クラスメイトKがドジっ娘の世界にて大暴れ!? 作:ちびっこ&ひばりの
雲雀恭弥の余波がある間に、逃げようと扉に手をかけたとき、謎の人物達に声をかけられる。
「さぁ、それでさっきからタイミングを見計らうようにコソコソとしているあなた……。神崎サクラさんだったかしら。どこへお行かれに?」
どうやら彼女は笑顔で人を追い詰めるタイプらしい。残念ながら、私には効果はないぞ。お父さんが似たようなタイプなのだ。優しく言い聞かせるタイプだが、普段は私の行動に口に出さないのだ。つまり、優しく言い聞かせてるが、かなり怒っていることになる。お父さんの静かな怒りと比べれば、彼女は可愛いものである。
「あっ、あんたこの前の……」
焦ることもなく、トイレと答えようとした時、男の方に声をかけられる。やはりどこかで見たことがあると思ったのは正解だったらしい。そのどこかは全く覚えてないが。
「この前のって?」
「前に話しただろ。変な奴に絡まれたって。そんで、あの時ぶつかりそうになった女子ってのがそこにいる奴」
「うわー、悪びれもなくまた話しかけて堂々猥褻行為ですか。もういっそ頭にサッカーボール被って、愛するサッカーボールに窒息死されてください」
「………俺は今猛烈にそのフレームに嵌ったレンズをかち割って、テメェの眼球代りにサッカーボールをぶち込んでやりてぇよ」
会話の流れからして、彼は数日前にぶつかりそうになったサッカー少年らしい。らしいというのは覚えていないからである。私の記憶では、彼の顔のところがサッカーボールになっている。偶然にも彼女も同じようなことを言っているな。もちろん、自身の身体が優先なので、黙っておく。
しかし、本当に2人はいつまで話を続けるつもりなのだろうか。私はさっさと逃げたいのだが。少し悩んだ末、会話をぶった切ることにした。
「トイレ」
2人は私の存在より、話の続きの方が大事と思ったようで、あっさりと許可が出た。そのまま帰ろう。カバンは……もういいだろう。たいしたものは入っていない。唯一気にかかるのは、沢田綱吉達が私を心配し探す可能性があるぐらいだろう。念のために後でメールしよう。
廊下を歩いていると後ろから声をかけられる。誰だと思い振り向くと笹川京子と三浦ハルだった。なぜ彼女達がいるのだろうか。私と一緒で笹川京子は補習を受ける必要がないはず。三浦ハルにいたっては、学校に不法侵入だぞ。風紀委員に見つかったらどうするつもりなのだ。しょうがないと思い、何しに来たかを聞くことにした。
「お兄ちゃんにお弁当を届けにきたの」
「ハルと京子ちゃん、2人で作ったんですー」
確かに弁当らしきものが彼女達の手にあった。かなりの量な気がするのは沢田綱吉達の分もあるのだろう
ぐぅとお腹の方から音が聞こえた気がする。弁当を見て、お腹が減ってしまったようだ。そういえば、私の昼ご飯はどうするべきか。いつ帰れるかわからなかったので、パンを持ってきていたのだ。すっかり忘れて教室に置いてきてしまった。しかし、今から教室に戻る気はしない。まぁ家に帰れば、お母さんが何か作ってくれるだろう。出かけていれば、兄のところへ行こう。必ずおごってくれる。
「サクラちゃんはどうしたの? 補習じゃなかったよね?」
「……用事」
「そうだったんですかー。でしたら、一緒にご飯を食べませんか?」
丁重にお断りした。彼女達と一緒に食べれば、何のために逃げてきたのかわからなくなるからな。落ち込んだ彼女達に少し罪悪感を感じたが、我が身優先である。謎のキャラ達と頑張って過ごしてくれ。
そういえば、彼女達は謎のキャラ達のことを知っているのだろうか。少し気になったが、やめた。私が聞いたことによって、取り返しのつかないことになれば怖い。
彼女達と別れ、今度こそ私は帰ることにする。そう意気込み、廊下を歩いてると美声が聞こえた。咬み殺されたくはないため、いったいどこにいる!?とキョロキョロしていると、靴箱近くからのようだ。
……逃げれない!
いや、まだ大丈夫だ。ここで隠れていて、彼が去ってから逃げればいいのだ。触らぬ神に祟りなし、だな。
さっさと去ってくれよと願いながら、聞き耳を立て逃げるタイミングをはかる。相変わらず、声だけはいい。
気のせいだろうか。雲雀恭弥が誰かと会話している。彼も会話ぐらいはするが、風紀委員ぐらいだと思っていた。しかし、どう考えても聞こえてくる相手の声は女性のものである。まさか女子と話しているとは。
ファンがいることは知っているが、話しかければ必ず咬み殺される。そのため、いったいどこのバカだろうと思って、覗いてみた。
目をこする。あの雲雀恭弥がまだ咬み殺していない。私は疲れているのかもしれない。ついに錯覚を見るようになってしまった。いや、もしかすると雲雀恭弥は偽者かもしれない。そう考えると隣にいる女子生徒らしき人物は術士なのだろう。
「……さっきからこそこそ隠れている君、出てきなよ」
美声も本人との違いがわからない。術士というのはこれほど凄いものなのか。1人感心していると、雲雀恭弥(偽)と目があってしまった。正しくは睨まれただが。
反応も本人のようだと思っていると、雲雀恭弥(偽)がトンファーを構えていた。ちょっと待て、とてもなく危険な予感がする。なんとか話題を逸らそうと必死に頭を回転させる。そして、いいことを思いついた。
「た、誕生日おめでとう!」
言った瞬間、後悔した。雲雀恭弥(偽)が首をひねったのだ。チラっと確認すれば、隣の女子生徒もよくわからなそうな顔をし「あの、今日は雲雀さんの誕生日、なんですか……?」と聞いてきた。つまり、術士の彼女は今日が誕生日だと知らなかったのだ。
これはまずいと冷や汗が流れる。雲雀恭弥(偽)の反応を術士の彼女が間違えたせいで、私は雲雀恭弥(偽)と見破っていると気付かれた。
私の頭の中では、どうするべきか、もう終わったという2つの考えと、リボーンに対する文句でいっぱいだった。
術士をつれてくるなら中途半端なことをするな。私が文句を考えてる間も雲雀恭弥と女性が話している。普段の雲雀恭弥ならばありえないことだ。中途半端すぎる。何を企んでるかはわからないが、見破ってしまえば完全に逃げることが出来なくなってしまうではないか。沢田綱吉達と関わると決めた時点で、ある程度は覚悟をしていたが、出来るだけ原作を壊さないように努力をしている私の身にもなってほしい。
「ちゃおッス」
「うわっ!? どこから湧いてきた!!」
急に目の前に現れたリボーンを驚き、勢いでつい本音が出てしまった。そもそも、そのコスプレはなんだ。いくら私がケーキが好きだといっても、ケーキの被り物だけでは私の気は治まらないぞ。中途半端なことをした責任をとって、私に甘いものをプリーズ。
リボーンは私の考えに気付かない、もしくは気付かないフリをして、雲雀恭弥(偽)に話しかけていた。
「ヒバリ、今日は誕生日なんだろ?」
「そういえば……そうだね」
雲雀恭弥(偽)はチラっと私の顔をみた。会話の流れでやっと誕生日と気付いたらしい。
「ツナ達がどうしてもヒバリの誕生日会をひらきてーって言ってんだ」
絶対ウソだろと心の中でツッコミする。誰が好き好んで雲雀恭弥に関わりたいと思うのか。やっと私はここであることに気付く。リボーンはわざわざ術士を呼んだのは、本物の雲雀恭弥に断れていたのだろう。それでは面白くないため、偽者を用意したのだ。
「……ふぅん。赤ん坊がいうなら、やってもいいかな」
その答えしかないだろう。群れることを嫌う雲雀恭弥がやるとすれば、彼が興味を示すリボーンから頼まれた時ぐらいである。
「もちろん、君も参加するんだよね?」
これは私に対してではない。術士の彼女に向かって言っていた。彼女が参加しなければ、幻覚が弱まる可能性があるからな。当然、参加するだろう。
「もし僕が気に入らなければ、咬み殺す」
ぞくっとした。今の声は、この場の空気が凍るレベルの素晴らしい美声だった。偽者とわかっていれば、恐怖がないため最高である。心の中でガッツボーズをしていると、雲雀恭弥とリボーンは開催時間と場所の話をしていた。もうとっくに私は気付いているのだが。2人はいつまで演技するつもりなのだろうか。少し考え、術の影響か、ドタバタしている彼女のためにもここはツッコミしないのが優しさだろう。先程の声の礼もあったが、私にしては気が利いていると自身でも思った。
「随分、余裕そうじゃねーか」
雲雀恭弥(偽)を見送っていれば、リボーンに声をかけられた。疲れて真っ青になってる彼女よりはどう考えても私は余裕だろう。
「何か考えがあるのか?」
「全く」
考えはないが、偽者なのだ。大丈夫だろう。
「君もよくこんな手の込んだことを考えるな」
「当然だぞ。オレが楽しみてーのももちろんあるが、ツナ達を鍛えれて、運が良ければヒバリがボンゴレに入る気になるかもしれねぇからな」
私は固まった。リボーンは真面目な口調だった。今のは本音に聞こえた。
「……あの雲雀恭弥を仲間にする気なのか?」
「どうしたんだ? サクラがツナ達にはヒバリが必要と1番わかってるだろ」
リボーンの言葉に頷く。正しくは頷くしかなかった。私の頭の中はあの雲雀恭弥が偽者じゃなかったということでいっぱいなのだ。
チラッと横目で確認する。彼女はいったい何者だ。
雲雀恭弥と会話し、咬み殺されなかった。それだけでも驚くべきことなのだが、雲雀恭弥はわざわざ彼女の参加を確認したのだ。……当の本人は先程の「もし僕が気に入らなければ、咬み殺す」という言葉に恐怖を抱いてるようだが。
そういう私もブルッと震えた。あれは本気だったのだ。そして、偽者という目で見ていたのに咬み殺されずに済んだことに心底安堵した。
「じゃ、待ってるぞ」
安堵している場合じゃなかったな。リボーンが去ってしまった。断るタイミングを完全に逃してしまったのだ。
大きな溜息が出る。もう知識で何とかするしかない。自身のことで頭がいっぱいなので、真っ青になってる彼女を放置し、私は教室に戻ることにした。