最初は霊夢、そして魔理沙視点です。大部分はイクとの戦闘がある魔理沙視点に
なりそうです。そして再び変態表現に御注意下さい。
原作とは、少し異なる点があるとは思いますが、
そちらも暖かい目で見て下さると、幸いです。
其では、ゆっくりしていってね♪
REIMU
~幻想郷上空
「……いないわね」
私達は上空で休みなく顔を動かしながら探していた。周りには赤い月に反射した
雲が沢山浮かんでいる。
「…もしかしたら、雲の中に隠れてるかもねぇ……」
「衣玖さん自身も、空中移動に関して長けてると思いますし……」
「可能性は否定出来ませんね」
三人の頂点、諏訪子、神奈子、神子も周りを見渡しながら探しながらそう話していた。
其の視線の先にもやはり雲しか広がっていない。
「…魅魔…アイツ、無茶してなかったら良いんだけど……」
自慢の弟子を取り返そうと、必死の形相で食らいついていたあの顔を思い浮かべながら
私は呟いた。
「きっと、無事ですよ」
神子が私の横顔を見てそう言ってくれた。あの状態の衣玖は針妙丸、そして神子が
命を顧みずに託してくれた宝剣の力で何とか敵った強敵。魅魔も充分に強いと思っているけど、
私は不安だった。
「!ちょっと、見てよ彼処……!!」
すると諏訪子が何か見つけたらしく、声を上げた。私達も其の方向を見た。
「!……あれは…?」
赤い雲が渦を巻き、其の間を鎖の様に黒い雷がつないでいる。其がゆっくりとでは
あったけど、まるで竜巻みたいに魔法の森の一角に真っすぐ伸びていた。
「見るからに怪しそうじゃない、彼処?」
私は其方に身体を向けて見る。其の時私は有る事に気が付いた。
「!彼処って……まさか人形の森!アリスの邸かしら!?」
「!?え…あの周辺は危険区域として封鎖されてる筈では!?」
だからだった。封鎖されて近寄れないなら、マリスは逆に其処を利用するに違いはない。
そして今は真夜中。闇に紛れる奴等にとって此以上好都合な潜伏場所は他に無い。
私は魔理沙をアリス邸に連れ去ったと確信した。
「衣玖はアリス邸にいる!!魔理沙も一緒の筈よ!!」
頂点達に声を上げた。あまり時間の猶予もない。私の勘を信じてくれたのか、三人とも頷いた。
「急ぐわよ!!手遅れにならない内に!!!」
私達は其の雲が渦巻く根本に向かって降りて行った。
MARISA
VS〈荒々しき龍の衣〉イク・スィオソーラス・ピュトン
~アリス邸前
私はアリスの邸の入口からようやく出てきた、衣玖だった化け物に八卦炉を向けていた。
衣玖の面影は顔に僅かしか残っていない。いや、残ってるかどうかも怪しい。
すると雷鳴が響き始めた。
「!チィ……外に出ちゃぁ逆に不味かったかな……」
私は八卦炉を構えながら視線だけを上に向ける。
赤い雲が赤い月を中心にアリス邸の真上で渦巻いている。
其の雲と雲の間をつなぐ様に黒い雷が迸っている。晴れているのか、曇ってるのか
はっきり判らない天候だ。
だが此だけは言える。異形の衣玖が雲を、そして雷を呼んでいる。
すると衣玖が長い身体を私の方に素早く這わせ、顔を覆う毛を花弁を閉じる様にして
噛みついてきた。直ぐに後ろに飛び退いて回避する。
「私ノ前ニ跪ケェ……忠誠ヲ誓イナサイィイ……魔理沙ァアァ……♡♡」
そう言いながら更に前進して、見せた顔を横向きにしながら今度は衣玖自身の歯で
噛み付いてきた。
「そんな体で言ってくれるな!!」
私は更に飛び退いて回避する。私の目の前で釘みたいになった歯が鋭い音で噛みあい、
其の勢いに負けた歯茎から黒い血が細かく噴き出る。
其の飛沫も回避した私は、がら空きになった其の顔に八卦炉を向けた。
「『メテオニックデブリ』!!!」
八卦炉から大量の星の弾幕が飛び出し、衣玖に殺到した。其の殆どが狙った顔や長い身体に命中した。
「!?グヴォアァアァアァ!!!!!」
今度はしっかり反応があった。咄嗟に顔を隠して残りの弾幕から顔を守ろうとしているが
後ろに大きく仰け反り、鰻さながらに上半身をくねらせて痛がっている。
思わず口の端で笑った。効いてるゼ…!
すると顔を隠した状態から其の頭を目の前の地面に突き刺し、ドリルの様に回転させ、長い
身体を捻りながら土の中に潜っていった。
地中からの奇襲か…何処から来る!?私は咄嗟に身構え、自分の周りの地面を見渡す。
「魚符『龍魚ドリル』ゥウウ!!!!」
すると目の前の地面から、土砂をまき散らしながら此方に一直線に突っ込んできた。
私は後ろに大きくジャンプしてギリギリ回避した。私の身体の前を黒い雷を纏った長い
身体が通過していく。私は空中で着地に備えて体勢を立て直そうとしたが、受け身が出来ず
其のまま尻餅を付いてしまった。
「!?痛……!!~~~」
強打してしまった尻を顔をしかめながらさすっていると、突然辺りが暗くなった。慌てて
見上げると私を捉え損ねた衣玖が、空中で方向転換して顔を此方に向けて再度突進
してきていた。急いで横に転がって突進を回避する。ドリルみたいな先端がみたいがさっきまで
私がいた場所に深々と突き刺さった。あのまま尻を気にしていたら、体に大穴を開けられてた
だろう。尻どころの話ではなくなってしまう。
すると其の頭を引き抜き、勢いのまま何度も振り下ろして来た。また後退しながら一撃
一撃を避けていく。私を捉え損ねた頭は全て地面に突き刺さり、纏っていた黒い電気は其の穴
を更に抉り、深くしていく。
最後の一撃もかわされて地面に穴を開けると、今度は顔を突っ込んだまま再び身体を
捻って地中へ潜った。また奇襲するつもりだろうが、今度はそうはさせない。
「『デビルダムトーチ』!!」
私はスカートの中から瓶を数個取り出し、衣玖が掘っていった穴の中へ放り込んだ。其の直後、
地面から衝撃と共に五本の光の柱が飛び出した。私の技によるものだった。
「ギュビェエアァァ…!!!」
すると其の後を追うかの様に近くから衣玖の上半身だけが飛び出してきた。爆発の衝撃で驚いた
のか、かなり気が動転している。下半身が穴に支えているらしく身体を捩らせもがいている。
「痛イヨォオ……魔理沙ァアァア…♡♡エヘェヘヘヘヘェェ……痛イィイィイ……♡♡♡」
這い出そうと必死になりながらも、アリスじゃない事が判られていてもまだ気味悪ぃ事は
言い続けている。
だが私が頭部に八卦炉を構えたと同時に顔を見せたかと思うと、突然黒い雷のブレスを吐き
出してきた。
「!?おぉっと……!!?」
反射的に横にダイブし、既の所でかわした。黒い雷は其のまま真っ直ぐに飛び、地面を
一直線に吹き飛ばした。凄まじい威力だ。捕まえる為なら手足吹き飛ばしてでも動きを封じようと
いう算段か……とんでもない暴挙に出られたもんだ。
うつ伏せから仰向けになって立ち上がろうとした瞬間、両腕を抑えられた。
「!!!」
目の前に衣玖の白いモップみたいな身体が見える。私の両腕を衣玖のものだった腕にがっしりと
掴まれ、長い四本の指が私の腕に絡みついている。腕の目玉が青い瞳で私を見返す。
どう考えても私をつかめない距離だった。何時の間に…!?そう思っていた。だが其の時、地面に
出来た大穴から尻尾の先端が抜き出されていたのが、目の端で見えた。
油断した…私がダイブしていたあの瞬間に、下半身を引き抜いたのか…!
「ツ~カマ~~エタァアァァア……♡♡♡♡♡」
更に視線を上に向けると、衣玖の顔が見えた。四つの目が私を見下ろしている。
其の口からは水道から滴る水滴の様に、一定の間隔で黒い液体が私の横に落ち、地面に
生えていた草を真っ黒に染めていた。
「私ガ保トウトスル安定ヲ、壊スツモリナノ……??」
すると釘の様な歯が、元の人間の歯に戻っていった。其だけでなく顔全体も変異前の衣玖の
顔に若干近付いた。
「デモ赦シシテアゲル…魔理沙ダカラァア……♡」
其処で私は判ってしまった。傷口じゃなくて口腔から浸食する気か…!?そう察した瞬間には
口の中がカラカラに乾いた。顔を戻したのも私にあまり嫌悪感を抱かせない為に違いない。
まさしく最悪を絵に描いて額縁に収めたみてぇだ。
マズい…何をしてでも抗わないと………!!
「畜生ぉぅ…!!よせ!!此の……!!!」
必死にもがいて抵抗しようにも人間の私では到底敵いっこない。だからといって衣玖自身の腕力で
抑えられるとも思えない。マリスによる筋組織の強化のよるものだろう。
「言ッタデショ…??優シテアゲルカラァアァ……♡♡」
「止めろ、阿保…!!人でなしぃ!!!」
もう既に人の姿を失った衣玖にそんな事を言っても無駄だった。もとより聞く耳すら持って
なかったが。
私はアリスを助けるまでに絶対にくたばりたくない…そう思っていたのに…
早くも潰えてしまうのか……自分を奪われることを覚悟した。
「魔理沙ぁあ!!!!」
私は聞いた。何処からか私を呼ぶ声を。
夜雀でも近くにいて惑わしてるか、其とも極限状態のあまり幻聴を来したのかと思ったが、そう
ではない。確実に聞こえた。私を呼んだ其の声はあまりにも聞き慣れていた。
其を裏付けるかの様に化け物も反応し、衣玖の頭を上げて声のした方向を探している。
刹那、其の顔に何処からか大量の弾幕が殺到し、炸裂した。
「!?くそ!!…」
爆発の勢いに顔を背けて思わず声を上げたが、衣玖が両手を離し、拘束からは解放された。
「!衣玖さん…あれからまた変異が…!!」
「随分と毛むくじゃらになった様ね……?」
「絶対にモフモフしたくないね!!」
声と共に弾幕は休みなく発射され、マリスを更に遠ざけた。
「魔理沙!!大丈夫!?」
ただ一人だけが着地し、私に来て手を差し出した。
「……遅ぇんだよ、霊夢ぅ」
私は安堵の為か泣きそうになりながら先刻の声の主、古くからの相棒の名を呼び、其の手を
借りて立ち上がった。其の近くで神子と神奈子、そして諏訪子が弾幕を中断して着地しようと
していた。
「ほんとに間一髪だったね…遅れてたらアウトだったよ」
諏訪子が地面に足を付けながら言った。私は直ぐに霊夢に言った。
「霊夢、黒幕の正体が判った!!霊夢の言っていた事は本当だったんだ!!」
「!何ですって……!?」
神子が驚いていた。
「だが其の前に衣玖をどうにかしねぇと…まともに話が…!!」
そう言って私は衣玖を見上げた。弾幕に被弾した余韻が有るのか、ふら付いている。大量に吐血
しているらしく顔を隠す花弁みたいな毛の合間から凄い量の黒い液体が滴り落ち、地面に
溜まっていた。破れてダダ漏れにならないあたり、一枚一枚が相当な密度の毛で構成されてる事
が判る。
「だったら、倒してどうにかするまでじゃない!!」
霊夢らしい答えだ、私は衣玖から目を離さずに言った。
敵も頭を振って立ち直って来た。律儀に待っててくれてたみたいな素振りだ。霊夢も針命丸と共に
戦った際に情けをかけてくれたと宴会の時に話していたが、どうやら本当だった様だ。
ボス戦前の会話みたいだ、ふとそう思った。此方が戦う意思を見せない限り向こうは
手を出して来ない。
何を企んでいるのかは判らなかったが本当にさっきと態度が一変してしまっている。
さっきまでの変態っぷりが嘘みたいだった。
「奴の体には弾幕は通じない。弱点は衣玖の顔だ。顔を見せた時を狙え」
「さっきの攻撃で判ってるわよ」
其処で霊夢は後ろを向き、
「弾幕で援護をお願い!私と魔理沙で直接叩くわ!!」
「!判りました!!」
「やっぱり観戦するのは悪くないね!」
「…諏訪子、今度は私達も協力するんだぞ?勘違いするな」
三人の声が聞こえた後で後ろの草が激しく揺れる音がした。どうやら私達の邪魔にならない空中
から援護する事に決めたらしい。其を確認した霊夢が、私と同じ敵を見上げる。
「久々に二人で協力戦ね。早く衣玖を、化け物から解放してあげるわよ!!」
私は八卦炉を衣玖に向け、霊夢が袖から大幣と数枚の御札を取り出して何時もの
ファイティングポーズを取る。
敵も白い花弁の様な毛を開き、逆さまの衣玖の顔を見せた。
「ギギェ"ェエ"ァア"ァアァ"アァア"ァァアァアァア"ァ!!!!!!!!」
黒い涎を撒き散らしながら私達に向かって金切声で吼える。其を顔は私にキスをしようとした
前の顔に戻っていた。すると咆哮を合図に雷が激しく鳴り始め、赤い稲光が夜の空を絶えず
照らした。
長かった衣玖との戦いに決着を付ける時は近い。龍宮の遣いはようやく苦しみから解放される。
そして黒幕の正体も早く霊夢達に告げなければ……私は八卦炉をそっと握り直した。其の
武器は雷を反射して鈍く輝いていた。
如何でしたか?霊夢の勘が冴えに冴えわたってます。本当に役に立ちます。
状況整理に打って付けですね。
次回は後編、合流した霊夢と魔理沙でイクとの決闘です。
Ⅰからの因縁が終わるのでしょうか…?
それでは、次回もゆっくりしていってね♪