日本国召喚 異世界の異邦人   作:アニキ イン ザ スペース

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第一話 独島警備隊

西暦2015年1月23日 午後11時59分 島根県 隠岐郡 隠岐の島町 竹島(韓国名 独島)

 

冬の到来と共に強風と荒波が増して来た日本海、そんな自然の猛威に耐えながら浮かぶ小さな島があった。

断崖絶壁で囲われた2つの小島と無数の岩礁からなる絶海の孤島……「竹島」である。

日本列島と朝鮮半島のおおよそ中間地点に浮かぶこの島を巡って、周辺の3か国が互いに領有権を主張する中、その中の一国である大韓民国が島に監視施設を建造し武装した人員を配備して実行支配を続けている。

 

かつての大戦後、大国の思惑により領土を分断され、それぞれ独立したあげく同じ民族同士で戦争を行う悲劇を繰り広げた大韓民国にとって憎むべきは、同じ民族で在る北韓(北朝鮮)では無く、かなうはずの無いアメリカ・中国・ロシア(当時はソビエト)の大国でも無く、当時の宗主国であった海の向こうにある日本国であると言う歪とも言える考えの元、彼らが独島(ドクト)と呼ぶこの島に踏み込み支配する事が偏執的とも言える日本に対する対抗心と自らの自尊心を満たす行為そのものとなっていた。

 

現在、韓国の不法占拠状態となっている竹島には大韓民国・慶尚北道警察庁所属、独島警備隊イ・ロウン隊長率いる隊員38名と海洋水産部の灯台管理員の4名が“独島は我が領土”のスローガンの元、実効支配を強化すべく島に常駐していた。

 

その中の一人、独島警備隊員 カン・ジュンソは島に設営された警備隊宿舎で同僚のキム・ドハ、上官で副隊長のチェ・ヒョヌと共に夜間当直の任についていた。

激しい風の音が宿舎の中にまで聞こえてくる……ここ数日、海は荒れ模様で連絡船が寄港出来ない日々が続いている。

気象台の発表ではあと4~5日はこの状況が続くとの事らしい……ため息をつき、ふと窓を覗き込んだジュンソは空が明るくなっている事に気づいた。

 

「おや……流れ星?」

 

そう思って見続けていた空は更に明るくなり、その明るさは流れ星では無い……まるで日中の様な明るさとなった。

 

「何だ! 急に空が明るく!?」

 

部屋にいたチェ副隊長・ドハも窓から外を見上げる中、昼間の様に明るかった空は10秒程で再び闇夜に戻っていく、すると大きな地鳴りが響き始め、ジェンソは足元が揺れている事に気づく。

 

「おい!地面が揺れているぞ!!!」

 

「な…これは、地震!?」

 

地震を体験した事が無い3人は突然の揺れに顔は青ざめ、恐怖のあまりついに床にへたり込んでしまう。

おおよそ1分程であるが、いつまでも続くかの様に思えた地震もようやく収まり、チェ副隊長は近くに有った机に手を伸ばし、恐る恐る立ち上がった。

 

「あぁ……まったく生きた心地がしなかったぞ、ジュンソ! ドハ!!」

 

「あっ……はい! ドハ、大丈夫か!?」

 

ジェンソも立ち上がりながら答える、まだ床にへたり込んでいたドハは、怯えた表情で顔を立てに振って頷いた。

 

「お前達は外に出てさっきの地震で施設に損傷が無いか確認してこい、俺は隊長に指示を伺う!」

 

「了解、副隊長! ドハ、行くぞ!!」

 

いまだに腰がおぼつかないドハを起こしたジェンソは上着を着た後、懐中電灯とトランシーバー、そしてK2自動小銃を持って外へ出た……外へ出るとさっきまで強かった風はいつの間にか収まっており、海の波も穏やかに凪いでいた。

ジュンソとドハは懐中電灯の明かりを建物に照らして損傷が無いか調べていく。

 

「なぁジュンソ……この島の建物って無理矢理、島の上に建てたから崩壊する危険性が在るって聞いた事あるか!?」

 

「あぁ、だから副隊長もその事を知っていて俺達に見回りさせてんだろ…でも、見た所は問題なさそうだ!」

 

付近の建物に損傷が無い事を確認したジェンソは報告すべくトランシーバーのスイッチを入れた。

 

「ジェンソより、指揮所へ応答されたし……。」

 

「こちら指揮所、ジェンソ二警、外はどうなっている!」

 

「こちらジェンソ、先ほどの地震で損傷、ひび割れが入った建物は存在しない事を確認……現在、外は無風で波も穏やか……!? あれ? 月……月が!?」

 

「!?……こちら指揮所、ジェンソ二警、月がどうした!?」

 

「あ・あの……月が……月が2つあります!!」

 

ジュンソとドハは自分達の世界には存在するはずの無い、東の空に浮かぶ2つの月をただ呆然と見続けていた……。

 

 

(日本国転移から)翌日……

 

 

地震から一夜が明け、朝を迎えた竹島は穏やかな波の元、久々の晴天に恵まれた青空には多くの海鳥達が何事も無かったかの様に飛び交っていた……しかし、その島に常駐する独島守備隊は今だ混乱の中にいた。

 

「おい!本当に何処とも連絡がとれないのか……昨夜の地震で無線機が壊れたとかでは無いのか!?」

 

チェ副隊長は通信担当であるチョン・イドゥンに問いただす。

 

「はい、衛星通信から長距離の無線通信、全て応答が在りません、故障に関しては何度も確認しましたが……。」

 

「こちらの故障では無く、本国からの応答が無い上に通信衛星の信号すらキャッチできません。」

 

「水上レーダーも地震後、航行する船を感知した形跡が在りません……こんな事は初めてです!」

 

イドゥンの報告に、チェ副隊長は苦い顔をしつつ腕を組む。

 

「いったい、どうなっているんだ! そういえば公共放送はどうなっている? ラジオの放送ぐらいは聞けるだろ!?」

 

一方的に電波を送信する放送局ならば、テレビの電波はともかくAMや短波のラジオ放送ならば海の上にあるこの島なら遠くの局からでも受信する事ができる。

 

「それなんですが、本国からの放送局の電波はいっさい受信できてません! これは北韓(北朝鮮)・中国・ロシア共に同じです……ですが、日本……日本のラジオ放送だけは受信できました。」

 

「日本だと!?……日本語が解る奴らは今は全員、鬱陵島(うつりょうとう)に居るから、誰も聞いても分かんないぞ!!」

 

何処とも連絡が取れない状況で唯一、受信できた電波がよりによって日本のラジオ放送のみと言うことに大の日本嫌いで知られているチェ副隊長は苛立ちを感じていた……。

その頃、独島警備隊員隊長のイ・ロウンはカン・ジュンソとキム・ドハを連れて警備隊宿舎の有る女島(韓国名ドンド)の西隣に在る男島(韓国名ソド)に建てられた、男島の頂上に向かう急な階段を上っていた。

 

「なあ……ジュンソ、ドハ、海を見て何か違和感を感じなかったか?」

 

階段を上りながらイ隊長が2人に問い合わせる、ジュンソは海の見える方向に顔を向けると夜中には感じなかった妙な違和感を感じた。

 

「ええ……何と言うか、水平線の丸みがなんだか緩やかに見えると言えばいいのでしょうか!?」

 

「やっぱり、そう思うか……昨夜からおかしい事ばかりだ。」

 

やがて3人は息を切らしながらも階段を上り終え、男島の海鳥達が営巣している海を見渡せる高台へと到着した。

イ隊長は持っていた双眼鏡を手に西北西の方向を見続けながら嘆く様に呟いた。

 

「あぁ……これは見えていないだけなのか!? どう理解したらいいのか分からん!!」

 

イ隊長の呟きの意味が解らなかった2人は隊長と同じ方角を見てその言葉の意味を理解し驚愕した……。

 

「鬱陵島(うつりょうとう)が……見えない!!!!」

 

晴天の日なら島から西北西の方角に必ず見える筈の島、竹島より約87km離れた先の鬱陵島が影も形も見当たらないのである。

3人が呆然とする中、キム・ドハが南の方角より海鳥とは違う何かが飛んできているのに気が付いた。

 

「イ隊長! 南西方向より航空機、四発機です!!」

 

3人が空を見上げるとそこには白い四発機……赤い丸の国籍マークを付けた海上自衛隊のP-3Cが島の上空を通過しようとしていた。

 

「日本の奴ら、こんな近くまで飛んでくるとは……空軍は何やってんだ!!!」

 

ドハがそう毒づくと島の上空を通過した日本のP-3Cは進行方向を鬱陵島の在る方角に向きを変え消えていった。

 

「本国と連絡が取れない……日本の航空機がここまで飛んできて鬱陵島へと向かっていった……いったい何が起こっているのか!?」

 

イ隊長は、日本の哨戒機が韓国空軍からの妨げも無くここまで飛んで来ている事から、何か途轍もない事が起こっている事を感じるも、それが何かを確認する術が無いまま時が過ぎていった……。

 

続く




初投稿となります……日本国召喚・本編を読んでみて、語られる事がとても少ない在日外国人達の話はどうだろうと思いついて本編の補間のつもりで書いてみました。

作品を書くに当たって、日本国召喚・本編と日本国召喚wikiを参考にしていますが、作中でも日本が転移された年月がハッキリと書かれていない為、本作では転移の日を「西暦2015年1月24日 午前0時」としています。
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