霊夢達の様子を幽香視点でお送りします。
原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
YUKA
~永遠亭 地下通路
「…………良かった……」
霊夢が携帯通信機を耳から離して、安堵の声をあげた。
私達を敵の天邪鬼による死のゲームから救い、彼女と共闘した少名針妙丸という
小人がマリスに襲撃に遭った事が判ってすぐ後に連絡が来た。
霊夢は其の連絡を聞き終わったばかりだった。
「…今度は誰からでした?どのような要件でしたか?」
聖人と呼ばれている、豊聡耳神子が訊ねた。
「……レミリアよ。たまたま近くで見つけた針妙丸を保護したみたい……
針妙丸がマリスにやられていなかったみたいなのよ……」
霊夢は永琳さんから忠告されたとおり、電源を切ったのを確認した後に
機器をポケットに入れながら答えた。
そして魔理沙の方を見ながら、
「…アンタの言っていた通り、彼女達は外に出ている様ね」
「!待って!おかしいよ……だって、もうすぐ夕方じゃないの!?」
守矢の一柱、洩矢諏訪子が通路の入口を指差しながら反論した。
「どうやって活動出来るのさ!?灰になっちゃうよ!」
「アンタがハイになってどうするのよ……」
霊夢が絶妙なツッコミを入れる。
「咲夜の仇を討つのよ?復讐を果たす為に、アイツはどんな手でも使うと思うわ」
「!?どんな手でも?……UVカットでも使ってるんですか!?」
「其処は…判らないわ」
緑髪の現人神、東風谷早苗の進みすぎる発言も受け流した。
そんなやり取りの中、私は此の異変が始まって今まで自分がやって来た事を
振り返っていた。
どうしてかは判らない……
だが其の事は私に自責の念と共に、メディスンへの妄執をも掻き立たせてくれていた。
其の時私は、数少ない親友であるメディスン・メランコリーが
私の為に素敵な花が植わる場所を求め、一人旅に出てから其の帰りを待っていた。
ところが数日で戻ってくるはずの彼女の帰りがあまりにも遅く、一週間たった時の
私の内心には相当な焦りが募っていった。
すると其処へ霊夢と魔理沙が、当時突然行方をくらませたアリス・マーガトロイドにの捜索をしようと同行を誘ってきた。
多分、アリスの過去を知る私は何か知ってると思ったんでしょう。
最初は『太陽の畑』の荒廃を危惧し、嫌がったが、ある事を思いつき、
自分から持ち込んた弾幕勝負にわざと敗れた。
そして、私は二人と同行する事になった。
久しぶりのメンバーでの異変捜索に対する楽観、メディスンとは別に珍しい花を
見つけられるだろうという、軽い気持ちでの同行だった。
だが、同行を続けるにつれ、様々な事が起き、其の余裕は消えていった。
アリスが患っている奇病がもたらす他人になりすます驚異。
其を利用しようとする天界の陰謀。
魅魔との再会での、魔界探索チームで本格的な異変解決への移行。
そして……
心配していたメディスンが其の病気の犠牲となってしまっていた事だった。
私はメディスンそっくりの化け物を見せつけられ、怒り狂った。
許せなかった。数少ない親友を傷付け、そっくりに擬態させ、私を罵倒させる
敵の哄笑を………
力の限り、敵を殲滅した。文字通り、影も形もないほどに……
そして霊夢が龍宮の使いとの決着をつけ、全てが解決の方向へ向かっていると思った。
メディスン達も、見つかるのは時間の問題だと思っていた。
だが、だけど………首を振った。
まさか、私自身も喰われる事になるなんて……
長生きしてきた中で、あんな経験をしたのは初めてだった。
私は只、神社に襲撃してきたマリスがメディスンの毒の力を乱用しているのを
我慢出来なかった。
他者の戦いに乱入して傘でとどめを刺したのは良かったものの、
飛び散った破片の一部が、私のお腹に傷を付け、其処からまるで土に水が
染み込む様に体内に入って行った。
まるで熱にでも侵されたかのように身体が自由が利かず、抵抗するも
白濁していく意識の中で、私が目の前の人達を勝手に傷付けるのを
見ているしかなかった。
もし、あの時…私がマリスの浸食を振り切れていなかったら………
あそこにいた皆が全滅していた可能性が高かった。
そして辛くも事無きを得た其の後、龍宮の使い達に対抗して異変解決に尽力したメイド、
十六夜咲夜がマリスの被害に遭ったという事を知り、永遠亭までやってきた。
そして不死身の人間を骸を見、更なる黒幕の存在という真実に晒され、
現在に至るというわけだった。
まだ、何も終わってなかった。始まってすらもなかった。
メディスン……
悲しかった……
だが、私にしては本当に珍しい感情には違いなかった。
……本当に、何処に居るの……?
「……かや……」
…………
「……幽香や!何ぼーっとしてるんだい!?」
「!!」
魔理沙の肩を持つ魅魔が私の顔色を窺っていた。私は慌てて健全だという事を示す。
「い、いえ、何でもないわ……」
「魔理沙みたいに脱水でも起こしたか?其とも、またメディスンの事を
考えてたのかい?ん?」
「………え、ええ……」
図星だった。
「アンタの親友なら、簡単にはくたばらないさ。どんな目に遭わされようとも、
必ず生きてる!私ならそう思う……其に……」
魅魔が片方の口角を上げて、ニッと笑った。
「救う時は私も一緒だ、幽香!昔に世話になった、アンタへのせめての恩返しさ」
「!魅魔……」
其の時、奇妙な感覚を覚えた。
「!?」
何……此の感じ……
!!…私のではない…此の感覚は………!!
「花が……苦しんでいる……!」
「!?」
私の能力……『花を操る程度の能力』。
何もない場所から花を咲かせたり、私の大好きな向日葵の向きを変えたり、
枯れてしまった花を元通り咲かせたりすることができ、時に花を弾幕として操る。
そして最近はテレパシーの様に、花が何を思うか、何を欲しているかまで其の能力を展開させる事が出来るようになった。
だが、其の花が感じている苦しみは、私が味わった苦しみにそっくりだった。
そして其を感じ取った方向……まさか……!
「太陽の畑が……マリスの襲撃を………!?」
「!太陽の畑……!?」
其を聞いた霊夢が振り返った。
「じゃあ……コーリンも危ないじゃない!!」
「!?何だtウッ……」
魔理沙が声を荒げた時にフラッと其の身体が傾いた。
「!おいおい……興奮するんじゃないよ…!」
魅魔が慌てて弟子を支えた。
コーリン……
私が太陽の畑を離れる時、其処を彼女達の知り合いの男に管理係として預けていたのだ。
彼の名は森近霖之助。魔理沙と同じくお店を経営していた、なかなかよく
面倒見のありそうな顔をしていた。
私は嫌な予感がした。
「私は太陽の畑に戻るわ……良いかしら!?」
「!?」
皆驚いた。予想通りの反応だった。
「私の居場所を食い荒らすマリス達を、野放しにはしたくないのよ」
「!マリスは増えます!危険ですよ!?でしたら、私達も援護に……!」
「早苗」
加勢しようとする彼女に、一柱が声をかけた。
「!?神奈子様……!?」
「彼女は自分が望むやり方で……しかし平和の為に貢献しようとしているのです」
……流石ね…神様……
「ですが……!!」
「……私一人で十分よ……独りよがりで悪いけど」
食い下がる現人神に対して私は、丁重に断った。
「私の居場所も…幻想郷の住民も…此以上、譲る訳にはいかないのよ…!」
最初のころと今とでは明らかに私は態度は違っていた。
此以上…アリスを操る黒幕に好き勝手はさせないわ……!
思惑通りには動かせはしない……!!
「幽…香……!」
魔理沙が魅魔に支えられながら私に言葉をかけた。
顔が青い。脱水症状をぶり返したのだろうか……
「コーリンを…頼む………アリスに、此以上濡れ衣を……着させたくはねぇ…!
アイツに…コーリンを……殺させないでくれ………!」
私は其の時ほど、魔理沙の懇願するような表情は見た事が無かった。
「……判ったわ、魔理沙……!!」
そして隣の魅魔をみた。困惑した表情を浮かべていた。
「幽香……まさか、行っちまうんかい…!?」
「大丈夫よ。パッパと片付ければ良いだけの話だもの」
そして、霊夢を見た。腕組みをして此方を見ていたが、
私が見るとそっぽを向いた。
「…無理に、此処まで同行させてきて悪かったわね…幽香」
「謝る必要はないわ…私も、此の異変を甘く見ていたばかりに……」
……あたかもどうでも良い様に振る舞っているが、其が霊夢なりの心配の仕方だという事は知っていた。
でも、あの小人の時の様に心配してくれても、良かったと思うけどね……
「……我を忘れて、死なないでよ?」
「黒幕の魔の手から、メディスンを救い出すまで……」
そして後ろを向き、私は足を鉄の床から離し、
「……私は……死ぬわけにはいかないのよ」
そう言って、鉄の四面に囲まれた通路を高速で飛翔した。
YUKA
~永遠亭 廊下~永遠亭 入口~迷いの竹林 上空
私は地下通路を抜けだし、永遠亭の病棟の廊下の一角を飛んでいた。
……私が……親友以外の心配をするようになったなんて………
まだまだ未熟だったというわけね、私も……
(此れじゃあ私も……長寿、長寿って言えなくなるわね……)
飛びながらふと、そんな事を考えていた。
……にしても、患者にでもぶつかったら大事間違いないね、此の速さじゃあ…
天井ギリギリを飛ぶとしようかしら……?
高度を調整して天井に近付いて飛んだ。
だが其の時、天井近くに設置されていたスピーカーから声が聞こえた。
『非常事態発生……非常事態発生……!!当屋敷一階、カタルシスルームで
非常事態が発生しました…繰り返します…!!』
!非常事態…?何があったのかしら…?
横を通り過ぎ、既に遥か後ろに行ってしまったスピーカーを見ながら
私は其の内容を怪訝に思った。
そして前を向いた瞬間、次のスピーカーが迫って来ている事に気付いた。
とっさに頭を下げてすんでのところをかわす。
危ないわね……本当は、傘で壊しながら進みたいけど……
顔面をぶつけたら流石にマズいから出来るだけ、端に寄らずに中央で飛ぶ事にする。
そして遂に永遠亭を抜け、竹林の上空へ辿り着いた。
いったん停止し、太陽の畑の位置を再確認する。
マリス……メディスンや私の身体だけでなく、私の畑にまで手を出して……
其もまた一人、自分色に染めあげようとする者がいる………!!
……肥しの資格にも満たない………着いたら、纏めて駆除してやるわ……!!!
そして、沈む夕陽を拝めないほど苦しんでいる向日葵達や彼等の為に
抵抗してくれている者のもとへ向かって、私はスピードを上げていった。
如何でしたか?
衣玖さんが起こした異変から今に至るまで幽香に関する出来事を
彼女からの視点でプレイバックしました。
セリフと独白だけの前作の捕捉になって下されば何よりだと思います。
今回から幽香が霊夢達の下から離脱します。
そして次回は、再び屠自古視点に戻る予定です。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪