ハジケリスト世代だろ! (完結)   作:零課

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 今回は箸休め会。山無し落ち無しの話です。それでもよければどうぞ読んでくだされば幸いです。


ウマ娘エピソード 16 前田家の悩み?

 「ん・・・お疲れだね立花。そしてお帰り。ケイジは寝ているのかい?」

 

 

 「はい。大奥様。ぐっすりと。ラスベガスでのマジック、イリュージョンとライブショーは大成功。大統領をはじめとした方々との会食も終え、帰りの飛行機から時差ボケを抜くと言って眠ってそのままですね」

 

 

 夜分、丑三つ時とは言わないが、まあ日付が変わる少し前の時間。戻ってきた前田家のメイド長。の教育係をして、ケイジの専属のばあやをしている立花が戻ってきて私にそう伝える。

 

 

 娘のシンザンの付き人、護衛として鍛えてくれて私と同期からたの・・・いや、当時のあちらさんの家の貧しさゆえに私らに育ててほしいと言われ、それを感じさせずに我が娘のように育てた。それは立花の家を建て直すのを手伝い、今はうちの子会社になって成長させても変わらずに。

 

 

 執事の方も同じようなもんだ。まさか夫婦になって、互いにしわまみれになってもこうして同じ屋根の下で同じ釜の飯を食い、そしてひ孫の世話まで頼んでいるんだから人、ウマ娘の生涯は分からないものだねえ。

 

 

 「ふん。なら、明日は腹を空かせるだろうが、味の濃いものは出さずに風味の深いもので飯を出してやらないとね。刺身の方も用意すればいいか」

 

 

 「それならとっくに手配済みですわ大奥様。爺やの方も醤油は薄口のに取り換えて疲れを抜くための山芋も用意しております」

 

 

 「相変わらず手際のいい。ならとっとと休みなさい。ケイジの体力に振り回されて老骨に応えたでしょうに」

 

 

 「大奥様に鍛えられ、奥様にも鍛えられましたから問題ありません。それよりも大奥様・・・いえ、ヒサトモ様も休まれませんと。夜更かしは毒ですよ」

 

 

 飲んでいた白湯を置いて少し頬が緩む。こういう時は決まって公私のうちの私の方での頼みをすることだ。

 

 

 前田家。昔は地域の旅館だったのが今や世界でも有数の富豪、財閥に成長してからというもの、こういう時間が貴重だとこの年になっても感じれば、娘のような子から頼まれるというのは悪くない。

 

 

 「いうじゃないか。シンザンは練習嫌いで夜も出かけるで大変だったからねえ。全く、ケイジの爪の垢をタイムスリップさせて飲ませたいほどに。分かったよ。ちょうど漢方も飲み終わって眠い所だ。それに、また無駄に腹の立つ写真を燃やした分少し気が晴れた」

 

 

 「またですか・・・ケイジ様も、大奥様もお疲れ様でございます。・・・実は、今回のアメリカのショーの件でも来たものは」

 

 

 「断っておきな。明日の夜にケイジに少し聞きたいし、どうせ同じ面構えだよ」

 

 

 今やすっかりケイジを溺愛して奔放ぶりに頭を痛めるシンザンの昔の奔放ぶりを思い出していたが、その後にケイジを思い出せばちょうどあの子の問題を思い出して少しいら立つのを抑える。

 

 

 ちょうど立花も同じ問題を抱えていたのだが切って捨てる。どう私らが動こうがケイジが決めないといけない問題。ただこちらとしてもケイジが決めるよう動かないといけない問題故に少し面倒だが、進めていかないといけない。

 

 

 焼却炉に投げ込んでいたものを思い出すのを止め、明日の我がひ孫はどんな面構えで飯を楽しむかを考えることにして立花を下がらせ、私も眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もにゃ・・・・かふぇあ・・・あへ・・・ん?」

 

 

 えーと・・・アタシはアメリカでエキシビジョンマッチで一着もぎ取って、ベガスでショーをして・・・ビリーのおっちゃんと一緒に飯食って・・・あ、そうだそうだ。その後飛行機で爺やに頼んで寝たんだった。

 

 

 でも、うん。脇腹に当たる柔らかい感触は何じゃらほい?

 

 

 「すぅー・・・すー・・・お姉さま・・・・ぁ・・・♡」

 

 

 「ヒメ・・・かぁ・・・あーびっくりした」

 

 

 目を向ければヒメがいつの間にやらネグリジェ姿で抱き着いてそのまあたわわな胸を押し付けて爆睡しているでやんの。アメリカで訴訟目当ての輩が私に来たかと構えたが天井と周りの空気、さわさわと揺れる外の木々がちゃんとアタシの実家、前田家の屋敷だと理解させてくれて安堵もする。

 

 

 そして。うん。美人でいいスタイル・・・馬時代もこうして甘えてくれたのを必死に理性を抑えるのは大変だったなあ。今ももう男も女もいけちゃうクチになっちゃったから毒っちゃ毒だけど。というか現在進行形でやばい。スタイルもだけど体を押し付けて寝て、無防備だからね。うん。ヤバイヤバイ。美少女ケイジちゃんが狼になっちゃうわぁん。

 

 

 「はぁー・・・飯・・貰いに行こう。ヒメの分も。今日はアタシとヒメは休みの申請しているし」

 

 

 ヒメは欧州マイルの帰りの時差ボケ抜き、アタシは仕事なのも相まって休暇申請は出している。何やら新たにうちで預かるウマ娘たちは学校に行っているそうだが挨拶は後ででいい。預かると言っても寮で過ごすそうだし。

 

 

 「おふぁ・・・」

 

 

 「おはようございますお嬢様。ご飯をお持ちいたしましょうか?」

 

 

 「ばあや。おはよう。なら、ヒメの分もあるから私も取りに行くよ。それと、しぶーい茶を欲しいかな。眠気覚ましに」

 

 

 「ふふ。では甘いモンブランもお付けしましょう。日本のスイーツも恋しいでしょう?」

 

 

 「ナイス。なら、そっちにはアメリカのお菓子を渡すよ。凄いふわふわのマシュマロ買えたんだわ」

 

 

 「おや。では若い子たちにも配ってきましょう。私よりも甘みに飢えているでしょうから」

 

 

 二階から降りてくる前にかっぽう着姿で出てきたばあや。アタシが起きる頃合い、もしくは起こしに来てくれたんだろうね。で、まあアタシにとってはメイド長のトップ。の教育役。真面目に爺やもだが執事やメイドを顎で使える立場だってのにアタシらのために今もこうして接してくれるんだからありがてえ。

 

 

 一緒にバカもしたことは一つ二つじゃないからな♪ 何度か一緒にエアグルーヴに怒られちゃったり、愉快愉快なもう一人のばあちゃんと爺ちゃんだ。そんで、アタシが屋敷にいる時はヒメとナギコが何度も忍び込んでは添い寝して、アタシも寝ているときについつい抱き枕代わりに抱きしめちまうのでもうアタシが姫の分の飯を持っていくと言っても動じねえ。年の功もあるけどなー。アタシらが添い寝しているのもちびの時からこうしているのを見慣れているだろうし。

 

 

 とりあえず、後でアメリカ土産、大量のアタシとビリーのおっちゃんでチョイスしたお菓子とかアクセサリー、宝石とか色々配る話をしつつ、飯を取りに行く。香りがいいし、それに・・・うん。

 

 

 「香りがいい・・・風味もだけど、ふふ。濃い味でガツンと来たものばかりだからね。舌を戻すにちょうどいい」

 

 

 「大奥様がわざわざ台所に立たれまして。茶碗蒸しとお吸い物は自信作とのことですよ?」

 

 

 「ひいばあちゃんが? おいおい。いくらになるんだこの料理。未だに前田家財閥の料理人でこれを再現できるのはいない。できるのはうちのおふくろとばあちゃん、ばあやくらいだろ?」

 

 

 「それだけ、今回の帰国を喜んでいるのです。成し遂げた成果も含めて」

 

 

 「ま、あの会食は楽しかったぜ? 後で動画見せるわ」

 

 

 まったく。100歳だってのに元気なばあさんだ。大人しくうちのおふくろか按摩師に肩揉まれて好きなことしやがれってんだよ。笑いの種にチームシリウスとゴルシらでやったあの劇やらを見せるか。久しぶりに武術を披露する機会もあったしな♪

 

 

 「ふふ。楽しみにさせていただきます。ああ、それと、前田家で新たに迎え入れるお客人。お嬢様と同じく学園に通う子たちなのですが、このお二人で」

 

 

 「ふむふむ? ・・・・・・・・ブラウトにミレーネ? いや、ミレーネはドイツ屈指の製薬会社の令嬢で、ブラウトはあの欧州屈指の超名家じゃん・・・ブロワイエ、アルトリアも確か分家だったよな?」

 

 

 「ええ。だからこそ我が前田家の預かりとなったそうで、是非とも『よろしく』とのことです」

 

 

 くっそ。朝飯の楽しみが吹っ飛ぶくらいの衝撃だわ。まさかここではこういう形で出会うのかあ・・・あの二人。そしてばあやのそのニュアンス。間違いなくそういうことだよなあ。はーやめやめ。明日以降に間違いなく突撃してくるあの二人は置いておこう。この世界でも出会えるのは嬉しいが、素直に喜べんのは家柄のせいかそれとも。

 

 

 とりあえず、久しぶりの我が家での飯と、メイドや執事を順番に呼んではプレゼントを配って過ごすことに。ヒメにネックレス渡したら失神したが・・・さすがにルビーの首飾りは豪気すぎたか・・・? あたし耳飾りとおそろいのデザインにしたんだが、スーザンママに渡すべきだったかねえ。あ、派出所にも持っていかねえと。後は超神田寿司と商店街、知り合いの土方連中に・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミレーネです。ここへはスタッフとしての勉強として来ているのでレースはしませんが、よければどうぞ皆さんよろしくお願いします」

 

 

 「ブラウトでーす♪ 私もスタッフ、トレーナー志望です。うふふ。皆さんよろしくお願いしますね?」

 

 

 「大物が来ましたね・・・あのブロワイエさんの親族でしたっけ」

 

 

 今日、トレセン学園に転校生というか、留学生が来ました。スぺちゃんみたいに転校生がこのクラスに来るなんて分からないものですね。そして、そのうちの一人は私も知る欧州屈指のウマ娘の名家の令嬢ブラウトさん。

 

 

 ブロワイエさんから知っていった欧州の名家。その中でも王侯貴族との関わりも含めてかなりの歴史を持つ家の出がここに来るというのは内心ルドルフ先輩たちも相当に驚いているはず。既にファインモーション先輩もいますが、またもや欧州のすごい方が。

 

 

 先生も敬語を交えて戸惑いつつも席へと座るよう伝えて授業に。今日はケイジさんらシリウスとスピカのメンバーはゴルシさん、ジャスタさんらは休みだとか。アメリカへのショーとエキシビジョンの時差ボケ抜きと疲労抜きのために。

 

 

 できることなら土産話やドリームシアターの事も聞きたかったですが、明日以降の楽しみに取っておくとしましょう。今は授業に集中。その後でブラウトさんやミレーネさんも日本に来て日が浅いでしょうし、同じ海外から学びに来た先輩として私が助けになれれば幸い・・・ふふ。同級生で先輩って、スぺちゃんを思い出しちゃいますね。

 

 

 「・・・?」

 

 

 スマホに通知の振動? この時間に誰でしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほうほう。ケイジさんってやっぱり料理が得意なんですね? あ、それと好みの漫画とかはどんなものが。グラスワンダーさんがいて嬉しいですよ」

 

 

 「お姉さんが料理で癒したいなー♪ なんて、お姉さんを料理で癒すね。ふふ♪ イギリス料理ばかりだったでしょうしドイツ、フランスの料理を是非是非。食事の交換会なんて素敵」

 

 

 「え、ええ。あと、マンガについては基本少年漫画を好むのですが気に入れば少女漫画も結構。私も何度か屋敷にお招きされたのですが本に関しては結構幅広く読んでいますよ。にしても、まさかお二人が前田家にステイしているとは思わなかったです」

 

 

 予想外でした。まさかお二人がケイジさんの実家預かりであり、ケイジさんを気に入っている様子。私も交友がありレースで応援されたことから知っていたり、ケイジさんのコメント記事から私の事もよく知っている。授業が終わるやすぐに質問攻めにあっています。

 

 

 相当にリサーチを重ねている。やはり欧州でもあの二大レース、KGⅥ&QES、凱旋門賞の三連覇は伝説となっているのでしょう。極東の血筋、最強戦士の孫が来たと海外の新聞でも話題になっていましたし。

 

 

 「今回は欧州での調味料、香辛料、ドレッシングを持ってきていますし、是非是非、ケイジさんには味わってほしいですね。私も地元の料理を振る舞うべきでしょうか」

 

 

 黒のボブカットに赤眼のウマ娘のミレーネさん。

 

 

 「それもだし、ぜひ音楽での交流も♪ いい曲が多いし、ぜひ膝枕しながらでも。っふふふふ~♡」

 

 

 金糸の髪をセミロングまで伸ばし、蒼の瞳がまぶしいブラウトさん。対照的なのですが、スタイルはこれまた大変たわわでくびれもあるお二人の圧はすごく、私もたじたじになります。

 

 

 「あ、ああ、でしたらお二人とも。これを見ませんか? ケイジさんはたま・・・いえ、よく読めない行動をするのですが、今回も何やら大騒ぎをしたようでして」

 

 

 ただ、あの家にステイする以上は知っておくべき、いえケイジさんには関わるかそうでないかに関わらずあの奇行ぶりはこの中央トレセン学園にいる以上は知っておくべきものだ。

 

 

 レース前のパドックでの奇行なんて軽いもの。突然畑を作って割り箸を植えれば後日それが花畑になり、ホッコータルマエさんと一緒にダートの練習場を砂絵の展覧会にしたり、階段を突然木琴の音が鳴るように改造したり、某忍者漫画とゲームのように木々を飛び回っては時折カギ縄を使ってエアグルーヴさんから逃げ回る。

 

 

 北海道の雪まつりに参加したらゴ〇ラVSガ〇ラVSウル〇ラマンの氷像を短時間で作り上げてしまうなどなど、兎にも角にも奇行とイベントには事欠かないのがケイジさん。先ほどのスマホに来ていた通知の内容。その動画も見せておくのはケイジさんを知る意味ではいいサンプルになるかもしれない。

 

 

 「おお? いいのですか? ありがとうございます。って、この曲は?」

 

 

 「日本の和装。かっこいいですね。しかも、メンツもシリウスのメンバーにゴールドシップさんにジャスタウェイさん。世界でも名だたる最強世代の。あら、ケイジさん」

 

 

 私も一緒に見始めたその動画には舞台上に見事に作られた和の一室。そして天井近くの額縁には「笑(点)SHOW TEN」と見事な達筆で記されたもの。そしてあの聞きなれた大喜利のテーマ曲が流れていく。

 

 

 舞台では左からジェンティルドンナさん、ジャスタウェイさん、ヴィルシーナさん、ホッコータルマエさん、オルフェーヴルさん、ラニさん、ナギコさん、ゴールドシップさんらが座布団の上に、これまた皆個性的な和装を身に纏い扇子を持って座っている。

 

 

 その後ろから大トリといわんばかりに現れてきたケイジさんが皆の後ろから一番左端へと移動。司会の席に腰かけ、扇子を置いた次の瞬間。

 

 

 『ボッシュートになります』

 

 

 『ぬあー!!?』

 

 

 別のクイズ番組のあの音声と共に落ちていった。

 

 

 「ぶ・・・! くくく・・・!」

 

 

 流石にこれには、いや間違いなく日本でこの二つの番組を知っている人には刺さるギャグの披露に会場からは笑い声が届き、そして困惑を見せる一部を除いた舞台の皆さん。

 

 

 数秒後には何でか天井から緑の土管が出てきてあのSEと共に赤い帽子を追加したケイジさんが再登場。海外のネタを交えた大喜利大会が幕を開き、美味いことを言ったメンバー、もしくは減点として座布団を追加、あるいは取っていく役をドリームシアターが行うという。

 

 

 アメリカのネタの具合は私も分かるし、そのいじり具合も見事なもの。気が付けば私とブラウトさん、ミレーネさん以外のウマ娘の皆さんも私のスマホの前に集まっていました。

 

 

 

 「これが日本のお笑い。ふふ。よければ私にもこの動画を貰っていいですか? 元ネタの検索にも使いたいですし」

 

 

 「ああ、私も。今度はぜひ欧州のネタを交えてほしいし、日米ネタも愉快だからこその欲求がついつい♪」

 

 

 「もちろん。ケイジさんも知り合いに見せて息抜きにどうぞって書いてくれていますし、よければこのままラインの交換もしませんか? 私の所属チーム、リギルの指導方針や意見交換もそちらの目指す道にも噛み合うでしょう?」

 

 

 「みなさーん。授業始まりますよー」

 

 

 ブラウトさんたちと互いに連絡が取れるようにしていたら先生が来て授業の時間に。でも、あの動画が頭にこびりついてついつい思い出し笑いをしてしまうのは私の精神が弱いのかケイジさんたちの愉快さがずるいのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。今日もまた見合いの写真を捨てたようだね?」

 

 

 「ひいばあちゃんこそ。アメリカからそっちに来た話を断ったんだろ? まーアタシより利権目的なのが見え見えだもんなー」

 

 

 夜。久しぶりにミホシンザン母ちゃんやシンザンばあちゃん、ヒサトモひいばあちゃん、キジノヒメミコら揃っての親子(ヒメは養子)四代での晩飯の時間。利褌の親父はスピカ、カノープスのトレーナーたちに酒を奢りつつ意見交換の時間にムランルージュに行っている。確かにあっちはいい場所だけどイケメン独身男性をあのオカマバーに放り込む親父はやっぱ変人だなあ。

 

 

 で、ヒサトモばあちゃんからの話はまあ当然だがアタシの見合い話。ぼちぼち10代の半ばを越えて女ざかりの歳のアタシ。今どき許嫁とか政略結婚とかと思うかもしれないが、まあこの家のレベルになるとそういう話はどうしたって湧いてくる。

 

 

 流石にアタシの背丈や性格からしてまあそういう話を持ち掛ける男どもはアタシに恋しているというよりは金に恋していて裏で愛人囲いますって顔と空気を持っていて、少し叩けば埃が出てくるから断っているんだけどね。ただまあ、それなら諦めさせるために男捕まえて来いと前々から言われている。

 

 

 「そういうことだ。つまらん男にアタシはお前をやるつもりはない。ならお前が決めて捕まえて来ればいい。けど野郎を捕まえてこないだろう?」

 

 

 「ちょうどいいのがいねえのよ。なかなか見つからんよ」

 

 

 けどまあ、中々アタシの、ウマ娘となって早十数年。男もいける口になったがこの人はと思う人が見つからん。旦那探しは難しい。レースでは好き放題しているがそこが出来ないとは傾奇者失格かねえ?

 

 

 「あんたのハジケに合わせられる野郎がいないのもまあしょうがないさ。傾向は違うがシンザンと同レベルだからね」

 

 

 「お母さん。流石に私のレベルを超えている気も・・・」

 

 

 「牛といわれるほどの練習嫌いで夜遊びをしょっちゅう。パワーで靴も蹄鉄も練習で壊しまくって専用の蹄鉄を用意する始末。奔放、滅茶苦茶具合は似たり寄ったりだよ。で、だ。ケイジ。そんなお前だからね。もう女を捕まえてきな」

 

 

 「ぶぐふぇ!? げっごほ・・・げほ・・・はぐぉ・・鼻に味噌汁が・・・」

 

 

 「・・・・・・・・・・・・!!!!」

 

 

 まさかまさかの発言に味噌汁を吹き出しかけるアタシ。こらえたが、くっそ・・・鼻から逆流しやがった・・・! い、いだい・・・

 

 

 「おいこらひいばあちゃんにばあちゃん。母ちゃん。あんたらギャグで言っているんじゃないだろうな?」

 

 

 「冗談でそんなことは言わないわケイジ。私もお父さんも貴方が心配だし、女の子からもモテるそうじゃない? それなら同性婚でもしたほうがいいと思ったのよ。言い出しっぺはヒサトモおばあちゃんだけど」

 

 

 「今や同性婚も認められて、女同士でも子を作れる時代だ。ならあんたを身近で見て気心の知れた女、ウマ娘でも連れてきて添い遂げたほうがいいと思ってね。それに・・・実利の方でもあんたを押すのなら前田家の一人娘がジェンダーについての自由さを見せつけるというのは刺激にもなる。

 

 

 そういうカップルがホテルや旅館を利用してくれるいい宣伝にもなるだろう? まあそういうことだ。最終的にはケイジに決めてもらうが、男が見つからないならうちらは女でもいいってことよ。いい子がいたら連れてきなさい。祝福してあげる。前に来てくれたライスちゃんやグラスちゃんはどうだい?」

 

 

 「おうこら。流石にあの二人はちげえよ。はあー・・・分かった分かった。アタシが好いた男でも女でも捕まえてくるから、その際はしっかり式の手伝いしてくれよ?」

 

 

 全く。アタシがバイ寄りだってのを感じ取ったというか、そっちの方向で舵を切りやがったかコンチキショウ。いやまあーそりゃあ魅力的な子は多いよトレセン学園。でもなあー・・・んー・・・ま、ディープに今度相談するから。あっちもこういう縁談は苦労していそうだし。

 

 

 「私としてはヒメちゃんが結婚してもいいと思うのよねえ。私の孫だけど養子。6親等以上は離れている遠戚だし、気立てもいいから是非とも・・・」

 

 

 「シンザンばあちゃん!?」

 

 

 「そ、そうですか? ケイジお姉さまとケッ・・・結婚・・・・・・・・うふふふ・・・え、ええ、私も縁談の際に金銭や権利の欲まみれの殿方よりはケイジお姉さま殿なら・・・ま、まま・・・まあ・・・?」

 

 

 おうこら黒鳥。顔が真っ赤だぞ。はー・・・あー・・・こら収拾つかねえ。

 

 

 「もしくは明日顔見せに来るブラウトちゃんとミレーネちゃんよね。名家、財閥同士の関わり合いを深めるための留学だけど、凄くケイジのファンですって前から公言していたし、今日わざわざお父さんの所に来て挨拶してきたそうよ?」

 

 

 「・・・・・へぇ? ミホシンザンお母さま。その内容を是非詳しく」

 

 

 「あーあー。それは今度聞くし、婚姻の件も分かった分かった。だから飯食わせてくれ。せっかくの超神田寿司からの差し入れの寿司と吸い物だ。もっと食いてえ」

 

 

 「アタシは相手をたくさん呼んでもいいからね。子は全部面倒見るよ」

 

 

 「ひいばあちゃんはアタシを犬神佐兵衛にするつもりか? 後で軍人将棋で勝負してやる」

 

 

 「それくらいの気概を持ちなってんだ傾奇者。いいだろう。師匠の私を越えられるか勝負だよ」

 

 

 馬時代も馬時代でいろいろ血統とかそこら辺で今の親父やトモゾウ(この世界ではトレセン学園のスタッフ)やらとどうしようかって色々話を聞いていたりしていたけどここでもそうなるとはなあ。

 

 

 全く。この美味い寿司の味も薄れないように舌に意識を集中しよ。・・・お。酢の具合がいいね。

 

 

 この後ビリーのおっちゃんとかに相談したら「こればかりは仕方ないね。歪みねえ相手を見つけてきたら僕も助けるよ」としか言われず、ディープに話したら何でかジェンティルちゃんに速攻で話が飛んでいて根掘り葉掘り聞かされ、後、アタシの実家の部屋がブラウト、ミレーネ、ナギコ、ヒメらのものが増えたり添い寝されまくり、ジェンティルちゃんとヴィルシーナちゃんがよく来るようになった。

 

 

 ・・・・・・・夏は暑いんだよぉお! 後、ヒメもヒメで窒息するほどにアタシの胸にうずもれていないで離れてくれぇ! 怖いわ!!




 ケイジの立場を考えればそうなるよねっていう。自身の活動でも既に前田グループ、財閥を盛り上げている立役者の一人にして名前がすでに宣伝になるレベルの実績を作っているので。


 ケイジ 婚姻どうしよってなっている。真面目に女性をめとるとなればウマ娘にいい子が多いので悩む。シリウス&ゴルシ、ジャスタの大喜利、会食にはビリートレーナー、ファインモーション一家。アメリカ大統領、イギリス王室、アラブの王族、フランスなどの貴族の方、日本のさる御方なども来てのプライベートなもの。そこでもゴルシやラニと好き放題しまくっていてファインモーションが気苦労で寝込むほどには暴れた。


 キジノヒメミコ ケイジが学園の寮ではなく自宅に戻った際はすぐさま添い寝にしゃれ込む。婚姻の話にはいの一番に喰らい付き、化粧と美容を更に気づかい、磨くためにゴールドシチーに弟子入りした。


 ヒサトモ ケイジを一番愛して溺愛してるが気性も相まってその分激突しまくりの曾祖母。そこらの欲の皮が突っ張った野郎たちにケイジをやるよりは恋している乙女にでもやってやるという気持ち。実利の方を出したのはこういう話でもあるから断るならそれで断れという老婆心。


 シンザン どっちかといえばこっちのほうが前田慶次じゃね? ってくらい若い頃は好き放題していた。今はケイジやヒメ、ナギコ大好きなおばあちゃん。キングダムの蒙恬のじいや的なノリ。執事とメイドのトップとは竹馬の友であり助けてもらっている従者。今もケイジたちの話を聞いては一喜一憂してついついお小遣いを渡す。


 ミホシンザン 破天荒過ぎる一族の中で一番まとも・・・に見えてなんやかんや要所要所の判断はぶっ飛んでいる(ケイジ、利褌談)同性婚についても何の問題ですか? と気楽に受け入れむしろ気心の知れた子たちが義理の娘になるのならモーマンタイと太鼓判を押す始末。


 グラスワンダー まさかの転校生のメンツにびっくり。トレーナー志望、スタッフ志望とのことなので後でおハナんらにも話を通して指導方針や心がけなどなどを教えてもらえるよう頼んだりしていた。動画はショーなどしか映っていなかったのだが、後日このショーを見ていたメンバーを知って絶句。ブラウト、ミレーネとはともに海外から日本に来たということですぐに仲良くなる。


 ブラウト どう見ても艦これの愛宕。ケイジとのなれそめは欧州二冠を狙う際に出会い、サインをもらった際に一目ぼれ。曾祖母のキンチェムからこの話を聞いて一も二もなく即決。メイドでもいいので兎角ケイジとは一緒にいたい。この後ファインモーションとも出会いびっくり。


 ミレーネ どう見ても艦これの高尾。遠戚だがマンハッタンカフェとは血が繋がっている。魔女の家系なのだがその薬学で生計を立てている家系。それが代を経ていくごとに成長してドイツトップの製薬会社になり、その令嬢。前田家とは将来財閥を引っ張る者同士ということでの仲良くさせるためのものだったが予想以上にケイジを気にいるどころか惚れこむ始末。
 

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