クラスメイトKがドジっ娘の世界にて大暴れ!? 作:ちびっこ&ひばりの
「レディース・アーンド・ジェントルマーン!!」
明るい声が聞こえるが、私のテンションは最悪だった。雲雀恭弥が喜ぶような物を用意することが出来なかったのだ。とりあえず、咬み殺されたくはないので1人でポツンと後ろの方でいる。群れてると思われたくないからな。
一応、今回の主役の雲雀恭弥は体育館で用意された舞台の上で大人しく座っていた。トンファーがチラチラ見えるのは気のせいである。
「お集まりの命知らずなゲストのみなさま、今宵は何と言っても我らが並中の覇者と在らせられる風紀委員長、雲雀恭弥の生誕日。それを祝賀するために開かれた今回のパーティーでは、参加者のみなさまには一人or一組となってプレゼントを用意してもらい、そのプレゼントは10点満点で評価させていただきます。最高点を勝ち取ったゲストの方には、ひとつだけ、どんな願いでも叶えて差し上げましょう。ただし、気に入らなければその場で容赦なく咬み殺されてもらいます」
どこからツッコミすればいいのだろうか。まず命知らずのゲストとは私達のことか。うん、知っていた。次は、今は昼だ。今宵ではない。 最後にプレゼントを用意して、なぜ咬み殺される危険があるのだ。理不尽すぎる。……もっとも、私は用意していないが。
「さぁ、栄光は果たして誰の手に……! ちなみに司会進行は私、東山春奈が務めさせていただきますっ!」
ついに謎のキャラの名前がわかった。念のため、覚えておいたほうがいいのだろうか。少し面倒である。
「元気だったか?」
声をかけられ振り向くとディーノがいた。なぜ彼がここにいるのだろうか。恐らくリボーンが呼んだのだろう。
「ディーノ、後で頼みがある」
「任せろ」
まだ内容を言っていないのに、彼は了承した。相変わらずお人よしである。
「ちょっと、進行中は私語を謹んでください。そこのイチャイチャしているお二方」
指をさされ、私とディーノは顔を見合わせる。ちょっと待て。これは群れている状態になるのではないのか。ディーノに動けとシッシと手を振る。彼は気を悪くすることもなく、私の頭をガシガシ撫でてから沢田綱吉の方へ行った。
そもそも私とディーノは真剣な話をしていた気がする。怒られるのは理不尽である。やはり雲雀恭弥に関わるとロクなことがない。ゲンナリしながら舞台に目を戻せば、先程よりトンファーが見えるのは気のせいと思いたい。……意外にもノリノリだな。
再び、雲雀恭弥(仮)かもしれないという現実逃避をしていると、始まったようだ。トップバッターは笹川京子と三浦ハルのようだ。
彼女達のプレゼントの内容は知っている。実は誘われたのだ。
「ハル達はヒバリさんに手料理をプレゼントしたいと思いまーす!」
「美味しくできていると思うよ」
そう、手料理だったのだ。女子力の低い私が作れば、恐らく咬み殺されることになっていただろう。誘われたことはとてもありがたかったが、断わるしかなかったのだ。
褒め言葉も言わずに黙々と食べる雲雀恭弥。シュールすぎる。帰ってもいいだろうか。
「うん」
一言だけ呟いた。合格という意味らしい。咬み殺す気はないようだ。せめて、もう少しリアクションしろ。彼女達がかわいそうだろ。
「極限、他に何かいうことはないのかー!」
私と同じことを思ったのか、笹川了平が噛み付いていた。私の兄も似たようなことをする。可愛い妹ために怒ったのだろう。笹川了平の言葉に雲雀恭弥はため息をついていた。どうやら面倒のようだ。
「君のせいで、7点」
「お兄ちゃん!」
「なぜなのだー!? ヒバリー!」
意外と点数が高いなと思った。彼女達だけならば、どれぐらい点数があったのだろうか。ちなみに、妹達に怒られたため、笹川了平は極限なぜなのだーと走り去っていった。不憫である。
「続きましては、二年A組所属ダメツナこと沢田綱吉と、彼と同じクラスで自称彼の右腕こと獄寺隼人のペアによるプレゼンです」
沢田綱吉と獄寺隼人でコンビを組んだのか。沢田綱吉がかわいそうな結果になると予想できてしまうのは気のせいだろうか。それにしても、この紹介は酷いな。今にも獄寺隼人が暴れそうである。必死に彼をなだめることになる沢田綱吉の苦労を少しは考えてやれ。ちなみに私は思うだけで、当然のように助けには行かない。
沢田綱吉のおかげで怒りが治まったようで、2人によるプレゼンが始まった。いったい何をするのだろうか。
「ヒバリのためにやるのは癪だが、オレの今までの研究成果を見せてやる!」
「ご、獄寺君、研究成果って……?」
「もちろん、UMA召喚のことスよ。10代目はオレのマネをしてください!」
獄寺隼人が正座をしブツブツと祈りだした。ドン引きである。もちろん、沢田綱吉もドン引きしていた。
「……君達」
「ひぃ!」
「僕の学校で妙なものを呼び出そうとするなんて、いい度胸だね」
合掌。
さて、次は誰の出番だろうか。謎のサッカー少年と山本武のようだ。またコンビを組むタイプか。不安である。
「さぁ、お次はガラリと趣向を変えて漫才を披露してもらいます」
2人は漫才をするらしい。また難易度の高いものを選ぶとは呆れる。やる気満々なのは山本武だけなようだが、大丈夫なのだろうか。
司会の東山春奈に「やるのはこのお二人、山本武と新垣燕太のスポーツバカコンビ」と紹介されたと同時にツッコミが響く。すぐさま始まるようだ。
「てめっ、春奈! こんな能天気野球バカと同類扱いすんじゃねーよ!」
「まあまあ、新垣。細けーことは別にいいじゃねーか」
「よくねえわっ! 第一、俺とお前で漫才ってなんだよ! なんでお前と漫才なんだよ!」
「うん? そういやぁ、なんでだろなー?」
「聞くなあぁぁ!」
「んー、小僧からもらったバットが最近ハリセンになるからかもな!」
「どんなバットだよー!?」
サッカー少年のツッコミとかぶさるように「なんでハリセンなのー!?」という沢田綱吉のツッコミも響いた。それも合わさったためか、意外と周りにウケているようだ。
そんな中、私は別のことを考えていた。まず沢田綱吉はいつの間に復活したのだ。これはやはりツッコミ属性の定めなのかと。もう1つはなぜハリセンにしたのだ。私とキャラがかぶるではないか。今すぐやめてもらいたい。ハリセンが武器で戦えることになれば、私が勝てるわけがないのだ。後でリボーンに文句を言おう。
全く笑わなかった雲雀恭弥だったが、2人を咬み殺すことはしないようだ。そして結果は、意外にも8点と高評価だった。よくわからない。
「お次はー……。なんと、あの方たちからのサプライズらしいです。では、早速登場してもらいましょう。並中風紀委員会のみなさん+ヒバードで校歌合唱」
サプライズと聞いてちょっと期待しちまったじゃねぇーか、バーロー。と心の中で文句を言っていると、不穏な気配がした。
「君達、なに群れてるの……?」
「お、お待ちください! 委員長!?」
許可なく群れたことにお怒りのようだ。焦っている彼らが不憫すぎる。
「君を祝いたいがために群れることになってしまったんだろ」
私は参加したくないのにここに居るのだ。そう思うと、つい口を出してしまい、睨まれてしまった。それにしても、地味に雲雀恭弥に睨まれることに慣れてきた気がする。全くもって嬉しくない。
のんきに考えているが、この状況をどうにかしなければならないな。溜息を吐きながら私は移動し、彼女の肩に手を置き、言い放った。
「そう、彼女が言っている」
彼女の悲鳴が聞こえるが、気のせいである。それに雲雀恭弥と話すことが出来る君なら大丈夫だ。
「……ふうん、君、僕に何か異論があるの?」
「へっ!? いいいいえ! 滅相もないですよ!」
「早く言えば? グチャグチャにされたいの?」
ふむ?という感じで首をひねる。雲雀恭弥と彼女の関係がよくわからない。獲物のように見ている気もするが、わざわざ話を聞いてあげる。それに彼ならば、私が彼女に押し付けたということもわかるはずだ。それなのに私には何も言わない。
私が悩んでいるとヒバードがこっちに飛んできた。
「マリヤ、イッショニ、ウタウ」
「私は校歌覚えていないから歌えないよ。ごめんね。でも、雲雀さんのために頑張ってね。ヒバードちゃん」
「ヒバード、ガンバルー」
呆気にとられる。本当に彼女はいったい何者なんだ。ヒバードと会話できる人物なんて原作キャラでもいただろうか。
「はぁ……さっさと始めなよ」
更に驚く。あの雲雀恭弥があっさりと許したのだ。やはり彼女は彼にとって特別な人物なのだろう。
私が再確認していると彼らの合唱が始まった。が、はっきり言って微妙である。校歌合唱をこれほど真剣に歌う声を聞けるという意味では貴重かもしれないが、むさくるしすぎる。
しかし、点数は高得点の9点。なぜだ。
やはりヒバードの可愛さなのか。音程はずれていたが、歌いながら雲雀恭弥の頭に乗るという芸当を見せたからな。誰かヒバードの着ぐるみをしてくれないだろうか。面白いことになりそうな気がする。恐らく高得点か咬み殺されるかというスリリングを味わえるだろう。もちろん私は遠慮する。
くだらいことを考えている間に、次が始まっていた。イーピンとランボが何かする予定だったらしい。司会の話を聞いていなかったので、何をするつもりだったのかはわからないが、イーピンが雲雀恭弥にほれているため、大変なことになっているのはわかる。
さて、この騒ぎの間に逃げるか。筒子時限超爆の巻き添えは遠慮願いたいしな。
体育館の扉を閉め、上手く逃げれたことに安堵していると「オレに任せろ!!」というディーノの声が聞こえた。
……そういえば、部下はいなかった気がする。思わず扉を開ける。手が滑ったといい、こっちに投げられると困るのだ。
「お前、安全なところに逃げたんじゃなかったのか!? 危ねーから下がってろよ!」
言われなくても近づく気はないぞ。なぜか私がいると体質が改善されるディーノは、ロープを使いイーピンを体育館の外へ投げた。たまやー。
「あめだま、ちょーだい」
足元を見るとランボが居た。君のペアが外に放りだされたというのに、それでいいのか。まぁ面倒なのでツッコミはせず、飴を渡す。
結局、ランボは飴を食べているだけで8点を獲得した。幸運すぎる。私も一緒に参加すれば良かったな……。
「さあて、子どもたちの可愛くてちょっぴりクレイジーなプレゼンの後は、神崎サクラさんによる謎の演目でーす」
ついに私の出番がやってきてしまった。憂鬱である。
「ディーノ、悪いが舞台の方へ行っててくれないか?」
「ん? わかった」
相変わらずお人よしのディーノはすぐに動いてくれる。問題は彼女をどう誘導するか、だな。
「君もディーノと一緒に協力してほしいんだけど」
「えっ? あ……。はい、分かりました」
どうやら成功のようだ。ディーノの名前を出したのが正解だったらしい。彼女とディーノは知り合いのようで、このパーティの間に何度か話していたのだ。
「それで、オレ達は何をすればいいんだ?」
私も舞台に移動したことでディーノが気になって聞いてきた。しかし、私はそれを無視し、雲雀恭弥に話しかける。
「先に言っておく。私は君の好きなものは知っているが、用意していない」
1度、本人の前でペラペラと雲雀恭弥の個人情報を話したことがあった。そのため、私が寿司などを用意しても雲雀恭弥は驚かないのだ。当然という反応になってしまう。どう考えても私にはこのイベントは不利だった。
「だから物じゃなく、君が喜ぶだろうことにしようと思う」
「へぇ」
雲雀恭弥が興味のあるような反応をした。まったく、本当にハードルが高すぎるのだ。
息を吐く。ディーノと彼女の後ろにまわってしまった。もうここまで来たら後戻りは出来ない、開き直ろう。
私のターン!
「ディーノと彼女を生け贄に捧げ、私は君から評価をもらう」
言った瞬間、ディーノから抗議の声があがった。しかし、頼みがあるといえば任せろと君は言っただろ。だから頑張って彼の相手をしてくれ。大丈夫、君なら出来る。
「……強いの?」
「彼は強い。彼女は知らないけど、興味あるんだろ?」
「……じゃぁ10点あげてもいいかな」
獲物を見つけたような目をして、戦闘態勢に入る雲雀恭弥。私はさっさと舞台から降りよう。巻き添えは勘弁である。
「全ては君の腕にかかってる」
「まじかよ……」
いくら私でも女子に雲雀恭弥の相手をしろとは言わない。彼女を舞台にあげたのはただの点数稼ぎである。つまりディーノが1人で頑張れということだ。まぁ責任を持って離れた位置で見ているつもりだが。
「わっ…!?キャアアアアア!!」
「は?」
悲鳴が聞こえた方を向くと、私の前に居たはずの彼女がなぜか後ろの方で転がっていた。そして、ドミノのように倒れていく机をみて唖然とする。
「あぶねぇ!」
ディーノの焦る声が聞こえたと思うと、浮遊感を味わったので何かにしがみついた。
しばらくの間、もの凄い音が響いた。しがみつきながら、何があったのだと焦っていると「もう大丈夫だ」という声が、耳元で聞こえた。この声は――。
「――ディーノ?」
「大丈夫だ。なっ?」
安心させるように背中をポンポン叩かれ、羞恥を覚える。よくわからないが、私はディーノの首に手を回し、しがみついてしまったようだ。
「お、おろしてくれ……」
辛うじて言えた言葉でディーノが私の希望を叶えてくれたことに安堵する。
「咄嗟とはいえ、抱きかかえる形になっちまった。すまん!」
「だ、大丈夫だ。助かった」
ディーノは私を助けるためにしたことはわかっている。それに横抱きじゃないだけましである。ただ、赤ん坊のようにあやすのは、止めてほしかった。
思い出しただけでも恥ずかしいので、誤魔化すようにあたりを見渡す。
「……何があったんだ」
現状をみて呟くしかなかった。全ての机が倒れ料理も台無しになっており、私達が居たところは「雲雀さん、誕生日おめでとう」という看板が天井から落ちていた。もしディーノが助けてくれなかったらと思うとゾッとする。
恐らく元凶であろう彼女を見ると、机の上で下敷きになって気絶しているようだ。……文句も言えない。
「はぁ……」
素晴らしい溜息が聞こえたと思い、溜息の主を探すとやはり雲雀恭弥だった。彼は自力で逃げたようで怪我はないようだ。
……この状況はかなり危険な気がする。この惨事の元凶である彼女を舞台にあげた私は咬み殺されるかもしれない。いや、彼なら連帯責任といい、ここにいる全員を咬み殺すだろう。そういう男である。
少しでも助かる可能性をあげるために、ディーノの後ろに隠れる。雲雀恭弥が動く気配を感じ、終わったと思った。
しかし、雲雀恭弥は私達の前を通り過ぎ、彼女の元に向かって抱きかかえた。それも横抱きである。
「君達、片付けといてね」
驚きで声を失ってる間に雲雀恭弥はそのまま去っていった。
「――は? 究極のドジ体質?」
「凄いみたいだよ」
片付けながら沢田綱吉に彼女のことを教えてもらった。それもディーノを上回る体質らしい。
「しかし、まさかワンターンキルの使い手だったとは――」
「え?」
「いや、なんでもない」
それにワンターンキルではなく、自爆スイッチだった気もするしな。雲雀恭弥の体力は多そうだしな。
「それで、サクラはどうするんだ?」
「!?」
急に後ろから声をかけられ、沢田綱吉と一緒に驚く。
私に声をかけた人物はどうやらリボーンだったらしい。本当に神出鬼没すぎて心臓に悪い。咄嗟に沢田綱吉を盾にしてしまった。ちなみに、そのことについては一切謝る気はない。
「サクラが最高得点だからな。ひとつだけ、どんな願いでも叶えてくれるはずだぞ」
微妙な言い回しである。つまり、叶えてくれるのは雲雀恭弥ということか。
これは悩む。下手なことを言って彼の怒りを買うのは怖い。それにもう『私の話に耳を貸すこと』という願いを彼にきいてもらっている状況だ。調子に乗れば、痛い目にあう気がする。
そういえば、と思い出す。明日も学校に行かなければならない可能性もあるのだろうか。明日はゴールデンウィーク最終日だ。ダラダラしたい。
「明日は……――明日は補習なし、で」
「え?」
様子を見守っていた沢田綱吉が驚いたような声をあげる。私だって初めは自身だけのつもりだった。しかし、沢田綱吉が視界に入ったので変更したのだ。これでも私の願いは叶えれるからな。
「補習に参加したけど、効果があるように思えなかった」
「わかったぞ」
あっさりと返事をしたリボーンに違和感を覚える。叶えるのは雲雀恭弥のはずだろ。
「今回の補習はオレがヒバリに提案したからな。オレが頼めば大丈夫だろう」
「そう」
私が納得していると「お前のせいで休みがなくなったのー!?」と隣で沢田綱吉が叫んでいた。ドンマイである。
片付けが終わったころにリボーンから私の要望が通ったと教えてもらった。沢田綱吉に「ありがとう」言われ、やはり彼に礼を言われるのは悪い気がしないと思った。