ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

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 アンケの方はエピソードではなくて依頼するイラストに選ばれる子ですが、いやー面白いことになっていますね。ここにラモーヌが入ったらどうなるか。入れてみましょうかね?


 あと、ラモーヌはやっぱりケイジを気に入りそうですよねえ。ギラギラを隠さずに思うままに突っ走り続けながら周りを巻き込んでいくタイプなので。更にその巻き込んだ回りもレベルアップさせていくという。


 なによりアニメ3期、3話本当にありがとうございました・・・! ありがとうゴルシ。そしてまさかの名前にびっくり。爆弾ぶち込みすぎて感謝しかないです。やっぱりゴルシはいい女です。ありがとう彼女と出会わせてくれて。そして名馬ゴールドシップと出会わせてくれて。


ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc 欧州事情

 「ささ、立ち話もなんだ。すわりねえ。アタシはサブトレみたいな立ち位置だから。ヴェニュちゃんも」

 

 

 そういってケイジは耳からにゅぅーと座布団を出して芝生の上に置いてくる。いつもながらこの多芸ぶりというかマジックはどうなっているのか・・・

 

 

 まあ、厚意には甘えて座り、ヴェニュスパークも隣でちょこんと腰掛ける。

 

 

 「えーと・・・水水・・・・・・ほい。これ」

 

 

 「折り紙の紙コップ? 中身もないが」

 

 

 「何言ってんだ。キンキンに冷えているだろう? ドリンクが」

 

 

 「え? あっ! 中身が。おぉー・・・冷たい・・・おいしいです師匠!」

 

 

 「ん・・・うん。ご馳走になる」

 

 

 「お代りもあるからな」

 

 

 「ッッッ!? すごいですケイジさん! どうやっているんです!?」

 

 

 「おっとぉーそれは内緒よぉんヴェニュスちゃん♪」

 

 

 目の前で足をへし折るように外して中からスポドリの入ったボトルを取り出して何事もなかったように戻していくケイジのマジックに弟子は悲鳴を上げそうになるが、周りのウマ娘たちは黄色い声を上げる。

 

 

 伝説のウマ娘、彼女のマジックはもはや海外でのショーが主で国内では最近やっていないのを生で見れているのがやはり嬉しいのだろう。

 

 

 「で、欧州も世界を取りに来たって? トニビアンカ、ピルサドスキー、アルトリア以外とんと日本にも来ずに欧州の伝統と歴史を重んじるウマ娘レースの先進地域が今更日本に学びに来るとか何事だよ」

 

 

 「その日本の存在、いや、明確にはケイジ、そして貴女とともに世界を駆け巡った仲間たちの存在がカギになってな・・・今欧州では欧州の大レースのみならず世界のレースで戦える経験、データ、そしてスターを求めている」

 

 

 「私の国、フランスの凱旋門賞は世界一の名誉を誇る大レースと自負しています。ですが、レースの賑わいや、お祭り度合では海外も負けていません」

 

 

 「文字通りあらゆる距離、芝、ダートでその日全てのレースがGⅠ級のドバイミーティング。同じくアメリカのBCシリーズ。国の祝日かつ多くの祭りも起きるメルボルンカップ。年末の香港シリーズ。皇族からの盾を下賜される天皇賞。まあ、お祭り騒ぎのレースは凱旋門賞と近い時期、それ以外でも多くあるからなあ」

 

 

 そう。そしてレースの売り上げという、興行的意味では有マ記念が毎年世界トップ5に入るほど。日本の市場の大きさを踏まえても歴史ある凱旋門賞を超える時も珍しくなく、歴史と伝統は負けないが興行的意味では正直な話負けているといえよう。

 

 

 「ああ。さらに言えば、貴女たちの実力で世界中のレースを制覇したあの鮮烈な姿は文字通り戦場を選ばない真の最強たるウマ娘の理想像を示したといえる。欧州の最強だけで、凱旋門賞の制覇だけで満足してはいけない。

 

 

 同時に欧州の強さを世界で示すことでその欧州の最強たちと戦える凱旋門賞で世界最強を決することで近年日本にとられ続けている凱旋門賞の優勝カップを欧州のウマ娘の手に、落ち続けている凱旋門賞の権威を取り戻すことにある」

 

 

 「なるほどねえ・・・ただまあ、今も私らからすれば凱旋門賞は高い壁であり挑み続けるものだってのに、まるで尻に火がついたような慌てっぷりで」

 

 

 「いやいや・・・だってケイジさんが欧州二冠三連覇、イギリスとフランスの大レースをそれぞれ3連覇して、弟子のキタサンブラックが凱旋門賞制覇で、真面目に凱旋門賞は日本の庭になるんじゃないかと言われていますよ?

 

 

 そこにくわえてライスシャワーがグランドナショナル、キジノヒメミコとライトニングにマイルは荒らされ放題で」

 

 

 弟子の言う通り欧州の伝統と名誉ある大レースのマイルは荒らされつくされ、欧州三冠もケイジ達にものにされ、グランドナショナルという世界最大の障害レースさえも日本が手にした。文字通り台風や竜巻という表現でさえ生ぬるい。

 

 

 栄誉は奪われ、レースの後のライブに関してもケイジ達の多芸さと新しい風に誰もが魅了された。そしてそのレースを終えた後でも年末だろうと春だろうと欧州がオフシーズンの間も戦い続けて更にその脚は早く、強くなっていく。差が開くばかりになる。

 

 

 これだけならまだ生易しい。そこにもう一つのあのレースがまた問題だ。。

 

 

 「これだけならいい。まだ欧州にも国際GⅠは多く、その栄誉と賞金を求めてくれる人はいるだろう。ただな。ケイジ、貴女の名を冠した8月の大レースケイジ記念。それが問題をさらにひどくしている」

 

 

 「え? あれ一応GⅠレースだけど開催してまだ数年しかないし、賞金も凱旋門賞と同じくらい。開催も8月だから大体秋の大レースのステップレースになるようにって感じで頼んだから客の取り合いもないだろ」

 

 

 「とぼけるなケイジ。そのレースの後に近くにあるレースはジャパンカップやBCシリーズにも行きやすいうえに、オーストラリアにも欧州と比べれば近い。アジア、アメリカの大レースに挑むやつらはこぞってそこに行くし、名誉という意味でも日本のウマ娘以外に一切負けを許さず、平均4バ身をつけて叩きのめした欧州二冠三連覇、御前試合三冠、無敗の四冠、そしてモロダシ共和国を救った英雄の名を冠したレースでの勝利の名誉は歴史の軽さを補って有り余る。

 

 

 そこから誰も貴女に勝てなかったジャパンカップを目指し、香港へと考える子は欧州にも増えている。今や欧州ウマ娘レースのGⅠへの関心はアジアに比率が増えつつあるのだ」

 

 

 まーそうなるよなーとぼやきつつ頭をかいてキセルを吸って遠くを見るケイジをみて、予想はしていたはずだがここまでかと頬杖をつき、私も同じ気持ちになる。かつてジャパンカップに来ていた時にはこんなことになるとは夢にも思わないほどに。

 

 

 もはや日本はウマ娘レースの後進国ではない。むしろ年中戦い続け、芝もダートも、短距離も長距離もあらゆる距離で戦える子たちがそろう可能性を秘めた傑物達のいる国とみられつつある。

 

 

 「だから欧州の威厳と強さ、更なるレースの新設をするにあたっても色々と学ぶためにアスリート視点で見れるうえに経験豊富なモンジューと、その弟子であり新進気鋭のヴェニュスパークちゃんが来たってわけね。全く。セントレジャーをモデルに菊花賞を作ったり、海外のノウハウを今も必死に学んでいる日本も高く見られちゃったもんだ。

 

 

 でー? 当然視察、勉強で済ますにはもったいなさすぎるほどの豪華なメンツ。どこを狙うんだ?」

 

 

 ギラリと目を光らせて真剣な選手の目で見つめてくるケイジに内心火がつく。何度挑んでもリベンジが出来なかったサムライの目。もう一線を引いて久しいとは思えないそれに射抜かれつつ気持ちを抑えつつクリアファイルを取り出す。

 

 

 「しばらくは日本に滞在してまずはドバイで二人で挑んでいく。ドバイDF、いや、今はターフだったか。そこにヴェニュスパーク。私はドバイワールドカップに挑む」

 

 

 「ほ? おいおいマンジューダートに行くのかよ? 欧州の悪馬場になれているのは分かるが、いきなりぶっこんでくるな」

 

 

 「マンジュー言うな・・・」

 

 

 「師匠も私もウッドチップや海辺の走り込みで鍛えていますから対応はばっちりです。なので思いきり暴れてきますよ!」

 

 

 「こっちはサトちゃんがUAEダービー、キタちゃんが春天に挑むから見事に分かれるなあ。アタシは殿下に招待枠で観戦させてもらうからま、楽しみにしておく。そこからは日本でもいくのか?」

 

 

 「もちろんだ。私は安田記念。ヴェニュスはケイジ記念を取る。その上で凱旋門賞には弟子、ヴェニュスが取ってもらうことを考えている。貴女はすでに引退している身だが、師弟対決と、日本の強さを学び、ものにしていくぞ」

 

 

 「そうこなくちゃあもったいないぜ。むしろガンガンうちの後輩たちを揉んでやってくれ。世界のレベルは、広さは侮れるものじゃなあいってな。

 

 

 じゃ、練習も始めたいだろうし積もる話とアタシからのサービスは後だ。練習終わったらアタシの元に来い。いいもんくれてやるぜ?」

 

 

 からからと笑いあの時と同じ、いや柔らかさを含んだ笑顔で立ち上がって折り紙の紙コップを回収して掌で潰し、完全に消失して片づけを終えて弟子であるダイヤに手を振って歩くのを見届けて私たちも練習を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「師匠。ケイジさんはとても大きい人ですね。器も、強さも・・・まだ現役で行けるくらいには」

 

 

 何枚も、色紙にシャツに蹄鉄にシューズにサインをかいてもらったのを保管しつつしばらくケイジさんと練習の合間に談笑した印象は、ちょっと変なことをしたり話すけど優しくて気風のいいお姉さん。という感じでした。

 

 

 欧州を魅了した最強のスーパースター、ナギコさんと合わせてアメリカ、日本、欧州の冠をものにした怪物という強さは分かるが接しやすく遠くないという感覚。

 

 

 「ああ・・・今も現役で行けるくらいには身体を作り続けている。マジックの技術は昔以上。演出技術も相まってウイニングライブとなれば文字通り永遠の最高峰だ。ただ、ヴェニュス。彼女は、いや彼女たちはその予想の二回りは上だぞ」

 

 

 ウッドチップの1000メートルのタイムと芝のタイムを計り、一度アイシングを挟みながら話している師匠の顔は、見たことがないほどに沈痛な顔に変わる。どんなきつい練習でも見たことがない。絶望も含んだそれはケイジさんたちと戦った時の顔だ。

 

 

 「ケイジ達は基本皆をリスペクトして、その強さもよさも全部わかっているし常に挑戦する気持ちを持っている。だがレースになると相手になっているのはケイジたち日本勢のみ。それが日本国内問わず世界中のどこでも。だ。

 

 

 あれはたまらない・・・・・ライバルだと認めてくれているのに、その相手はその遥か先を走って影すら踏ませない、どこまでも遠い壁がある。早さがある。並ぶことさえもできない絶対的壁は、誰もが絶望した」

 

 

 「師匠・・・」

 

 

 ケイジさんの強さは、とにかく場所を選ばず120%のコンディションで、気合で、エネルギーをもってぶつかり続けられること。欧州二冠連覇をかけた凱旋門賞で妨害と言ってもいいタックルや肘をもらってもそれが気付けと言わんばかりに爆走して日本勢を率いるように勝利した時も日本メンバー以外は全員みるみる離されて届かなくなる時は泣いている人や絶望していまにも足を止めそうな人もいた。

 

 

 「私は彼女の現役時代についぞリベンジも、影も踏むこともできなかった。欧州こそ最強だと疑わず、日本のウマ娘の強さに負けたのはスペシャルウィーク含めて慢心であり驕りだったのだろう。ヴェニュスパーク。フランスを愛し、希望を与えるために進む貴女の実力も志も素晴らしいが、その障壁はどこまでも大きく油断できるものじゃないと覚えておけ。

 

 

 私のような負けを、思いをしたくなければ・・・な」

 

 

 そのうちの一人だった師匠からすればこの強化プロジェクトで日本のレーススタイルや、大逃げなど欧州ではあまり出会えないレーススタイルをもっと早くから学べればと悔やんでいるのだろう。きっと先輩たちは。ケイジさんたちの世代とぶつかってしまった人たちはみんな。でも。

 

 

 「もちろんです師匠! 私はフランスに希望と光を見せたくて、配りたくてこのプロジェクトに参加しましたし、見ているだけで日本のレベルの高さは分かります。だから、必ず強くなってドバイターフもケイジ記念も、凱旋門賞も制覇してみせますから!」

 

 

 「ふふ・・・頼んだぞ我が弟子よ。なら、早速だがここの映像だが、緩やかなコーナーなのに少し速度が落ちていた。加速しすぎたな?」

 

 

 「うっ・・・だって日本の芝、軽すぎて加速が簡単に出き過ぎちゃうので」

 

 

 笑顔を見せてくれた。と思いきやさっきの練習映像でのフォームの修正とミスをビシバシ飛ばしてくる師匠。いや本当に日本の芝固いし軽いしで加速しやすすぎですよ!

 

 

 「膨らまないだけ見事といえるが、コーナーでこの減速は付け入られる隙を与える。逃げ寄りに近い先行策で挑むのなら早仕掛けも覚えつつやってもらう。まだまだ走るぞ」

 

 

 「はい!」

 

 

 「それと距離も日本では芝が軽いのもあって脚へくる反動をケアする時間を増やすが走る時間を増やす。元気があり余りがちなヴェニュにはちょうどいいし、ケイジ記念へ挑むのなら長距離も慣れないとな?」

 

 

 「う~ん・・・ししょー・・・それもいいですけどせっかくですし観光の時間も。アサクサ、雷門。皇居の回りとか~アキバとか~」

 

 

 「私のような負けをしないといった先から気を抜くな! 休日に連れていくが今ここで切り上げるのなら休みの日も練習だ!」

 

 

 「ひーん! 師匠の意地悪―!」

 

 

 何か月も日本にいるとはいえせっかくですから観光もしたいですよー! そのために日本の漫画とアニメで日本語覚えたのに! ケイジさんに観光ガイド依頼したかったのに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これはすごいなあ・・・」

 

 

 「で、ですね・・・はふー・・・・ん・・・んっ・・・」

 

 

 ヴェニュスパークさんやモンジューさんと軽く併走、練習をしてみてそのフォームを記録していたのですが、はっきり言ってハイレベルだと沖野さんも私も同じ感想になりました。

 

 

 「日本の芝にもあっという間に適応してみせてしかもタイムもダイヤに近い。フランスの天才少女と名高新鋭とうちのスペが勝ったとはいえ、エルコンドルパサーを負かした欧州最強の一角は伊達ではないか・・・」

 

 

 「ケイジさんとキタちゃんも勝てていますが、改めてその舞台の高さがよくわかります・・・ふー・・・」

 

 

 日本の芝と欧州の芝は別物。そのための適応の練習に私は頑張っている中あの二人はすごい速度で慣れて習性をすぐにできている。私もサトノの至宝とお父様たちに言われて嬉しくも天狗にならないように頑張っていたつもりですが、それでも才能の違い、多くの歴史的ウマ娘を輩出し続けてきた欧州の力がわかります。

 

 

 「あのモンジューさんに、ケイジさんは何度も圧勝してきた・・・」

 

 

 「そしてキタサンブラックもな。ダイヤ。お前も勝てない相手じゃない。回復したらもう一本いくぞ」

 

 

 「はい!」

 

 

 だからと言ってあきらめない。まだ本番まで時間はある。それまでに私は欧州の壁を穿つ第三の矢と、刃となるような脚を手にすればいい。沖野さんからの激励を受け取って気合と呼吸を入れて整える。

 

 

 ケイジさんたちとキタちゃんが砕いた海外の大レースは勝てないというジンクス。そのジンクスを復活させずに砕き尽くすためにも私も負けていられない!

 

 

 「あの。ヴェニュスパークさん! もう一度併走お願いしていいですか?」

 

 

 「もちろん! ダイヤちゃんはケイジさんの弟子だよね? 同じ師匠を持つ弟子同士よろしくね」

 

 

 「こちらこそ。えーと。それでヴェニュスパークさんは今度はどこで走りたいです?」

 

 

 「そうだねー日本の芝はもう少しゆっくり慣れたいし、そろそろクールダウンに入るからウッドチップで1000メートルでどう?」

 

 

 ただそれはそれとしてどこかテイオーさんを思わせる明るく快活。優しいヴェニュスパークさんは個人的にも好ましく是非友達になりたい方です。彼女の走りも夢も応援しますが、同時に負けたくないライバル。色々と学び、欧州のレースの話も聞きたいです。

 

 

 「よし。俺がスターターとゴールをするから二人とも並んでくれ」

 

 

 「お願いします沖野さん」

 

 

 「お願いします。よし・・・」

 

 

 とりあえずもう少し互いを知るためにも今日は最後の併走。私は差しの位置を、ヴェニュスパークさんは前目につけての先行。互いにウッドチップの破片から目を守るためにゴーグルをつけて準備よし。

 

 

 「じゃあ位置について。よーい・・・・・どん!」

 

 

 沖野さんのスタートと同時に飛び出すように前に出て、少し後ろにつけてヴェニュスパークさんの走りを観察しつつ隙を狙う。

 

 

 1000メートルのレースは一瞬。だけどカーブのある所からしているからそのカーブの間に付け込める隙があればそこからまくる。フォルスストレートとその後の直線。そこで勝負を仕掛けるのなら、スローペースのレースが主体の欧州のウマ娘たちのレースで合間を縫って前に出るのならこの短い距離、練習でもそれを見極めるための意識と練習はしておいて損はないはず。

 

 

 「ふっ・・・っ・・・!」

 

 

 「は・・・ぁっ!」

 

 

 その油断は最初にまず来てくれた。コーナーでの減速をしつつもほんの少し外に膨らんでわずかなロスを起こしているヴェニュスパークさんを見て私も一気に仕掛けていく。

 

 

 コーナリングはケイジさん仕込み。ここでの勝負は私が少し上のはず!

 

 

 「やぁあああ・・・・!」

 

 

 「な、んのっ!」

 

 

 コーナーでぐんと伸びて残り半分を切ったあたり。わずかにヴェニュスパークさんとコーナーの合間を縫って前に出たと思ったらすぐに横でヴェニュスパークさんが並んで追い越そうと加速をしていく。まるでとんでいるような軽やかな足取り。フォーム。まだクラシックに挑む前だというのにこの完成度。天賦のものがあるけどそれに負けないほどに努力と走りを楽しんでいるからこそできる領域。

 

 

 不慣れなウッドチップでこれ。本当に馴染んできたらどこまで加速していけるのか。ぞっとする想像をしそうなのを抑え込みつつ残り300メートル。思いきり全力を振り絞って前に前にと体を押し込むように、倒れそうなほどにのめり込んで突っ走る。

 

 

 250、200、150、100・・・・・・・もう少し・・・!

 

 

 「ゴール! ・・・いいタイムだ。スプリントでも戦えそうなほどだな。いい走りだぞ二人とも。お疲れさん」

 

 

 「は・・・はぁ・・・はーっ・・・も、もう少しでした・・・」

 

 

 「はー・・・ふー・・・ここまで追い込まれちゃうなんて流石ダイヤちゃん! キタサンブラックを有マ記念で倒した日本最強格。私も思いきり全力を出しちゃった」

 

 

 ほんの鼻先の差。練習とはいえヴェニュスパークさんと短距離ウッドチップでの併走は負けてしまいました。あちらにはハンデがあるのにここまでとは・・・本当に世界の壁は厚い。高い。沖野さんからのタオルを受け取りつつゆっくり歩きながら息を整えつつ練習場所の横に移動して邪魔にならないように。

 

 

 「ありがとう。サトノダイヤモンド。そしてこれからももっと一緒に走って、練習相手になってくれない?」

 

 

 「ふふふ・・・はい! でも、互いに目標のために必ず倒しますからね」

 

 

 その中で私を褒めてくれて手を差し出してくれるヴェニュスパークさんの手を握って握手。

 

 

 「どれだけ練習で勝っても意味がないからね。本番で、GⅠレースで必ずぶつかろう。そこで本当の勝負はね?」

 

 

 「そこまでは一緒に磨き合って、その上で勝ちますからね。だから、それまでは一緒に負けずに頑張りましょう!」

 

 

 「うん。約束。一緒にまずは」

 

 

 「「ケイジ記念で!! ・・・・・っ・・・あはははは!」」

 

 

 今回のプロジェクトl'arcでの最大の壁は今も欧州にいるウマ娘でもなく、ほかの子でもなくこの子だと何となく感じつつも、だからこそ真っ向から勝つ。勝って見せる。そう心に誓いつつそのための第一歩のレースで一緒に戦う。そこまた大変な道だけどやっていくのだと。

 

 

 みんなで微笑んで笑いつつ、ケイジさんたちにこの後悶絶マッサージで仲良くすごく痛気持ちいい天国と地獄を味わい、極上フレンチ料理に舌鼓を打って交流練習のスタートを切りました。




 欧州のウマ娘レース事情と歴史と伝統の違い。まあ、野球とかサッカーでもオフシーズンありますし、それ考えるとまず日本の方がすごいんでしょうねえ。アスリート兼アイドルのウマ娘レースを年がら年中やっていてGⅠレースもなんやかんや多いって。参加するには実力、実績ありきとはいえレース自体は毎月常にありますし。


 ケイジは基本ゴルシたちとワチャワチャ楽しんでいたけどケイジと戦ってきた海外ウマ娘の視点はそりゃこうなるよねって。真面目にゴルシたちと同じように仲良しで楽しんでいた海外ウマ娘は多分ウィンクガールとドリームシアターくらい。


 そして日本のレース映像を見てワープVS異次元大逃げとかタックル合戦して爆笑したりとか、パドックでやりたい放題している様子を見てこんなやつらに負けたのかとなるかも。坂で加速を仕掛けたりとかまともなレース運びがあんまりない。

ケイジと一緒に描かれる子は誰がいいですかね

  • キタサンブラック
  • サトノダイヤモンド
  • ヴェニュスパーク
  • ナギコ
  • マエダノキズナ(ヒサトモ)
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