコいい人だな。モデルさんとかかな?雲雀さんとは違って、紳士的でとっても素敵。あの人はカッコ良くても中身がちょっと残念というか、横暴過ぎていつも参ってしまう。
「気をつけたまえ、傷は作るものではないよ。特に君は女性なのだからね!
さて、そろそろ僕は行くよ。まだランニングの途中なのでね」
紳士なお兄さんはそう言った。ああ、だからジャージを着ていたんだ。深く納得する。
最後に私にさよならを言って、お兄さんは颯爽と私が来た道の方へと駆け出して行ってしまった。
その背中に、大々的な桜の花と『LOVE』のロゴが目に映って、実は結構残念な人なのかなと、また不意に溜め息が漏れた。
朝から思いも寄らない出来事に遭遇したけど、早く行かないと遅刻になって雲雀さんに咬み殺されるかもしれないので気にしないで先を急ぐ。補習に参加しているのに遅刻扱いで咬み殺されるなんて、たまったもんじゃない。
私はスタスタと校門を潜り抜けて、入学式から見慣れた教室のドアをスライドさせて顔を出した。
「よぉ、花内」
教室には私と同じ補習組である新垣君が、かったるそうに机の上に教科書をバラバラと開き、その上に寝そべって勉強をサボっていた。彼はサッカー以外のことになると、極端にやる気をなくすある意味で問題児なのだ。そんな彼が、補習だからと真面目に勉強するとは私も思っていない。
「おはよう、新垣君。……寝てたの?」
「まあな。さっき起きたが、また二度寝するところだ」
「何回二度寝するつもりなの…… 形だけでも勉強しているようにしないと、見張りの風紀委員の人たちに目つけられるよ?」
姿勢を伸ばして欠伸を漏らすと、眠そうな眼で新垣君が愚痴を漏らしていく。
「こっちは休みにも拘らず補習に来てやってんだ。それだけで十分あいつらは満足なんじゃねえのか?ゴールデンウィークに補習なんざ、一体何考えてんのか知らねえが、おかげでこっちは貴重なサッカーの練習時間を潰されてんだよ。マジでふざけんなよな」
補習になったのは自業自得だと彼に言ってあげたいけど、私自身現に今その状況にいる立場なので正面から彼に言うことは出来なかった。そして、そのまま新垣君は二度寝してしまった。ここ二日ずっとこの調子なので、私ももう諦めて自分の勉強に専念しようと机に向かった。
だけど、ガラリとその時教室のドアが開いて彼が現れるとは、不意打ちだった。
「……………何してるの?」
ちょうど席に座ろうとしたところに雲雀さんが前方のドアから入ってきて、驚いた拍子に体の軸がズレて、私は見事に椅子から転げ落ちた。自分でも相変わらずのドジっぷりだなと思う。
雲雀さんは入ってきた途端に私が床に転げ落ちるのを見て、普段より一層哀れなものを見る目で私を見ていた。そんな目をするくらいなら、もういっそ咬み殺してくださいよ。実際には口が裂けても言わないけど。
そこに、私の転倒時に出した大きな音を聞いて、新垣君が何事かと起きてきた。彼は私と同様に、起きたと同時に視界に入った雲雀さんの姿に拍子抜けした顔をして固まっている。ここ二日サボっていたし、咬み殺されるんじゃないかって肝を冷やしているみたい。
一方で雲雀さんは、新垣君には目もくれずに教室内を見渡している。
一通り見たところで、ポツリと呟いた。
「全員揃っているようだね」
「あ、あの、どうして雲雀さんがここに……」
「無論、風紀委員会の仕事だよ。僕以外他の委員の奴らは今日は休暇を取っていて、ここには僕しかいないからね。補習をサボろうだなんて思わないことだね」
そう言っては怪しい笑みをニタリと湛えて、スタスタと去って行った。
新垣君を含め、補習をサボっていたクラスのみんなが、その脅し文句に肩を震わせていた。
「花内、なんか俺、急に目が覚めたよ」
「うん、その調子で補習も頑張っていこう。新垣君」
新垣君とお互いを慰め合っていたその一方で、私たちの知らないところではカオスな補習授業が繰り広げられていることなど、まだ知る由もなかった。
――――――――――
クソッと苛立ちながら、学校に向かう。休みの日に制服を着るはめになるとは思わなかったのだ。
事の発端は昨日の夕方だった――。
私はマンガを読み、マンガを読み、マンガを読みという素晴らしいゴールデンウィークを過ごしていた。もちろん宿題はある。が、初日に全て終わらせたのだ。わからないところがあれば、兄に聞けばよかったしな。
残りの休みを趣味に没頭できるとは素晴らしいと思いながら、古本屋に向かっている時に事件は起きたのだ。
「ちゃおッス」
相変わらず神出鬼没すぎるだろ。そう思いながら、視線を合わせる。
「明日はサクラも学校に来いよ」
「断る」
明日もマンガを読む予定があるからな。そもそもなぜ学校に行かなければならないのだ。補習に関係がなければ行かなくてもいいはずだ。そのため、私は休みを満喫できるために勉強したのだ。欠点を免れた私は学校に行く義務はない。
「そうか。なら、明日はヒバリが咬み殺しに来るサプライズを用意しておくぞ」
それはもう脅迫だろ。私に行かない選択を取らせないつもりだろ。しかし、リボーンが女子の私を脅迫するほどのことだ。行かなければならないことなのだろう。
「……何か、あるのか?」
私の知らないところで何か起きてるのかもしれない。不安になった。
「面白そうだからな」
「……君の暇つぶしなのか?」
「じゃ、待ってるぞ」
リボーンが去った後、何ともいえない空気が流れる。……なぜ私が行かなければならないのだ。理不尽である。
教室に入ると沢田綱吉が死んでいた。いや、生きているのだが、補習が過酷なようで机の上で魂が抜けそうになっているのだ。
「よっ、神崎! どうかしたのか? 忘れ物か?」
もう1人の補習者はいつもと一緒で元気なようだ。出来れば、私の存在には気付かないままで居てほしかった。彼らに気付かれなければ、これから起こるイベントに関わらなくても済んだ気がするからな。……リボーンに声をかけられた時点で、不可能な気もするが。
「用事」
「そっかそっか」
私がここに居ることに疑問を持たない山本武を放置し、席に座った。
教室を観察していると、疑問が出てくる。なぜ獄寺隼人がいるのだろうか。恐らく沢田綱吉関係なのだろう。彼がここにいるせいで、ますますリボーンが何かして来そうな気がする。……声をかけられた時点で、何かするのは決定事項だが。
先程から同じような答えにたどり着いてる気がする。どうやら、まだ私は諦めきれていないようだ。余程参加したくないのだろう。
そもそもリボーンは学校に来いと言っただけだ。当たり前のように席に座ったが、その必要はない気がする。私は『学校には来た』からな。帰っていいだろう。
席を立とうとするとドアが開く。知らない顔だった。学生なのは間違いないが、クラスメイトではない。……多分。
「全員ちゃんといるかしら? じゃあ席に着いてー」
学生と思ったが、違うのか。いや、制服を着ているので学生であっているだろう。どう見ても私と一緒ぐらいの年齢だしな。メガネをかけているから、委員長なのだろうか。ちなみに、メガネ=委員長は勝手な私のイメージである。出来れば、縁なしメガネじゃなく、縁ありで三つ網にしてほしいのだが。
委員長(仮)は出席を取り始めた。それはいいのだが、なぜか私の名もあった。元々、私は補習ではなかったはずだが。リボーンが関係している気がする。恐らく、すり替えたのだろう。
さて、これはどういうことなのだろうか。委員長(仮)と思っていた人物がそのまま授業を始めたのだ。もしや彼女はコスプレをしてるのだろうか。痛すぎる。
「ハイそこッ! 今、人を『いきなり現れて委員長かと思えば教師紛いに出席取って、挙句には制服なんか着てイタイ奴だ』なんて顔をしたそこのあなた! どこかのサッカー小僧みたいにネチネチつっこんでないで、真面目に授業を受けなさい」
私の心を読んだのだろうか。だが、本当に心を読めるなら、原作のことなどを考えていることもバレているだろう。つまり私が顔に出しすぎたのか。
とにかく、くだらないことを考えていたのがばれたようだ。しかし、補習組みじゃない私は話を聞く必要がない。怒られるのは理不尽である。
そもそも彼女はいったい何を話しているのだ。唯一わかるとすれば、全く授業には関係ないということ。先程より沢田綱吉が魂が抜けかけてるし、獄寺隼人がキレそうである。
嫌な予感がして、本気で帰ってもいいのかと思い始めた頃、ドアが開かれる。
「春奈ぁぁぁあああ! なんっでお前がここにいんだよッ!?」
「あら、遅かったじゃない。自分の担当放ったらかしてまた爆睡しているのかと思ったわ」
「うるせぇよ! 俺はいつからそんな担当づけされたんだ!? つーか、何なんだよその眼鏡は。お前の視力は鷲並みだろうがっ」
「何言ってるのよ、燕太。テレビでもゲームでも、デキる女教師に眼鏡は必須アイテムよ」
「教師の前にテメェは並中生だろうがっ」
よくわからないが、やはり彼女は教師ではなかったようだ。ふと気付く、彼女はリボーンの差し金かもしれない。しかし、私の知識では彼女は原作に登場しない。注意している男も違う……はず。どこかで見たことがある気がする。私の気のせいだろうか。どちらにしても私の原作知識は薄れていく感じが一切ないことを考えると、彼女達は原作キャラではない。
私が考えてる間も2人はまだ言い合っていたようだ。若干、男の方が言い負かされてる気がするが、放置することにした。私はこの騒ぎに生じて逃げようと考えたのだ。私が逃げれる確率があがるならば、2人の言い合いは大歓迎である。
タイミングを見計らい、今だ!と腰を浮かせた時、美声が聞こえた。
「君達、何してるの」
慌てて腰を下ろし、私は何もしていないという態度を取る。素晴らしい美声は聞きたいが、咬み殺されたくはないのだ。
雲雀恭弥と目を合わせないようにし、リボーンを探す。ここで彼が来るのはどう考えてもリボーンの差し金しか考えれないのだ。全く、どうするつもりだ。
リボーンを探していると黒板の日付に目がとまる。そういえば、今日は5月5日だった。つまり雲雀恭弥の誕生日だな。どうでもいい知識である。私は彼から上手く逃げる知識がほしい。
逃げることばかり考えていると雲雀恭弥が去っていった。全く聞いていなかったので、何があったのかはわからないが、ラッキーだというのはわかった。今日はいいことがありそうだ。
……リボーンに学校に来るように言われた時点でそれはないな。雲雀恭弥から咬み殺されなかったのは、この登場はリボーンの予定にはなかっただけだろう。
リボーンで思い出した。彼女達の存在が謎過ぎる。私にわかるのは関わるべきではないということだ。彼女達は原作に登場しないだけで、重要な人物かもしれない。彼女達の知識がない私はいないほうがいい。原作を壊さないためにも、さっさと逃げよう。……べ、別にめんどくさいから逃げようと考えてたわけじゃないぞ。