ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

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 いつも感想、誤字報告。高評価ありがとうございます。

 何年振りかのゲーム機ポケモン楽しい。いつかブイズパでバトルタワー制覇したいです。


 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ 休みの日はたまに、寮、ケイジの実家の縁側でケイジの太ももを枕にゴルシ、胸やお腹を枕にジャスタウェイが三人仲良く寝る姿が見られる。


ケイジ世代らのトレセン学園トレーナー評価:どうしようもない怪物をどうしようもない怪物がやっつける。喰らい合う世代。芝はケイジ、ダートはホッコータルマエが頭一つ抜けているがそれ以外でも怪物多数。


ウマ娘エピソード 8 フラッシュの災難

 「ふぅ・・・天気予報通りで助かりました」

 

 

 早朝のランニングを予定通り、時間通りにこなす。毎朝の日課であり、私の一日のルーティーン、予定を組み立てる時間だ。

 

 

 何事も予定通りに最善を尽くしてこなしていく。これが私の信条だし、それが一番いいのだ。予定を組み立て、秒刻みの予定を決めれば時間を無駄なく使える。わずかなロスがあとに響くのは生活でもレースでも同じ。それを削る習慣と立ち回りを覚えればどちらにも必ずいい成果が出てくる。

 

 

 「朝が早くなってきてだんだん温かくなる感触も気持ちがいいですし」

 

 

 ただ、そのルーティーン。鍛えつつ予定を確認、組み立てる時間というのを差し引いても朝日が昇りだんだんと明るく、温かくなる時間はやはりいいもの。走る前の、頭も体も動き切っていない私が今こうして心身あったまり一日を始めるためのスイッチが入る。それを太陽も同じように感じられ・・・・

 

 

 「・・・? 何の音でしょう?」

 

 

 静かな朝の時間。そこに混じる不釣り合いなほどの大きな音と怒声と悲鳴。後ろの方から聞こえてくるのだが、気になってくるりと振り向けば、そこには逃げる車と原付。大きな砂煙を上げて後ろから猛追してくる警察官と、日本、いや世界でもスポーツ選手以外ではちょっと見ないほどの長身を持つウマ娘。その後ろにさらに一名のウマ娘。

 

 

 「待ちやがれこの空き巣にひったくり野郎!! わしとケイジの前で逃げられると思うなよ!!」

 

 

 「ここ最近、朝の散歩をしてる爺さん婆さんたちの財布を狙ってる連続犯はおめえだな!? アタシの目が届く場所でふてえ野郎だ! しょっ引いてやる!!」

 

 

 「「ひぇええ~~!!! た、助けてくれー!!」」

 

 

 「な、なんで私まで―!!?」

 

 

 「え? え・・? え・・・!?」

 

 

 何やらがっちりした体系の超ふと眉の警察官が自転車で、そして、日本の誇り、新時代を蹴り開いた千両役者。ターフの傾奇者ことケイジ。ジェンティルドンナに届かないが、それ以外のメンバーを圧倒する。間違いなく怪物の一人ヴィルシーナが爆走して何やら犯人? らしき男たちを追いかけている。

 

 

 予想外。予定外もいい所の光景と、自分に向かってこの集団が来るということに頭の理解が追い付かずに立ち止まってしまう。

 

 

 「あ!? フラッシュちゃん! 何かそこのひったくり野郎から逃げてくれ! 危ねえぞ!!」

 

 

 「は、はいいいー!!」

 

 

 「ケイジ! わしが空き巣野郎を捕まえる! 後は応援を呼んでいるからトレセン学園に戻れ!」

 

 

 「ここまできて戻れるかい! ヴィルシーナ。アタシがひったくり犯捕まえるからワッパ・・・は持ってねえから、捕まえた後にジャージ、もしくは靴紐で縛るの手伝って! こんな用意周到な奴ら万が一でも逃がしたら後味悪いんだよぉ!!」

 

 

 「わ、分かったけど・・・! も、限界近いですから早くですよケイジ!」

 

 

 「そういうわけだ両さん! 後で感謝状と、ヴィルシーナには金一封でも渡してやんな!」

 

 

 「分かったよ! そんじゃあ」

 

 

 「「待ちやがれこの外道どもが!!」」

 

 

 「「いやぁあああ~~~~~!!!?」」

 

 

 あっという間に自分の横を通過して怒声と悲鳴が遠ざかる。しばらくして車のブレーキ音と何やらガラスが割れる音。ネコの悲鳴に何かが倒れてゴミ袋に何かが突っ込んだ音が響き、更にもう少ししてから聞こえるパトカーのサイレンの音。

 

 

 一瞬だけども濃厚な出来事に思わず立ち止まり、しばらくしてようやく再起動。

 

 

 「・・・・もうこんな時間!? い、急がないと!」

 

 

 持っていた時計の時間を見ると大幅に予定より遅れているのに気づいた私はこの後に急いで寮に戻るも、予定時間より遅れた時間にしか着けなかった。

 

 

 一日の流れが崩れた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 「はあぁー・・・憂鬱です。億劫です・・・」

 

 

 あの朝の騒ぎ、もとい台風一過ともいえるような出来事に一瞬巻き込まれたせいで一日の予定が崩れ、気持ちが落ちたままどうにか時間を取り戻そうと頑張っているが、やはり気持ちは戻りにくい。

 

 

 今日が心底休みの日でよかったと思う。授業なんて今日は手につかないし、トレーニングも軽く済ませるスケジュールの日。これなら今日の夕方には再起動できるだろう。

 

 

 「うあぁ・・・つ、疲れた。あ。エイシンフラッシュさん。向かい失礼します」

 

 

 「あ、ヴィルシーナさん。ええ、どうぞどうぞ。ところで、朝の騒ぎは大丈夫でした?」

 

 

 もそもそと食事をとっていたら向かいに少し疲れた顔。風呂上がりすぐなのだろう、上気した肌で少し疲れた顔をしたヴィルシーナさんが腰かけてきた。

 

 

 食堂でニュースを見ながら過ごすために多めの時間を取っていたのが幸い。軽く談笑くらいは出来るし、朝の一件について聞くのもいいかもしれない。

 

 

 「ええ。無事に犯人も捕まえまして。ケイジの知り合いの警察官さんがオフの日に偶然出くわして、三人で朝のジョギングからウォーキングに変えてここ周辺での空き巣や、ひったくり犯の話をしていたらちょうどケイジが空き巣を。両さんがひったくり犯を見つけてそのまま追いかけていたんです」

 

 

 「それはまた・・・でも、片方は車でしたよね?」

 

 

 「なんでも逃走用のためのものだったそうで。かなりの距離を移動して範囲を絞らせないためだとかなんとか」

 

 

 なるほど。そういえばトレーナーさんもここ最近ひったくりが増えているから行動する際は気をつけろと言っていたし、ニュースでも空き巣が増えているという話があったのをぼんやりと覚えている。その犯人らが朝のあの車や原付で逃げていたやつらだったと。

 

 

 「はぁー・・・あー朝のいい運動だったぜー・・・お、フラッシュ。怪我無ねえか? それとヴィルシーナ、お手柄だな」

 

 

 思わぬところで変なことが起こるものだと思っていたらその犯人を見つけて捕まえたケイジがウマ娘基準でも、いや彼女の身体にはちょうどいいのか?な量の食事を机に並べながらいつも通り快活な笑みを浮かべている。

 

 

 向かいで疲れた顔をしているヴィルシーナさんと比べて何でもないようにけろりとしているケイジさんを見ると、なるほどステイヤーとしても高レベルだというのがよくわかる。文字通り心臓の強さと体力が段違いなのだろう。

 

 

 おそらく犯人を捕まえるために主立って立ち回ったのもケイジさんだろうに。その疲れなどがまるで感じられない。

 

 

 「おはようございますケイジさん。私は問題ありません・・・そちらこそ、怪我の方は?」

 

 

 「お疲れ様ケイジ。私はせいぜい犯人の手足を縛って、盗んでいた財布やバッグを警察の皆に渡したくらいよ。お手柄はケイジの方じゃない。というか、貴方感謝状いらないと私がもらってすぐ出ていったし」

 

 

 「ケガはないなあ。ま、あんな老人狙いの下種野郎相手に負けるほどなまっちゃいねえ。そしてヴィルシーナも謙遜するなって。実際大助かりだったんだからな。もらった金一封でおめかししちまいな。あー・・・うまい。今日の野菜もいい味している。味噌汁も油揚げがうまいうまい」

 

 

 目の前でバクバクと美味しそうに食事をかき込みながら楽しそうに話すケイジさんを見ていると此方も元気が出てくる。豪快なのに周りにご飯粒や食べかすを飛ばさない。要所要所に見える所作がまた美しい。

 

 

 名家であり常に一流であることを自負するキングヘイローさんもまた普段の振る舞いが洗練されているのがわかるが、ケイジさん。そしてその実家である前田家の教育が届いているのだろう。真面目に普段の振る舞いを見てどうやって教えたのかは分からないけども。

 

 

 「おお、ケイジ君。ここにいたのか。相変わらずいい食べっぷりだ」

 

 

 「んぐ・・・んー・・・納豆、青じそいれるか。香りがいいなあ~・・・あ? 大原部長じゃん。お疲れ様です。どったの?」

 

 

 「いやいや・・・君、感謝状授与もその場でめんどくさいとバックレて、金一封も募金しておけと押し付けていったじゃないか。流石にそれは駄目だということで渡しに来たんだ。ほら、学園の立ち入り許可証」

 

 

 「だってもう何枚目かわからんし。それにアタシはレースの賞金、ショーやライブ、海外でもあれこれ依頼でも稼いでいるんだ。被災地で物資の資金にでも使ったほうが有意義だっての。部長らの派出所とは管轄外なのに部長らが来るんだねえ」

 

 

 「逮捕したのが君と両津だからな。それに、君への感謝状を渡すとなって府中管轄の警察官が我も我もとなって収拾がつかなくなって顔見知りかつ両津の上司の私になったんだよ」

 

 

 目の前にやってきたちょび髭が特徴の中年男性。部長というからにはそれなりの地位の方だろうか。その方が困ったように頭を搔きながらカバンに下げている感謝状が入っているであろう筒を渡そうとするがケイジさんもいらねえよと突っぱねる。

 

 

 警察官ともこうも親しい話をしているのに同じチーム所属のヴィルシーナさんがいつも通りだなあという風に食事を勧めるあたりケイジさんの人脈が気になるが、私も食事を勧めないと時間をオーバーしそうなので急いで食べていく。

 

 

 「ったくーなら、メンドクサイあれこれ無しでもらうよ? もう警察署でいちいち貰うのも手間だし」

 

 

 「もう署内の皆と顔見知りだからねえ。いやはや、町の平和のためにいつもありがとう。私達もより頑張るべきだと身が引き締まる。しかし・・・うーん。やはりここはすごいねえ。私のような老人でも知っているアイドル、もといウマ娘たちがたくさんだ」

 

 

 「まあな。ほれ、ヴィルシーナにエイシンフラッシュもいるぜ? 後でサインでも貰っておこうかあ? 渡すついでに土産もって出向くぜ」

 

 

 「おお、是非是非。エイシンフラッシュ君のあのダービー、天皇賞での振る舞い、レースは痺れたし、ヴィルシーナ君もエリザベス女王杯とヴィクトリアマイルの強さにまさしく天才でかっこよかった・・・」

 

 

 「え、えへへ。感謝します大原部長。なら、後で書かせてもらいますね?」

 

 

 「ありがとうございます。ですがスケジュールがありますし、明日以降で宜しいですか?」

 

 

 まさかの私のファンということに内心嬉しくなり、同時にお客様だ。にっこりと笑顔で対応する。私たちウマ娘はアスリートでありアイドル。学園内にマスコミも来ることは少なくない。いつだってしっかりと気を引き締めておくべきだ。

 

 

 大原部長さんもそれを聞いて優しい、好々爺というべき笑顔を向けてくれた。遅くなることは悪いのだが、その分良いものを渡せれば。

 

 

 「でーアタシは今日オフだけど、何か相談あるんじゃないのー? 顔に出ているぞ?」

 

 

 「む、わかるかね。いや・・・実はねえ。孫の趣味、というかブームのゲームについて是非教えてもらいたいんだよ」

 

 

 「ほうほう。ああーこれかあ。いいよ。これだとジャスタウェイとナギコもいたほうがいいな。呼んでくるし、せっかくだ。部長さんも飯食っていけ。ここの飯はうんめーぞ~?」

 

 

 自分の分の食事を食べ終え、ナギコさんたちのいる方に手を振って歩いていくケイジさんを見送りつつ、私は食べ終わった食器を整理し、大原部長さんとヴィルシーナさんに頭を下げて食器の返却場所に行く。

 

 

 朝の予定から躓いたが、ファンの笑顔と、ケイジさんらに元気を貰えたし、うん。頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「というわけだ、フラッシュ。これから数日だが、チームシリウスと合同練習を組むこととする」

 

 

 「おっ、了解だ」

 

 

 「そして、葛城さんからも了解をもらってフラッシュの練習相手にはケイジとヴィルシーナがついてくれる。最強世代の二人だ。大いに学んでくるといい」

 

 

 「あの・・・話が読めないのですが・・・?」

 

 

 あれから数日後。私の専属のトレーナーさんから言われたとおりの場所に来るとそこにはシリウスメンバーが勢ぞろい。ここだけで三冠ウマ娘が何名いるかと言いたいほどのメンバーのうち最強格とその最強に食らいつける怪物をつけてくれる。

 

 

 嬉しいのだが、急すぎて少し目が回りそうになってしまう。

 

 

 「フラッシュ。レースでお前の堅実、確実な勝利のための最高のプランニングを組むのはいい。だが、それを崩される、狂った時の調整が利かないのが君の悪い所だ。君がレースごとに相手を研究するのなら、当然あちらもしてくる。その上で、一度歯車を狂わされてしまえばそれで終わってしまう脆さは間違いなく今後響く。

 

 

 なので、世界中、日本中でも常に最高レベルのレース。相手とやり合っているシリウスと練習して一皮むけるように頑張ろうとな?」

 

 

 「え・・・で、ですが完璧なプランと調整さえすれば・・・」

 

 

 「そういうプランですらねじ伏せる。シンプルな強さで叩きのめすウマ娘がいるのがこの世界だ。せめてサブプランを作る。それくらいは考えたほうがいい。・・・荒療治なのは重々承知。だが、間違いなくいい経験だ。時間はしっかり守るから、頑張ってきなさい」

 

 

 これを言われると返す言葉がない。実際に私の戦績も決して無敗とは言えない。いや、負けもかなりある。それに予定が狂って負けることも、狂った際にすぐに何をすればいいかがわからずに仕掛けどころを間違って負けるのもあった。

 

 

 日本国内で専念してもこれだ。それと比べると海外で戦い続けることもある、芝質もコースの特徴も、何もかもが違う場所を飛び回っているシリウスメンバーから何か学んでくるというのも、呑み込むほかないだろう。誇り高い戦いを。勝利を手にするためには。

 

 

 「・・・分かりました。ではケイジさん、ヴィルシーナさん。改めてシリウスの皆さんよろしくお願いします」

 

 

 「おう。ま、固くならずにな? アスリートも女の子も柔らかい体と心構えが必要よ」

 

 

 「こら。まあ、そういうわけです。此方こそよろしくお願いします」

 

 

 どうにか気持ちを切り替えて、今日の練習を確かな糧にできるよう頑張らなければいけない。間違いなく世界レベルの怪物たちが力を貸してくれるのだ。ものにしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・な、なんですかこれ・・・ま、まるで分からない・・・」

 

 

 そうして始まった模擬レース。軽い流しの結果から言えば、私は惨敗した。しかもただ着差をつけられただけじゃない。完全にこちらのレースを壊した上での勝利。

 

 

 「幻惑型の逃げに嵌りに嵌まったからなあ。アタシの背中にこの距離でつけてこのコーナーでって仕掛けようとしていたのもすぐに分かったから足を残さないように磨り潰した。最初の大逃げからの変化で体内時計も狂ったろ」

 

 

 「あの逃げは真面目に気ままに好き放題しながら楽しめるゴルシや、ジェンティルくらいじゃないと。対応できるのは初見ではルドルフ会長、マルゼンスキーさん、ブライアンさんくらいですしねえ。もう、私も気付かなかったら後の体力残っていませんでしたよ」

 

 

 「だ、だからなんですね……気づかないうちに私は加速を速めすぎて、第三、四コーナーでさらに身体に消耗を強いての最後はガス欠と……」

 

 

 全く分からなかった。最初で一気に飛ばされ、そこから追いついていけたと思い、最後に末脚を使って抜けるポジションを維持していたはずが、それさえも掌のうち。

 

 

 セイウンスカイさんの使っていたあの逃げをケイジさんの場合は普段の大逃げで逃げ切ってしまう脚、尽きないスタミナ故に追いつこうとしていくのを餌にして使用した。本番のレースでは1000メートル通過の時点で実況がタイムをアナウンスするからそれを聞ければまだ対処が・・・・いや、そこで調子を狂わされているとわかった時点でむしろ早く調子が壊れていた。

 

 

 分からなかったからこそ最後までどうにか粘れたというべきか。

 

 

 「そ、早めに気付いたヴィルシーナは抑えつつ外に膨らんだフラッシュちゃんの内を突いて食らいつけた。もう少しアタシに食らいつくんだったらヴィルシーナの様子を見て気付いてプランを変える。もう一つの武器、備えを持っておくべきだったろうな」

 

 

 「実際、エルコンドルパサーも凱旋門賞では普段あまり使わない逃げをもって周りの意表をついて戦いましたし。備えあれば患いなし。フラッシュほどの実力と才能、プランニング能力があるウマ娘なら手札を多く用意するのはいいと思います」

 

 

 「な・・・なるほど・・・」

 

 

 「ただ極端な戦法変更は難しいから、フラッシュの脚質に合わせつつ出来るやつを考えようか。勝負において戦法や作戦を変えるのは誇りを捨てることでも、間違いでもねえ。手札にあるカードの切るものを変えるだけさ。いつもこの手札だと思っているやつらの度肝抜いて、話題も勝利もかっさらおうぜ♪」

 

 

 「大逃げ、逃げ、先行、差し、追い込み。あらゆる戦いが出来るメンバーが揃っていますし、頑張りましょう。私も微力ながら力になりますよ」

 

 

 「分かりました・・・やります。お願いします!」

 

 

 ただ、ここで終わるわけにはいかない。トレーナーさんのくれた機会を無駄には出来ないし。なにより常にシリウスメンバーは誰かが海外遠征をするのと練習をしたいという申し込みも常に多くあって数日間の時間を取るのも一苦労。

 

 

 その中で手にできた時間を、トレーナーさんの好意を無駄には出来ないと気合を入れる。今ある武器を増やし、そのどれもを最高峰に・・・!

 

 

 

 こうして始まった練習は、どれもこれもが新鮮で、経験のないものばかりだった。力石を使った鍛錬に、走りながら後ろから聞こえる音を聞き取る練習。そして、途中途中で変更を加えたりなどで自由にしつつも強い皆。

 

 

 一つの武器を持ちつつもサブがあったほうがいい。いや、まんべんなく強い方が。でも、みんな強みはあるし、あれ? 私はどれを武器に。いや、この戦法も魅力的だし。でも、私の脚質は・・・うーん・・・・うーん・・・・これ、どうしたら・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 「よし。確か時間はこのくらいだったか・・・」

 

 

 どうにかこうにか手にできたシリウスとの合同練習の予約にエイシンフラッシュを入れての練習。秒刻みの予定を組み立て、レースに関してもプランを意地でもやろうとする。確実第一と言えば聞こえばいいが、見方を変えれば不器用。しかもそれに囚われ過ぎてしまうのが短所でもあった彼女。

 

 

 複数のプランを持たせ、ある程度の柔軟性を持って戦えるようにすればどうすればいいかと考えた結果、経験豊富かつ、怪物が多数いるシリウスで一度揉まれてサブプランを練る。対応策を用意することの大事さを学んでほしいと思っての強硬策だった。

 

 

 ただ、クレームやすぐに助けてほしいというメールや連絡もなく、数日が過ぎた。エイシンフラッシュをシリウスに預けることにした作戦はどうにか功を奏したのだろうか。どのように彼女は成長したのか。トレーナーとしても気になってしょうがない。

 

 

 「あ、トレーナーさーん。お疲れ様です」

 

 

 「ああ、フラッシュお疲れ。時間には間に合ったし、どうだった?」

 

 

 「大変ためになりましたよ。いやはや、世界の大舞台で勝てる皆さんはやはり柔軟なんですね」

 

 

 にっこりと笑顔で微笑んでくれるフラッシュの顔に疲労の色は強く出ていない。どうやら成功したようだ。

 

 

 「それなら、予定に組んでいた軽い練習から、今日は早めに休もうか。疲労抜きは大事だしな」

 

 

 「ならすぐに休みましょう? 予定変更も大事ですし、ケイジさんも疲労抜きは重視していましたし」

 

 

 「む? そうか? しかし・・・意外だな。時間を秒刻みで以前は決めていたのに。まさかの時短でもなく休みとは・・・」

 

 

 「ふふふ。だって、今は休みたい気分ですし、適当でいいんですよ。気を抜くときはとことんとー」

 

 

 ・・・・・いくらなんでも緩すぎないか? ニコニコ笑う仕草は変わらないし、空気も変わらないが、まさかの提案にこちらが驚いてしまう。いや、驚きで忘れたが言葉遣いも少し変わっている・・・?

 

 

 「いやあ、ほんと、滅茶苦茶な鍛錬や放課後も練習終わりもしっちゃかめっちゃか。食事はしっかりしていますがほんと騒ぎばかりで、テキトーな部分ありありであの強さ。強い人は無理せずとも強いですし、私も適当に、緩ーくやります♪ ささ、トレーナーさんも一緒に。美味しいパフェ食べ放題で話しましょう?」

 

 

 「・・・・・・・ケイジ―!! シリウスのみなさーん!! フラッシュを元に戻してぇえええ!!?」

 

 

 「どうしたんです? まあまあ、焦らずに緩く緩く。そのほうがいい作戦も思いつくかもですし、栄養補給ですよー」

 

 

 この後、どうにかフラッシュをいつもよりも緩く。サブプラン、第一プランが駄目な際の次の行動を提示できるくらいには緩くしつつ出来るくらいには戻してもらえた。

 

 

 いやはや・・・荒療治が過ぎたか・・・薬のつもりがあわや毒になるところだった。どうにか劇薬の範囲にとどめられた・・・よな? 




 真面目にあらゆる戦いでしっかり100%の力を出してくるケイジはフラッシュ心底相手しづらいだろうなあと。しかし、練習通り、予定通りのことをやり切ろうとする真面目さって競走馬のウオッカに近いんですねえ。エイシンフラッシュ。ウオッカもアニメで作戦をよく気にするシーンがありましたが、そこも恐らく史実準拠でしょうし。


 ケイジ よく犯人を両さんたちと捕まえているせいで自室は感謝状まみれ。金一封は半分は自分の小遣いで残りは家族や周辺のお土産、ゴルシとの屋台での資金。若しくは募金に回す。世界中でトークショーゲスト。マジックや歌の依頼が来るのもあってシリウスメンバーと世界中飛び回っている。


 ヴィルシーナ この世界ではケイジと長い付き合いのせいでさらに強化。ちょこちょこケイジとこち亀騒ぎに巻き込まれる。なんやかんや気の強いジェンティルドンナに代わってまとめ役をすることもちらほら。みんなのお姉さん。


 エイシンフラッシュ セイウンスカイレベルの自由人。下手すれば高田〇次レベルのテキトーウマ娘になりかけた。騒ぎや暴走に事欠かないシリウスの空気や練習が刺激的過ぎた様子。
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