ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

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 三冠馬のなかでも最軽量級のオルフェーヴルが頑張っている時期に今度は歴代最重量級のショーグンが生まれていたり、そしてメロディレーンがいたりでここ最近の馬たちの体格差がすごい。テイオーがウマ娘になると150センチ。メロディレーンだとウマ娘になると130ちょいあればいいくらいなのでしょうかね。


 一応念のためですが主要馬以外は架空馬だったり、名前を変えていたり少しマキバオー的なノリも入れると思いますのでご了承くださいませ。


新馬戦よん

 あの東日本大震災の爪痕。その衝撃は今も尚ニュースで連日連夜報道され、久保さんや葛城のおやっさんも俺に話しかけてきている。ゴルシは無事だったようで新馬戦のために入厩準備は続行しているとか。

 

 

 東北に元気を。日本に元気をとみんながスローガンを掲げてあの目を覆いたくなるような災害の後でも立ち上がろうと気炎を吐く。この災害があっても立ち直る強さ、災害大国日本ということがあってもこの強さ、逞しさと輝きは本当にすごいの一言だ。

 

 

 ただ、やっぱりというかこの災害の影響は大きくてオルフェーヴルも挑戦するスプリングSの開催地であった中山競馬場は使用出来ずに阪神競馬場になったりと本当にドタバタしている。『俺の担当しているお前が新馬でよかったよ。レース場の調整でどこも大変そうだ』と俺に零したテキの顔でもう察した。

 

 

 「まあ・・・どうにかなってよかったよ。お前もこれで晴れてデビュー戦。阪神競馬場で芝2000メートルだ。がんばろうな」

 

 

 そして季節は2011年夏。俺らのデビュー戦である。うん。時の流れは速いなあ。すでにオルフェーヴルは二冠を手にしているのと。ゴルシも函館の方で入厩したそうだけど、なんでも『常に二足歩行を繰り返す化け物みたいな芦毛の馬が来たからみんな気をつけろ』と現場のスタッフの方に言われたそうな。

 

 

 すでにハジケリストとしての才能を開花させているとは。やるな。俺も頑張るか。

 

 

 「テキ。車の準備できましたよ」

 

 

 「おう。そんじゃ、行くかケイジ」

 

 

 「ヒン」

 

 

 『いよっし。ちゃんと身体も軽いし、うんうん。いい具合』

 

 

 そんで馬運車を運転できる久保さんの用意が出来たので一緒に移動して車に入ってとことこ。久保さんなんでも昔はトラックのドライバーとか、工事現場の作業員とかいろいろ仕事していたみたいだけどどれも合わず。ギャンブル抜きで馬が好きだったから一念発起してここに来た厩務員だとか。

 

 

 だからガタイもよければ馬運車の免許もすぐにゲッツ。趣味で漫画を描いているんだけど俺らをモデルに何か描けないかと思案中。多芸すぎませんかねえ?

 

 

 「涼しいかケイジ。暑くはないか?」

 

 

 「ヒィン。ひん」

 

 

 馬運車ってのは俺達馬を運ぶための車で、最近のだとクーラーも付いていてほんと快適。とはいえ狭い場所に馬を入れて運ぶし車酔いとかもあったりで馬にとっては慣れないと辛い。前の時代だとエアコンもないから扇風機で誤魔化したりしたそうだけど基本寒冷地域育ち、狭い場所はストレス感じる馬にはほんと辛いようで。

 

 

 そこらへん俺は人の時代から車酔いはしなかったしエアコンもまた運転席の方を開けてそっちの風も入るので快適だのなんだの。ゆっくり車の床で寝そべって仮眠をとることに。

 

 

 「寝ているようだぞ久保」

 

 

 「大物ですねえ。デビュー戦だってのに」

 

 

 「傾奇者にとっちゃ初陣も楽しむ場所でしかねえのかもなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。降りろーついたぞ」

 

 

 あいよテキ。あー車の旅も心地よかったわ。程よく揺られてエアコンの涼しい風が最高よ。え? ならはかた号に乗れって? この歳でおじさんになっちゃうのはちょっと・・・お尻の肉取れちゃう夢は見たくないよ。

 

 

 「お久しぶりです葛城さん、久保さん。そしてケイジ」

 

 

 「お久しぶりです前田さん。友蔵さん」

 

 

 降りて俺たちを出迎えてくれたのは一口馬主代表。俺の生まれの牧場主の前田さんことおやっさん。そんでトモゾウ。わざわざ阪神まで来て俺の初陣を見に来てくれたようだ。そういやトモゾウも俺の馬主になるために貯金一部使ってまでおやっさんと同じ代表馬主になれるくらい突っ込んだんだっけ。

 

 

 一口馬主さんにゃ俺がレースに出るたびに出走手当と手にした報奨金のうち何割かが来る。で、更に言えばテキや久保さんにもそっからボーナスというかお給料が来たりする。そんな色々背負っている馬。もとい俺の初戦だ。応援と期待を乗せてきたんだろう。

 

 

 任せてくれい。今からデビューの若造だがやれるだけやってきて必ず懐潤わせてやるからよ。

 

 

 とりあえず久しぶりに会えた故郷の皆に頭を下げて笑うとおやっさんもトモゾウも笑ってくれた。

 

 

 「旅疲れはなさそうですね」

 

 

 「この通り元気そうですよ。それに状態もいい」

 

 

 「ヒヒィン」

 

 

 「いやーでかくなったが相変わらずみたいだなお前は。頑張って来いよ。無事に走ってくれればそれでいいんだ。な?」

 

 

 首をなでなでしながら微笑んでくれるトモゾウ。わはは。ありがとよ。でもまあ、種牡馬として・・・おっき出来るかは不明だが色々期待されているのは知っている。それに応える義理と筋がある。だから頑張ってくるぜ。

 

 

 この後幾つか談笑を交わしてから前田のおやっさんもトモゾウも帰っていった。流石に長く牧場を空けられないらしくまた週末くらいにレース見に来るんだって。ヘルパーさんの依頼料高いもんなあ。しょうがないよね。

 

 

 で、俺の新馬戦は見習いというか卒業ほやほやの騎手が乗るとか。まあそりゃそうだわ。テイオー産駒の子たちもなんやかんやサンデー大正義の時代の中でGⅠに行けたやつらがいる。けどセン馬だったり牝馬がメインでオッスの馬は気性難だったりで大変。

 

 

 更に言えば俺の母親は地方で勝てたかどうかで更には乗馬用として過ごしていた分栄養云々の質から考えてもしっかり繁殖として飼育されている馬たちとは色々違う。そこから生まれた俺だし、競馬の時代からしてみてもディープインパクト、オルフェーヴルと軽量級の馬たちが昨今の時代を作っている中で600キロ越えの大型馬。親のテイオーは骨折しやすかったことを考えればテイオーよりもはるかに重い俺なんてすぐ骨折引退とみられている部分があるのだろう。

 

 

 育成の部分もあるが、さほど期待もされていない部分があるのも確か。乗り手が捕まらなかった部分もあるんだろうなあと。一人そう考えているとテキが優しく撫でてくれた。

 

 

 「大丈夫だケイジ。騎手はド新人だがお前を信じてくれているしお前の強さはお前を知るみんなが知っているからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「新馬戦芝2000メートル。あの大震災から早数か月の時が過ぎ、日本を元気づけようと、エネルギーを見せつけようと若き駿馬たちが揃いました」

 

 

 「騎手が、陣営が、馬がこのターフの中で全身全霊をぶつける長くも短い戦い。そこに身を投じる馬たちが来ましたが、いやはや一頭凄い子がいますねえ」

 

 

 「早速二足歩行していますが大丈夫でしょうか? ケイジ。馬体重はなんと驚異の630キロ。父親はなんとあのトウカイテイオー。帝王の子どもはどうやら傾奇者のようで」

 

 

 うまいこと言うじゃないのアナウンサーのおっちゃん。おうさ俺がテイオーの息子よ。みんなよろしくなー

 

 

 「こらっケイジ! 歩くのをやめろ! 周りの馬たちもドン引きしているじゃないか」

 

 

 えー30メートル行けたしもう少しやりたいが・・・しゃーねーか今パドックだし。よいしょっと。んーいい感じに後ろ脚がほぐれてあったまったな。さてさて。お客さんは・・・少ないねえ。やっぱブーム過ぎているのとあの地震の後だもんなあ。しょうがねえわ。

 

 

 「父ちゃん! この馬すっごく大きいし歩いていたよ!」

 

 

 「ほんとだなあ。でも、この馬はなあ・・・」

 

 

 お、親子連れか。まあ競馬ってご飯美味しかったりするから100円とか500円くらい賭けてから馬の戦いを生で見れるからなんやかんやちょっとした動物のイベントとしても見れなくはないんだよね。よろしくな~

 

 

 「頭下げて手を振ってくれたよ! じゃーねケイジ~!」

 

 

 「自由さはともかく賢い子だねえ・・・あの馬の息子らしい。うーん。ばあさん。久しぶりにちょこっとだけ賭けていいかい?」

 

 

 「ふふ。おじいさんルドルフとテイオー好きでしたものねえ。いいですよ。3000円までです。私は個人的にこの前のオルフェーヴルとゴールドシップが期待しちゃう。あの名優マックイーンの子でしょう?」

 

 

 おー老夫婦も。しかも俺の爺様と親父を生で見ていたっぽいぞこれ。あの時代ってどこのチャンネルでも名勝負は取り上げたり、女性客も競馬に多くいたっぽいしそこで恋が実ったパターンかね。馬券当てるの狙いつつ恋を的中させちゃったと。あ。スマホ向けている。はい。ポーズ!

 

 

 「ぬぉお! やめろケイジ!」

 

 

 「ビヒィ」

 

 

 『了解了解。そんじゃ行きますかね』

 

 

 無事に写真も撮ってもらえたので久保さんの所に戻ってとことこ移動。俺の行動にビビっている奴はいれどもやる気燃やすやつらは少ないねえ。むしろ除外して互いに警戒している感じだわ。

 

 

 そういえば倍率はどうなっているかなーと見れば・・・12頭中10番人気のオッズ45倍か。頑張って俺を応援してくれた人たちにボーナスをプレゼントできるようにしましょうかね。

 

 

 『さあいよいよ阪神競馬場5レース、芝2000メートル、2歳新馬戦12頭のデビュー戦はまず1番4枠のクイーンカメハメハが誘導を受けて入っていきます』

 

 

 いよいよ始まる戦いの始まり。この瞬間から俺がGⅠに進むための戦いが、駿馬たちによる戦いの旅が始まる。長いような短いような。いつ転んで終わるかもわからない戦いが。だがまあ、不安よりも昂ぶりと楽しさがずっと強い。

 

 

 馬としての生を受けてひたすらこの時のために過ごしてきたし、その価値があるほどの戦いへの挑戦の切符を求めての。己が命を輝かせて、見ている人たちに元気を与えるチャンスが来たのだ。張り切らないでどうする。気合が入らないでどうする。一生に一度の大舞台で燃えなくては勿体ない。

 

 

 『最後に12番12枠ケイジが大外枠に入り・・・・・スタートしました』

 

 

 よっしゃ! まずはこのやり方でやってやるぜ! ゴルシら相手に鍛えられた技の一つを見やがれ!

 

 

 『サウスカウボーイがまずま・・・いや! ケイジが弾丸スタートのまま前に出ました! ハナを奪いそのまま先頭第一コーナーを過ぎました』

 

 

 『2馬身、4馬身とグイグイ先へ先へと逃げていきますケイジ。掛かっているのでしょうかハイペースです。騎手も今日が初出場。掛かってしまっているであろうケイジと折り合いをつけて一息付けていくべきでしょうか』

 

 

 掛かっている? んにゃわけない。今日のコーナーは・・・っし。行けるな。それじゃ息を入れつつ・・・コーナーで加速すっか! 脚の動きをちょいと変えて体の動きも遠心力でぶれねえように・・・

 

 

 スタンドから聞こえる歓声が心地いい。勢いが落ちていないからね。第二コーナーからの長い直線でペース変えてのコーナリングで加速を決めて第三コーナーで勝負を仕掛けていく。

 

 

 『第三コーナーに入っても尚ケイジと後方の差は埋まらない! 15・・・いえ、馬身差で表すのが厳しいほど! 後方も仕掛けますがコーナーで減速をしているというのにケイジだけ足が鈍らない! 止まらない!』

 

 

 『ケイジ独走状態、一人旅で第四コーナーを一人先に過ぎて最後の直線! これが新馬なのか! 持っているエンジンが違う! 逆噴射もなしにケイジさらに伸びる伸びる!!』

 

 

 コーナーも過ぎて最後の直線に入ったから走り方を直線用にシフトチェンジ。いや、この際はギアチェンジでいいのか? それをしてから更に仕掛けていく。余力もまだあるし脚も使える。後ろの馬たちの足音が遠ざかるのが心地いい。

 

 

 『残り200メートルさらにケイジの加速は続いていく!』

 

 

 『後続馬誰も届かない! 皇帝の孫、帝王の息子が格の違いを見せつける!』

 

 

 最後はちょっと息を抜いてクールダウンしつつゴール。ふぅぃ~いい感じだったぜ。毎日頑張った成果は確かに出ているな。

 

 

 『持ったまま今ケイジがゴールイン! 勝ち時計は1分56秒ジャスト。レコードです!! 格を見せつけるがごとき大差勝ちを見せましたケイジ! 凱旋です! 競馬界の皇帝の一族、その中の傾奇者がここ阪神競馬場で一族復活の狼煙をあげました!!』

 

 

 お。レコードマジか。思った以上にこの身体のパワーと体重を乗せた加速は速度が出るっぽいな。毎日坂路と2日に一回はプール調教していたからぶっちゃけどれほどまで走れるか分からんかったし新鮮。他のやつらにドン引きされた目を向けられつつも気にしなーい気にしなーい。

 

 

 んじゃ、ずっと考えていたことをするために皆走り終わったしポコポコと移動。騎手が手綱引いてくるが我慢しろっての。振り落とすぞ?

 

 

 『おおっとケイジ。ウィニングランでもするのでしょうか? 大きな馬体がゆっくりとターフの上を歩いてスタンドのある場所の真ん中で止まりました』

 

 

 ここらへんでいいか。それじゃ。思いきり息をスゥーっと吸い込みつつ首を下げて・・・・・・

 

 

 「ビヒヒィイイィイィィ!!!!!(いぃよっっっしゃぁああああああああああ~~~~!!!)」

 

 

 初勝利じゃぁああああああ!! 見ておけよここの皆! こっからもおもしれえ戦いになれるよう頑張るからよお!!

 

 

 『ケイジが吼えた! 漢ケイジ勝鬨を! この阪神競馬場で手にした初手柄を手に遠くにいる祖父シンボリルドルフに、ミホシンザンに、父トウカイテイオーに届くよう高らかに勝鬨をあげました!! 二歳新馬戦! 早くもこの時代の最強候補にケイジ名乗りを上げたか!』

 

 

 あほか実況! 俺だけじゃねえ。最強格がたくさんいるからこの時代が面白くなるんだ。俺が挑みに行くんじゃい!! まあいいや。後はさっさと撤退じゃーい。老夫婦も親子も儲かったのなら孫と飯食いに行くなり玩具買ってやんなよ。若しくは震災募金にお財布の小銭、お釣りでも可! じゃばっははーい。

 

 

 『やることはやったとケイジが計量室へと入っていきます。やることはやった。後は悠々帰る。いやはや。今後が楽しみな一頭です』

 




 レコードを0,1秒更新。630キロの馬体でサイレンススズカやツインターボ張りの大逃げかましたら迫力ありそうですよね。


 ケイジの咆哮は勝利したら毎回します。ケイジなりのパフォーマンスです。
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