ケイジの一口メモ 部屋割は ケイジ&ジェンティルドンナ シゲルスミオ&ヴィルシーナ ナギコ&ホッコータルマエ ゴールドシップ&ジャスタウェイ キジノヒメミコ&オルフェーヴル フェノーメノ&ラニ
シリウスメンバーは大体部屋が近いの相まって騒ぎが絶えない。かといって離しても変わらない&周辺への被害増大が懸念されるのでエアグルーヴ曰く「隔離」のためにまとめたとか。
「私、松風さんにあってきますね。色々ありますし・・・」
「俺がしばらく出るし、有休も使っていいからつきっきりでもいいよ。むしろ俺の代りにありがとう真由美ちゃん」
「それと、馬主さんら、牧場でも言われるだろうけど私達ケイジ陣営は松風守騎手を主戦騎手から外すつもりは毛頭ないとも伝えておいてくれ。手術後の麻酔の副作用や麻酔が切れた痛みでいろいろ精神も不安定だろう。支えてあげなさい」
『俺からも今日のご飯の人参とリンゴ・・・は駄目だなあ。馬の飯だったものとか病院で突っ返されるわ。あ、アニメがあったな。えーと松ちゃんからもらった未来少年コ〇ンと・・・トモゾウからもらったふしぎの海のナデ〇ア・・・あ、電王とメビウス、80先生もあるじゃん。これ持っていってあげてー』
「あ、ありがとうございます久保さん、テキ。ケイジ君・・・DVD、多すぎない?」
「全治2か月。気分転換用にって押し付けてしまえ。ケイジからのものだと言えば喜ぶよ。それに、主戦騎手が大舞台前でこうなるというのはなあ・・・しかも三冠馬でこれが続くというのは・・・いやでも意識してしまうだろう」
松ちゃんの大けがもあって出国10日前を切ったってのにあわただしくなった俺らの陣営。緊急手術を終えて一晩経った松ちゃんに昨日は俺以外の皆で見舞いに行ったが今日は真由美ちゃんが代表で見舞いに行くことに。前々から距離が近くなっていたし、まあ真由美ちゃんレベルのスタイル良しの美人さんに看病されりゃ少しは気が休まるってもんだろ。
しかしなあ・・・オルフェの事もあるが、二年連続で海外遠征、大舞台に挑む日本馬で鞍上の変更が起こる。俺らの場合はしょうがないとはいえ嫌なジンクスが出来そうだぜ。しかもルドルフの孫の俺がちょうど遠征の際にトラブル起きてだし、松ちゃん気を病んでなけりゃあいいなあ。
「私、しっかり松風さんを励ましてきます。テキ、久保先輩、ケイジ君。行ってきます」
「行ってらっしゃい。さて・・・松風君の一番の無念はケイジの遠征自体が取りやめになることだ・・・やはり一番の問題は騎手だな・・・」
「的矢さんと岡崎さんがあちこちに急いで連絡取って、騎手が一人来てくれるそうですけど、真面目な話挑む舞台とその挑戦する馬。話題性もあってドタキャンとか、断られそうで不安ですよ」
「ああ、私の方でも知り合いに連絡してみたが皆断られたよ。ケイジの経歴に、ましてやKGⅥ&QES、凱旋門なんて荷が重すぎると・・・な・・・・」
『あー・・・まあ、ディープやオルフェの件もあるしなあ。それに加えて俺はなあ。ガタイも邪魔するか』
真由美ちゃんを送り出してから今後どうするかで問題はやはり騎手。欧州二冠。しかもまあ、招待状貰ってのいわゆる推薦枠の俺。自分でこんなん言うのはあれな話だが、無敗の四冠に海外GⅠ含めて7勝。競馬ブームもみんなと作ってきたし、志村さんやドバイの王族、GENBUグループや日本最大手ゼネコンの会長。その他もろもろの人らとも関りがあるし身近な俺の実績や周囲も含めればまずこれだけでもとんでもないプレッシャー。
更に言えば俺の体格もあっていつも通りの手綱さばきを変えても短期間で調整して御せるかという問題も出てくるし、海外レースでの経験の無い騎手は間違いなくたたかれる。しかも今はSNSやらで情報の伝達速度は速い。全国、世界でも顔が知れている俺だからまあ最悪何でお前さんレベルの騎手が乗っているんだとさんざ言われるだろうなあ。
松ちゃんも今は俺の鞍上にあっていると競馬を長く見ている目が肥えた客、関係者、ホースマンからは認められる声が多いが、心無い声やアンチ、悲しいかな。俺の相棒にふさわしくないという声は今でも多い。2年近く一緒に戦って、この実績を出しても。だ。
・・・・・・そう考えるとサンデーはほんと騎手や陣営に恵まれているなあ。あんな騒ぎの渦中のなか伝説の騎手の代りがまた伝説。アメリカ競馬界を変えて日本の最強騎手が私のあこがれ、ヒーローだというほどの人が一緒に戦ってくれたんだし。
「兎にも角にも、来てくれる騎手さんは一人いますし、その人と出来る限り調整して今できる最善をするしかないっすね。あのお二人が呼んでくれた。ケイジの鞍上代打を務めると言い切ってくれる胆力。それに期待するしかないですわ」
「・・・そうだな。私は私でケイジの調教、併走や慣らしの走りの際に気を付けていることを箇条書きにしてみる。久保、君視点でもケイジの管理、心を通わせるにあたって必要なものを書き出して騎手さんに渡すメモを用意するぞ」
「ウッス。ケイジも頭がいい。騎手さんと早くなじんで、松風君の分も戦って、次こそは必ず俺が挑戦するんだという気持ちを松風君に持たせるよう頑張りましょう。ケイジと松風君の、そして騎手さんのために」
『俺は軽くわちゃわちゃしてから小休憩しつつ騎手さんを待とうかねえ。いつでも動けるようにしつつ体力は残して』
ま、俺の方も負けちゃいねえ。いや、こんだけの人が動いて大舞台への道を閉ざすもんかとやってくれるんだ。必ずいい結果を見せられるようやるだけだわな。
「お待たせしました。今回は松風君の代りに僕が鞍上を務めます。・・・正直な話、僕でいいのかとは思いますがお願いします」
そしてやってきた騎手。うん。この人なら文句はねえよ。いや出せねえわ。この人の代りって誰出せばいいんだよ。アメリカのレジェンド騎手出してようやくだってレベル。
「こちらこそ急な申し出なのにもかかわらずにありがとうございます。・・・大竹さん。正直な話、貴方以外には私達弱小陣営ではコネも少なく誰も騎手が捕まらずにいた中で来てくれたのは本当に天の助けです」
『おあちゃー本当に来てくれたかあ大竹騎手。いや、豪傑とヒットマンの認める最強騎手。あの二人が本気で頼む相手ってならそりゃあ大竹さんだろうけどさあ』
「実際にオルフェーヴルほどの怪物でも届かない舞台。それに迫れる。ディープを超えるかもと言われるケイジへの騎乗。今の時代はネットが発達した分若手もベテランも怖がるのはしょうがないでしょう。・・・・・・僕も凱旋門賞の経験はありますし、復帰した松風君にいいバトンを渡せるよう。ケイジに負けを与えないよう頑張ります」
大竹さんの登板は実際経験もある分良いんだけどねえ。大竹さん緊張というよりはギラギラしている当たり根っからのホースマンだし、なんでだろうねえ。俺を見つつも俺を見ていない感じがするのは気のせいか?
ま、いいか。それを見極めるのは調教からでも遅くはない。頑張るかー
終わったはずの血統。誰もがそう言っていた。メジロアサマ、シンボリルドルフから続くパーソロン系。しかしその血統も次から次へと来る海外の血統に淘汰され、トウカイテイオーも産駒で結果を出しつつも騙馬が多く、最早中央競馬では母系からでも少ないほど。この世界にいれば嫌でも血が途絶える一族が出るのは避けられないし、時代が求める強みや、途絶えるには相応の理由あってのことだ。
いかにあの名馬たちを出そうともパーソロン系は終わり、時代はサンデー、ディープ、クロフネにキンカメ。そういわれていた中、そんなの知ったことではないと言わんばかりの怪物が歴史をひっさげ、常識も蹴り壊しながらやってきた。
僕とディープ、岡崎騎手とルドルフの成し遂げた無敗の三冠を越え、無敗の四冠。しかもその中でワールドレコード更新を二度。
ワープしたかのようなゴールドシップとそれでさえも届かせない快速の大逃げを見せた皐月賞。
大逃げでへばる馬たちをすり抜けて猛追してきたジャスタウェイとシゲルスミオをねじ伏せて手にしたNHKマイルカップ。
全盛期のマックイーンを思わせるような先行策で挑んできたゴールドシップにトウカイテイオー、シンボリルドルフを思わせる叩き合い、勝負根性の強さでかわして手にした日本ダービー。
そして、幾つもの名馬たちの走りを呼び起こしてみせ、新時代の到来を見せつけた菊花賞。
他者から見た僕とディープ。・・・そしてスズカ。それを見せつけるような大逃げと追い込みを武器に戦い、熱く熱く戦い、勝利も敗北も楽しんで相手を讃え、そして場を沸かせるスター。もう目が離せなくなった。気が付けばネットや新聞、知り合いからケイジの情報を探した。そして出てくる写真や一見怪文書にしか見えない情報の数々。その事実やエピソードを知れば、夢中になった。
非常に頭がよく、人の言語を理解している対応に反応。人懐っこいが仲間を馬鹿にすれば、害そうとすれば馬房の扉を蹴り壊し、熊さえも蹴り殺すほどの闘争心と怒りを見せる。大舞台となれば変顔や奇行を繰り出し、ゴールドシップを代表に良く会話をしたり睨めっこをしばしば。
あのテイオーたちの血でドバイのレースを手にし、そこでも珍行動を乱発。何でも騎手とジェンティルドンナにドリフの芸を見せて笑わせたり、飛行機の中でアニメ鑑賞会を開いて陣営皆で見たとか、自分の長いキャリア、騎手人生の中でも聞いたことがないようなことばかり。
乗ってみたい、あの二頭だけではない。かつての相棒たちを思い起こさせる力強い豪快な戦いぶり。人懐っこい傾奇者。気が付けば常にそう思っていた。
そしてそのチャンスは不本意な形だがやってきた。騎手の大けがによる代打。喜んではいけないとわかっていたが、内心飛び上がりそうな自分がいたのも確かだ。あのKGⅥ&QES、そして凱旋門賞にケイジと挑める。今までの相棒たちでも届かなかった場所に、相棒たちを思わせる怪物と走れる。
岡崎さんと的矢さんからこの話が聞いた時はすぐさま行きますと言った。もう一度あの舞台へ、そして・・・皆と見たかったあの景色を・・・
「ぬっ・・くぐ・・・・」
そして今はケイジの走りを感じるためにウッドチップの練習場でケイジに乗って走らせているが、改めてケイジの規格外さ、そしてその特技と馬体が噛み合ってしまった故の乗りこなすことの難しさがよくわかる。
660キロに届くかという規格外の馬体は普通に乗るだけでも足を大きく広げるせいで必然深く馬体を挟み込めずに踏ん張りが浅くなるし騎乗姿勢がずれてしまう。更にはケイジの場合はコーナリングがえげつない。ボクのあこがれるヒーローも騎乗したサンデーサイレンス。彼の舐めるようなコーナリング。コーナー最内を取ったうえで加速。内を他馬に防がれようとも知ったことかと伸びていくあの走り。それをこの馬体でやってしまうのだからケイジよりも僕の方が外に身体が膨らんで吹っ飛んでしまいそうなほど。
コーナリング以外にも直線も決して遅くはない。いやむしろどっちも遜色なく上手で強く、速度もパワーも問題がない。坂だろうが足が鈍らないのだから怪物だ。
これをこともなげに見える。綺麗にいなして指示を飛ばす松風君の凄まじさとその努力がよくわかる。ケイジと共に2歳戦線を潜り抜けてからは特にそれが顕著で、完全に覚醒したと言ってもいい。ケイジほどの才能が松風君の才能の蓋を壊してレベルを引き上げ、互いにベストな状態ゆえにあの戦いを見せていたのだと教えられる。
・・・・・こういうところは僕とスーパークリークなのかもね。松風君と君の関係は。ああ・・・すごい。こんな、こんな子と一緒ならあの景色を見れるかもしれない。スズカと一緒に見たかった、ディープと目指したあの舞台が・・・
「ヒヒン・・・ブルッルルルゥ・・・・」
「どうした? ケイジ。疲れたかい?」
とんでもない速度の加速を見せて走っていたケイジだが、突如ゴール前で減速して降りろと言わんばかりに身をかがめていく。
汗も大したことがなく、息が乱れていない。そもそも菊花賞であれだけ大暴れするスタミナ持ちが早々ばてることも無い。・・・急にだが自分を拒むように動き、いよいよ振り落とそうかとなったところで僕が降りると、すぐさま自分の馬房の方に向かって戻っていく。
「・・・・・・・どうしたんだろうか」
練習好きな話は聞いていたのだが、急にこの反応。テキや久保さんが手綱を取ろうとすると邪魔するなと言わんばかりに暴れ、すぐさま自分の脚で走り戻っていった。
僕とケイジの騎乗の練習は、中途半端な形で最初の日を終えることになったのだ。
「またか・・・しかし、今回はまたひどいな。前にもまして」
「NHKマイルへ出せってごねた時ですね・・・飛行機の話を出せば顔を見せますが、練習自体は嫌みたいです・・・」
「馬が出走レース増やせという話はまあ置いておくにしても・・・どうしたんでしょう。ケイジ・・・」
「前回は自分からこのレース出せって指示した分分かりやすかったですが、今回は異常ッすね。プールトレーニングをこの季節でも出たがらないとは・・・うーん」
あれからはや3日。ケイジが練習をほとんど拒否して久しい。必要な分の運動はするが、それだけでまるで動く気がない。食事も自分で抑えている分太ることはないが、それにしたってみんなから見てもこの事態は異常らしい。
「普段の練習好き。気を抜けば本番張りの速度を平然と出しかねないからなあ。・・・ウッドチップではそれをよくする当たりここなら負担が少ないと気づいているんだろうが・・・さて・・・これでは満足に大竹さんと戦うことが出来ないぞ・・・」
「うーん・・・練習嫌いというか、そういう子はスペシャルウィークやステイゴールドを思い出すけど、あの子たちの場合はさぼりたいって気分が強いけど、なんだかケイジは違う感じですよね」
「あ、松風君から電話来たっす。もしもし? 久保です。ほうほう・・・・はい。はい・・・大竹さん。松風君から伝えたいことがあるそうです。一度外でじっくりと・・・」
いつの間にやら手を回していたのか。すぐさま久保さんから携帯を受け取り、すぐに厩舎を出て耳に携帯を当てる。
「もしもし。大竹です」
『大竹さん。忙しい中失礼します。松風です。話は久保さんからメールと、練習の映像は届いていて分かります。それで、時間も惜しいでしょうし単刀直入に言います』
「うん。あの練習好きと噂のケイジの突然の練習拒否。何があったのか、松風君の視点から是非聞きたい」
久保さんも何か思うものがあって前々から連絡していたのだろう。本当に動きが早く迅速。経験はまだ浅い陣営だが今後必ず伸びるチーム。ここに馬を預けられるのであれば馬も馬主も幸いだろう。
そして、松風君がつかんだヒント。それは何なのか。僕も分からない謎の原因を知りたくてしょうがない。
『僕にとっては大竹さんは憧れで、目標です。だからあらゆるレースの映像を見て研究しました。・・・・大竹さんは今ケイジに乗っているつもりではなく、スズカ、ディープに乗っている気持でケイジに乗ろうとしている。それがケイジは許せないんだと思います』
「・・・・・・!! どうして、そう思うんだい?」
『大竹さんの練習で、最初はケイジの馬体の大きさゆえにスタイルが崩れていました。だけど、二度目、三度目からはなじませて自身のスタイルとケイジの体格に合わせ、細かく調整をしています。そして、そこからはコーナーでも見事に対処して見せる。・・・・とんでもない実力。手綱さばきですし、すぐに合わせるあたりものが違います。
・・・ですが、ケイジがエンジンをかけて加速する瞬間、スタイルや空気がスズカやディープで最後の追い込みをするスタイルに微妙に変わっているんです。ケイジもまた競馬新聞や競馬史をみんなから聞いているでしょうし、騎乗スタイルの意味のない変更から大竹さんの心理を感じ取って俺と組むつもりがないのなら降りろと拒んだのでしょう』
なるほど納得だ。馬というのは賢い。ライスシャワーのエピソードもそうだし、僕でいえばマックイーンか。晩年は不調があればすぐに訴えるし、長距離の負担、全盛期のようには難しいとよくごねていたし、引退に追い込んだ怪我の不調も予兆があったのかそれを伝えようとした。
アグネスタキオンも皐月賞前に足の不調を感じたのか今日は走りたくないとごねまくったことがある。
ケイジも感じてしまったのか。僕がケイジの戦い方や強さにあのまま怪我をすることなく走り抜けたであろうスズカ、早く引退をせず、蹄の問題なく戦えたディープ、怪物たちをねじ伏せるまさしく黄金の末脚を見せたステゴ。僕と戦ってくれたみんなの、特にこの三頭を思い出していたのが、強く重ね過ぎたのが。
・・・・ホースマンとしては恥ずべき行為だ・・・ケイジも今を生きて戦う一頭だというのに、まさか松風君の不幸があってケイジの道を閉ざすなと頼んでくれたこのチャンスに甘えてここまでしていたとは。
『ただ、ケイジは決して狭量な馬ではないです。いえ、むしろあいつは夢を追う仲間や、人を愛して支えたいとさえ思わせる仕草を見せる漢です。大竹騎手。スズカやディープの事を想うなと、影を追うなという無茶は言いません。ただ、ケイジと一緒にその景色を見るために、スズカやディープとみるはずだった、見たかった景色を見るために一緒に戦ってくれと頼んであげてください。心から』
「ケイジは、そこまで賢いのか・・・・・・そして、もちろんだ。ケイジなら、それで応えてくれるんだね」
『もちろんです。あいつは漢の中の漢。イケメンな顔を自分で変顔して台無しにしたり、毎週ジャンプ読ませろとごねたり、藁で縄を作って脱走用の道具を用意しようとしたり、ボクを乗せたまま二本足で歩き始めたりと滅茶苦茶しますが、信じた分には応えようと全霊をかけて戦うやつです。
・・・・・・大竹さん。ぜひKGⅥ&QES、そして凱旋門賞であいつと戦い抜いて、スズカやディープ、いえ、今までのすべてを思いきりぶつけて勝ってきてください! ケイジは必ず応える。貴方の心からの声に、共に戦う戦友の願いを裏切らないやつです。僕から言えるのはそこまでです。
・・・あ。申し訳ないです。検査のために今はこれで・・・失礼しました。僕みたいな若造の言葉ですが、ケイジは動いてくれるはずですよきっと。では』
電話が切れ、ツーツーという電子音が聞こえる中、気持ちがきれいに切り替わるのを感じる。そうだ、スズカやディープの幻影をケイジにつけて走るんじゃない。同じ走りを持って見たかった舞台に、可能性に挑みに行く。そしてそれを伝えに行くのだ。
『君たちのスタイルや戦いは、確かに世界に届いた。それを見せつけてくれた馬が今もいるんだよ』
と。大逃げと追い込み。それをこなせる傾奇者がいる。日本古来の血をもって破天荒なふるまいをもって挑みに行く。それを支え、リードするのが僕だ。挑みに行く舞台は栄光と伝統、そして火花どころか炎渦巻く戦場。それを乗り越えるために、今から急いでその用意をしないといけない。
「そうと決まれば・・・ケイジに頼まねば!」
携帯を閉じて急いで厩舎に戻り、携帯を久保さんに返してケイジの前で頭を下げる。
「勝手に君をスズカ、ディープを強く重ね過ぎて申し訳なかった! でも、君にとっての相棒が松風君のように、僕にとっても相棒だったんだ。・・・・・ケイジ。君と一緒に戦わせてくれ。そして、その上で相棒たちと見れたはずの、見たかった景色を一度でいい。それを見るために、その目指す場所で一緒に戦ってくれないか」
「・・・・・・・ムフン! ヒヒィン!!」
ふてくされるようにマンガを読んでいたケイジ君の目に活力が宿り、任せろと言わんばかりに力強く鼻息を出して頷く。よく見慣れた戦意を燃やす馬の目だ。これならいける。早く出せと急かすケイジの首を撫でながら、心底楽しみな遠征に胸を高鳴らせた。
そして、ノリノリなケイジの走りに僕は危うく宙を舞いかけた。本当に馬力が違う・・・・! あの世代はこれに食らいついていけるんだからほんとどうなっているんだ・・・!?
改めてわかるケイジのジャマをせずに騎乗し、あまつさえ乗りこなす難しさ。そもそもの体格が違いすぎますしね。更にパワーもスピードもドン。大体早仕掛けでコーナリングで加速。シングレのレースシーン、コーナーで外に膨らんでしまったウマ娘がオグリにぶつかったシーンを思い出しつつ想像してくれると難易度がわかるかもです。
ケイジ 俺と戦う気がなくスズカやディープの再来とやり合いたいのなら素質のある若駒見つけて馴致から仕込んで光源氏計画や金田一のガールシャイなおっちゃんの真似しろやと怒っていたが大竹騎手の夢を追うための戦いならと快諾。
この後また一般新聞の記者から遠征が松風騎手ではなく大竹騎手の方が成果が期待できると言ったせいでブちぎれてもう一度馬房の扉を破壊して藤井記者がかばわなければ熊殺しキックを近くの壁にかまして記者君に馬の怖さを分からせるつもりだった。
大竹騎手 今まで自分の前でぶっちぎって勝利していくケイジにある意味当然あの二頭を重ねていたがテンション上がりすぎてもう二頭と走っている気持になっていたのを指摘され、改めて一人の夢追い人、騎手として戦わせてくれとケイジと短期コンビ結成。松風騎手をこき下ろした発言をした記者にはケイジが怒った後に『馬の扱いや賢さをなめていると真面目にお腹を食べられたり指をかみちぎられたり蹴り殺されても文句言えないよ』といい、漏らす記者を見て少し気が晴れる。
松風騎手 落馬は自分のせい。チャンスを逃したのは痛いがそれ以上に落馬したレースでしっかり馬が勝ってくれたこと、ケイジの戦いの旅路が乱れることがないどころか頼もしい騎手が、あこがれの日本最強騎手が乗ってくれてあんしん。
感じる悔しさをばねにして必ず凱旋門賞にリベンジしてやると大竹騎手の騎乗やケイジのレースを何度も見直して自己分析開始。DVDは合間合間に見ている。
KGⅥ&QES は掲示板の実況形式でやってみたいと思います。