それと感想がみなさんのおかげで600件を超えました! いやあ、ほんと訂正の報告はアッ。私だらしねえし。いやあスイマセーンとなり本当に助かりましたし、面白い感想だらけで読み返してはにやにやしております。これからもどうかよろしくお願いします。真面目に励みになっております。
今日は、少し冷えているなあ。
「どうどう。ケイジ。これくらいで一度ストップだ」
「ヒヒーン・・・むふ」
『なんでえ。これくらいまだウォームアップにすらならないぜ?』
松ちゃんも、気にしないでいいのによお。秋古馬三冠のローテは確かにきついし、俺も古馬だが衰えていないぜ? 愉快に行こうや。
「練習はしたいが、最後だからな。早歩きでもう少しじっくり温めてからやれとテキも言っていただろう?」
「む・・・・わん」
『へいへい。そういやそうだった。あーゆったりテキの所まで800メートル。ゆったりだわぁん』
そういえばそうだった。軽く流してからの後はいつものいくつかの走り方をしてからの坂路。古馬になってから兎角すごい勢いでテキのおやっさんが俺を休ませては脚を見るからなあ。大丈夫だってのに。二度目の凱旋門賞の後の筋肉痛もしっかり俺から伝えたし。どうやって? トングを使ってのジェスチャーで色々。
歩いて歩いて。そのたびに伝わる松ちゃんの感情。悲しい。こういう時間がもっと長く。と思っているなあ・・・このやろー秋古馬三冠に燃えている勢いよりもそっちを出しやがって。少し驚かせてやるか。
残り200メートル―・・・はいよー
「なっ!? うぉっ!! ケイジ! 急に立ち・・・えええ・!?!」
「ケイジー! お前、あぶ、あぶ・・・! 松風君も降りて降りて!」
二足歩行でこのままゆっくりポコポコ。どうだいテキのおやっさんに松ちゃん。これが衰えた爺の脚遣いかあ? 筋力かあ? 問題ないんだからそうしょげなさんな。別れもここで終わりじゃないんだからさあ。
そのまま前進しまーす。松ちゃん、鐙と器用に俺につかまって降りないなあ。いや、半分パニくって降りるかどうするかすら頭から抜けてない?
残り100ー・・・・50-・・・・はいついた。降りまーす。よっとこなんちゃら太郎。いやーいいなあ。こういうのも。200メートル二足で歩けたのは記録更新だな。
「け、ケイジ・・・! お前はシンザンみたいなことをこの歳でするんじゃない! き、肝が冷えたぞ・・・! ウッドチップ、特に新品を引き立てのいい日を貰えたってのに」
「ははは・・・こ、腰が・・・シンザンと一緒に散歩していた人もこんな感じだったのかな・・・ま、まったく。出会ってから常に何かの驚きと振り回すことをするなケイジは・・・どういう足腰をしているんだ?」
『お前さんら俺以上に俺の身体を知るくらいの人なのに甘いよそんなんじゃ。ははは。そりゃあ坂路に山道歩いていれば鍛えられるし、最近は余計な増量もないからいい感じなのよん』
一緒に幸太郎と練習していたのが懐かしい。夏の放牧では毎年やっていて楽しんでいたなあ。俺らを真似するシズルたちも相まって二足で歩きまくる馬と犬という変な光景が見られるようになったんだっけ。
・・・・あれ? あの牝馬シスターズの柵越えのパワー与えたのあれのせいじゃね? トモゾウそのせいで連日走り回っているそうだし。まあ、どうせ牧場の敷地からは出ていないだろうけど。賢いしあの子ら。
「はぁー変顔をしてごまかすんじゃない。全く・・・お前のふざけた練習量とそのタフさに周りの馬たちの調教の調整がスパルタになっていないかと心配する日々も終わるのがこんなに寂しくなるとは思わなかったよ。
さ、ケイジ。ここからは少し流して1000メートル走って、後半2000メートルは松風君と好きに走ってこい。加減はここからも見守るからな。・・・どうせ今の二足歩行で不安だからと止めようとすればますます暴れるだろう? 大丈夫ならやってきなさい。ただし、その後は休憩とチェックだからな」
『あいあい。じゃ、行くぜ松ちゃん。あの走り方でなー』
「よし。行ってきます。テキ。ケイジも、合図は出すからその時にだぞ?」
松ちゃんと一緒に頷いてから気持ち6割で走り出す。ウッドチップはふかふかで俺の体重でも問題なく衝撃を受け止めてくれる。いやー引き立てのダートとかこんな感じなんだろうなあ。晴れが続いた日の砂浜や欧州の芝を思い出す。
まずは900を通過して、そこからギアをあげていく。コーナーを抜け、加速。コーナーでは息を入れるもそれでも比較的早めに。
あの幻惑逃げではない俺らのいつものノリ。それをこなしていく。互いに慣れに慣れたスタイルだ。俺も松ちゃんも最高のスタイルに仕掛け、足元も不安はない。
最後は少し早すぎたかもといえるくらいのラップタイムで無事にテキのおやっさんの元に。どうよ?
「・・・・・・文句はない。むしろ、まだまだ成長を見せるつもりかお前は・・・ほれ、休んだ休んだ。特別に大量の寝藁を久保君と真由美ちゃんが用意してくれた。しばらく楽になりつつ診せなさい」
「いい仕上がりでしたし、テキ。最後はやはりあのやり方でやらせてください」
「私もそう考えていた。頼むよ松風君。まったく・・・あのテイオーの子どもでこのサイズ。誰も大差勝ちを見ても乗りたがらない、乗らないほうがいいと言われていたケイジが、最早世界最強とはなあ・・・松風君もケイジ以外でGⅠ、GⅡを手にできるほどのジョッキーになった・・・・・大竹騎手の言った言葉は本当だった・・・な・・・・・・・・・・・運命か。これも」
そういやそうだった。俺、小柄なテイオーから生まれた650キロ台の超大型馬だもんね。いやー足元不安に骨折しまくりだったテイオーの子どもな俺だからなあ。松ちゃん来るまで梅沢君も周りに押されて俺に乗るチャンスを潰されていたとからしいし。なはは! 分からんもんだろうな世間は。
「ケイジは、ええ。大竹騎手にとってのスーパークリーク・・・いえ、それにサイレンススズカにスペシャルウィーク、ディープインパクトを足して割らないくらいですよ。今後どれだけ戦い続けても僕は必ずケイジとの日々を忘れません」
ははは。いうねえ。嬉しくなるよ。あのメンツと並ぶたあ。ただ、それはテレビで言いな。今は有馬を勝ちにいこうぜ? そのためにもほれほれ。思い出話以外にもあるだろぉん?
「うぉっと。ケイジ。小突くな小突くな。わかっているよ・・・今回は、油断できない逃げの名馬に逃げの名手・・・いや、日本最強のジョッキーが組んで、ベテランジョッキーと追い込みの天才のコンビが再注目・・・かといって中途半端な場所は出来ない。大変だ」
分かっているじゃん。
『超スタミナ型の逃げ馬。高速戦車キタサンブラック。そして黄金の不沈艦ゴールドシップ。どちらも規格外のスタミナを武器に逃げやら追い込みでぶっ飛んでくる。俺らも変な札きれんぞ』
まったく。キタちゃんの場合俺が仕込んだせいもあるけど気性もかなりいいから俺がハナを奪っても耐えつつ隙をついてサンデー譲りの瞬発力で抜いてからあのスタミナでひっかきまわすのもできるからなあ。逃げ馬の対策が通じないって反則だろ。
「だからこそ、ケイジ。僕は君と一番の札を切るだけ。それだけを考えて・・・・うん・・・必ず最高の一手を持っていくよ。だから安心してくれ。ケイジ。君の信じた相棒は。僕は分かっているよ。君の言いたいこと」
「・・・・・ヒィーン」
『ならよし。んじゃ、少し水を貰うわ。はー・・・冬は程よいぬるい水が心地いいわ』
真面目に、俺を知り尽くした、デビュー前からのマブダチで名馬に弟子でありこれまた逃げの天才に天才がついているんだ。ほんと気が抜けねえ。幻惑逃げでつぶせるほどのスタミナじゃないし。
親子三代有馬記念がかかっているってのに、ラストチャンスだってのにいつだって阻む相手は三冠馬レベルに時代の頂点が立ちはだかる。ハードモードだよなあ。だからこそ燃えるけどよ。最後の最後のチャンス。命を燃やす勢いで行かねえと。
「ケイジ・・・いつだって君のその度胸とおおらかさ、愉快さに助けられた。だから。その集大成は必ず見せていく。鞭もいらない。君と、世界最強にふさわしいフィナーレを飾りに行こう」
「ああ、傾奇者にしみったれた空気は似合わない。その相棒も、素晴らしい男に育ったものだなあ・・・・君たちは私にとっては弟や戦友、あるいは実の子供みたいなものだ。だからこそ。遠慮なく、好きに戦って来なさい。仕上がりは、私が保証するよ」
「ははは。そうなると僕前田牧場さんも含めて親が何人もいますね」
「いいものだろう? お年玉やろうか?」
『え? マジでー? それなら俺も』
「ケイジには引退後にいいものあげるから」
『やったぜ』
「涎垂れているよケイジ。ふふ。元気出た。よし。後はブラッシングしようか」
「ぶほほほ。もう最高の仕上がりねケイジちゃん。今までで一番決まっているわ。びしっとバシッときっちりと♡ あ~んもう、スーザンメロメロよぉん♡」
『騙馬の子らみたいな反応返すんじゃねーやい。待ったくモォーン。俺の馬主は変人だぜぃ』
「スーザンさんがそういうのも分かるよ。ケイジ。毛の艶と筋肉がすごいもん」
「写真集新刊出るそうですしねえ。あれ? そういえば阿部さんは?」
「あの人はヒメちゃんの馬房に行ったわ。馬主だってわかってから仕事がすごく儲かっているらしくて。写真も欲しいし、労いにって人参を山ほど持っていったのがすごかったわよー?」
無敗のGⅠ5連勝だもんなあ。しかもほぼ全部マイル。確か、後はいくつかのアジアマイルをめぐってからの引退で行こうって話だっけ。的矢さん。海外の方で調教師としての評価が日本と真逆になりそうだあ。まあ、シズルらがまた活躍すれば変わるかもだけど。
あ、ちなみに今はスーザンママ、蓮君、久保さんと俺で駄弁っている。レースの数日前ってことで調整のみの分時間があるからみんなで会いに来たんだってさ。真由美ちゃんは俺の馬房の漫画の整理。色々あるからねえ。本棚にキセルに蹄鉄飾った額縁とか写真とか。
「ふふふ。しかし、こんな人たちで集まって話して、一頭の名馬を見れるんだからケイジちゃんは流石よ」
「厩務員、野球少年に自動車整備工の若社長にオカマバーのママ。十人十色なメンバーでケイジと一緒にレースについて駄弁れる。本当に愉快な時間でしたよ。こんな経験、今までなかった」
「僕も。野球を教えてもらえて、戦い続けることのすごさに励まされて頑張って、もう推薦も手にできた。いろんなことがあったなあ・・・」
「ふふふ。熊退治の豪傑の馬だものな。いい男は知らずに良い縁を招いていしまうのだろう。俺もこうありたいものだ」
いつの間に。阿部さん。
そういう意味じゃ阿部さん一番ラッキー? 世界レベルの車会社と直接コネと仕事のパイプ出来たし、ヒメのおかげで欧州の資産家らとも知り合いになれたし。ついでに女王陛下とも謁見叶ったしね。
こう考えると、ヒメやナギコもしっかり馬主孝行しているなあ。俺の場合は宝塚取れなかったり、互いに連覇を潰し合ったりのバチバチ時代だったとはいえ負けも多いし。全くスーパーサイヤ人をそばで見ているZ戦士ってこんな気持ちなのかしら。若しくは悟飯を見守るピッコロさん?
「私のバーね? ケイジちゃんの話を聞きに来る人や写真を見に来る人が増えているのよ。そして、皆言ってくれるわ。『ケイジが見せてくれた競馬の面白さと馬たちを応援する』って。過酷な世界の中にある良さを日本中に、世界に見せてくれたのが本当にうれしいの。ケイジちゃん。頑張ってきてね。ここを越えれば、いい余生が待っているわよ」
「ケイジ。僕も来年から高校生で、甲子園、プロを目指すよ。ケイジのように厳しい世界で、入れるかもわからない。でも、戦い続けて、目指すよ。ケイジが助けてくれた命と、見せてくれたかっこよさに負けないくらい頑張る」
「あちこち仕事を探して、合わずに辞めてきて、未来はどうなるかわからない不安もあった。だけど、競走馬を助ける、お世話する日々を欲しいと思って頑張って、すぐにケイジと出会えた。きっとこの先も支えになって、光り輝く時間をくれた。ケイジ。最高だよお前は」
「しがない地方の中小企業整備工の俺がこうして東京で馬主として、大企業とコラボの仕事が出来るのもケイジ達の居た牧場が近くで、ケイジの存在が教えてくれて、興味を持たせてくれたからだ。ヒメの馬主にさせてくれたお前は最高だ」
「あ、皆さんずるいですよ。私もケイジ君に伝えたくて一緒にって」
「ぶほほ。大丈夫よ真由美ちゃん。あのセリフはみんなで伝えるって決めているから。ささ、真由美ちゃんも一緒に一緒に」
おろ。茶菓子を持って来た真由美ちゃん。なんだろ。皆で言うこと? 俺に?
「せーの」
「「「「「頑張れケイジ。お前がナンバーワンだ」」」」」
「ビヒィ!」
『ここでこのセリフは良いね! よっしゃ。勝ってくるぜ』
拳を出してみんないい笑顔で俺を応援してくれた。最高だ。俺も鼻先をこつんとみんなと付き合わせていくことで気合を補充。ははは。なら、いっちょやってきますか。
「きたきた・・・おはようさん葛城さん。ケイジ君。調子はどうです?」
「おはよう。藤井君。問題ない。いや、むしろ今日ほどいい仕上がりはないほどだ」
「ヒン」
『おいっす』
おうおう。カメラの音がすごいねえ。フラッシュはたかないけど、凄い凄い。めっちゃ記者いるじゃん。そんで藤井の兄ちゃんは今日も元気そうだねえ。目が血走っている以外。
「藤井君は逆に大丈夫かい? 目が赤いよ」
「い、いやあ興奮してついつい眠れず。移動中とさっき仮眠を取ったので一応問題ないですわ。ふむ・・・ケイジ君もこれは・・・記者としてこういうのはあれだけど、ほんま、ケイジ君の勝利を願っています。ケイジ陣営で打ち上げの際は誘ってくださいね? 個人として祝いに来ますから」
記者としてそれはいいのか。そんでまあ、ほんと、藤井の兄ちゃん打ち上げの記事すらもかかずに個人として来てくれるっていうねえ。まあ、定期的に夏に来ては温泉とビールと牛乳を味わいながらウチの牧場のコラムを書いてくれたり、引退馬支援について書いてくれたりでいい人だしね。
「KG対決最後のレースはこれまた三冠を賭けた大一番。新世代の波も来ている中での戦い・・・ほんま、どこまでも、最後までも目をそらせるような戦いをしない。目だって目立ってなんぼの傾奇者の体現をしている。記者として、男としてもここまで惹かれる馬は、漢はそうない」
『だろぉー? いい事いうねえ』
「だからこそ、僕もしっかりと記事は公平に、情報はしっかりと書いてきたつもりや。この世代を、名馬たちを知ってほしいと。素直に気持ちを出すためのコラムも増やしてもう頑張ってきた。だけどこれも最後や・・・ケイジ。今日出す記事は素直に君とゴルシの事を褒める記事を書きたい。だから、いつも通り最高に暴れてきてくれ」
『あいよ。なら、世界も翻訳するような文を頼むぜ。藤井の兄ちゃん』
互いに頭を下げてから俺はパドック目指してゆっくりと移動して、藤井の兄ちゃんも記者としての仕事のために客席に移動。
冬だっていうのに、凄い熱気と声で寒さを感じない。あいも変わらずここの熱量は季節関係なく燃えさせて、俺達馬と騎手を待ってくれているんだなってわかるぜ。
「・・・・・・燕尾服、スーツを用意していくのが常になるなんて思ってもみなかったものだ」
「ヒヒン。わぉん」
『勝利すれば口撮り写真とかあるしな。だから優勝候補の人らはみんなスーツとか制服だっけ』
「よし。ケイジ。最後の有馬記念。最高の名馬として何年たっても、映像でしか知らない遠い未来のファンたちも語り継ぐような戦いをしてこよう」
『モチのロン』
『いよいよ皆様、この時を迎えました。暮れの中山。今年最後のレースの一つ有馬記念。多くの名馬が戦い、名誉と賞金。何よりここで語り継がれる名勝負とその記憶を求めて数々の激戦が繰り広げられました。語り継ぎたい名馬が勝つと言われるレースであり、多くの名馬たちが引退の花道としたこのレース。
・・・ここをまた最後の戦いと決めた名馬がまた二頭。しかしそんなことは知ったことではないととんでもない勝負をしようとしています!』
最後の有馬記念。かあ、思えば何度挑んでも負けて、だけどそのたびに勝つやつらが面白い実績を手にして去っていった。それを見るのもまたよかったと思えたし、最後は笑えた。
『引退の歳になってなお二つのレースを史上初の三連覇を成し遂げ、春古馬二冠を手にした黄金の不沈艦ゴールドシップ! 世界初の欧州二冠連覇、日本初の無敗のクラシック四冠を成し遂げ、今秋古馬三冠に王手をかけて再びライバルと最後の一冠をかけてここに来ました! 四度目の正直なるかケイジ!
世界史上初、日本初、三冠馬、そのレベルを何頭も生み出し、実績とドラマを生み出した最強世代の筆頭格二頭。KG対決の最後の舞台にして、ケイジの三冠がかかった勝負がここ有馬記念で行われようとしている。二度目の三冠を賭けた勝負を見れるということもありここまで聞こえるほどの熱狂は天を衝かんばかり!』
オグリ以来の葦毛の馬による有馬記念制覇のゴルシ。凱旋門賞馬になった俺を叩きのめして、天へも届くほどの勝利を見せた先輩三冠馬オルフェーヴル。俺らと同期の牝馬三冠で、初の中山のレースで最後を見事に飾ったジェンティルちゃん。
ゴルシは今回も戦うが、誰もかれもがやばかった。あんなに喰らい付いても届かなったのは本当に驚かされた。だが、今度こそ。今度こそだ。いつも言い訳はないほどに頑張って戦って負けた。だからこそ、今度は勝って帰るぜ。
『皆様は誰に夢を賭けるでしょうか!? ケイジか、ゴールドシップか、あるいは次世代の筆頭格キタサンブラックか! 馬券も今回限りの同着馬券もあります! あり得ないかもしれない決着だって見せてきた最強世代最後の戦い。思う存分盛り上がりましょう! 夢のような時代、戦いを繰り広げた名馬たちへの期待と思いを乗せて!!』
いやーアナウンサーさん超ノリノリだな。もう競馬というかプロレスとかの興行名乗りのそれだよ。
ははは。そしてこの空気の中でも勝利を目指してきた天才たち。いいねいいねえ。ほんとこういうノリの中で戦ってきたんだよな。ディープと戦っていた皆さんもこんな気持ちだったのかね。
『どーもどーも皆さん。ケイジだよん。最後の大一番。しっかり見ていってくれよ』
『いやーケイジ。今日の仕上がりはすさまじいですね。この仕上がりをこの年齢まで持ってこれるというのは葛城厩舎の腕とケイジの胆力もあってこそでしょう』
『なるほど岡崎さん。この前のジャパンカップもすさまじかったですがそれ以上と?』
『間違いなく。私だったらきっと彼と戦う時は二着を狙うでしょうね。それくらい感じる覇気と仕上がりが違う。馬ですが、馬以上の何かと思えます』
あ、岡崎さん今回も解説なのね。的矢さんも見に来ているし・・・あー国光君にあの老夫婦も。いつも関西では見たけどわざわざ関東まで来てくれたか。もしかして今年馬券でかなり儲けたのかしら。皆いるなあ。マタギのおっちゃんも。幸太郎はいないか。いたら驚くけど。
『ゴールドシップ、ケイジどちらもいい仕上がり。早速二人ともカメラを前に立ち止まる。ポーズをとる。変顔をするの大騒ぎ。観客席からは先ほどの歓声から一変笑い声が中山に響きます』
『これがこの世代でしたね。レースもパドックも、ウイニングランすらも騒ぎに、ドラマに変えてしまう。最強と愉快さの両立したしっちゃかめっちゃかさ。何度日本競馬の常識を変えたか』
『いやっほ。ゴルシ―お元気ぃ? ほーれ』
『お、ケイジ。オッハー。びろーん』
とりあえずレース前のご挨拶ということで変顔対決。俺は耳をどこぞのエレキングのように回しつつ真を真ん中に寄せ、ゴルシは舌を出しての目をグルグル。
『・・・・ぶふぅ。負けたー』
『いよっし。俺の勝ち。最後にはしっかり勝てたぜー』
にらめっこ勝負は俺の勝ち。よしよし。今日もいい感じだな。
『今日で最後の対決だなあ。ゴルシ』
『そうだねーようやくジャスタ達と一緒にだらだらできるぜ』
『ははは。なら、その前にさ、俺とまた勝負をしようぜ。最初にあったころのように気持ちよく走ろうや』
ゴルシの場合、レースは嫌いだけど俺らとの勝負とか、ファンサのために来ていたようなものだったしな。ある意味俺以上にこのレースが終わった後の解放感を求めているのがわかるし、併せの際にも愚痴っていた。
だからこそ、今日はノリにノッてほしい。引退後俺の牧場に来れば走れるけど、この舞台ではどうあがこうがもう最後だもんね。
『ふーん・・・・いいでゴルシよ。ケイジここで勝てていないしもう一回勝つもんね』
『お前・・・! 言ってろい。俺が勝つんだよ今日は。先で待っているからちゃんといつものように来いよ』
全く。こういうところの記憶力は本当にすげえな。レースの事も場所も覚えているんだから。しかも大体3年前くらいの。感じる気配も強くなったし、うん。問題ないか。気合も乗ったゴルシなら、最後の戦いにちょうどいい。
『今回のレース。KG対決もそうですが、その中に割って入れる才能の持ち主キタサンブラックもまた注目を浴びていますね岡崎さん』
『はい。あのとんでもないスタミナで菊花賞を逃げ切れるスピードを持ち、気性も優しいので持ち直しもできる新時代の名馬のイメージを作れる器。騎手も大竹騎手と松風騎手という逃げの名手たちとの経験を持っています。逃げ馬同士の対決という意味でも今回は新旧の世代の対決になり凄いです』
やっぱそこ注目するよね。俺らの世代に次ぐ代表的な逃げ馬でスタミナバリバリ。菊花賞を逃げで勝利とかある意味ミスターシービーレベルのタブー破りかましているんだから。
こう考えると。真面目に世代交代の時期と分かるなあ。俺が当事者になるのはほんと考えていなかったけど。わかっていたはずなんだけどね。
『あ、ケイジさん。お久しぶりです!』
『よっ。キタちゃん。今日もいいがたいしているねえ。毛並みもいい。ぐっすり眠れた?』
『はい! あの睡眠方法でもう元気で! 大竹さんもいつも以上になでなでしてくれたんですよ』
『期待されているねえ。あはは。お前さんは次世代の筆頭だ。皆がお前さんを次のヒーローだと認めている』
真面目にノーザンテーストあたりから小柄な名馬たちが増えている中俺ら真逆の大型馬でしかも逃げでやりたい放題しているしねえ。キタちゃんの場合馬主や騎手も話題の人だしほんとネタに事欠かんよ。
『おや、ケイジとゴールドシップの次はケイジとキタサンブラックが顔を向け合いながら何やら嘶いております。どちらも名手大竹騎手。次世代の雄松風騎手と共に戦いクラシック、あるいは重賞を手にしてきた者同士。同じダービー馬であり逃げ馬同士。師弟関係でもあるのもあってここでも何か話しているのでしょうか』
『奇行、破天荒なエピソードが多いケイジですが気性難の馬にも優しく、人懐っこいですからねえ。キタサンブラックにも逃げを教えたもの同士。気性も優しいゆえに仲が非常に良いようです。しかし・・・どちらも大型馬のはずなんですが、ケイジのせいで小柄に見えてしまいますねえ』
今日の俺652キロだもんな。前より増減抑えているけどそれでも650キロを切らないあたりこれがナチュラルウェイトの下限なんだろうなあ。
『今日はケイジさんの最後のレースと聞いています。だからこそ・・・僕にとっても最初で最後のケイジさんへの挑戦のレース。全力で挑ませてもらいます!』
『ライバルがここでまた増えるかあ。全く人気者は辛いねえ。いいよ。思いきり来い。そして、大竹さんとも仲良くね』
『はい! あ、それと松風さんにもよろしくです』
いい子だなあ・・・未来のウマ娘のスタッフさん。キタちゃんの性格調べるために何日も泊まり込んでお世話を見ながら研究していない? ほんとアニメの面影が被るの。
さてさて、パドックをグルグル回り、そんでいつも通り松ちゃんをよっこらしょ。体重もいい感じ。足の力の具合と揺れ具合からも体調も良し。流石。いい感じに仕上げてきたか。
『いよいよ本場馬入場です!! 1番ケイジ。テイオーステップで入場をしてきました!! 体重は652キロ。余分を削ぎつつも削ぎすぎないベストな状態で持ってきました。最後のレースの前に気合十分。戦国コンビ最後の花舞台。一冠を求めてきました! そして2番ゴールドシップ。505キロ。オグリキャップ以来の葦毛馬による有馬記念優勝がケイジから奪った初勝利というドラマチックと愉快さに溢れた黄金の不沈艦。二度目の優勝とケイジとの最後の一戦を勝利を飾らんと気合十分。
国内で多くの怪物たちと渡り合い、彼もまたすさまじい戦績を積み上げてきた猛者。ここに来ても尚油断をすればマジックのような追い込みに抜かれてしまうでしょう』
一番油断できねえよ? 俺デビュー前からその才能をじかに見てきているし。何回かあのゴルシワープに驚かされて、あまつさえ幻惑逃げもつぶされたか。ほんと、いいはまり具合だったのになあ。
あ、例の同着馬券・・・ウッソだろ。2番目くらいには買われているのかよ。しかも俺とゴルシかキタちゃんだし。ゴルシとキタちゃんはないんですかねえ?
「やあ、戦国コンビ。今日も相変わらず元気そうで安心したよ」
「大竹さん」
『あ、タケちゃん。お元気?』
キタちゃんとコンビを組んでのタケちゃん。相変わらずナイスミドルねえ。
「君たちのタッグを見れるのが今日が最後・・・騎手としては怪物が去るゆえに勝利のチャンスが手に入る嬉しさもあるけど・・同時に僕も乗れるチャンスが消えるし、一ファンとして去るのは悲しいものだ・・・」
「大竹さんがそう言ってくれるのならケイジも喜ぶはずです。相棒の一人であり、一緒に新時代を作ったんですから」
「・・・ありがとう。だからこそ、何度も何度も挑んでは返り討ちにされてきたが、今日もまた挑ませてもらう。キタサンブラックも間違いなく怪物の器だ。いいレースをしよう」
「はい!」
いい男同士のやり取りは痺れるねえ。そして、松ちゃんも言うじゃないの。新時代を作った。か・・・確かに。でも、お前さんが本当はやれるはずだったんだぜ。欧州二冠の連覇の栄冠もね。
タケちゃんにプレゼントできたのは素直にうれしいし、悔いはねえ。でも少しでもその分の実績は渡したいからね。だから。せめてここの一冠はプレゼントさせてもらうぞ。松風守。
『いくつもの時代がここで生まれ、あるいは去り世代交代をしてきました。その激闘は今も語り継がれ、我々の思い出に刻まれてきました。そして今確かに日本競馬を次のステージへと押し上げた最強世代筆頭格の二頭は最後の花道を飾るために、ライバルとの最後の戦いへと臨み、新世代もまたその最強を倒さんと集いました。
有馬記念。そのレースを始めるために次々と名馬たちがゲートインしていきます』
無事にファンファーレもなって、俺らもほいさほいさとゲートイン。ゴルシの方も最後と分かっているからかごねることがないね。
いや・・・これは一番ノリにノッテいるな。なら、松ちゃん。わかっているよな?
「分かっているよ。ケイジ。一番の武器で行こう」
『さっすが。なら、問題ないな』
気持ちも十分。身体も問題なし。相棒は最高。うん。行ける。
『今全頭ゲートインしました・・・・・・・スタートしました! さあ、先頭に出たのはケイジ! 今回は、最後の大一番に持ってきた戦法は大逃げだ! それを追いかけるのはキタサンブラック! 新旧逃げ馬対決が繰り広げられています。
ゴールドシップはいつも通りの最後尾について先頭を伺います。大型馬が先頭と最後尾を取る形となりました有馬記念。極端な戦法が入り乱れる中先頭集団を形成するのはゴールドミラー、ハートマン、アイシクルレインと続きます』
さ、いつも通りの大逃げ。いや、久しぶりか? でも俺らの代名詞といえばこれよ! さあさ。お披露目でござーいってね。
『ケイジグイグイ伸びて既にキタサンブラックに2馬身の差をつけて独走状態。コーナも見事に走りホームストレッチへと向かっていきます。観客は既に興奮のるつぼ。そう。ケイジの傾奇者伝説は大逃げから始まりました。それを最後に見せてくれると言わんばかりの爆進ぶり。キタサンブラック追いかけますが距離を離されていきます!!
先頭はケイジ。二番手にキタサンブラック、三番手にゴールドミラー、サウンドアクター、ハートマン、アイシクルレインと続いて先行集団を形成。マリアルール、アドマイヤアレスが続きます。後方はビッグショック、ヒットクエスト、ルージュヴィン、オンリーゲットが続きゴールドシップは変わらず最後尾です。今回かなりのハイペースなレース運びです』
キタちゃんは喰らい付いてくるか。で、ほかはまあいつも通り。ゴルシはもうアイツは問題ないというか、楽しんでいるなあ。気配でわかる。
さ、とりあえずは第1コーナーでいっぺん息入れながら引き離すかね。真面目に三回くらいコーナー使えるからここのレースと距離はありがたい。
『さあ、1000メートルを通過しました。タイムは57秒3!! これはかなりのハイペース。ケイジとキタサンブラックによってレースを引っ張ることで非常に速いレース運び。
キタサンブラックのペースとなりますが同時に先頭のケイジの得意なレース運び。距離を詰めることが出来ないまま第2コーナーを抜けて向こう正面と出ていきます。先頭はケイジ、二番手キタサンブラックとの差は4馬身。かなり飛ばしております』
よし・・・行くか。出ないとそろそろアイツが来るし。松ちゃんも。
「行こう。ケイジ。ここからが本番。だもんな」
首にポンと手を置いて鞭の代りの指示。それだけで十分。そして相変わらず分かっているねえ!
さあ、最後のスパート前準備の加速。いってみよー!!
「相変わらず・・・何てスタミナだ・・・!」
ケイジが僕とキタサンブラックの先頭を譲ることなく常に走り続けてレースも後半。これくらいでへばるキタサンブラックではないのは分かっている。だが、そのスタミナ自慢の相棒の逃げを封殺し続けたまま常に先頭を保ち、あまつさえ引き離してくるこの滅茶苦茶さ。
『まるで・・・まるで追いつけない・・・! これがケイジさん・・・これがターフの傾奇者!』
「落ち着いて、もう少し我慢だ・・・それまでは息を入れつつ行こう」
前にも感じた少し時間が遅く感じるほどの集中と、ケイジの声が聞こえたような、あの凱旋門賞の時の感覚。そこまで集中して、キタサンブラックの気持ちも感じ取れるほど。だからこそ息を入れて、最後のコーナーからの直線に賭けるように、力を残すように指示をする。
逃げ馬のキタサンブラックだが、気性が優しい分我慢も利く、先行策への切り替えをして持ち前のタフさとスピードを最後に持ってきて勝利を狙う。ジャスタウェイ、ジェンティルドンナらほどの瞬発力はないが最高速度は間違いなく世界でも高水準。やれるはず。
そう考えている中、ケイジはさらに加速して第3コーナーに入っていった。今ここで加速。ここまで距離を取っていて息を入れるどころか更に差す勢いで飛んでいく。何を警戒しているのか。少し考えるよりも早く、その答えが横から白い輝きと一緒に現れた。
『ああっとゴールドシップが仕掛けてきた! 黄金の不沈艦ここが勝負どころだとケイジを猛追開始! グイグイ中団、先頭集団とごぼう抜きをしてあっという間に先頭集団! キタサンブラックを追い抜いてケイジとのリードを縮め・・・・いや! ケイジさらに加速する! リードは譲らないと大逃げのケイジ! そのリードは潰してやるとゴールドシップ! 二頭の激闘が繰り広げられています!』
黄金の不沈艦ゴールドシップ。そのマジックのような追い込みであっという間に僕たちを抜いていく。
規格外の大逃げの大天才ケイジと、これまた規格外の追い込みの天才ゴールドシップ。二頭のこの戦いを後ろから見て、全く外見も性格も違う。毛色だって違うのに・・・ふと、思い出してしまった。
「サイレンススズカ・・・ステイ・・・ゴールド・・・!」
僕と共に戦ってくれた、日本競馬を沸かせてくれた優しい大逃げの天才。その同期にして日本競馬の海外コンプレックスを砕き、間違いなくスペシャルウィークらと共に日本競馬を次のステップへと進めてくれた天才。どうしてもかぶってしまう。あの日曜日さえなければ見れたはずの可能性が、あの香港で終わることなくあの走りが出来たのなら。
二頭のありえた未来を体現したような二頭のレースに、僕も、そしてきっとキタサンブラックも魅入られていた。
『かつての97世代にて世界を、日本を湧かせたサイレンスズカとステイゴールドの激突なのか! 菊花賞以来見せてくれる名馬たちと共に走り抜けるケイジとゴールドシップ!!! 負けるなケイジ! 負けるなスズカ! 勝ってくれゴールドシップ!! 伸びてくれステイゴールド!!
最後の三冠を目指す勝負はまたもや伝説たちの戦いぶりを呼び起こしての大激闘!! リードを縮めようとするゴールドシップとそうはさせないとケイジが逃げ切ろうと粘る! 4コーナーカーブを抜けての直線だ! 最早この二頭の世界。二頭、いや四頭の大天才たちの夢のレース、そのフィナーレを飾るのは誰だ! ケイジとスズカ組か、ゴールドシップとステイゴールド組か! 意志のバトンか血のバトンか! 今それが試されております!!』
「いったい・・・いくつもの場面を重ねさせてしまうんだ君たちは・・・行くぞキタサンブラック! 君たちの大先輩へと挑むチャンスだ!」
ただ、だからこそ挑みたくなってしまうのは騎手の性か。魅入られるほどの怪物たちに負けられないと鞭を入れてスパートの指示を出す。勝利は誰のものか、なんとなく感じてはいたが、だからと言ってこの戦いを手放すわけにはいかない。
頑張ろうキタサンブラック。この戦いの糧は。必ず大きなものとなるはずだから。
やっぱ来たなゴルシ! そうだよな。ここでお前なら来ると思っていた!
『残り300メートル! デッドヒートを続けていく二頭! 唯一キタサンブラックが喰らい付きますが5馬身を付けられこれ以上は厳しいか! ケイジ半馬身のリードを譲らない。ゴールドシップもまだまだと言わんばかりにその差を離させない。
伝説の再演は同期同士の勝負、どちらもまた時代を沸かせた怪物たちの勝負となった! 最後の一冠。手にするのは何方だ!』
『後はケイジを抜けば勝利。思いきりやらせてもらうでゴルシ―』
『ははは。ああ。こっちのセリフだ。そして、思い出すな。こうしてよく併せをしていたよなー最初のうちは一緒によーいドンで』
『そうだったねえーなら・・・・せーの』
『ほっ!!』
最後のスパート。もう何方も力は最後の一絞りくらい。それは分かっていた。だからこそ、親友でありライバルのゴルシとは真正面から楽しく。でも熱くやりたかった。だからこその同時再加速。
互いにデビュー前で一緒に愉快にやっていたころの気分と、同時にそこからここまでこれたことへの感慨をしょい込んでのスパートは、いやに長く感じて、とても愉快だった。
でも、それももう終わりだ。
『ケイジか、ゴールドシップか! 二頭並んだ! 並んだままさらに加速! 離れない、離さない! 怪物同士の競り合いはまるで固定されたように動かない! そのままゴールだ!! タイムは驚異の2分24秒9!! ワールドレコードを更新!! さらに二頭並んだままのこれは・・・・写真判定に託されます! あり得るのか・・・これはあり得てしまうのか!!』
一緒に並んでゴール。いやー今回は互いに顔をちょいと向ければぶつかりそうなレベルの密着での激闘だった。
写真判定らしいが・・・まあ、なんとなく予感はある。このレースの結果。きっと・・・こうなっているだろうな。
『結果が出ました・・・・! 結果は同着! 同着です! 一着は共にケイジとゴールドシップ! 互いに有馬記念優勝を手にしました!! ケイジは秋古馬三冠を手に! そしてゴールドシップは春古馬二冠と二度目の有馬記念勝利を手にするという、最後まで彼らの時代のままここを征しました!!
伝説は伝説を呼び、そして輝きを増して去り行く二頭! 彼らがいなければこの時代はあり得なかった! ありがとうケイジ、ありがとうゴールドシップ・・・・・・・寂しくなります! 去らないでほしい! 本当に、この世代よ永遠なれぇえ!!』
『アナウンサーさん鼻水垂れているだろ絶対。すげえ鼻声』
『また同着だったねーケイジ。なはは。最後の年は互角ってことか』
『だなぁ。だけど、今度はお父さんとして勝負だぞ。ゴルシ。いい女の子と沢山デートするんだから、頑張れよー?』
『ジャスタは先に行っているんだよなーずるいし、その分頑張るでゴルシよ』
割れんばかりの歓声。観客たちの興奮で会場が揺れて、空気がびりびりするのを感じつつ最後の、ターフの上でのレース後の会話を楽しむ俺ら。
一方。鞍上の方でも楽し気な会話・・・松ちゃんは号泣しているけどさ。まあ、和やかな会話をしているよ。
年末の大一番。俺らにとっては大団円で幕を下ろすことが出来そうだな。
『行こう、ゴルシ。このダンスは一緒にやろうぜ』
『あいよ。それじゃ、観客の皆さんを更に湧かせちゃうぞ~?』
この後の俺らのパフォーマンスでの盛り上がりは最高潮で、なんか気絶した人もいるとかなんとか。俺らあの超伝説のバンドグループじゃないよ?
『ケイジとゴールドシップの出会いはそこからだったんですねえ。いやはや・・・本当にこの二頭は仲良しだったと』
「ええ、たびたびレースが合わない秋ごろには本当に調整で大助かりで・・・優しいのもあってうちの厩舎であわせを何度もしてもらっていました」
『くのやろー! 俺の変顔の方で先に笑ったのゴルシだろー!』
『回数はそっちの方が多いもんにー! このやろー!』
レースも終わり、いよいよ最後の引退式。志村ヘンさんが来てくれてドリフ新メンバーお疲れ様という垂れ幕をみんなで持ってきてくれたり、北島サンちゃんが来てくれて演歌を歌って俺らとキタちゃんを労ったりとでしんみりした空気はない。
現在進行出来で俺とゴルシでハリセンのしばき合いしたり隙あらば変顔勝負しているからな。伊馬波さんも久保さんも泣き笑いしているのよ。茄子のおっちゃんインタビューされているけど半分苦笑い状態だし。インタビューしている姉ちゃんも笑いを隠しきれていないし。
『素敵なゴールドシップ陣営のお話。ありがとうございました!! では続きまして、ケイジ陣営の話に移らせてもらいます。GⅠ16勝。無敗のクラシック四冠、欧州二冠連覇、そして今日の秋古馬三冠。まさしく世界に誇れる日本の怪物ケイジですが、本当はかなり早めに切り上げることを考えていたというのは本当ですか?』
「ええ。実際、馬主の前田さんや私も何ですがケイジの血は今の競馬界ではアウトブリードを狙える存在ですし、テイオー産駒の素質馬も少なかった。どうにか重賞で勝利、もしくは善戦して種牡馬として細々でも頑張ろう。そういう気持ちでした。実際、あのテイオーの子どもでこのサイズです。怪我の不安は他の馬より強いでしょう?」
『え? そうなのケイジ?』
『俺の親父が怪我に泣かされ続けた悲運の名馬だからなー。小柄だったのに俺だもんよ。そりゃー不安がられたんだぞ?』
「ま、まあ確かに。そもそも、500キロ前後で大型なのにケイジのサイズは650キロ越えですものね」
「それもあって突然変異過ぎるし、足元不安はいつも怖かったですよ。結果からすればそれを吹き飛ばすほどの頑丈さとパワーでここまで戦い抜いて、毎日が夢のような時間でした。とはいえ、種牡馬としてのお値段どうするべきかとみんなで相談し合ったりとほんと愉快愉快でしたよ。あはははは!」
なお今も900万、せめて1000万にしたほうがいいんじゃないかと周りから言われている様子。安くいきますと譲らない馬主とか前代未聞じゃないの? つーか厩舎にもまた相談していたのかおやっさん。
「ケイジには夢を見せて、叶えてもらいました。これから生まれてくるであろうケイジの子どもたちをまた預かって、必ず競馬界に血が残せるように頑張ることでケイジへの恩返しをしたいですね」
『ターフの傾奇者。復活した皇帝の血筋は必ず残るはずです。ではでは、続きまして騎手の皆さんに伺いましょう。まずはケイジの華々しい傾奇者伝説の幕開けを彩り、現在ケイジと同じ前田牧場の名牝キジノヒメミコの主戦騎手を務めています梅沢騎手から』
「えーと・・・いや、ここの場所に呼んでいただけること自体が感激で・・・その、ケイジの強さは、まさしくずば抜けていました。ただ、ケイジがテイオー産駒なのとあの巨体なのも相まって周りからは乗り続けずにほかの馬で経験を積んでいたほうがいいと言われて乗れず・・・今思うと、振り切ってでも乗れたらと思うこともありました。
だけど、それだと今僕と一緒に戦っている。キジノヒメミコとの出会いもなかったでしょうし、ケイジの子どもと今度は一緒に戦えればと。できればケイジとキジノヒメミコとの子供と一緒にいければ最高です。そしてケイジ、お疲れ様。一戦だけだったけど僕にはすごくいい思い出だったよ」
ははは。デビュー戦で実は落ちそうだったよなあ。そして、いうねえ。問題ないよ。きっとおやっさんなら俺とヒメの交配も考えているだろうし、素質馬が出ればすぐにお前さんが主戦だ。
『梅沢騎手。ありがとうございます。では続きましてケイジの初の欧州二冠。凱旋門賞を制覇した時にコンビを組んでくれました大竹騎手にお話を伺いましょう。ケイジとともに日本の悲願をもぎ取った相棒として如何でしょうか』
『感無量ですね。あの二戦は僕にとっても一生物の思い出ですし、本当にいつでも愉快なレース運びで周りを沸かせていました。僕にとってはとんでもないライバルであり、同時に・・・いくつもの想いを背負ってくれた戦友です。あのテイオー産駒でこの規格外な突然変異のケイジが生まれたのは本当に神様に感謝するほかないです。僕も何度も一競馬ファンとしてケイジやこの時代を楽しめたか・・・
ケイジ達の作った時代はキタサンブラックたちが引き継ぎます。必ず、このブームを繋いでケイジ達とそのライバルたちの激闘が語り継がれるように頑張っていきます。だから、ケイジも見ていてね』
ついでにほかの馬たちにも乗るだろうし、この伝説ジョッキーはいくつの勝利を手にするんだろうね? 俺も期待しているよ。今後のレジェンドの活躍に。
さ、そして大トリだ。頼んだぞ。一番の相棒。
『大竹騎手ありがとうございます。では最後に。ケイジと共にGⅠ14勝。戦国コンビとして多くの伝説を作りました松風騎手にお話を伺いたいと思います。最後の戦いまでまさしくケイジらしい戦いぶりでした。今のお気持ちは如何ですか?』
「もう・・・なんというか・・・本当に一緒に、どこまでも戦い抜けたのが嬉しくて・・・僕が怪我しているときでも問題ないと言わんばかりに戦って。滅茶苦茶しても必ずレースではいつだって最高の走りを見せてくれました。僕が未熟ゆえに、負けも多く与えてしまったのが悔しいですが、その分は、ケイジの子どもと一緒にケイジに教えてもらった分も含めて恩返しをしていきたいです。
ケイジの一族には僕が引退するまでは奉公する。お仕えする所存ですよ。ケイジ達の作り上げた時代をその子供たちに伝えて、一緒にケイジが取れるはずだった宝塚記念や、多くのレースに挑んでいけたらと思います」
宝塚は取れなかったもんなー。短距離のレースも含めていろんなところのレースを取って来いよ。GⅢの年齢制限とはいえ俺と一緒に1200も取ったんだ。行けるだろ。
さてさて。そうこうしているうちに俺とゴルシの両陣営への騎手、調教師への花束贈呈。なんだが・・・ここで一つサプライズ。
「どうぞ・・・松風騎手。ケイジ君と最後まで一緒に戦ってくれてありがとうございます」
「え・・・! あ、ありがとうございます」
真由美ちゃんが松ちゃんの花束贈呈の役をやっているんだよね。しかも花束に隠れているけど実はラブレターも忍ばせているという。
化粧も香水もばっちりの。普段は俺らの世話で見えない真由美ちゃんの女の顔に松ちゃんドキドキだぜ。うっひょーい! お似合いだぜ御両人!
「あっこら。ケイジ・・・! ちゃ、茶化さないでくれよ・・・ふふ」
「もう。ケイジ君。ありがとう。本当に最高の出会いと日々だったよ」
『いいじゃないのいいじゃないの。いよっし。ゴルシ。あれやろーぜ。俺はお前にくれてやる』
『ん? いいでゴルシよーなら、おいらはケイジに』
俺よりも早く次世代が生まれる可能性があるカップルを見届けつつ、久保さんと伊馬波さんを引っ張って中央に移動。
『さて、これを持ちましてゴールドシップ号、ケイジ号の引退式を・・・あら? ケイジとゴールドシップ中央に移動しました。まさか、これはまさかやってくれるのでしょうか!?』
引退式もぼちぼち終わり。もう俺らはターフの上で戦うことはない。だからこそ。掟破り。二度目のダンスのお披露目じゃい! 引退式に来たウン万人のファンの前でもバッチしサービスはしないとな。
『み、皆さますぐに拳を構えましょう。ケイジとゴールドシップによる彼らからの最後のダンスです!!』
『『せーの』』
右へぴょーん。
『『『オウ!!』』』
左へぴょーん。
『『『オウ!!!』』』
ほい、首を下げての~・・・?
「「ビヒィイィイィィイイッン!!!!!『『いよっしゃあああああああああ!!!!!』』」」
『『『ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!! ゴ・ル・シ!! ゴ・ル・シ!!』』』
『割れんばかりのケイジ、ゴールドシップコールが会場を包みます! 最強世代筆頭格二頭! 最後の最後まで熱く、愉快に我々を盛り上げてくれました! その二頭を、そして彼らを支えた皆様への大きな拍手をもってお送りしましょう!!』
さらばターフよ! さらばレースよ! 長いようで短い戦いもこれでさらば!! 後は、子供達か、動画でまた会おうな! あっははははははははは!! 最後まで、楽しかったぜ!!
最後のKG対決にして戦国コンビの有終の美。三冠を賭けた二回目の戦いは三冠馬同士の戦いではなくこれまた伝説の世代同士の戦いでもしものになりました。ほんと98世代もやばいですが97世代もやばいメンツだらけでこの時代はほんと凄いなあと。
ちなみに ケイジ GⅠ16勝 ジェンティルドンナ GⅠ7勝 ゴールドシップ GⅠ7勝 ホッコータルマエ GⅠ10勝 ヴィルシーナ GⅠ6勝 ジャスタウェイ GⅠ4勝 フェノーメノ GⅠ 2勝 という感じ。芝もダートも三冠馬レベル揃いすぎ問題。
ケイジ 最後にキチガイレコードと三冠、親子三代有馬記念制覇をひっさげての大勝利。どこまでも好き放題しての引退式もやって満足。牧場に戻るや否や牝馬たちに追い掛け回された。
ゴルシ ケイジとまたまた同着。追い込みでこれをしているのでやばすぎると業界震撼レベル。ちなみに2015年のケイジとゴルシの対戦成績は5戦2勝2敗1同着という結果に。
キタサンブラック どうにか喰らい付いて2着(3着)に喰らい付いた。ケイジとゴルシのやばさを目の当たりにしつつもしっかり糧にできたので多分覚醒する。
松風騎手 御前試合も含めれば3つ目の三冠を制覇するという前代未聞の記録所持者に。この後真由美ちゃんのラブレターを読んで正式にお付き合いを開始。デートスポット探しに四苦八苦している様子。
葛城大吾 ケイジの引退に影で号泣していた一人。本当に早くケイジの子どもを預かって恩返しをしたいと思っている。とりあえずそれ以外では近いうちにやってくる前田牧場の牝馬の子を鍛えること。
葛城連 オカマバーの皆さんと一緒に観戦していた。ケイジの最後の戦いに感動し、思わず興奮しすぎて鼻血が出た。推薦高校も決まっているのでしばらくは北海道でケイジの様子を見ながらトレーニングしようかなと思っている。
久保さん ケイジの偉業に涙。引退式の際には手綱を引けて良かったと思っている。ケイジの産駒が気になる一方で運動好きゆえにあの健啖ぶりと足元不安を潰していたケイジの引退後の身体は大丈夫かと少し心配。
真由美ちゃん こっそり花束贈呈の中に紛れ込んで松風騎手に花束プレゼントという大役に。周りもやっちまえと背中を押され無事に松風騎手と恋人に。以来ケイジと出会うたびにからかわれるようになった。
大竹騎手 負けはしたが、かつての相棒たちを思い起こさせるバトルを見せてくれるし、真面目にケイジのくれた勝利と偉業が大きすぎて素直に拍手。キタサンブラックとケイジたちの作った時代を引っ張っていくのと、ハルフカシとのレースが楽しみ。
スーザンママ ケイジとゴルシの同着勝利に漢ならぬオカマ泣き。バーの皆も一緒に興奮と涙の洪水状態だった。この後ケイジの馬房を片付けるのだが、改めてケイジの馬房の中が馬よりも人だなあと思いますます親近感がわいた。
阿部さん 思わずケイジたちの戦いぶりに興奮しちゃった。生で有馬記念を見に来れたことを一生の思い出にすると決めており、ヒメの来年のレースの際はぜひいい写真を撮りたいと目標にしている。
梅沢騎手 ケイジとヒメの前田牧場の馬たちに調教、もとい一緒に戦って成長中の若手。いつかケイジの様な名馬と共に戦えることを願いつつ、ヒメと来年以降狙うアジアマイルでの勝利を狙う。
藤井記者 ケイジの専属記者も同然の感じでここ数年は過ごしていた。引退式の際は涙と鼻水が止まらず大変で後日サングラスでないとやばいほどに目元が腫れた。引退式の後に前田牧場への新年のあいさつと食事会は満喫。でも記事はしっかりと贔屓は控えめで頑張った。
次回は多分ケイジの引退後のあれこれか、ウマ娘でのケイジの引退の際のお話になるかと思います。ますますだらだらやると思うのでお願いします。