ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

41 / 121
 ウマ娘エピソードに行こうかと思いましたが、先にこちらだけを出しておきたいと思います。どうしてもこの話は来年以降のケイジへ必要なターニングポイントですし、ウマ娘世界でもオルフェとケイジの関係に深くかかわるので。


 しかし、ウマ娘の新ガイドを見ましたが、史実ゴルシ凱旋門賞での顔鞭はあれは描写してもセーフなのか心配になる今日この頃。


さらば金色の王 有馬記念(GⅠ)

 「ぁあー・・・もぉ。ケイジちゃんったら燃えさせちゃって。貴方が人間だったら性別問わずに惚れこんでいたわよぉ」

 

 

 『よせやぁい。スーザンママも羽振り良さそうだねえ。いやーいいコート羽織っちゃってー』

 

 

 ジャパンカップの勝利から数日。スーザンママが大量のリンゴと、足が速いせいか少しだけどバナナを持ってやってきた。早速今日も坂路6本決めて、プールは寒いので代わりにウッドチップでコーナリングの練習。で、暖かいシャワーと石鹼で体を洗ってもらってご飯を食べていたのでおやつに。

 

 

 ああーたまらねえぜ。で、俺とのんびり話しているけどさ。何やらメモ帳とか持っているし、どうしたんだろうねえ。何かあるのかね?

 

 

 「いやーお待たせしましたスーザンさん。今日の方はぜひ相談に乗ってもらいたくて」

 

 

 「あらあら。気にしないでいいわよ。ケイジちゃんの今後の事にもなるしね。あ。お茶ありがとう♪」

 

 

 『俺のこと?』

 

 

 「ケイジの今後についてだって。俺らも関わることだし、ここで話そうとなってなあ」

 

 

 『あ、久保さん。ほえー俺の今後ねえ。引退、それと種付け料か?』

 

 

 利褌のおやっさんがお茶をもってパイプ椅子をそばに置き、スーザンママと一緒に俺の馬房の前に座る。

 

 

 そんで、お代りの、少しぬるめの水を持ってきてくれた久保さんに頭を下げてぐびぐび飲んでいるが、なるほどねえ。俺も4歳だし、来年の2月には5歳。ディープの引退は蹄の事もあってだけど、同時に種牡馬として早く活躍させたいという部分も大きい。

 

 

 俺ももしかしたらそういうパターンに入るかもということで意見のすり合わせに来たのね。厩舎の人も知っておかないとそりゃあ儲けもあるし、空いた馬房にどの馬を入れるかどうかで大変そうだしなあ。

 

 

 「んーそれじゃあ、私の方は出来ればケイジは6歳までは戦わせておきたいです。無論リスクは承知ですが、ケイジもきっとライバルが残ったまま引退するのはなんだか嫌がりそうな気がしまして。休暇を増やして無理なく行ければと思います」

 

 

 「私たちの方もそう思うし、ケイジちゃんの場合、早熟というよりは早熟と晩成の間。成長し続ける名馬と見ているわ。それに、出来ればライバルたちと戦う時にあの楽しそうな姿を見ちゃうと引退を早めるのは私も気の毒だと思うし」

 

 

 『やったぜ。つまり2015年まで戦えるのか。キタサンブラックやサトノダイヤモンドとも会えるし、いやー嬉しいなあ』

 

 

 「ならこちらも一層ケイジの体調には気を配ります。どうしましょう。次走の有馬記念の後はまた牧場に戻して放牧させますか?」

 

 

 「ええ。ぜひとも。実はなんですが、また休暇中に何頭か是非併せをしつつこちらの施設を借りたいと予約が来たので。休暇中ですから無理なく、一日に必要な運動分だけ走らせますが」

 

 

 あらー今年の有馬記念の後はまた牧場に戻れるのか―。そいつは嬉しいね。温泉入りたいし。ただ、やっぱローテはよほどのものじゃない限り基本ゆったり。今年みたいに一月半の間隔を置いてやるレースを序盤、一月から三週間くらいの間を置いてやる秋、冬のレースをやっていく感じかね。

 

 

 いやー頑張って稼がないとなあ。

 

 

 「よしよし。これで一つ目の課題は済んだ。で、二つ目の課題として・・・ケイジの種付け料。いくらにするべきでしょうかね?」

 

 

 「ああー・・・そうよねえ。私と前田さんで考えた時は重賞少し勝ってくれて、100万、50万くらいのお値段で安く、そして血の閉塞を止めつつテイオーの血筋を残したいというプランだったけど、もうケイジちゃんでそれは出来ないほどの成績を見せてるし」

 

 

 「実際、キングヘイローのような値段をすればそれこそケイジや牧場でも負担がシャレにならないでしょうし、それはやめたほうがいいっすよ」

 

 

 『あらー今度は俺が頑張ったせいの苦労とは。嬉しい悲鳴かそれともだなあ。この人ら金稼ぎよりも馬産と競馬界を見ているほうだし』

 

 

 俺の今後を決めてくれて、次は引退後の話となったが、どうにも俺の場合、結果がどうであれ引退した後は安い種付けプランでキングヘイローのように広く色んな所に血を残して今の競馬界だからこそ噛み合う組み合わせを試したりすることや、血の閉塞を抑えることを狙っていた。

 

 

 はずなんだけど、俺が予想以上に勝って、しかも筋肉痛すら起こさない健康体。人気も自分でいうのもあれだがある方だしどうにも種牡馬としての人気は問題ない。血の閉塞も抑えられる。ここまではいいけど値段つけるのどうしよっかってことになったと。

 

 

 「すでにディープを超える実績をたたき出していますしねえ・・・社爛さんからは1500万くらいにして思いきり私が儲かるべきだと言ってくれたんですが、やはり中小、地方の方にもケイジの血を、それにうまく名馬が生まれてくれればより盛り上がりますし」

 

 

 「でも安すぎても駄目でしょうし、私としてもオーナーブリーダー一本でやっている前田さんには是非是非この幸運と今までの努力が報われてほしいですから・・・少なくても600万以上で行くべきでは?」

 

 

 ちなみに参考になるかはわからないけど、ディープの初年度種付け料金は1200万。黄金旅程は200万くらいだったかな? でもなー俺の場合はねえ。のんびり飼い葉をもしゃもしゃしながらディープと俺の身体を見返し、そして思い返すは親の顔。

 

 

 「ですがねえー・・・ケイジはテイオーどころかルドルフの子にしても大柄すぎるし頑丈な突然変異。ディープインパクトの場合はサンデーも小柄、ディープもそれを引き継いでいて足元不安がないですし、パーソロン系は気性難が多い、で、ケイジは・・・気性難・・・? いや、変わり者ですからねえ。ケイジではなく親世代の方と隔世遺伝で似てしまえばというのもありますし」

 

 

 「んー・・・でも、やっぱり親子三代GⅠ制覇。ダービー、ジャパンカップ制覇を成し遂げた一族で、数はともかく長く名馬を出している日本の名馬ですし、やはりこれくらいは・・・」

 

 

 これは長引きそうねーあ、久保さん。飼料おかわりーそれとテキのおやっさん、お疲れさん。今色々盛り上がっているぞー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・では、ケイジの種付け料はひとまず800万くらいでスタート。産駒の成績が伸びてくれば50万刻みで伸ばすという感じで」

 

 

 「そうしましょう。それに、今はナギコちゃんをはじめとしてそちらの牧場には海外、地方を問わず名牝、名馬の子孫がいるからいい結果を残せるかもですし。ぶほほ♪ もうケイジちゃんの今後のレースの活躍と、産駒もどちらも楽しみですわ」

 

 

 あれから20分。話し合った結果俺の血筋から来る名馬は出るけども数の少なさ、気性難の継承率の高さ問題。俺がケガに泣かされたテイオー、ルドルフの子孫にしては頑丈すぎ&でかすぎで突然変異過ぎてしっかり素質が遺伝するかわからん。という理由を表に出して、とりあえず800万で行くことに。

 

 

 ま、この値段とその理由なら少し様子を見つつ来てくれるかね? サンデーもフジキセキが出てくるまでは枠が開くくらいには人気は抑えめだったし。当時トニービンがいたこともあるけど。

 

 

 「ふぅー・・・これでいい加減あなたが報われなさい、稼ぎなさいと言ってくれる社爛さんにも説明が出来そうです。で、次の方ですが・・・実はこの馬たちで何頭か入れようとしているのですが、どれがいいですかね。予算としてはこのくらいで・・・」

 

 

 「うーん・・・なら、この馬と・・・これがいいですね。日本ではほぼ入っていない血筋で、片方はニックスを狙えつつ、先祖の血も悪くない。隔世遺伝も狙えますし、なにより、これはもしうまくいけば楽しくなりますよ」

 

 

 「さすがの切れ味ある選別眼。いやあー頼りになります。予算はここからも用意できるので、それでうまくいけば来年にでも・・・」

 

 

 『何の会話しているんだー? とりあえず馬を輸入させようとしているのは分かるけどなー』

 

 

 うーん。延々話を聞いていると、眠くなってきたぜ。ふわ・・・あーねむ・・・

 

 

 「ケイジも眠そうだなあ。あ、そうだ。蓮君また来ているし、テキ。ちょいとケイジと蓮君会わせてきますわ。俺が見ておくんで」

 

 

 「おお、頼むよ。蓮のやつ、ケイジに学んでいろいろ頑張って、話したくてたまらなかったようだし」

 

 

 え? 蓮君来ているの? やった、色々話聞きたかったんだよなー。久保さん出してー、食後のちょっとした運動と散歩でさー。顔を振って出してくれアピールアピール。

 

 

 久保さんも出してくれたんでそのまま蓮君の所へ、いざ鎌倉。どれくらい成長しているかねー

 

 

 

 

 

 

 「でさーケイジのスタイル変更を見て、僕の方でもどうにかできないかなってやってみたんだ。まあ、まだまだ難しいし、思うようにはいかないけどね?」

 

 

 『そっかーいやーでも、これは面倒になるぜー?』

 

 

 お久しぶりに会えた蓮君。背丈がまた伸びていた。いよいよもって190台の大台へ。キセキの世代かよお前さんはよーと言いたいほどの背ののびっぷりだ。

 

 

 で、色々聞いているとまさかの中学校に入って早々に二度目の制服を新調する羽目になったり、靴もどうしようか迷ったり、寝ているときに骨ののびる音や成長痛で悩んだりといろいろ苦労しているようで。

 

 

 ただ野球の方ではテキのおやっさんが稼いでいるのもあって何とピッチングマシーンを購入。それと大きな傷をつけたボールを使ってブレ玉にナックル、もといシーサーボールでも捉える練習と、ボールに数字を書いてそれを捉える動体視力を鍛えたりで頑張っているとか。

 

 

 そしてそのうちの一つの大目玉が、なんとバントと見せかけてのスイングで相手の意表をついて自身も先に出塁しているメンバーも無事で済む。撹乱用のバッティング技術を練習しているとか。一応練習試合でも二塁打を何回か出していたりで先輩がたも驚いたとかなんとか。

 

 

 『にしても、俺の追い込みや大逃げ。この二つの極端なスタイルから来る読めない戦いをバントと、それを餌にしてバッティングで長打を狙うとはなあ』

 

 

 「監督からは腰の動きをより鋭く、体幹を鍛えなさいと言われて頑張っているんだけど、まだまだなんだよね。でも、このスタイルで行きたいし、僕もお父さんやケイジに負けないくらい頑張ってプロになる。そして、プロでケイジの稼いだ金額以上を稼げるように頑張るよ。まだ全国大会でも優勝できていないけどね」

 

 

 『いいのいいの。夢大きく持ちなさいや。てかまだ中1だろ。でも、焦って体を壊すのだけはNG。馬でも身体が出来上がっていないときに出る炎症とかあるしな』

 

 

 しかし、バントと見せかけてのスイングだし、どうしても振り切れる距離も加速も無い分普通よりも身体の軸の動きでほとんどボールを吹っ飛ばすのかあ。相当変態型に育ったなあ蓮君。テキのおやっさん、たまげているか喜んでいるのか。

 

 

 のんびり、今日は夕焼けをバックに一緒にトスバッティングをして過ごした。よーし有馬記念でまた勝って、蓮君の夢のハードルを上げつつやる気もプレゼントできるよう頑張っちゃうぞー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『今年のレースもまた、多くの名馬たちによる激闘で彩られてきました。そして、ここ暮れの中山。芝、そしてダートでもその一年の締めくくりとなるレースが始まろうとしています』

 

 

 さて、二度目の挑戦にしてリベンジ。やってきました有馬記念。

 

 

 『そしてそのレースは三冠馬の一頭にして凱旋門賞二年連続二着。間違いなく日本競馬の成長を世界に見せつけ、戦い続けた金色の暴君オルフェーヴル。その末脚に誰もが魅了されたでしょうエイシンフラッシュ。多くの名馬たちの引退レースになりました有馬記念。天気は晴れ。馬場は良。その光は両者の馬体をより美しく輝かせます』

 

 

 同時にオルフェや、ケガをしなかったのかここが引退レースとなったエイシンフラッシュ。トーセンジョーダンにゴルシもいるしで、なんやかんや豪華なメンバーでまた年末を締めくくることになりそうだ。

 

 

 『ぬおぉー!! ゴルシテメエ! またやる気かオラア! いい加減こっちも蹴り飛ばすぞ!』

 

 

 『やってみろやジョーダン! スタミナもパワーも負けねえからよぉ!』

 

 

 まあ、俺らにはそんなものいつも通りというかなんというか。やってんねえ。毎度毎度。そういえばゴルシブリンカーつけたんだなあ。何気にこいつも神経質な部分あるからなー。普段は頭ボーボボだけど。

 

 

 『またゴルシとジョーダンの喧嘩が始まっていますが、ケイジは渋い顔をして呆れたように見つめております。そしてそのそばにはエイシンフラッシュも』

 

 

 『もはやKGコンビが出るレースは大概コントになることになるのがお決まりレベル。18万人の観客も笑いながらその様子を眺めております』

 

 

 全くお前さんら師走の締めで年末の大一番。喧嘩以上にレースで白黒つけるんだし、そっちで決めねえでもいいじゃねーか。

 

 

 しょうがないので俺が入り込んでレフェリーストップ。けがはしていないけどね。

 

 

 『おめーさんらレースでどうせ白黒つけるんだしそっちでやりあえや。まーったく』

 

 

 『え? こっちでも蹴りつけたほうがよくね?』

 

 

 『レース前に脱落させるのはNG てかお前も下手すりゃ失格だよ』

 

 

 『つまり早く帰れるのか。なるほどそれは・・・ケイジとレースできないしやめよ』

 

 

 ゴルシよ。お前ほんと愉快だなあ。いやー元気貰えるぜー。思わず尻尾が揺れちゃう揺れちゃう。で、ジョーダンももう付き合いきれんわと言わんばかりにすぐ離れちゃった。あらら。俺もちょいと話したかったが、ま、騎手さんも距離開けてクールダウンさせたいみたいだししょうがないね。

 

 

 『・・・ケイジ・・・さん』

 

 

 『んぉ? オルフェじゃあん。いよいよラストランだなあ。最後の一戦。思いきりやらしてもらうぜ?』

 

 

 『そいつはこっちもだ! もう凱旋門賞のようには負けねえ。勝つのは俺! 三冠馬の力を、池沼と俺の力を見せてやる!』

 

 

 『上等! ラストランだろうが花道を譲るつもりはねえ。先輩方には大人しく後輩の俺らに道を譲ってもらう! まあー俺も同じ立場なら譲るつもりはねえけど。わはは!』

 

 

 オルフェもオルフェで気合十分。すっかり戦闘モードに入っているし、さっきのギャグ光景から気持ちの切り替えがしやすくて助かるわ。

 

 

 「凄い目をしていたなあ・・・オルフェーヴル。最後の戦いだってわかっているのかな。ケイジ、油断はできない。一番慣れている大逃げで行こう」

 

 

 『おうさ。それに、真面目に下手打っていけねえ以上、それがいい』

 

 

 まだ幻惑逃げに関しては経験浅いしな。一番使い込んだ戦法でやるほうがずっといい。松ちゃんも理解しているじゃないの。

 

 

 『さあ、様子が落ち着いたところでゲート入りへと移ります。年末、芝レースのグランプリ有馬記念。スタート前となりました』

 

 

 ファンファーレと拍手を聞きながらゆったりゲート前に。そこから順々に入っていく俺たち。思えば、俺オルフェとはこれも含めて二戦だけしかしていないんだよなー。昨年の有馬、今年の宝塚記念は回避したのもあってチャンスが少なかったし。

 

 

 そして凱旋門賞では互いに騎手が変わって、オルフェはまだ気持ちがついていけない部分もある。いろんな意味で、本当の力を出し切っての戦いで最後の激突。うん、こいつは全力を出さないとだわ。

 

 

 1番最内枠をいただけたのでそのままするりとお邪魔します。

 

 

 『ケイジ、オルフェーヴル、ゴールドシップ、エイシンフラッシュも既にゲート入り。そして最後に16番トーセンジョーダンもゲートに入りまして・・・スタートしました! オルフェーヴルはそこそこいいスタート。ケイジすぐさまロケットスタートで前に出る。これは大逃げか!?

 

 

 ゴールドシップすぐに下げて後ろから二番目につけるか、いや上がっていく。オルフェーヴルは後ろから三番目になります。その横にテイエムライト』

 

 

 よしよし、スタートは好調。そのままいい感じに行くか。今回はエイシンフラッシュは俺についてこないようだな。前の逃げもあるし、下手に付き合いすぎると潰れるから末脚での爆発勝負を仕掛けるつもりかね?

 

 

 兎にも角にも2500メートルの距離なら大逃げしてもへばることはないし、少しリード取って何処かで俺も息を入れて最後に力を残しつつ逃げないと。

 

 

 『そしてラストレース、オルフェーヴルは後ろからナンバーは6番。9番エイシンフラッシュは前目につけますが必要以上にケイジは追わずに先攻集団でルージュデンゴン、ナカヤマノブシと競り合っています。さあ、コーナーを曲がってスタンド前に移ります。

 

 

 池沼騎手が言っていました。最初のスタンド前が大事、うまく立ち回れるかがカギだと。さあ先頭から最後尾まで16馬身。ケイジを先頭に各馬正面スタンド前を通過。先頭はケイジ、距離を置きましてルージュデンゴン、ダンスバラード、エイシンフラッシュ、ナカヤマノブシ、ラブリーアイス、外からトーセンジョーダン。うちからゴールドシップ、ウィンドハリアーと並びました』

 

 

 オルフェはまだ仕掛けないねえ。観客の歓声がすげえなあ。やっぱ大舞台は盛り上がる。そして名馬たちの引退。誰もが時代を沸かせて彩った名馬たちだからなおさら応援にも熱が入るんだろうなあ。

 

 

 なんやかんやこうしているうちにスタンド前を過ぎてコーナーへ。よしよし。ちょいと息を入れながらコーナリングでもう少し距離を開けよう。

 

 

 『1000メートルを通過。タイムは57秒9 今回のケイジは大逃げ。やはりタイムが早くなります。そして勝負は中盤から後半へと移りつつあります向こう正面、ケイジ依然先頭。そこから4馬身程離れまして先攻集団ダンスバラード、エイシンフラッシュが先行集団争い。少し後ろにルージュデンゴン、ナカヤマノブシ、ラブリーアイス。少し前に出てきていますゴールドシップとトーセンジョーダン。ウィンドハリアーと並んだまま向こう正面真ん中を通過。

 

 

 ケイジを先頭に後方は馬群が長く伸びた形となりました。その中で後ろ目につけたままなのはオルフェーヴル。池沼騎手と三年半もの間コンビを組んできましたベストコンビの大一番。ケイジはそのまま第三、第四コーナーへと入り・・・おおっと動いた! オルフェーヴル動いてきた!』

 

 

 む・・・はや・・・いや、早仕掛けならこれくらいはするかオルフェは。よし、俺もコーナーなら負けん。松ちゃん、やるぞ! 相手はあの金色の王、慢心も油断もできねえ!

 

 

 「これはくる・・・行くぞケイジ! そのまま逃げ切る!」

 

 

 『赤い帽子がぐんぐん馬群のなかを突き進んでいく! 初めての対決となるゴールドシップをあっさりと抜き去り・・・いや、ゴールドシップも飛んできた! ウィンドハリアーも猛追を開始! 三頭が馬群を抜け出してケイジ同様コーナー勝負に移っていく!!』

 

 

 マジか!? もう追いつき始めたぞ! 後ろ目にいたから7馬身近くはあったはずなのに!! くっそ! ここは直線が長い・・・ある意味じゃあ今のオルフェの加速には俺が不利になりかねねえ! ええいこなくそ! オルフェは外、俺はまだ内にいる。経済コース使って少しでもロス減らしつつ加速していくぞ!

 

 

 『さあ最後の400メートル、オルフェーヴル、エイシンフラッシュをもかわして馬群を完全に抜け出す! そしてケイジとの差実に2馬身! いや1馬身! 距離はもうない! あの異次元、規格外の大逃げですらこの王者は潰してしまうのか!!?

 

 

 後方にウィンドハリアー、ゴールドシップ、エイシンフラッシュ追い上げるが差が縮まらず2馬身以上縮めることを許さない! いや、さらに伸びる! 坂なんてまるでないかのような加速でいよいよケイジを捉える!!』

 

 

 『ケイジ・・・! ケイジ!! あんたにフランスで教えてもらった言葉の意味が、全部、遅いけどようやくわかった!! この驚くような歓声も、皆の期待からだって! 愛からだって、俺に力をくれるものだって!! それを理解して、たとえ相棒がいない中でもそれを背負っていたからこそケイジはあの舞台を勝てた!!』

 

 

 もう半馬身・・・! くそっ・・・マジかよ加速力は馬体の差があるとしても、最高速度までこうも食らいつくのか!? いや、食らいつくどころかむしろ俺を引き離しに・・・ッ!

 

 

 『俺も三冠馬! その重みを力に変えて走れることを教えてくれたお礼に最後・・・ありったけを持ってお前に勝つ! 確かに強くなれる。お前の教えの成果を見せつけてやるぜええぇぇえ!!!』

 

 

 『それなら俺だって背負ってらあ!! 負けねえ! 最後だろうと、いや最後だからこそ俺の強さをしっかり目に焼き付かせてやる!!』

 

 

 『『勝つのは俺だああぁあっ!!』』

 

 

 まだだ! 終わらねえぞ! ここも勝って! 親子三代有馬記念制覇! そして、今度こそいい年末迎えるんだよぉ!! ぐぉ・・・こんのぉ・・!!

 

 

 『オルフェーヴル、ケイジを引き離しに! いやケイジ粘る! ケイジ粘る! 二頭の世界! これはモノが違う! これが三冠馬同士の! 世界に通用する怪物同士のぶつかり合い! しかしオルフェーヴル抜け出す! 抜け出して更に逃げ切る! これは決まった! ケイジの、あのワープすら届かない大逃げをねじ伏せた!!』

 

 

 粘るが・・・届かねえ! 引き離された・・! まだ、まだゴール板が残っている。加速出来れば・・・! ああ・・・くっそ・・・先に行っちゃったか追いつけなかった・・・か。

 

 

 『そうだ! これが王者! 目に焼き付けろ! これがオルフェーヴル!! 金色の暴君だぁあああ!! 見事に有終の美! ラストランを飾りました!! 二着にケイジ、三着にウィンドハリアー、四着にゴールドシップ、五着にエイシンフラッシュ。タイムはなんと2分28秒5!! ワールドレコードも引っ提げての大勝利!! これが本当に最後の走りか!? あのケイジを引き離し1馬身差、ゴールドシップ、ウィンドハリアー、エイシンフラッシュ相手に7馬身をつけての大勝利!

 

 

 黄金の王、その強すぎる姿を見せつけてくれました。ありがとう! 金色の王! 三冠馬として、世界に挑み続けた猛者としてふさわしい走りを見せつけてくれました!!』

 

 

 『いよっしゃぁああ!! 勝ったぜー!! 池沼、褒めてくれ。褒めてくれー!!』

 

 

 くっそぉー・・・届かなかった・・・全く。流石の強さだよオルフェーヴル。そして、ぶふぅ! 早速地味に騎手を振り落とそうとしているんじゃないよお前。わはははは!! ああ、やめやめ。湿っぽい空気は合わんわな。

 

 

 池沼騎手も満面の笑みでガッツポーズ。いやあ、大したもんだぜ。追い込みでワールドレコードを引退レースで相棒に渡してあげて嬉しいんだろうなあ。

 

 

 「負けたが・・・うん。納得のいくものだ。今日はあっちがすごく強かったなケイジ。今度頑張ろう」

 

 

 ポンポンと首を撫でながら慰めてくれる松ちゃんもね。俺は大丈夫よ。負けはしたが、王者の最後の姿を見れているしな。しかし、口を忙しなく動かして地味に振り落とそうとしたり、本当に元気だなあこいつ。俺もだけど。ぐったりというより心地よい疲れが強くてなあ。

 

 

 『フゥー・・・フゥー・・・・お、おぉ・・ケイジ君・・・君に頼みたいことがある。落ち着いたから。うん。大丈夫』

 

 

 『☆くぅん? チャージングゴーは駄目なんだよ?』

 

 

 『チャー・・・? あとオルフェーヴルだよ。ケイジ君はさ、まだまだこれからも走るでしょ?』

 

 

 『もちろん。まだまだ取りたいレースもあるし、勝利も欲しいからな!』

 

 

 レースが終わり、騎手を振り落とすのも失敗している間にクールダウンできたかいつも通りのノリに戻ったオルフェ。俺に近づいてきて何か用事があるようで。

 

 

 『ならさ、もし凱旋門賞に挑むのなら・・・もう一度、勝ってきてほしいんだ』

 

 

 『凱旋門賞を?』

 

 

 『うん。ケイジ君と挑んだ二度目のレースは、僕も分からないことがあったりして負けたのもしょうがないとわかったし、ケイジ君が勝ったからいいんだ。・・・・・・だけど、まだ借りは返し切っていない。一度目の分をまだ返せていない・・・! でも、僕はもう引退だ。みんなが決めたことだし僕ではもうどうしようもない。だから、ケイジ君。君がもし今後チャンスがあるのなら凱旋門賞に挑むのなら、もう一度勝ってくれ! 期待や想いが力になるというのなら、僕の想いも載せてまたあの大舞台であのかっこいい姿を見せてくれ!』

 

 

 やれやれ。三冠馬、押しも押されぬ世界レベルの名馬からの期待と願いを託されるか・・・重いねえ。だけど、だからこそそれがいい! 燃えるし、ますます来年挑むという話は決まっている分重さが増す! わくわくが止まらねえよ。

 

 

 まだレースが終わった後の火照りもあってぐつぐつ血が沸くような思いだ。ははは・・・最後に勝利を見せつけた以外にも、こんなものまでもらえちゃあなあ、最高だよ。勝てはしなかったが、これはいいな。

 

 

 『相分かった! それならまた挑むときは必ず勝つ! いや、それ以外のレースでも大暴れしてやるさ。そして見せつけてやる! 俺よりも早く走って勝ったやつがいる。時代を作って、大いに戦った偉大な王がいるとこのケイジが見せつけてやる! だから安心して休めオルフェーヴル! お前の想いも全部しょい込んでやる!』

 

 

 『うん・・・ありがとう・・・! ケイジ君がいて、ライバルで、凱旋門賞で、有馬で戦えて本当によかった・・・!』

 

 

 『ああっとオルフェーヴル。ケイジと向かい合い何やら涙を流しています! 凱旋門賞で勝てなかった借りを返せた故の嬉し涙か! それともライバルとターフでの最後の戦いを惜しんでいるのか。大粒の涙がこぼれます』

 

 

 ははは、やっぱりオルフェーヴルは優しいね。こんなに思ってくれるんなら俺も背負う甲斐がある。俺たちが来る前より欧州で日本の強さを見せつけ続けた先輩にして切り込み隊長。あんたと一緒に戦えてよかったよ。

 

 

 『ならさ・・・その思いを受け取るために。バトンタッチをしようぜ。俺ら手がつかえないから首でポンポンとな?』

 

 

 『バトンタッチ・・・? ☆君といい、色々何か出てくるねえケイジ君』

 

 

 『わははは。まあな~♪ バトンタッチはな、人がしている。誰かへ自分の想いや、夢、いろんなものを託すときにするものなんだ。オルフェ、あんたの想いは俺が背負うから、それをしっかり受け取らせてくれ』

 

 

 『うん・・・こう? おお・・・ケイジ君、改めてでかい』

 

 

 互いに歩み寄って、俺とオルフェでは身長差がやばいので少し俺が首を下げて首をポンポン。よしよし、これで確かに思いを受け取ったぜ。バトンタッチだ。

 

 

 『オルフェーヴルとケイジ、三冠馬同士によるハグ。昨年の有馬記念でのゴールドシップとしたようなことをまたしております。偉大な先輩へ対する敬意か、スポーツマンシップでしょうか。同じ時代に三頭三冠馬が存在するという前代未聞の日本競馬の一角オルフェーヴルとケイジ。その一頭の最後の戦いに、王の退陣に傾奇者からの激励を送られているようです』

 

 

 『じゃあな、偉大な王者オルフェーヴル。閃光の末脚エイシンフラッシュ。その強さはずっと語り継がれていく。そして、子供たちが必ずその強さを引き継いでくれるはずさ』

 

 

 敗者はこれ以上この場にいるべきじゃねえやとその後はゆったり移動。今度は有馬取りたいなあ。




 王から王への意志の継承。次の時代へと確かに託してオルフェは引退。エイシンフラッシュも史実より長く走って、賞金を持って無事に引退。


 ケイジ 今回も有馬記念は取れず。だけど大きなものを貰えたので収穫はあり。でもとりあえず例年通り有馬を終えたので放牧のために牧場へ帰省。


 スーザンママ なんやかんや超がつくほどの大物なのでいろいろとアドバイザーとして有能。利褌の考えているプランにも一枚かんでいる。


 利褌 あるプランを練っている。ついでにケイジの種牡馬プランがケイジのせいでまさかの爆上げに驚くと同時に値下げしておきたいオーナーと値上げしなさいよと催促する周辺という変な事態に。ケイジの種牡馬としては当初5歳くらいまでは知らせて1~2つ重賞取れればそこから50~100万くらいでキングヘイロー的なプランで行くつもりだったそうで。


 蓮君 ケイジの戦い方を親から聞き、そして久保さんから借りていた某野球漫画で影響を受けて更に魔改造と変態型への道を進む。成長が早すぎてお気に入りの靴とかシャツ、ズボンが着れなくなって地味に悲しい。クラスでもモテモテ。


 オルフェーヴル ケイジにバトンを託して引退。多分種牡馬としての価値がこの一戦でさらに上がる。でもなんやかんや静養牧場の一面を持っている前田牧場にも顔を出すのでなんやかんやケイジと出会う機会多数。


 エイシンフラッシュ 怪我がなかったので史実より一戦長く戦い掲示板入りして引退。種牡馬としての勝ちも上がってくれると幸い。


 次回こそウマ娘回に行ければと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。