文章も短めです。
原作とは少し異なる点もあるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
「……此の病室だったかしら?」
「!違うわよ。此処は410号室、私達が行くのは401号室よ」
「そうだったわね……大丈夫かしら……慧音さん」
「急ぐわよ」
KOSUZU
~永遠亭 廊下
私、本居小鈴は永遠亭の廊下を歩いていました。
隣には九代阿礼乙女、稗田阿求も一緒です。
其の途中、私は阿求に話しかけました。
「……阿求」
「何?」
「あんたは、マリスについてどう思う?」
「……………」
そう言うと、阿求は黙ってしまいました。
私はつづけました。
「あんたも見たよね、黒い影が歩いていて、突然姿形を変えたのを……
あれは紛れもなく……」
「ええ……マリスだったわね……」
阿求がワーハクタク、上白沢慧音さんがマリスの被害に遭ったという連絡を受け、
見舞いに行くと鈴奈庵へ私を誘いに来たのは、昼下がりの事でした。
ですが其処から永遠亭までの道中で、実に数十体ものマリスと遭遇しました。
数体が寄って混ざり、より巨大な姿に変貌するもの、
他の人に襲いかかって其の精神を食い荒らし洗脳するもの、
そして先程話していた様に、被害に遭わせたものに擬態するものと様々でした。
どれも私達の内どちらかが先に気付き、どこかに隠れてやり過ごしたので幸いにも
被害には遭わずに済みました。
そして永遠亭がある迷いの竹林も、阿求が『幻想郷縁起』を編纂する際に、此処に一度
訪れた事があって、其の時案内人と歩いた道順を記憶していたお陰で此処まで来られたという訳です。
『求聞持の能力』……『見た物を忘れない能力』がこんな事で役に立つなんて……
今度は阿求が私に話しかけました。
「実はマリスは人だけでもなく、妖怪界隈でも恐れられているの。最近は他の危険な妖怪ですら、何十種類も絶滅させたって噂よ」
「……放ってはおけないわね……人に危害をもたらす様な妖怪をも喰らい尽くす……
其程までの凶暴性になると……」
「あくまでも噂よ……単に弱小の妖怪達が誇張して流しただけかもしれないわ」
そう言うと、彼女は懐から一冊の本を取り出しました。
「!其は…医学の本ですか?」
「ええ……此の項を見て」
其の本を開き、其の項の一部分を指差しました。
私は其処を覗き込んで黙読しました。
すると其の途中で、ある言葉に目がとまりました。
「『影の病』……『影の煩ひ』……?」
「熱病の一種で病人の姿が二つに見え、どちらかが本物か分からなくなる病気よ。
離魂病……ドッペルゲンガーみたいなものね」
「!」
私ははっとして顔をあげ、阿求の顔を見ました。
「『孤毒』と症状が似ている……!」
「そう、でも……」
其処で阿求が考えて込みました。
「何か釈然としないのよ……同じ様な病気でも、違う原因から此処まではっきりと似た病状がでるなんて……」
「そう言われると……」
此処に来た理由を忘れて考える私達。
すると其の時、
『……当屋敷一階、カタルシスルームで非常事態が発生しました…繰り返します…!!
緊急事態発生……緊急事態発生……当屋敷一階、カタルシスルームで……』
突然部屋中に、声が響きました。
「何、此は……!?」
「まさか……警報……!?」
私達は天井のスピーカーを見上げて言いました。
どうやらあれが音源の様です。
ですがキンキンという程ではなく、何処か柔らかい印象の声でもありました。
患者さんを過剰に刺激しない工夫なのでしょう。
カタルシスルーム……何処の事でしょうか……?
すると廊下の奥の曲がり角から、沢山の人が飛んできました。
「!?キャ……!?」
私達は慌ててそれぞれ廊下の両側の端に寄り、其等が目の前で高速で通り過ぎ、
飛んでいくのを見ていました。
完全に飛んで見えなくなっても、暫くは唖然としていました。
そして私は、慌てて言葉を出すと、
「~~な、何なの、アレは……!?」
びっくりしたせいか、少し興奮して怒ったような口調で言っていました。
「判らないわ。人の様だったけど……」
阿求が其の私の問いに答えました。
しかし、今は其どころではない事をすぐに思い出しました。
「とにかく、慧音さんのところに……401号室はすぐ其処よ」
「ええ」
私達は出来るだけ全力で走って、永く何処までも続きそうな廊下を走り始めたのでした。
まさか、あんな惨事に巻き込まれる事も知らずに……
如何でしたか?
今回は、阿求と小鈴の初登場回となりました。
本当に今更です。
彼女達の登場は本当はⅠから出演を決めていましたが、
新しい書き方に変えようという事から、其処まで手が回らなくなり
やむを得ずⅡに出番を回すという事になったのが、理由でした。
……言い訳にしか聞こえませんですね、はい。
次回は、此の後での二つの場面を紹介していきたいと思います。
其れでは、次回もゆっくりしていってね♪