日本国召喚 異世界の異邦人   作:アニキ イン ザ スペース

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第四話 情報部別班

竹島(韓国名・独島) 独島警備隊宿舎

 

シン書記官は3時間ほど島に滞在した後、日本の巡視船に乗り、日本へと戻っていった……彼が話した内容……今まで韓国大使館が収集した情報――これまでの出来事は独島警備隊にとって受け入れ難い内容であった。

日本の領土が異世界に転移……それも日本の本土だけでは無く、日本が領土主張していた尖閣諸島・沖ノ鳥島・北方四島、そして竹島――独島が合わせて転移して来ている。

この島は日本の領土で有ると言わんばかりの事が自分達を巻き込んで起こったのだ!!

これは“独島は我が領土”と唱って来た彼らには、「本国への連絡方法はおろか帰る手段が無い!!」と言う現状よりもショックな出来事でありこの島を日本の領土だと認めて転移させた何者かに対して怒りと憎しみを露わにするのであった……。

 

隊員達の動揺が続く中、イ隊長はシン書記官より入手したUSBカードをパソコンに接続しファイルを閲覧し始めた……。

USBカードには、韓国大使のメッセージとこれまで入手してきた日本の転移とこの異世界に関する情報、韓国外交部が長距離無線通信時に使用する規約と暗号コード……そして、暫定的ながらもこれからの方針に関するファイルが入っていた。

ファイルを一通り読み終えたイ隊長は隊員達に食堂へ集まる様、指示を出した。

 

独島警備隊宿舎で一番広い部屋である食堂に独島警備隊員と灯台管理員のほぼ全員が集まっていた、広い部屋と言えど30人以上が集まればとても狭く感じる、ジュンソやドハも他の隊員と共に肩を寄せ合い並んでいると、イ隊長とチェ副隊長の二人が食堂へと入ってきた。

 

「気を付け!! イ隊長に敬礼!!!」

 

当直の班長の掛け声で整列していた隊員達が一斉に挙手の敬礼を行う、イ隊長は集まった全員を見渡した……。

 

「これよりイ隊長より、独島警備隊及び灯台管理員……島にいる全員にこれからの方針を発表する、心して聞く様に!!」

 

チェ副隊長の発言の後、皆が沈黙し見つめる中、イ隊長の話が始まった……。

 

「今、独島に居る我々は非常に困難かつ理不尽な状況化で在る事は諸君達も知っての通りだ、本国との連絡が途絶え、情報も無く孤立した状態が続いた……本日ついに在日大使館と連絡を取ることが出来たものの、ようやく得る事の出来た情報は異世界への転移と言う信じがたい出来事であり、今は祖国との連絡方法はおろか帰る手段すら見つかっていない……そして何故、我々がこの異世界へ転移したのかその理由すら分からない状況である……。」

 

「だが! 日本に居る在日同胞と連絡を取る手段が確立され、在日大使館は早急に我々の支援を行う事を約束してくれた! 我々が今いる独島はこの世界で唯一の大韓民国の領土であり、我ら韓民族の誇りと自尊心でもある! 今ここで祖国に戻れない事に悲観している場合では無い! 共に異世界に転移した在日同胞の為に、この独島を日本・そして異世界の勢力から守り抜く事が! 今ここにいる君たち独島警備隊と灯台管理員に課せられた使命である!! 我々は祖国へと帰還する術が見つかるまで! 祖国からの援軍が来るまで! この独島を死守していくのだ!!」

 

「そうだ! 我々はこの独島を死守する! 独島は我が領土! 大韓民国万歳(マンセー)! 独島警備隊万歳(マンセー)!!」

 

チェ副隊長の掛け声と共に部屋にいた隊員達全員が大声を上げ万歳三唱を行う! 

 

「独島は我が領土! 大韓民国万歳(マンセー)! 独島警備隊! 万歳(マンセー)! 万歳(マンセー)!! 万歳(マンセー)!!!」

 

食堂に響き渡る、万歳三唱……シン書記官の来訪により独島警備隊員達は自分たちが孤立していない事を知り、イ隊長の激励によりこれまでの憂鬱な雰囲気を吹き飛ばし大いに士気を高めた彼らは、改めてこの島を守る決意を固めた。

……とは言え、独島警備隊は韓国大使館からの補給が来るまでに、少なくとも3~4週間は補給の無い状況が続くのだ。

イ隊長はチェ副隊長を含む各班長を集め会議を行い、今後の方針を話し合う事にした……。

 

在日韓国大使館による独島警備隊への補給業務は独島を訪れたシン二等書記官が総指揮を取り、在日韓国民団や在日韓国人の資産家・経営者から資金を集め、さらに転移により出港出来なくなった韓国籍の大型漁船を船員込みで借り入れる事にも成功していた。

借り入れた大型漁船は35mを超える大きさのFRP船で、韓国大使館の公船として「パランド」と名付けられた。

こうして、監視活動を行っている公安の担当者も驚く程の短期間で独島警備隊への物資補給準備を終えたのであった……。

 

(日本国転移から)24日後……竹島(韓国名・独島) 独島警備隊宿舎

 

独島警備隊宿舎ではイ隊長とチェ副隊長……そして在日韓国大使館のシン書記官が暗号化された秘話無線通信にて打ち合わせを行っていた。

 

「シン書記官、これまでの協力を感謝いたします……しかし驚きました、こんなに早くに補給の準備ができるとは!」

 

「ええ、資金や船を提供してくれる在日同胞を説得するのに骨が折れましたよ! それと物資は要望の有ったもの……武器・弾薬以外は全て揃えて明日までに積み終えますので、明後日にはそちらに届く手はずになっています。」

 

実際は部下に檄を飛ばし方々から資金や物資を集めさせたのだが、シン書記官は自らが苦労して成し遂げたかの様に喧伝していた。

 

「そういえばシン書記官、出港するにあたって日本からの妨害が心配なのですが……?」

 

日本の動向を気にしているチェ副隊長がシン書記官に質問を投げかけた。

 

「そこは問題有りません、物資の調達でも妨害はありませんでしたし、何より補給船は大韓民国の公船扱いになりますので国際法により公船への立ち入りは行えません。 もちろん念を入れて船には大使館の職員を乗船させますので……それに今日本はクワ・トイネ公国との国交樹立を含めた交渉が控えておりますので、前世界の国際法と言えど立場上、日本は破るような事は出来ないでしょう!」

 

「それと今回の補給が無事に終わりましたら、今後の事……ファン駐日大使から、我々も独島を拠点にして異世界国家と独自に国交を開こうと言う話が有りまして……先ほど日本が施行した『新世界技術流出防止法』に影響されず、我々独自で異世界国家に技術を提供すれば、この世界で日本よりも良い立場と関係になる事が出来るだろうと……なので、これから独島はこれまで以上に我ら韓民族の重要な拠点となります!」

 

チェ副隊長は、この異世界で日本を出し抜く事が出来ると聞いて色めき立った。

いや……この世界の国々は中世の技術水準と言う話だ、銃火器を持った独島警備隊だけでも相手を屈服させて領土を割譲させる事も可能だろう! そうすれば我ら韓民族の新天地をこの異世界に築く事も夢ではないと言う事だ……チェ副隊長を始め、彼らは自分たちが支配するであろう土地に関して様々な思いを巡らせていた。

 

 

同日――日本国東京都千代田区永田町、首相官邸

 

この様な拙速とも言える韓国大使館の動きを公安から報告を受けた日本政府は、再び関係省庁から幹部が集まり首相官邸にて会合が行われた。

 

「それにしても、ここまで早く行動に出るとは思わなかった……。」

 

今回も会議の進行役を務める内閣府参事官の中田は両腕を組みため息をついた、最初に手を上げた外務省の幹部が答える。

 

「はい、これまでもそうですが……彼らは一度、目標を決めたら驚くほど速く行動に出ます! 韓国は他の国と違って、日本国国内に本社や拠点を構えている在日韓国人の企業も多く、さらに在日韓国民団といった組織もありますので、資金や物資の調達も他の国に比べれば容易に行うことができます、しかし……この異世界転移時の混乱が有ったと言うのに、ここまで纏まる事が出来るとは思いませんでした。」

 

外務省の幹部は、韓国がここまで事を進める事ができた理由を簡潔に説明した、彼自身も以前、韓国との交渉を担当していた為、かの国がどう動くかは理解していたが、ここまで早く動くとは思っていなかった……続けて警察庁の幹部が発言する。

 

「韓国大使館の職員と警備隊の接触が有った後、双方との通信が確立された為、秘通話無線通信が頻繫にやり取りされています、解読は可能ですが少し時間が掛かります……それと昨日入った情報ですが、韓国の外交関係者が竹島の件で朝鮮総連に協力を依頼している事が確認されました、さらにマスコミや一部の野党議員と接触しているのが確認されています……これは、我々に竹島への補給活動を妨害しないようにする為の牽制策でしょう。」

 

「朝鮮総連とは、また面倒な組織が出て来たな! おまけにマスコミと野党議員まで担いでくるとは……これは様子見を決めるなんて悠長な事は言えなくなってきたぞ!!」

 

腕を組んでいたまま各幹部の発言を聞いていた中田参事官がぼやいた後、防衛省幹部の三津木が手を上げ発言した。

 

「ここでの動きは外務省幹部の発言通り……正直、今回の件を発案した私でもこれは想定外でした! しかし、連中の竹島への補給活動に対しては表立った妨害活動はこれまで通り行わない様に各関係部署にお願いします……正直、最初の一・二回は補給をやってくれないと、物資が切れて連中に暴れられてもこちらが困るので! そうそう……中田参事官から出された前回の宿題だった長期的な問題の対策の件ですが……。」

 

「おおっ……何か妙案が有るのか!?」

 

それまで腕組みしていた中田参事官は身を乗り出して、三津木の話を聞き入れ様とした。

 

「手段を問わないと言う条件ならば……詳細はここでは話せませんが、了承が得られれば、この案件は我々の情報部別班が対応いたします!」

 

三津木の発言に対し中田参事官は何か思い当たる様な渋い表情を浮かべた……。

 

「情報部別班か………………解った! この件は私から直接、総理に話す。」

 

中田参事官はそう返答した後、早々に次の議題に話を進めた。

この後も、竹島の警備隊と韓国大使館について様々な事案が議論されたが、明日にでも出港するであろう韓国の補給船については航空機による遠方からの監視のみとする事と決定された。

そして、三津木と中田参事官の一部の発言に関しては議事録から削除される事となり、その日の会合は終了した。

 

(日本国転移から)26日後・早朝……日本国鳥取県境港市

 

境港の埠頭に停泊している一隻の白い船……その船には大韓民国の国旗で有る太極旗が掲げられ、十数人の在日韓国人とメディア関係者が囲むようにしてその船の出港を見送っていた……以前は漁船だったその船は「パランド」と改名され、大韓民国の公船として大量の燃料・食糧・生活用品等を積載し竹島(独島)へと向かい出港を開始した。

……境港埠頭の対岸の木の陰から出港するパランドを地元の住民と変わらぬ姿で監視する男達の一団がいた、その中の体格の良い――黒いベンチコートを着た男は船を見ながら苦笑いを浮かべていた。

 

「おやおやおや……サトちゃんよぉ~! どんな船かと思って見に来たら、あん時の船じゃねえか! そう言えばあそこに立っているハゲオヤジの船だったなぁ!!」

 

男は漁船には珍しい船橋に傾斜の有る特徴からその船の正体を見抜き、さらに対岸に船を見送っている頭の薄い中年男性を見つけた。

 

「山ちゃ~ん! やっぱりあの船とハゲの事、知ってた!?」

 

隣にいた、ジャンパーを着てメガネを掛けた細身の男が問いかける。

 

「あぁ……あの船は少し前、上海沖に停泊していた北朝鮮の貨物船と瀬取り(せどり)をしていた船でな! 偵察衛星で見つけたアメさんからこちらに照会の依頼が来たから、調べてみると韓国の漁船なのに所有者は何故かそこに立っている在日のハゲオヤジの船だった……てな!」

 

山ちゃんこと、山内哲也三佐は陸上幕僚監部運用支援・情報部別班と呼ばれる公式には存在しない事になっている部署に所属する自衛官である。

普段は身分を隠して主に国内外の軍事情報・工作員の動向の調査を行っていたが、今回は同期である三津木の指名も有り、韓国大使館の公船の調査に赴く事となった。

 

「そう! あのハゲ……高野賢ことコ・ヒョンは、表向きは日本で商社を経営している在日韓国人だが、日本の制裁措置で輸入が出来なくなった北朝鮮に機械部品や幹部用の贅沢品やらをあの船を使ってせっせと運んでいたんだ……その時は韓国にも連絡はしたんだが、何故か連中はあの船の活動を見て見ぬふりをしやがった! しかし、転移に巻き込まれて日本に居たとはねぇ……。」

 

ジャンパーを着たメガネの細身の男……サトちゃんこと、佐藤浩太郎は少し呆れた顔をしながら答えた……。

警察庁の外事情報部に所属する彼は山内とは旧知の仲であり、今回は情報部別班と合同で活動する様、指示を受けていた。

 

「サトちゃん……悪いが、あのハゲオヤジと周辺の情報を集めてくれ! こちらは当面、連中の行動を監視する事になるが、好機と見たら行動に移しても良いと上から指示を受けている!!」

 

「了解!! 今回は取り分け、総理がこの一件で竹島問題にケリを付ける良い機会だと言っているからな!」

 

「そうだな……今日は東京でクワ・トイネ公国との実務者協議が有る日だ! 俺達はこれからこの異世界の連中を相手にしなければならねー! いつまでもアイツ等に構ってなんていられねーぜ!!」

 

境水道を航行する船を見送ると、山内と佐藤は車に乗り、それぞれの行動を開始した。

そして、そんな男達に監視されているとは知らず、補給船パガンドは境水道を通過し、航路を竹島へと向け異世界の海へと旅立っていった。

 

続く




存在しない組織(過去に国会でその存在が疑われた事があった。)と言われている、自衛隊・情報部別班の登場です。
今回登場するオリキャラの山内・佐藤は80年代の探偵ドラマのイメージなので、少々軽めのノリで書かれています。
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