東方孤傀劇Ⅱ~ナラクのアリス   作:因田司

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今回は永遠亭の一室における、屠自古と衣玖を変異させたマリスとの
一騎打ちを紹介していきます。

原作とは大きく異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て頂くと、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


Thunder Masters ~Again~

TOZIKO

VS〈禍々しき龍の衣〉イク・スィオソーラス

~永遠亭 カタルシスルーム

 

 

『……当屋敷一階、カタルシスルームで非常事態が発生しました…繰り返します…!!

緊急事態発生……緊急事態発生……』

 

 

悪龍に変異した衣玖と対峙していた時、そんな放送が聞こえ、目をわずかに上に向けた。

 

……警報だな……其もはっきりと此処を示している。

となると、太子様達も直に……

 

なら、其の前にケリを着けてやる!

 

 

すると目の端でマリス衣玖が後ろを向き、壁を爪を使ってまるで百足の様に

登り始めたのが見えた。

 

 

(何をするつもりだ……?)

 

 

視線を戻して身構えていると、遂に全身が天井に張り付き、其処から蛇が鎌首を

もたげる様に衣玖の顔を此方を向け、突然紫色の塊を二つ吐き出してきた。

 

 

「!?なっ……」

 

 

慌てて後ろに下がって避ける。塊が泥団子を落としたみたいな音を立てて着弾した。

 

くそぉ、コイツ……衣玖にゲロまで吐かせやがって……!!

しかもよく見ると紫色の塊の中に何かが光っていた。

 

棘……金属か……

さっき呑み込んだベッドの破片を仕込んでやがったな……!?

 

 

「棘符『雷雲棘魚』!!」

 

 

其の途端、スペルを発動した奴の身体を黒い雷が覆った。

 

黒い……雷……!?

 

 

「衣玖……お前は……何処まで……!?」

 

 

衣玖は天井から離れて其のまま垂直に落下する。

 

そして其の場でとぐろを巻くように動くと、

 

 

 

「オヴグォオオォオォォオォオーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

 

突然、弾かれるように大口を開けながら高速で突進してきた。

 

 

「!危な……!?」

 

 

其のあまりの速さに、私は焦って上によろける様に避けた。

間一髪、私のいたところにトラバサミの様な牙が鋭い音を立てて噛み合った。

 

上から様子を見る。

黒い雷を纏った黒い体には沢山の目玉があり、全て此方を見上げていた。

 

 

すると、衣玖の口から、

 

 

「羽衣ヲ寄越スノヨ……蘇我ノ亡霊……!!」

 

 

二人の声が混じった奇怪な声が出てきた。

 

一人は衣玖のものに違いない。だが……もう一方の声は………!

 

 

 

「……アリス……お前か……!?」

 

 

直接聞いたことはなったが、違いねえ……

アリス本人が、衣玖を侵食したマリスを通じて会話してやがる……!

 

怒りが込みあがってきた。

 

 

「てめぇ……衣玖に何しやがったぁ!!?」

 

 

降下しながら思わず怒鳴った。

 

 

「!別ニ大シタ事ジャナイワヨ……」

 

 

そう言いながら、衣玖が決して使うことの無いような口をひん曲げた笑い方をした。

刀の切っ先や釘を並べたような不揃いの歯が並んで見える。

 

身体を覆っていた、黒い雷が消えていった。

 

 

「只ネェ……簡単ニ言ウト…………」

 

 

 

 

「……食ベタダケ」

 

 

……は?

 

 

「丸呑ミニシタケド……不味カッタカラ思ワズ吐キ出シチャッタワ」

 

「!?お、おま……衣玖を……喰ったのかよ!?」

 

 

信じられなかった。じゃあ……衣玖を覆っていた、あの紫色の粘液って……

 

だが、あのアリスもテレビで見た姿のままじゃあ、丸呑みどころかひと一人を

喰い尽くす事すら不可能に近い筈……

 

どうやって……!?いや、まだ疑問はある……

 

 

「……どうやって、地下の衣玖を襲う事が出来た?」

 

「…想像ニ任セル」

 

 

ぐっ……流すな……!!

 

 

「ダカラネ……モウ少シ私ナリニ工夫シテ、完全ニ食ベラレル様ニスルノヨ……此ノ魚ヲネ」

 

 

……どうするつもりなのかは、よくは理解できなかったが……

 

 

 

 

 

私は完全にキレた。

 

 

「っっざっけんじゃねえぞ!!!ぜっっったいにぶっ殺す!!!!!!」

 

 

そう叫ぶと私はスペルを発動した。

 

 

「雷矢『ガゴウジサイクロン』!!!」

 

 

すぐに雷の如くジグザグに移動する大量の矢が、マリス衣玖に殺到した。

 

だが、弾幕が命中しそうになった瞬間、

 

 

「『龍の眼』!」

 

 

衣玖の前に出現した、回転する黒い雷球を繋ぐ放電が全て弾いた。

 

 

「!!?」

 

 

私の…スペルが……!?

 

 

「私ノ恨ミハ……怨霊以上ニ溜マッテイルノヨ!!」

 

 

スペルが……くそ……どうすれば………

 

 

 

 

 

 

 

「屠自古!!」

 

 

後ろからの声が聞こえ、振り向いた。

 

 

「!太子様……!?」

 

 

開けられた入口から太子様や、霊夢達が立っていた。

 

 

「!衣玖……!!また其の姿に……!?」

 

 

霊夢が驚愕していた。

!そうか……此の姿はあの時、玄雲の中で霊夢達と戦った姿なのか……!

 

 

 

 

だが、私の其の隙が仇となってしまった。

 

 

 

 

戻そうとした私の横顔を、化け物衣玖の尻尾が容赦なく叩き飛ばした。

 

 

「!屠自古!!」

 

 

逆さまに壁に叩き付けられた。其のまま下にずり落ちていく。

 

 

「~~いってぇえ…顔ぉ………!」

 

 

そして直後に脇の下にあった感触が無くなっていたことに気付いた。

 

 

「!しまった!羽衣が……!!」

 

 

そういっても既に遅かった。

 

衣玖の背面に戻り漂い始めた羽衣が、まるで龍の翼の様に変異した。

 

 

「フフフ……準備ハ完了……後ハ……」

 

 

衣玖は入口の方を向いた。

 

!マ、マズい……!!

 

 

「太子様…方…!……~~其方に……!!」

 

 

私の言葉に皆が反応し、素早く入口から身を引いた。

 

 

 

「ギアァアァアアァァアァアーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

 

 

 

すぐに衣玖が入口を突き破って、廊下の反対側に突っ込んだ。

衝撃で廊下側の天井の一部が落ち、煙が上がった。

 

私はすぐに身を起こして、部屋の入口に捕まりながら其の向こう側を見た。

 

 

皆が、煙から身を置き、身構えている。

 

其処から立ち上がった姿は……

 

 

「!?魔理沙!!」

 

「クク……魔理沙ハ貰ウワァ……!」

 

 

激突した態勢から立て直すマリス衣玖、そして衣玖の両手の下にある

一対の両手に、魔理沙が抱かれていた。

 

 

「!~~どうじてだぁあ……ア、アリズゥ……!??」

 

 

身体を拘束されて苦しそうだ。

あれからまだ脱水症状から抜け切れず、逃げ遅れてしまったのか……!!

 

私はフラフラする体を起こし、スペルを唱えた。

 

 

「此の……!!~お、怨霊『入鹿の雷』……!」

 

「!屠自古、止めなさい!!永遠亭を丸ごと吹き飛ばすつもりですか!?」

 

 

太子様に止められた。

やはり……コイツは室内で使うのは危険か……

 

するとその時だった、

 

 

 

「魔理沙を返しな、アリス!!」

 

 

霊夢達と行動していた私と同じ幽霊の様な奴が、化け物衣玖に向かって飛びかかっていった。

始終魔理沙の肩を支えていた奴だ。手には三日月が先端に付いた杖を握っている。

 

 

「!~魅魔ぁ……様ぁ…!!」

 

「私にすら勝てん三下が……弟子に手を出すんじゃないよ!!」

 

 

そして三日月部分を衣玖の黒い下半身に突き刺した。

 

だが相手は少し怯んだものの、魔理沙を手放す様子はなかった。

 

 

「!~私ニ屈辱ヲ負ワセタ外道ガ…ナラバ…仕方イワ……!」

 

 

そう言うと上半身を引き、口から黒い霧を吐き出した。

 

此は……マリスの逃亡手段か……!?

視界が一気に黒くなり、思わず咳き込み始める。

 

 

「ゲホッ……魔理沙!……魅魔……!」

 

 

霊夢も咳き込みながら叫ぶ。

 

 

「!早苗!~~アレをつkケホ!!……使うんだよ……!!」

 

「判りました、コホン!!す、諏訪子様……!!」

 

 

諏訪子の言葉に、現人神の早苗が前に出てきて、

 

 

「か、『風起こし』!!」

 

 

素早く御祓い棒を前に出すと、其の先端の先に小さなつむじ風が起き、

瞬く間に黒い霧を巻き込んでいった。

 

だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い霧が消えると、其処に三人の姿が無かった。

 

 

「魔理沙!!魅魔!!」

 

 

霊夢が叫んだが、長い廊下に空しく響くだけで返事は返ってこなかった。

 

 

「……あぁぁ……衣玖ぅ………」

 

 

私はその場でへたり込んでしまった。

 

其の傍で院長さんが叫んだ。

 

 

「永遠亭に残って患者達に指示します!神子さん達は三人を……!」

 

「判りました!」

 

「私は此処に残って永琳さんのお手伝いを……神奈子様、駄目でしょうか?」

 

 

早苗がそういうと、

 

 

「いえ、此処の人手が足りなくなると狙われた時が危険です。

よろしく頼みますよ」

 

 

其に白蓮も賛同し、一緒に残ることにした。

 

私は、残る訳にはいかねぇ……!すぐに立ち上がり、

 

 

「私は太子様方と一緒に……!」

 

「駄目です」

 

 

!…………え………?

 

 

「早苗さん達と共に永琳さんの協力を御願いします」

 

「!ですが……!」

 

 

私が意見を通そうとすると、

 

 

「屠自古!!!」

 

 

太子様が私を叱咤した。思わずビクッとなって口を閉じた。

 

だけどその後は落ち着いて私に言った。

 

 

「……自責の念に駆られ、助けに行きたがるのは判ります……ですが、其に囚われての

行動は危険を孕むのです。今は……心を落ち着けて下さい」

 

 

………仰る通りだった。

 

でも、どうしても助けに行きたかった…………

 

 

でも…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はい」

 

 

太子様の御言葉に、力なく答えてしまった。

 

 

「……衣玖や魔理沙達は私達に任せて……まだ療養中なんだから、アンタは」

 

 

諏訪子が私の傍に来て慰めてくれた。

 

 

 

 

 

 

マリスに逃げられた。

 

私の油断したせいで、ほんの一瞬の隙に……

 

其も、衣玖の身体で、二人を人質に取って………

 

 

 

完全な……いや、其以上の敗北だった。

 

 

 

情けなかった。自分自身が許せなかった……

 

悔しくて悔しくて涙が溢れてきた。

 

 

 

 

~~ほんっと……情に脆いんだな……私は…………

 

 

 

 

 

 

 

畜生……!畜生………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

畜生ぉお………!!!

 

 

 




如何でしたか?

次回は、永遠亭の別の場所にいたとある人物の様子を紹介します。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪
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