俺とベートの戦闘は予定調和のように呆気なく俺の勝利に終わった。個人的にはもっとボコボコにしたかったから粘ってほしかったと思う。
「……ガァ……ガハッ」
俺の目の前に倒れ伏しているベートは片腕を握り潰され両足が引き千切れて、誰が見ても瀕死の状態である。
夜行としては更にボコボコにしたかったが、これ以上の手加減も難しかったのだ。
「分かっただろ。お前は他人を見下したり貶す事ができるほど偉くもないし強くもない、むしろ見下される側の雑魚なんだよ」
俺は冷めた目付きでベートを見下ろして言った。地響きに駆けつけたのか、ドタドタと他の人も店の中から外に出て、俺とベートの現状を見て唖然としていた。
「遅かったな」
唖然とする理由も分からなくはない。何故ならベートの片腕は握り潰されて骨さえも折れ、ギリギリで繋がっている状態であり、両足に関しては膝から先が存在せずにベートの身体から少し離れた所に落ちていた。
「ベート!」
「あれってヤバくないですか!?」
「生きてんの!?」
「ベートさん!」
「っ!」
誰しもがベートの敗北が分かってしまうくらいの惨状であった。そしてベートの冒険者生命が終わった事も理解してしまう。
「何故そこまでした!?」
出てきた集団の中からハイエルフのリヴェリアが俺に問うてきた。
「お前らだって敵対者には容赦なく潰すだろ?それと同じさ」
それに対して俺は至極当然といった感じに答える。むしろ何故疑問を覚えたのかが疑問と感じるな。
俺の言葉が気に障ったのか彼女は俺に近付こうとするが、
「夜行に近付かないでもらえますか」
レヴィによって腕を掴まれてその場から動けなくなった。
「ッ!」
本人も驚いているようだ。彼女は他のエルフよりかはマシだが、本来エルフは認めた者にしか接触を許さない潔癖症な所がある。
故に、軽い接触さえ毛嫌いするエルフも存在する。
先も言ったようにハイエルフであるが、他のエルフに比べたら他人への接触するのにマシな考えを持つリヴェリアでも赤の他人からの接触を許すほど貞操観念が低いわけではない。
だからこそ、レヴィに腕を掴まれるまで気付かなかった事に驚いている。
「あなた、リヴェリア様に何をしてるんですか!」
「早く離しなさい!」
ハイエルフのリヴェリアに勝手に触れるのは許されないと考えるエルフは多数いる。だから同性であろうと他のエルフからの叱責が飛んでくるのだ。
「レヴィ、構わないから戻ってきな」
「分かりました」
レヴィは俺の指示に従ってリヴェリアの腕を離して俺の所に戻った。
それでも何人かは俺たちに怒りの視線を向けてくる。ハッキリ言って自業自得の部分が大半を占めるから怒りの視線を向けてくるのはお門違いだと感じる。
「何か文句でもあるのか?あいつは自分から吹っ掛けてきた喧嘩に無様に負けただけだろ」
「そうだね。ベートが痛い目をみるのは自業自得だけど、そこまでするのは過剰じゃないかな?」
「そんな甘い教育してるから、あいつみたいな勘違い野郎が後を立たないんだろ」
「弱者が勘違いして自分は強いなどと妄言を吐くのも現実を見ない奴が悪い。それにこいつも言っていただろう雑魚を雑魚と言って何が悪いと」
『ッ!』
俺とレヴィの言葉によって怒りのゲージが限界を越える感覚を団員達は感じていた。
さすがにトップクラスの3人と主神のロキは俺達が何者かを知るために情報を引き出せないかと策を巡らせているように見える。
「それよりもあいつを治療しなくてもいいのか?」
「…………」
俺が指を指した場所には、もはや何かを喋る余裕さえ無くなった憐れな男のベートが未だに放置されている。
「ベート!」
「これはマズイのう!」
「リヴェリアを含めた回復魔法を使える者はベートを治療しろ!」
さっきまでは意識の外に置いてたのに気付いたらすぐに行動に移せたのは経験からか。
だけど、行動に移したからと言って治せるかは別問題だ。
「治療は可能なのですか?」
「無理だな。欠損程度も治せないからな。千切れた足なら希望はあったかもしれないけど、無理矢理潰したからそっち方の希望もないな」
この世界のポーション等の回復アイテムや回復魔法などは身体の部位欠損を治せるほど効果は高くない。
普通のポーションや回復魔法などは使えば小さな傷はすぐに無くなるが傷の度合が酷ければ何度も使わないと治りきらない。
エリクサーと呼ばれる回復薬もあるが、これも高い性能をしてるとは言えない。
ポーションの何度もを1回に短縮するのが限界で、全てを1回で治せる物でもない。治せる上限があり、それで足りないなら何本も使わないといけない。
「そんな!?」
「これは無理だよ!」
「ホームに戻ってエリクサーを取ってこい!」
ベートの治療していた魔法使い達は傷の酷さから治療が困難だと理解した。エリクサーを取ってくるように言うが、エリクサーでも無理だろう。出来て出血を抑えるのが限界だ。
「本当に君たちには聞きたいことが山ほど出来たよ」
「俺たちには無いんだけど」
「なら、これだけは答えてくれるかな?」
「まぁ答えられる事ならな」
俺はフィンが何を聞こうとしているかは完全には分からない。候補としては俺の力の秘密か冒険者としてのレベルか、もしくは闇派閥への所属についてを遠回しに確認してくるくらいしか浮かばん。
「君たちは何処のファミリアの者だい?」
フィンが聞いてきたのは、やはり俺の所属についての様だった。確かに自身のいるファミリアの幹部を無傷で倒されているし、そんな相手の事を一切知らなかったとなれば表ではなく裏の住人の可能性を示唆するのも当然か。
「悪いけど何処のファミリアにも所属してないんだよ。ついでに
「!!」
フィンは俺の答えに眼を見開き、顔をロキの方へと向けた。ロキもフィンの考えを察したのか首を横に降って無言で答える。
それは俺が嘘を付いていないという絶対的な証拠でもある。部屋を借りてるだけでファミリアに入っているわけではないし、神々の言う恩恵も得ていないから何一つ嘘は言っていない。
「それで質問は終わりだな」
「待て!」
俺とレヴィが踵を返して帰ろうとしたら声を荒げて静止の言葉をかけられる。
「……終わりじゃないのか?」
「簡単に帰すわけにはいかないね」
「武器も持ってない現状でか?」
「………」
俺たちを帰す気がないとフィンは言ってきたが、そもそもとして簡単に帰れる状況だ。実力的にも天と地ほどの差はあるし、武器有りでも武器の質や性能にも天と地の差が存在する。
「なぁ、ウチもお前に聞きたい事があるんやけど」
「ハァ……何だよロキ」
「何でこないな事をしたんや?」
「分からないのか?」
ロキからも聞きたい事があると言われ、一応は聞こうと思ったら、まさかそんな事だとは思わなかった。
状況から考えれば理由など絶対に分かりそうなものだが、ロキは本気で分からないという表情をしている。
「加害者が被害者に謝罪もしない上に被害者を笑い者にするんだから仕返しをされるのも当然だろ」
『!』
俺の言葉に何人かは、何故このような事をしたのかを理解した。
「ダンジョン探索中に本来はいない場所にミノタウロスと遭遇するし、その原因である奴らは反省してる処か他の被害者を笑い者にしてるときた」
『………』
「むしろ、このゴミを殺さなかっただけ良心的だと思うがな」
反論の余地は存在しない。そもそも自分達のミスだと自覚してるくせに他人を貶して笑ったのだから反論出来るはずがない。
極端までのバカならば気付かずに反論して更に自分の立場を悪くしただろう。
「それで、これ以上の理由は必要かな?」
「いや、十分や」
だからこそ質問したロキはそう答えることしか許されない。
ロキ・ファミリアアンチを付けた方がより分かりやすいと言われて、個人的にアンチを付けた方がいいのか迷うので皆さんに聞きます。
ロキ・ファミリアアンチを付けた方が
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いい
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いらない