ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

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 前回のウマ娘エピソードなんですがイメージ、テーマソングに映画「ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち」の主題歌を意識して書いておりました。もし見直す、思い返す機会があれば是非これを聞きながらでもいいかもしれません。


 後はウマ娘エピソードIF、2での六平、エアグルーヴのケイジに対する評価とかも見直せばケイジの行動もより理解できる・・・かもしれません・・・?


遠征前の準備中

 「あけましておめでとうございます! 前田さん、トモゾウさん。ケイジ」

 

 

 「あけましておめでとうございます。いやはや、いい場所ですねえ」

 

 

 正月を過ぎてなんやかんや正月ボケが抜けて久しいころ。うちの牧場に松ちゃんとナイスミドルなおっさんがひとり来た。んー録画していたアニメ特番を見ていたが、ドバイに向けての調整だろうかねえ。

 

 

 けどもう一人は誰じゃろ。テキの補助か? それとも新顔厩務員? どっかで見た気がするんだよなあ。

 

 

 「おお松風君、そして・・・・いやはや。的矢さん、久しぶりですねえ」

 

 

 「ご無沙汰しております利褌さん。社欄の集まりで語らって以来ですねえ」

 

 

 ・・・・・・・・ヒットマン! 仕事人的矢かよ! まーたビッグネームがまー。どうしたってんだ?

 

 

 「本当に馬がアニメを見ているんだねえ。いやあ、ここまで人間臭く、のんびりしているのはあの子らを思い出すよ」

 

 

 「ヒン?」

 

 

 「ははは・・・相変わらずだなあケイジは。前田さん、少し僕と的矢さんをケイジに乗せてもらっていいですか? 走らせませんし、ほんの少しでいいので」

 

 

 「ケイジ、お前はどうする? 私は構わないですよ」

 

 

 『もちOK でも浮かねえなあ。どうしたよ松ちゃん』

 

 

 頭を振ってコクコクと頷くのを見て松ちゃんもおやっさんもこれをOKと感じてくれたらしく早速鞍を持ってきてくれたのでそれを装着。そこからは早速放牧地でのんびり歩くことになりましたとさ。

 

 

 

 

 

 「ほうほう・・・・・これはまあ・・・怪物だな。グラスワンダー、あの時のライスシャワーを思い出す・・・いやはや、なるほど皆が一度直に見ればわかるというのも納得だ」

 

 

 「ですよね。やっぱりケイジは規格外ですよ! だからこそ、少し悩んじゃいまして・・・」

 

 

 『あん? 何が悩んでいるんだあ? せっかく四冠ジョッキーになったってのに』

 

 

 一緒に放牧地で軽く、速足くらいでくるりと回ってから的矢さんがおりて俺の首をポンポンと撫でる。あーそこそこ。いいところなでてくれるねえ。

 

 

 「・・・ふむ。ケイジ君のこの前の敗北かい?」

 

 

 「ええ、ケイジは怪物。この時代の中にあっても頭一つ抜けていると思います。だからこそ同時に思うんですよ、俺でいいのかって。ケイジの実力があってこそとれたGⅠであるのは理解していますし、それに。言い方は悪いですが・・・かつての和倉ジョッキーのようにリュックだのなんだので・・・才能を活かせる騎手に譲るべきなのだろうか、と」

 

 

 『和倉龍三騎手ね。オペラオーと俺を重ねているファンというか、人がいるわけだ。ったく、気にすんねえ。松ちゃんのあの乗り方を見てそういえるんなら相当な阿呆。相馬眼ならぬ相騎手目がねえよ』

 

 

 まあー指導者というか、俺ら馬の頭脳部分を代わりに担っている騎手だけど騎乗姿勢や動きで馬に余計な負担をかける。仕掛けを鈍って脚を残したまま負ける。逆に早仕掛けをしすぎて馬の体力を潰して勝てるレースを潰す。

 

 

 そういうのは往々にあるもんだ。そりゃあ分かる。けどなー正直今まで松ちゃんにあんまり下手な動きしてんなあってのはねえぞ?

 

 

 「それは私の視点から言えば間違いだな。君こそが一番ケイジに乗れるだろうし、努力もしている。何より、ケイジを思えば君は絶対に屋根にしがみつくべきだろう」

 

 

 「・・・え?」

 

 

 「いやいや、知り合いから聞いた話だけどね。君は最近ずっとヨガ教室、ジムに行っては柔軟をひたすらにして、インナーマッスルを鍛えているんだろう?」

 

 

 え? マジ? そんなことしていたのか松ちゃん。あ、ほい乗るのね。あよいしょとしゃがんでから乗るのを確認して体を起こしてポコポコ放牧地をグルグル。

 

 

 「ええ。ケイジの場合は馬体がとにかく規格外。足を大きく開いてまたがる分どうしたって固い体では体が浮きすぎてコーナーで吹っ飛ばされるし、そもそもいらない負担を強いることになるでしょうし・・・あのコーナーではいつも爪が食い込みそうなくらいには握っています」

 

 

 「そしてインナーマッスルはそんなケイジ君の規格外の馬体とそれに見合ったパワーと技術を使ったコーナーの加速で振り落とされないための芯づくり。身体もより絞ったし、何より僕が驚くのは鞭の少なさだ。全く使わない、あるいは使っても数度だけ。合図一つすればそれでもう君たちは別の生きものみたいに飛んでくる。僕がいうよ。ここまで馬と意思疎通できるのはケイジ君の素質以外にも君の努力と才能あってこそだ。並の、いやある程度の才能があってもあの加速は振り落とされかねない程だよ」

 

 

 あーまあなー。きついコーナーの際に俺が仕掛けたら何度かテキのおやっさん体が宙を浮きそうになったことあったし。それでも落ちないどころかしっかり余計な負担を与えずに喰らいつけるってのは確かに、若さを差し引いても大したものだ。

 

 

 「あ、ありがとうございます・・・」

 

 

 「それに、馬は不思議でね。人と関わることで如何様にも別の顔を見せる。グラスワンダーも、ライスシャワーもそうだった・・・人の努力や気持ちを感じて自身も奮起する賢い生き物だ。ケイジ君は一度の負けくらいではへこたれる器じゃない。だけど君が落ち込んでいたらそれを感じて力を抑えるかもしれない。そうなってケイジ君の評価を落とすのは嫌だろう?」

 

 

 「当然です。ケイジは、こいつは必ずドバイでも、どこでも戦える器です」

 

 

 「なら君も腹をくくりなさい。一番ケイジ君に乗って、併せて努力できる。経験を持っている君以外の騎手が来たら折り合いがつかないか、ケイジ君のスペックに対応できずに潰す騎手がほとんどだろう。大竹騎手や福崎騎手くらいのレベルじゃないととてもではないがこの子に君より経験を積まずに乗りこなせる騎手はいないよ。

 

 

 ・・・・・大竹騎手にとってのスーパークリーク。松風騎手にとってのケイジ。そういわれるよう頑張っていきなさい。それが必ず最良のはずだから」 

 

 

 「・・・ありがとうございます! ケイジ、悪かったよ。ちょっと気落ちしすぎていた。これからもよろしくな。ドバイも、大舞台でもまた一緒に戦わせてくれ」

 

 

 『もっちロンよ! わはは。俺の相棒なら気にしなさんな。それにまあ、勝ち負けも味わって強くなれれば万々歳。松ちゃんは経験と賞金、名誉と今後のキャリアを。俺も賞金と、引退後の生活。それとマンガの予算のためにもどんどんやっていこーぜー』

 

 

 よしよし、流石的矢ジョッキーだ。松ちゃんも俺で初GⅠを取ったのを知っているから天才を覚醒させたスーパークリークを引き合いに出してくれたのはナイスだぜ。俺と一緒に走り回ってより速くなれるようになりゃあいいのよ。

 

 

 しかしまあ落ち込んでいた松ちゃんの慰めと俺に会うだけのために北海道まで遠路来たとは思えないしなあ。温泉旅行か? にしたっていいところは他にあるしな。なんじゃらほい。

 

 

 「あ、そういえば、的矢さんは何で今日はここまで? 僕はケイジの調子の確認とドバイへの予定。新年のあいさつなんですが」

 

 

 「うん。ここにいるジーナちゃんっていう幼駒。後ろ足が少し曲がっているようだけど足は太く、馬体も成長していっているようだからね。期待株だと思って是非私の所に入厩してもらえないかと打診しに来たんだ」

 

 

 「なるほど。的矢さんほどの方に預かってもらえるのならきっと喜んで受け入れてくれますよ」

 

 

 ああ、入厩のお誘いというかお願いね。ジーナも確かにやたら幸太郎と走り回っていたりしたせいで大分鍛えられているしなあ。俺らともここしばらく併せしているしでレベルはもーりもりアップ。不思議な飴レベルよん。

 

 

 その後すんなりと入厩は許可。でも今ではなく7月くらいにしようとなった。宝塚記念あるし、少なくても上半期の忙しい時期を抜けてからというのと、厩舎の方も準備いるだろうし人手もいるでしょうから焦らずにって感じだ。

 

 

 ・・・ナギコもだったが、温泉の味を幼いころから知っているジーナが大丈夫なのか割と心配だわ。ここ最近よく来ているお客さんの馬たちも出たくないよーってなって、最後はここは俺の家だ! 離せこら! ってなる奴らもちらほらいたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ウェーイ! ナギコの勝ちっ♪ ダートじゃあ負けないよ~』

 

 

 『あ、ちょっ! もう! 砂浜ではいつも通りに蹴れませんわ! もう一度、もう一度勝負しなさいナギコ!』

 

 

 『かしこまりー☆ ばってばてなジェンティルっちをひねっちゃうよ。ああ、それとねーこういう柔らかい場所で走るには脚の使い方を変えないと駄目だよ? 蹴り方を変えるの。はじめの一歩でもだけど、砂の蹴り方にはコツがあって・・・』

 

 

 『青春してんねえ。ジーナもお疲れ。ほい』

 

 

 『ありがとうございますケイジお兄様・・・んふふ・・・はふ・・はひ』

 

 

 今日も今日とてダート、ではなく砂浜で走り込み。雪の中を走ったり、障害物競走のミニサイズ版を作ってそれを置いたコースを走ったりの日々だ。

 

 

 というのもだが、俺やナギコ、ジェンティルちゃんはそれぞれに3月前くらいにはアメリカとドバイに行く。日本の芝やダートとはまるで違うし、芝質が違う故に苦労する可能性が高いのがジェンティルちゃん。牝馬なのにアメリカ最高峰のダートレースを目指すナギコは生半可な闘争心や精神じゃあひるんでおしまい。俺もなんやかんや皐月賞以外は戦ったレースの芝の状態が良ゆえに柔らかな地面での戦いにあまり慣れていない。

 

 

 ナギコはクラシック戦線を越え、古馬戦線も経験した俺やジェンティルちゃんと併せをすることでプレッシャーに耐えて戦える。焦らないための訓練。ジェンティルちゃんは芝質が違う故に来る足運びの変化や馴染ませるための練習。俺は慣れているけど経験を積んでおくに越したことはないということで参加。ついでにジーナの併せを付き合って鍛えております。

 

 

 幸太郎は今日はなんでも猟の方に行かないといけなくて調教は付き合えないそうな。

 

 

 『ふぅ・・・しかし、このコーナリング? はナギコお姉さまも言っていましたが、どのように役立つのです?』

 

 

 『んー走る場所でなあ。曲がる場所があるんだけど、これを覚えていればあんまり疲れないままに速く走れるよ。あれば便利だぞお』

 

 

 『そうですの・・・なら、もっとお兄様に教えてもらいたいです。しっかり、じっくり・・・』

 

 

 『はいはい。でもまずは休もうな?』

 

 

 『ああぁ!! また負けましたわ!!?』

 

 

 『連勝快調これ最強~♪ 今度はケイジとやるしーケイジー! 休んだら併せしよ?』

 

 

 『ほいさーはい、水とリンゴ』

 

 

 しっとりし始めたジーナを休ませつつ、また併せで勝ってきたナギコにリンゴを渡し、水飲み場を開ける。ナギコがダート向けとはいえ、ほんとこいつの成長はやばい。高速馬場のアメリカンダートに合わせての芝でもタイムが現役クラシックメンバーに近いし、柔らかい砂、泥んこ馬場ではもはや敵なしのレベル。

 

 

 砂浜、柔らかすぎる足場が不慣れとはいえジェンティルちゃんを子ども扱いするし、慣れている俺でも5回やって3回勝てればいい方。全力でもやや勝ち越しだし、ほんとダートではこいつ桁が違うし、平野調教師があれ程に入れ込むのも納得だわ。

 

 

 「よしよし。お前たちも休んでいい感じだぞ。さてと、ケイジの方は一足先にドバイに飛んで、そこで先にジェベルハッタを戦い、その少し後にジェンティルちゃんは調教の疲れを抜いてから同じあちらの厩舎に入ってから本番に挑むようだな」

 

 

 『いわゆるぶっつけ本番ってやつか。後は同時にレースが近くなると牝馬はカリカリしやすくなるのが段違いと聞くが、それをできる限り減らすためかね?』

 

 

 ダイワスカーレットはテンション上げてカリカリして体重を調整できたり、ウオッカは自分で食事量を制限してベストに近づけたりとかしたそうだしねえ。俺? いつも思い切り動いて、飯食ってぐっすり寝て毎日元気もりもり。筋肉もまたつくかもだが、密度を高めたいなあ。

 

 

 まあ、要は長くドバイ、慣れない環境で放牧もないからレースかもって思う時間を長くしてカリカリイライラ緊張して遠征、飛行機に不慣れだった場合のストレスも含めて体調壊すのを嫌がったのかしらねえ。

 

 

 「ケイジは基本車の中でも寝るほどにお前はどっしりと肝が据わっているからな。しっかりとドバイで頑張って、ジェンティルちゃんを迎えてエスコートしてあげるんだぞ?」

 

 

 「ムフン」

 

 

 『分かったよ。まあ、あれな話だけどドバイの厩舎で俺の匂いがついてくれれば大丈夫と思ってストレスを減らせるかもだしなあ』

 

 

 俺の場合は基本車の旅だろうが気にしないし、飛行機なら音楽聞かせてくれたりしてくれれば大丈夫よ。だからラジカセとアニメ、漫画は載せてくれよ。

 

 

 「お、流石だぞケイジ。おやつも多めに用意しておくからな」

 

 

 『先生! リンゴはおやつに入りますか!』

 

 

 「テンション高いなあ。リンゴが食べたいのか? 海外、ドバイの果物とかも食べさせてみるか。あっちの方々がレースの検査に引っかからない果物用意してくれるようだし」

 

 

 『先生! おやつは300円まで・・・すくねえわ!』

 

 

 『おやつー? それよりケイジ走るよー』

 

 

 まあいいわ。とりあえずドバイの前にしっかり鍛えますかあ。目指せドバイ。目指せ国際GⅠゲットってな。




 調教で障害物競走をするってやはりメジロパーマーの成長とかを見て始めた人が多いのだろうか気になる今日この頃。


 あらためてカイフタラの血をひく牝馬とオジュウチョウサンの子どもとかすごいステイヤーになりそうだなあと最近思ってしまいます。


 ケイジ 相変わらず。ちょいと的矢騎手の乗り方やマークする際の話を聞いて追い込みのコツを少し覚えた。リンゴうめえ。


 松風騎手 ケイジに初敗北を与えたことに柔軟性を高めて騎乗スタイルの改良とケイジの邪魔をしないように努力していた。的矢さんの話や技術でいろいろ学べた。ドバイの遠征にしばらくつきっきりになるので翻訳どうしようと困っていたりわたわたしていた。


 的矢調教師 ジーナの成長の話を聞いて実は前もって打診。松風騎手の応援をしながら牧場に今回出向いて無事にジーナの入厩予約ゲット。ケイジを見て性格は少しスペシャルウィークみたいな馬だなあと少し思ったそうな。


 ナギコ 中央の調教と牧場での砂浜、山、障害物競走もどきでの調教での下地が完全に噛み合って覚醒。才能爆発、成長中。ジェンティルドンナをからかいつつも競走馬の歴史や面白エピソードを聞かせたりしてジェンティルドンナが寝る前の絵本の読み聞かせみたいになっている。


 ジーナ ケイジとナギコとの日々にご満悦。コーナリングを覚えているのとやたら重馬場に強くなり始めつつある。お風呂大好きなので真面目に厩務員が手を焼きそう。ちなみに馬主は牧場長とある北海道の地元企業で自動車、農耕用重機の整備、レンタルをしている会社のウホッ! いい男 な若社長で権利を半分分けているとか。


 ジェンティルドンナ 完全に前田牧場になじんだ。多分遠征の際に離れるとなる、厩舎に戻るとなるとごねること確定。ケイジよりもじっくり時間をかけて重馬場、柔らか馬場への練習を積む様子。
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