ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

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 思いついたのでちょいとチャレンジ。はよ本編しろと言われるかもですが申し訳ナス。寄り道ですわ。


 ウマ娘時空だどこぞのSCPじみた名探偵少年がいる世界くらい時空が歪んじまうぜ。ウルトラマンガイアよろしく歪みすぎて怪獣出てきたりして。


 今回のケイジはほぼほぼ真面目。漢女であり選手としての面を出しているかもです。


ウマ娘エピソード 番外編? IF編? スカウトしてみますた

 「おおー・・・こいつは・・・また・・・」

 

 

 歴史で知っている。経済効果約数百億とも言えるほどの人気を呼び競馬ブームを起こしたオグリキャップ。子供も女の子も競馬に興味を持ち、そしてあのハジケリスト漫画でも魚雷先生がオグリに負けないと鍛えたりとするほどの衝撃を与えた実績でも影響でも怪物である芦毛の馬・・・ならぬウマ娘。

 

 

 中京レース場にルドルフとマルゼンで一緒に見に行ってみればまあー史実に負けない。むしろ人の知能と目標を持っているのもあってそれ以上の気迫と実力を見せての勝利。

 

 

 初めての芝。慣れないレース場でも文句なしの圧勝。なるほど。これは引き込まれる。

 

 

 「ほう・・・地方よりも中央で戦ってもいいほどの逸材・・・確か年齢は・・・」

 

 

 「クラシックにも間に合うわね。むしろ経験を積んでいければ三冠のうち一つ二つは取れそうねえ」

 

 

 いつもなら涼し気に見るだけのお二人さんも気乗りしているし、何やら黒服のおっさんどもに声をかけているわ。こーれ何するんだか・・・まあ、わかるけどさあ。

 

 

 「ああ。君、一つオグリキャップのトレーナーの・・・そう・・・ああ・・・」

 

 

 ・・・スカウトする気満々か。いやでもさー・・・これ、ハジケスイッチ切っているマシな気分のアタシだから言えるがやべえだろうよ。急に地方から東京の、ウマ娘の最高学府、アスリート養成学校に本人には直に伝えずスカウト。

 

 

 オグリの保護者にも本人にも伝えず、で、まあオグリと中央の皆さんろくに話し合いも直にしていないだろうからなぁあの世界。真面目な話学費とか諸々どれほどの負担なのやらだぜ、しかも女手一人でってぽいし。

 

 

 黒服のにいさんらに北原呼ばせるつもりだろうが、ちょっといただけねえ。オグリのキャリアにとってはいいかもだけど、二人三脚、あっちの場合はベルノライト含めて三人四脚で互いに支え合い、心通わすあのメンバーを引き離すのはもったいねえ。

 

 

 「あー・・・ルドルフ会長。黒服兄さんらいいか」

 

 

 「どうした、ケイジ」

 

 

 「スカウトの話はアタシがする。いきなりごっつい野郎二人が来たらトイレに誘い込まれると思うかもしれねえし女のアタシが行ったほうがあっちも畏まらねえだろ」

 

 

 「・・・そういうものか? しかしトイレ・・・け、ケイジ・・・」

 

 

 「ナニを想像したかは聞かないが、まあーアタシに任せてほしい。会長とマルゼンは資料とかパンフとか、そこら辺郵送してくれや。で、そこの兄さんらは仕事奪った分これ奢るからそこの椅子に座ってケツで磨いてな」

 

 

 ほーん、やっぱ女子高生だしそっちは知識あるかあ。かわいいねえ。んで、まあ黒服の兄さんらには缶のアイスコーヒー渡してからひらひら手を振って移動・・・おごぉ・・・・あ、頭ぶつけた・・・くそ・・・アタシらサイズに合わせて出入口作ってくれよ・・・あ・・・思い出した。

 

 

 「あー忘れていた。会長、マルゼン。出来ればなんだが、編入とかの際、成績でどんな感じで奨学金とか、手当がもらえるかとかをオグリの実績に合わせて可能な範囲で示せる資料あとで寄越して」

 

 

 「はいはーい。お姉さんにお任せよ~」

 

 

 マルゼンから言質をもらっていざ鎌倉。でも、ちょっと待機だなあ。オグリとの顔合わせもせにゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よおー北原にベルノライトだな? ちょい一緒にアタシのデートに付き合ってくれや・・・おん? 六平(むさか)の爺さんじゃねえか。どうした、青田買いでもしに来たか?」

 

 

 「ケイジじゃねえか。お前こそここに来ていたとはな」

 

 

 「け、ケイジ・・・さ・・・ん・・!? な、なんでここに・・・・!!?」

 

 

 「けっ・・・! ケケケ・・・ケイジ!? 傾奇ウマ娘・・・皇帝と太刀打ちできる人が何でここに!?」

 

 

 おうおう、アタシの顔見るやすげえ顔してんなお二人さん。そんで六平の爺様もいるしなあ。相変わらず元気・・・じゃねえな。心が少し沈んでら。アタシの目的を見抜いているか、懸念しているわなあ。地方の才能が中央に晒された。そうなれば懸念するのは引き抜き。

 

 

 中央のトレーナーの資格がない北原穣はオグリは中央に行ける実力と素質を見せても一緒にはいけない。年齢の事もあって尚更本人は色々思うのもあるだろうしなあ。

 

 

 普段から生徒会に色々な意味で足を運んだり連れ込まれているせいでここら辺も顔が利く分気になるか。

 

 

 「んーまあ、北原のチーム、全員に話したいことだ。楽しい楽しいライブを終えて・・・あー・・・今度の休みっていつよ」

 

 

 「は、はぁ・・・い、一応来週の木曜日は練習が休みですが・・・」

 

 

 「んなら、その木曜にカサマツに来るからさ、オグリのお母さんとオグリ、ベルノ、北原、そんで六平爺さん。そこで茶ァしばこうぜ」

 

 

 「おいケイジお前一体・・・それに俺は俺のチームがあってな」

 

 

 「その日は休め。つーか休みだろうがよ」

 

 

 「・・・ケッ。わぁったよ、おいジョー。そしてそこのベルノちゃん。その日の昼くらいでいい、こいつに付き合え。一度言ったことは実行するし下手すりゃ問題児を増やしてお前らをずだ袋に入れて攫いかねん」

 

 

 お、流石よくわかっている。うちのメンバーとゴルシ呼んで騒ぎにしても楽しそうだったが先手打たれたか。まあそれはそれで話が早い。

 

 

 「え・・・ええ・・・・?」

 

 

 「わ、分かりました・・・えー・・・とケイジ、さん」

 

 

 「ケイジでいいぜ北原、いや、ジョーでいいか? ベルノもかしこまんなって。学生同士仲良くやろうや。あ、それとカサマツのうんまい飯や、土産屋とか飯処知らねえか? ちょいとそこら辺に出向くのはあんまりねえもんでねなあ」

 

 

 言質を取れたのでニッコリ笑顔で握手を交わし、その後はオグリらのライブをのんびり鑑賞。うーん、やっぱ美人ねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて・・・と・・・」

 

 

 「話っていったい何でしょうね・・・?」

 

 

 あの中京盃で出会ったケイジ。筋が通らない、犯罪者相手とはいえウマ娘のパワーをフル活用して現行犯逮捕して犯人を警察署にぶち込むついでに自分も厳重注意されたり、学園を何回も抜け出しては夜釣りをして怒られたり、なんでか工事現場で土方に混じって働いていたり、煽り運転を走って捕まえに行ったりと兎にも角にも話題に事欠かず実力もある話題のウマ娘。

 

 

 シンボリルドルフのお気に入りにして中央最強格のチームリーダーを務める英傑からの話。それには俺もベルノも、そしてオグリのお母さんも緊張を隠せない。

 

 

 「う、うちの子がこの前のレースで何かしたとかではないです・・・よね?」

 

 

 「お母さん、そもそもケイジって誰だ?」

 

 

 そんなことは露知らずなのはオグリのみ。むしろケイジの名前さえ知らないのかと色々と不安が増す。気性の荒さと読めなさ加減では中央屈指のケイジ相手に何をするのか・・・待ち合わせの場所である喫茶店はコーヒーや紅茶もおいしいし、食事もボリュームのあるものからオシャレなものでおいしいのでカサマツでも人気、テレビでも取り上げられたことがあるが、正直今日は味がわかるか不安だ。

 

 

 「おおーオシャレ。シックで落ち着いているのに賑やか。いい場所だなあ」

 

 

 「待たせてしまったか? 邪魔するぞ」

 

 

 俺たちの不安をよそに入ってきた六平さんとケイジ・・・ケイジは何で鼻眼鏡とパーティー帽をつけて入ってきているのだろうか・・・・いや、よそう。割と日常らしいし見ないふりだ見ないふり。これとその親友連中まで来たら収束つかないらしいし・・・

 

 

 流石にオグリも固まっているがケイジと六平さんは気にせず腰かけて注文を取り、そしてそのままゲンドウスタイルになるケイジ。ぶふ・・・だ、だめだ・・・2メートルちょいの長身ウマ娘が鼻眼鏡つけてこんなのされると流石に・・・

 

 

 「ブフゥ!!」

 

 

 「っ・・ってこらオグリ! 流石に失れ・・・ほ、ほんと申し訳ないです・・・」

 

 

 「気にするな。流石にこいつの奇行に慣れろとは言わねえ。ケイジ、いい加減それ外せ」

 

 

 「えー? 一応お忍びのための変装だけど・・・」

 

 

 「その背丈と奇行で名札と看板ぶら下げているレベルだよお前は。でねえと話が出来ねえだろうが」

 

 

 「ヘイヘイ・・・まあ、これだとパフェ食えねえしいいか」

 

 

 六平さんの静止でようやく鼻眼鏡とパーティー帽を外してくれるケイジ。改めてじっくり見るとわかる。ウマ娘の中でも高い美貌、ゴールドシチーやゴールドシップに近しい美しさと言われるのも納得だ。背丈が高すぎさえしなければとも言われるがそれが気にならないほどの美しさ。そして表情がころころ変わるのも見て尚更親しみやすい。

 

 

 「んで・・・まあ本題に行くか。時間作ってもらったからな。まだデビュー前のアタシだがこれから話す言葉は中央トレセンの、そしてルドルフ会長の言葉と思ってもらっていい」

 

 

 しかしそれが急に圧を持ってこちらを見据える。先ほどまではまるで感じなかった覇気、威圧が溢れ出して美貌を怖さに、迫力に変えていってしまう。思わず固唾をのんで構える。

 

 

 「アタシらはぜひ北原穣トレーナー、オグリキャップ、ベルノライトのチームを中央にスカウトしたい」

 

 

 「・・・この前の中京盃にシンボリルドルフ、マルゼンスキーが観戦に来ていただろう? 生でお前さんらの走りを見たのと動画での評判もあっての話だ・・・ジョー、お前さんらのチーム丸ごとカサマツから中央での戦線に引っ越しの誘いだ」

 

 

 「・・・は・・・・・・?」

 

 

 「ちゅ・・・中央・・・へ、私たちが?」

 

 

 中央からの話と聞いて、中年になりかけの、三流トレーナーの俺が、オグリの母親まで呼んで何の話だと思っていたが・・・オグリキャップは分かる。間違いなく地方でも最強。中央でも戦える器だ。でも、ベルノライトはまだ未勝利。俺に至っては・・・

 

 

 「行かない」

 

 

 「へえ?」

 

 

 「中央に東海ダービーはないだろう? マーチと一緒に走るって約束したし、キタハラと、私たちの夢は東海ダービーだ。だから中央にはいかない」

 

 

 「そ、それにですが・・・俺は中央のライセンスを持っていません。とてもじゃないですがチームとして行けないんです・・・」

 

 

 資格がない。オグリの実力と才能は間違いなく問題ない。でも、俺は中央トレーナーの資格がない。チームとして引き抜くと言ってもできないのだ。オグリは断ってくれているが・・・オグリの選手のキャリア、今後を考えれば、賞金や名誉を考えればそっちがいいはずなのだ。

 

 

 でも、長年の、ようやく手に届きそうな舞台に行けそうなのにと思う気持ちと、オグリの事を、ベルノの事を思うとどうすればいいのかという感情が出てしまう。俺の夢を手放すか・・・オグリ達を中央に送るべきか・・・

 

 

 「・・・急な話でありますが、中央に行けるという話はありがたいですし、娘が行けるのは素晴らしいことです。ですが、娘の進路は娘が決めます。ですから皆さんが反対なら私も反対です」

 

 

 「そういうだろうと思っていた。だからまあ、このプランを用意してみた。まず、中央に行くのは東海ダービーを終えてから、その後で判断してもらって構わない」

 

 

 「もう一つ、ベルノ、ジョーは俺のチームの下で見習い、雑用としてついてきてもらう。中央で最近新しい試みがあってな。これだ」

 

 

 オグリ親子は行かないと言い切り、ベルノと俺が懊悩しているとケイジ達はパフェを食べながら数枚の書類を出してきた。内容は「トレーナーおよびスタッフ研修新制度」とある。

 

 

 「この研修システムは地方から中央を目指すトレーナー、そしてウマ娘でも学園のスタッフ、トレーナーを目指す、適性がある子たちがいてなァ。そういう人らに学園のトレーナー、チームの下で雑用とか下働きをしてもらいながら練習のノウハウやカリキュラム、地方と中央のレース運びの違いを生で見てもらいつつ学ぶシステムとなっている」

 

 

 「まあー下働きだから時給制、今のジョーの稼ぎと同じくらいだろうが学習時間を与えるために帰れる時間は早め、残業手当もあるっちゃあるし待遇はまあ悪くねえ」

 

 

 「地方の感覚とかレース場の考えが抜けきれずに中央のレース場、練習システムの知識だけをもってくるせいで齟齬が生じてしまうトレーナーを減らすための対処と、資格をしっかり取りつつ支えましょうねってことで始まったものだ。これならみんなで中央に行けるし、六平の爺さんとこにオグリもすぐにチーム入りして走れる。悪くはねえだろ?」

 

 

 「あとあっちは社員寮もある。そこらへんは気にしないでいいだろうな。ただし部屋の片づけはしっかりと」

 

 

 「これなら私も中央に行ける・・・オグリちゃんのサポートを続けられるんだ・・・!」

 

 

 二人の言葉を裏付けるようなシステム。待遇も実際に悪くない・・・祝い金まであれば社員寮も独身なら基本制限なしで住んでいい・・・中央の力の強さを感じるのと同時に、ここまでの待遇をくれることが、オグリはそこまで見込まれているというのがわかって嬉しくなる。

 

 

 「次に学費の件だが、これもオグリの実績、つまりは地方の戦績を見て中央に行く際に学費の免除が行われる。今の時点だと半分免除、返済なしだが・・・東海ダービー、間違いなく日本でも有数の実力者と見せつければさらに免除される。つまりはまあ、中央でも特待生として編入出来る」

 

 

 「まあ、今の時点でもカサマツに近いレベルなのに・・・」

 

 

 「いつだってスターを求めている学園側の地方引き込みの手段なんだろうなあー。ここだけの話、ルドルフ会長を超える器はレースを出ているメンバーでは中央にもいない。そこにオグリや北原、話題性のある実力派が出てきた。もともと中央の引き抜き行動、せめてもの誠意ってやつだろうさ。だからまあ、ルドルフ会長、学園側としては今すぐにでも中央に来てぜひクラシックに来てほしいと言っていたが・・・まあー調整やらで忙しい、そちらに集中したいと話しておくからまずは東海ダービーを取って来い。そっから中央に気があれば来てくれ」

 

 

 「・・・どうしてここまでしてくれるんですか? 六平さんに、ケイジ。なんでここまで・・・」

 

 

 オグリの学費も免除、移籍時期も好きにしていい。自分も中央で働きつつ資格を勉強しつつ、ベルノにもチームとして、あるいはスタッフとしての道を用意した。しかもあちらの意向を一部曲げてまでもこちらも丁寧に尽くしてくれる。どこまで行っても自分は三流トレーナー。オグリは実力も才能も底知らず。ベルノは勉学において優秀だし、知識も豊富でなるほどスタッフとして大成もできるだろう。

 

 

 でも自分だ。何度考えても自分だけは中央にふさわしい人間じゃない。だけど来てほしいという。それだけが信じられない。

 

 

 「お、俺よりもおじさんとか、中央の素晴らしい人材にオグリは鍛えられた方がよっぽど・・・」

 

 

 「私はキタハラ、ベルノとじゃないと行く気はないぞ」

 

 

 「そう、それよ。そのトレーナーとの信頼、絆。こればかりは中央の人材でも得難いものがあるし、なによりオグリの才能を開花させた。皇帝とスーパーカーのみならず目の肥えた学園関係者の目に留まるほどね。キタハラのそれはどんな機材や飯、設備をもってしてもできないこと。それに・・・」

 

 

 「靴だな。オグリの選んでいたレース用シューズ。その選出と蹄鉄までも合わせた組み合わせ。ベルノが選んだそうじゃないか。数度のレースであそこまでぴったりなのを合わせられる選別眼は大したものだ。オグリだけじゃねえ、三人そろって戦ってこそ中央でも輝くとワシもケイジも睨んでいる」

 

 

 「後は・・・夢をかなえて、そっから次に気持ちよく進んでほしいからだねえ。アタシの勝手な思いだが・・・」

 

 

 俺の疑問さえも、オグリを見出してくれたこと、そして実力を育ててくれたことのみならずベルノの事までもをしっかりと見ていた。俺たちを、ここまでも見てくれたということに思わず目頭が熱くなってしまう。そしてちょっと窓を見て目を細めるケイジ。とてもではないが年には不釣り合いなのに絵になり、どこか遠い昔に思いをはせているように思える。

 

 

 「クラシックの格式やレースの名誉は確かに高いだろうさ。一生に一度だろうさ。けどね。ライバルがいて、今一番行きたいレースに突っ走る姿の方が何よりも美しいし、価値があると思う。だから中央の話は半分に聞いておけばいい。お前さんらほどの人材を手放すつもりはないだろうし、時期はダービーが終わってからでいい。それに、アタシとしても、多分あんたらとしてもそっちの方がおもしれえ・・・」

 

 

 「・・・? 面白い? のか?」

 

 

 「ああ。考えて見なよオグリ、みんな。チームの夢をかなえて東海の頂点になったオグリがクラシック、ティアラを越えて実力をつけた、まさしく日本屈指のメンバーと戦う。地方の頂点と中央の頂点がしのぎを削って戦う。夢をかなえて尚、次の夢へと突っ走る。見たくはねえか? 次世代の格付けを済ませたと思ったら次の実力者が出てきて日本を盛り上げていく。そんな光景を。それを作り出す当事者になってみたくはねえか? それが出来れば・・・地方と中央双方の頂点のトロフィーを手にできる。ルドルフたちですらできなかったことをできるぜ」

 

 

 ハッとなる。その話の大きさに驚かざるを得ない。地方と中央の栄冠を手に・・・オグリの実力なら東海ダービーを取れる。俺の夢は、そこで一度止まっていた。そこで終わっていた。だけど、ケイジは違う。その夢をかなえて尚更なる上を目指す。次の夢を、その舞台の土台があるんだと話してくれる。

 

 

 「しかもまあ、ここにはキタハラの叔父さんの六平爺さんもいる。師匠として、受け皿としてはもってこいだ。爺さんもノリノリなんだよな!」

 

 

 「ゲッホゲホォ!? 急に背中を叩くなケイジ! げほ・・・くそ・・・んんっ。まあ、そういうことだ。俺もお前たちの夢が叶う姿は見たいし、その後も見たい。オグリキャップのお母さんにも迷惑はかけないし、思いきりカサマツでやり切って、その上でまだやる気があるのなら来い。世話してやる」

 

 

 「アタシも練習相手に付き合うぜ。だからま、後の細かい話はそこの爺さんと。アタシはちょいと話付けてくるからよろしくぅ! あ、それとメロンソーダアイス乗せ、オリジナルミックスジュースあとで頂戴。ちょっと失礼」

 

 

 そういってカラカラ笑いながら一度喫茶店を出てスマホで連絡を取り出して誰かと連絡を取り合うケイジ。

 

 

 見せられた夢の大きさ。棚から牡丹餅なんて話じゃない。突然目の前に夢の切符が。栄転にも度が過ぎる話が転がり込んできた。それを話すのが一人は俺の叔父で、海千山千のトレーナーだからわかる。しかしケイジの方はまだ学生だというのにこの説得力と燃えさせてくれるなにか。

 

 

 いろいろな糸が切れてどっと疲れが押し寄せた。これが中央でも指折り。練習とはいえリギルとやり合っている選手の覇気というものだろうか。

 

 

 「なんだか急な話だが。私達はもっと上を目指せるということでいいのか?」

 

 

 「そうだよオグリちゃん! 日本一、今よりもずっとすごい舞台で戦えるってこと!」

 

 

 「さすがねえ。オグリ。そこに行くとしても頑張るのよ」

 

 

 「・・・・・・ああ。私も東海ダービーで優勝して、中央に行きたい」

 

 

 ぐったりしてしまった俺を横に盛り上がるオグリ親子にベルノ。俺も中央に行きたいし、オグリも東海ダービーを越えた後に行く気らしいし。ははは・・・本当に、驚きとしか言えねえ。

 

 

 「はー・・・ロッペイさん・・・」

 

 

 「六平だ。書類でも見るか?」

 

 

 「いや、それは後で。それよりも・・・ケイジは、中央ではあんなレベルの子たちがごろごろしているんですか?」

 

 

 「・・・・・・・・あのレベルは中央でもそうはいねえ。そして、普段は訳が分からん。お前以上のクソガキで、奔放すぎて手に負えん。だが、誰かに手を差し伸べる時は全力で背中を支え、全力で愛して助ける。嘴の黄色いガキのくせして出来てやがる器だ。オグリキャップとも違う。だが強敵だろうな」

 

 

 「そうですか・・・でも、オグリならきっと勝てます。じゃあ、早速諸々の書類や手当を」

 

 

 この後に来る話、クラシックも菊花賞は間に合うということで一応そこは登録しておき、学費の件。移動や諸々、話し合いは進み。戻ってきたケイジとも楽しく語らって話は終わった。

 

 

 去り際にケイジが「中央に来たらそこでのファン第一号はアタシがもらうぜ!」と言えば「あ、こんにゃろ! わしの分も寄越せ!」とロッペイおじさんがギャーギャー言い合うという珍しい絵面を見せてくれながらの解散。本当に、いい出会いだったと思うし、オグリには負けるが俺もケイジのファンになったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「っはぁ~・・・・ああー・・・有意義だった・・・学校からはギャーギャー言われたが学生優先。それと青写真を話したら納得してくれてよかった」

 

 

 「しかしまあ、ずいぶんと熱心に話していたみたいだな。基本面倒な話ごとはスルーのお前がらしくない」

 

 

 

 夕暮れから夜に変わるであろう時間。六平の爺さんと一緒にフラフラ歩いて電車に向かうアタシ。スカウトは無事成功。ただし来年の7月に編入ということで済ませ、やいや言ってくる連中も論破して無事に終わり。いい仕事したぜ。

 

 

 「そりゃ。応援したくなるだろうよ。ターフに、レースに、勝利に恋した乙女の夢。しかもまあ東海と中央で狙えるという我儘シンデレラストーリーだ。背中を押したくもなる。戦えば叩き潰す勢いでやるがな」

 

 

 「フン・・・言うじゃねえか小娘がよ」

 

 

 「小娘だからこそよ。レースに身を燃やして戦うからこそわかるってな」

 

 

 実際に、あのレースの産毛の先まで燃えるような感触とどてっぱらに焼けた鉛を押し付けられたような感触の重圧。いろんなものをしょい込んで戦う感触はレースに出ているからこそだよなあ。それを楽しんで、戦うことを選ぶ。支え合う三人は絵になる。

 

 

 戦えば容赦はしないが、見てみたい。あの芦毛の怪物、そしてそれを支える仲間の旅路を。そして支えたい、そばで見たい。ウマ娘になっても歴史好き、馬好きから離れられん性分のようだわ。

 

 

 「そ・れ・に・~? 実はアタシ以上に嬉しいだろう? 爺さん」

 

 

 「ん?」

 

 

 「かーわいい甥っ子が全力で頑張って、チームで東海一を狙い、中央で弟子としても来てくれて日本一を目指す。後継者というか、後釜になるかもしれねじゃんかよ。ここまで成長して、頑張ってくれる姿を見せてくれるなんて全く憎いねえ。この色男がよぉ♬ あんたが呼び込んだ道でここまで来るとは大したもんだ」

 

 

 「けっ! あんなケツの青い若造なんぞまだまだわしの後には早いわ!! 中央でしごき倒してその上でオグリキャップたちとやり切ってからだわい!!」

 

 

 なはは。認めているし、口の端が吊り上がっているぞ爺さん。歩きもいつもより早いじゃねえの。だからかねえ。理事長たち相手にも一歩も引かずに自分のチームの補助をさせると言ってきかなかったのは。

 

 

 ま、ケイジちゃんはわきまえているから秘密にしておくけどねん♪

 

 

 「まま、それはまたもう少し後のお話ってことで・・・なあどこか美味いめし屋さん知らないか?」

 

 

 「おいおい。もう夜だぞ。どこに行くってんだ」

 

 

 「今後交流戦とか、スカウトやいろいろあってカサマツにも人来るだろうし、地方トレセングルメログとか作ってみたいんだわ。ドリジャに頼まれてなー中央のメンバーも楽しめるだろうし、合宿とかでもいいかもだしどうよ。ケイジちゃんとのカサマツ食べ歩き夜の旅。いっぺんやってかない?」

 

 

 「2店舗までだぞ」

 

 

 「へいへい。わぁーってらい。それじゃ、でっぱーつ!」

 

 

 「走るんじゃねえケイジ! お前の力でその速さは地面が壊れかねんわ!!」

 

 

 この後アタシと六平の爺さんと一緒にうまい店、老舗、ここに来たら寄るという店を教えてもらいつつ中央トレセンに帰宅。

 

 

 そして次の年、オグリが東海ダービーを制覇。クラシック三冠最後のレース菊花賞に割り込んできた地方の怪物オグリキャップの登場、大勝利に日本中が沸き、地方の星、オグリブームが到来。

 

 

 中央も最高のライバルだと言わんばかりに誰もが挑み、激闘を繰り広げ、地方はオグリのようなスターを育てようと躍起になることでレベルが急上昇。

 

 

 オグリと同じ地方から来た北原穣の挫折と努力、粘りがあってこその成り上がり、まだ学生でありながらもトレーナー、スタッフとして地方から来たのにもかかわらずベストマッチな道具選びをするベルノライトの存在もあって自分達だってやれるんだと、支えに、励みにしていくことでウマ娘業界は全国が盛り上がりまくった。

 

 

 地方も中央もどこを見ても熱気と興奮に包まれ、交流戦レースが新たに生まれるほど。またダートのレースも増えてきたことで主戦は依然芝だがそれでもダート路線の子たちには前とは比べ物にならない程恵まれた環境になる。

 

 

 オグリ達の起こした波紋は日本を、ウマ娘業界を追いに盛り上げ続け、それに負けないほどのスターたちが生まれ続けては常に激闘を見せ続けた。

 

 

 今日も芦毛の怪物が走る。彼女の背中を押す仲間たちと、ファンの期待を背負い、愛を受け止めて

 全力で応えるために。何より彼女が一番走りたいために。芦毛のシンデレラはゲートから出てターフを駆け抜ける。 




 ケイジは夢を歩む工程も大事にしたりするのでクラシックよりもそっちがいいならそれがええやろって感じ。美しく生きることこそが一番。人生こそが一世一代の勝負なんだから悔いはなくやろうやっていいます。


 六平さんも甥っ子が中央までも来てくれるわ、チーム丸ごと面倒見て成長していく過程をそばで見れるのでご満悦。ケイジ負けない程ワクワクしていました。なお後日こっそり祝杯をあげたら飲み過ぎて二日酔いになったご様子。


 ルドルフたちは「え? 今すぐこれないの?」な返事に「オグリ達が一番走りたいレース走らせてやれ。それに地方の頂点が中央のトップが成長した頃合いとぶつかり合って秋から年末を盛り上げるのもおもしれーだろ。無理強いで編入を学生にしちゃだめよん」と返されてしまう。オグリ本人にも聞いたら「だって東海ダービー行きたい」で切り捨てられて終わり。
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