東方孤傀劇Ⅱ~ナラクのアリス   作:因田司

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今回も、永遠亭からです。

永琳視点で御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


the Talk with……

EIRIN

~永遠亭

 

 

「Zzzz……Zzzz……」

 

 

魔法使い、霧雨魔理沙さんが畳の上で背を向け横になり、

そして眠りについたのを、椅子に座った私達は見届けていました。

 

 

「……魔理沙も相当参っているのね……

アリスの感情が、あそこまでの事をしたんだもの……」

 

 

博麗神社の巫女、博麗霊夢さんは魔理沙さんから

目を離し、ハァッと溜息をつきました。

 

 

「我々がもう少し早く来られていたなら……

貴方様の姫君に申し訳ない事を……」

 

 

聖人、豊聡耳神子さんが私に頭を下げてきました。

 

 

「いえ……皆さんが来て下さった事に本当に感謝しています。

もし、あのままだったら私達が駆け付けた時には、妹紅は……」

 

「でも、ソイツって不死身……つまり、マリス達の対象外なんでしょ?

どうしてマリス達は浸食出来ない彼女を狙ったんだろう?」

 

 

守矢神社の一柱である、洩矢諏訪子さんが質問をしてきました。

 

 

「其は判りません……ですが不死身でも妹紅は人間です。

対象に入っている可能性は否定できません」

 

「ですが…妹紅さんを狙うなら、どうして慧音さんを巻き込んだのでしょう?」

 

 

今度は別の守矢の一柱、東風谷早苗さんが問いをかけてきます。

 

 

「慧音は、恐らく迷いの竹林にある、此の永遠亭へ誘導させる為、

そして…妹紅が手に入らなかった時の保険として狙われたのでしょう」

 

「!酷いです……妖怪じゃなく、あたかも物を扱うかの様に……!」

 

 

早苗さんの隣に座っていた命蓮寺の住職、聖白蓮がわなわなと震えていました。

……門下の毘沙門天、寅丸星さんがアリスさんにやられた事を

思い返しているのでしょうか……

 

 

「あの、慧音さんは……無事ですか?」

 

 

早苗さんが不安そうに聞きました。

 

 

「大丈夫です。てゐ達が治療して今はゆっくり休んでいます」

 

「……………」

 

 

……沈黙だけが流れていきます。

 

神子さんが口を開き、其の静寂を破ります。

 

 

「……私達が此処に来た理由は……」

 

「ワクチンは、完成しました」

 

「!本当!?」

 

「!こら、諏訪子……此処は病院です。大きな声は……」

 

「大丈夫ですよ。此の部屋は防音壁を施してます故………此がそうです」

 

 

懐からドス黒いマリス達とは対照的な

乳白色の液体の入った一本の注射器を取り出し、皆に見せました。

 

 

「此が……!」

 

「私は此を『マリス・マーダー』〈Malice Murder〉…

通称『マム』〈Ma-Mu〉と名付けています」

 

「完成したんですね!?」

 

「ええ……既に効能の検証も終えています。

後は、此をマリスの被害者に摂取させるだけです」

 

 

皆はほっとしたようでした。

 

ですが、私は其で安心することは出来ませんでした。

 

 

 

 

 

「実は……皆様方に面会させたい人物が数人ございます」

 

「?誰なの?」

 

「其の前に、私はその一人と会話をしました…

………其の内容を、聞いて貰えませんか?」

 

「構ないわ!」

 

 

霊夢さんは腕を組み、どんと来いっ!!、と言わんばかりでした。

 

 

「ありがとうございます……」

 

 

そして、私は話し始めました。

 

私に不可解な点を残した数時間前の出来事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EIRIN

~永遠亭(過去)

 

 

「…頼む……看病してくれないか?」

 

 

そう私にお願いする亡霊、蘇我屠自古さんの隣に座っていたのは

傷だらけになっていた龍宮の使い、永江衣玖さんでした。

 

話によると、彼女は計画を挫かれた後、自分が率いた部下や自分自身の手によって

傷付けてしまった患者に御詫びをしに此処へ来ていたそうですが、

其の御詫びの品に書かれていた文章に感付いた、屠自古さんに見つかってしまった様なのです。

 

 

「……私は、自分がどれだけの事をしたのかは理解しています……

貴方様の一番弟子である鈴仙さんまでも……

やはり、治療して下さらなくても構いません……

……いっそ、此の場で貴方の手で殺されても……」

 

 

彼女は血の乾かない顔を私に見せまいと顔をうつぶせ、ボソボソと言いました。

まるで、刑の執行を待つ死刑囚のようでした。

 

 

「!違うだろ……!…コイツは、バカな主人の為にいろいろ尽くしてた

だけなんだ……!悪いのは主人の方なんだよ!

其でも、指名手配として必死で逃げて主人を庇ってる……

衣玖はある意味最大の被害者なんだよ……!だから…頼む……!!」

 

 

必死に頼み込む屠自古さん。

 

……最初は、「孤毒」による異変の黒幕は彼女である事を

小人の少名針妙丸さんが部屋に送ってくれた手紙で知った時には

同じ月にいた者として許す事は出来ませんでした。

 

彼女の存在は、交戦経験のある鈴仙から聞いていました。

ですが、彼女の計画のせいで鈴仙が酷い目に遭ったのです。

 

 

しかし、自身がしている悪事を十分に理解し、そして反省をしている事、

そして彼女に魔がさしてしまった理由を霊夢さんから聞いた時、

私は、以前の私を想起しました。

 

 

 

 

 

月の都……

 

其処で私が『蓬莱の薬』を作り上げ、姫様は其を飲み、

禁忌に触れ、この穢れと呼ばれた星…地球に堕ち……

 

刑期を終えても月への帰還を拒み、私はあの御方を捨てきれず……

 

共に来た月の使者を……全て………

 

 

 

 

 

 

 

「……良いでしょう」

 

 

衣玖さんは驚いて顔をあげました。

 

切り傷と打撲まみれの顔に驚きの表情がありました。

 

 

「~~で、ですが……!!」

 

「私も、貴方と同じ罪を犯した者です。

其に、傷を負う者を治すのが私の役目ですから……」

 

 

そして、其の場で診察が始まりました。

 

 

 

 

 

 

「……どうやら、外傷だけの様ですね……

傷の処置をしておきましたから、後は静養すればもう大丈夫ですよ?」

 

 

数分後、傷の特徴を帳簿に書き留める私の前に

体中包帯まみれの衣玖さんがいました。

包帯の隙間からポカンと口を開けています。

 

 

「だろ?良かったじゃねえか!」

 

 

傍では屠自古さんが腕組みをしてそう言いました。

得意げでもあり、とても嬉しそうでした。

 

 

「霊夢達にさんざんしごかれた様だけど、まだまだ足りないからな……

もうすぐ私の見舞いにお前が尊敬する太子様が来るはずだから、

其の時はきっちり説法を喰らって貰うぞ!?」

 

「……そうさせて頂きます」

 

「で、治ったら総領娘の処に帰れ。

そして次は正しく教育しろよ?マリスの事は私達に任せてさ!」

 

「善処します……」

 

 

私の頭にふと、思い浮かんだものがありました。

 

 

「ですが、部屋はどうしましょうか……?

どの部屋も、満室になってるけど……」

 

「!私の部屋が良い…プリズムリバー達もいるが、

確かベッドが一か所だけ余ってた筈だ……行こう、衣玖!」

 

「御大事にね」

 

 

私は、彼女達が部屋から出ようと踵を返すのを見て、

椅子を回転させ、机に向き直りました。

 

「孤毒」にはまだ謎に包まれた部分もある……

其の部分についての調査も、しなければならなかったからです。

 

勿論、新しく作った「孤毒」用のワクチンも駆使して……

 

 

 

すると後ろから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました……永琳先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳を疑いました。

 

私を其の呼び方で呼んだのは……以前にたった一人だけしかいませんでした。

 

 

!まさか……!

 

 

振り返りましたが、既に部屋を出て行った後でした。

 

私は急いで立ち上がり、彼女達を追って部屋を出ました。

 

 

 

が、長い廊下には見渡す限り、人の影すら見当たりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EIRIN

~永遠亭(現在)

 

 

「!衣玖……!アイツが此処にいるの!?」

 

 

霊夢さんが驚きの声をあげました。

 

 

「!待って……じゃあさ…龍宮の使いは…」

 

「まだ此の永遠亭にいます。屠自古さん達と同じ、444号室にいる筈です」

 

「…でも……さっき言ってた『永琳先生』………

貴方を…そう呼ぶ唯一の人物って……」

 

「ええ……アリスさんだけでした」

 

 

諏訪子さんや三柱の一人、八坂神奈子さんの言葉に

私は答えました。

 

 

「!其ってまさかと思うけど…アリスが、龍宮の使いを……!」

 

 

花の妖怪、風見幽香さんが血の気が引いた顔で言いました。

 

 

「じゃあ…全部ひっくり返ってしまうわ……!」

 

「待って下さい……!確かにアリスさんは操るのは得意です。

でも其は無機物の人形だけで、生き物は不可能ではありませんか?」

 

「そうだよアンタ、アイツから魔法ラーニングしといて

今更怖気付いちゃうのかい、幽香?」

 

「でも魅魔も、皆も見たでしょう!?

マリスに浸食されて暴れまわった、私の姿を……!」

 

 

私は驚きました。まさか幽香さんが、マリスの被害に遭っていたなんて……!

 

 

「幽香さん!急いでワクチンを……!」

 

「!でも…大丈夫よ。体は操られていても、自我は残っていたから

根気強く抵抗をしていたら、其の隙に霊夢が全部引きずり出してくれたのよ。

でも……後で打って貰おうかしら?」

 

「とにかく!まずは其の病室に行きましょう!真相を確かめないと……」

 

霊夢さんが立ち上がろうとしました。

 

すると……

 

 

 

 

「~~やぁ……止めてくれぇえ……!!」

 

「!魔理沙さん…!?」

 

 

突然、寝ていた魔理沙さんが苦しそうな呻き声を上げ始めたのです。

 

私達は思わず彼女を見ました。

 

 

「私が…悪かった……!…殺…すな……!!」

 

「魔理沙!!」

 

 

彼女の師匠である幽霊、魅魔さんが急いでうなされる弟子のもとに向かいました。

 

 

「皆を殺すなら……代わりに……!私を………!!」

 

「魔理沙……魔理沙!しっかりしな!」

 

 

魅魔さんが上から魔理沙の頬をぺシぺシと叩き続けています。

 

 

……どうやら魔理沙さんが起きたようです。

叩くのをやめました。

 

 

「大丈夫かい、魔理沙!汗がびっしょりだよ!?」

 

「!…魅魔様……!」

 

 

そして魔理沙さんは私達の方に顔を向けました。

顔は紅潮して大量に汗が流れています。

 

……其の時私は、彼女が安堵したかのように見えました。

そして再び顔を上に向けました。

 

 

「私達が話してたら、急に唸り声を出し始めて……」

 

 

魅魔さんが心配そうに言いました。

 

!睡眠中に汗をかいたなら、水分を摂らせないと

脱水症状を起こしてしまいます。

 

 

(確か、棚の中に生理食塩水があった筈……)

 

 

私は魔理沙さんに水を飲ませようと椅子から腰を浮かせました。

 

 

 

其の時でした。

 

 

 

 

「大変だ!!!」

 

 

 

 

突然、部屋の扉がすごい勢いで開けられました。

 

私達はとっさに立ちあがり、扉の方を見やりました。

 

其処には、さっきまで話の中にしかいなかった

屠自古さんが立って(浮いて……の方が良いのでしょうか?)いました。

顔を真っ青にして涙目になっています。

 

 

「屠自古!」

 

「!た、太子様……!!皆も……!?」

 

「どうしたの、アンタらしくもない……いったい何があったの!?」

 

 

霊夢さんが問い詰めます。

 

屠自古さんはいつもの彼女らしくなく、

口をあわあわとさせて話そうとしません。

 

 

「教えて下さい……何があったんです?」

 

 

今度は私が、冷静に質問をしました。

気が動転している方にきつく言をかけるのはよくありません。

 

屠自古さんの目からたっぷりと涙があふれました。

 

そして彼女は、こう言ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

「衣玖が……!衣玖が…動かねえ……!!

マリスだ………マリスに…殺られちまった…!!!」

 

 

 




如何でしたか?

此の書き方は、いろんな物の情報や
登場人物の表情を具体的に書けるので良いですね。
頑張って慣れていこうと思います。

次回は、例の地下通路での出来事を紹介していきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪
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