場所は移動します。
諏訪子視点で御送りいたします。
原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
SUWAKO
~永遠亭 地下通路
「!!…………」
此処は、永遠亭の医者である八意永琳の部屋に続く長い地下通路。
先ほど永琳が天井にある電灯に充てる電力を上げてくれて、
入った時より凄く明るくなってる。
私達は其の途中の壁を見て息を呑んだ。
壁や床に紫色の粘液が血飛沫の様に迸る中央に、
同様に粘液まみれの龍宮の使いが壁にもたれる様に倒れていた。
もし、粘液の色が赤色だったら凄惨な殺人現場に見えてたかもしれない。
「衣玖……!!」
私の左前に立っていた霊夢の声が聞こえた。
ほんの少し前に決戦を行った、相手の変わり果てた姿に
相当驚いている様だった。
「諏訪子!」
神奈子が私に呼びかける。
無論、暗黙の了解さ。此処は私の出番の様だね!?
私は、小さくジャンプして、空中で大きく息を吸い込んだ。
「源符『諏訪清水』!!」
ブッシャァアァァアァアアーーーーー!!!!!!
私の口から吐き出された大量の水が
龍宮の使いを飲み込み、覆っていた紫の粘液を洗い流していった。
…!よし、大分粘液みたいなのを取った様だけど……
あれだけの放水を喰らってもびくとも動かず、咳き込みもしなかった。
「~~本当に……し、死んでしまったんですか……??」
「判らん…マリスで死んだなんて聞いた事がないしな……」
早苗が神奈子と小声で会話をするのが頭の上から聞こえた。
すぐに永琳が彼女のそばにかがみ、慎重に診察を始めた。
さっきも言ったように、龍宮の使いの姿は前に
玄雲の中で戦った時とは姿は大きく違ってた。
!まあ……衣装も病院で患者が着る様な服で
帽子も羽衣も着用してなかったのもそうだけど、何より其の肌の色に驚いた。
前にマリスの力を逆に利用してた早苗の顔より、
更に濃い紫色に染まっていたんだから。
目は開かれていたけど、其の紅い瞳は淀んでて焦点は合ってなかったし…
「……我々も警戒しましょう。
マリスが此方に襲いかかってくるかもしれません」
後ろから神子さんの声が聞こえ、
診察をする永琳以外全員が、臨戦態勢に入った。
ただ、右前にいる魔理沙は少し辛そうだった。
少しふらついていて、師匠の魅魔さんに支えられている。
「!?此は………!」
検査をしていた永琳が突然驚きの声を上げた。
手にはさっき上で私達に見せた注射器を持っている。
中は空になってる。龍宮の使いに打ち込んだ様だ。
「!……どうしたのですか?」
私の隣から、白蓮が永琳に話しかけた。
「ワクチンの効果が追い付いてない……!
此は……かなり高濃度のマリスに浸食されてるんだわ…!」
「!!何だって…!」
私は驚いてしまった。
マリスを完全にやっつける唯一の手段と言えるワクチン。
其の効果を上回る繁殖力を持ったマリスをいきなり見ることになったんだから。
「こんな濃度は今までで見たことがない……!
此のままでは本当に……彼女を見てて下さい!!」
そう言って永琳はもと来た場所を走って行った。
応急の医療器具を取りに行ったのか…あるいは搬送の為に
其の手ではプロの玉兎達を応援に呼びに行ったか。
私達は医療は詳しくないから、其に従う他はなかった。
「まさか大量のマリスが潜伏していたとは……侮れませんね」
「ですが、此程のマリス……何処から侵入させたのでしょう……?」
御柱と独鈷杵を動かない龍宮の使いに向けながら、神奈子と白蓮が話す。
と、
「~~畜生……畜生ぉお……!!」
私の左隣で構えていた屠自古が
突然がっくりと膝をついた(様に見えたのかもしれない……)。
目からは涙があふれている。
「~やっと……和解する事が…出来た……
出来たばかりのに……!!其なのにぃぃ……!!!」
「……屠自古……!」
此の奇病「孤毒」を巡る異変が始まって、何度も対立してきた屠自古と
異変の黒幕である龍宮の使い。
お互いに雷を操る存在として引けを取るわけにはいかず、
何度も相見え、その度に文字通り火花を散らす激闘を繰り広げてた二人。
でも龍宮の使いは負け、異変はようやく解決の方向に向かい始め、
二人もお互いを理解しあう事が出来た……
其の矢先での出来事だった。
元凶とは言え、あまりにも酷い応報だ……悔しくなるのも無理はないと思う。
「……………」
私達もかけられる言葉は無く、ただ黙っている他は無かった。
其の時だった。
(!ん……?何だ……?)
私は鉄の輪を構えるのを止め、動かない龍宮の使いのもとに
ピョンピョンと跳ねて行った。
「!諏訪子さん…?何をするつもりですか!?」
後ろから神子さんが声をかけるけど、私は無視した。
足下に散乱していた粘液を避けて行って
反対側に回ってみる。つまり、龍宮の使いの右側に来たって事になる。
そして、彼女の右手をもう一度よく見た。
紫色のままだけど、私のスペルで粘液を完全に洗い流されていた右手。
粘液にまみれたお腹の上に不自然に乗せていて、掌の中に何かが握られていた。
此は……紙?
「ねぇ、何か持ってるよ!?」
私は皆の方を向いて声を上げた。
皆は少し驚いた様だ。でもマリスを警戒してるのか
誰一人此方に近付こうとはしなかった。
マイペースな私だけの特権だ。
「ちょっと、失礼……?」
私は其の右手を持ち上げて、指を開き、手紙を取り出した。
そして、床の粘液のたまっていない処に右手を静かに置く。
其の場に座り込んで其の紙を眺める。
「!其が…?何なの…?」
幽香が今度は私の手中にある紙について質問した。
「判らないな…大きさからして……何かのメモじゃないかしら…?」
其に答えながら紙を丁寧に広げ、私は内容の読解を試みた。
魅魔さんが魔理沙を支えながら聞いてきた。
「どうだい?何か読めるかい……!?」
………其の手紙は、お世辞にも読み易いとは言えなかった。
紙面に粘液が染み込んで完全に紫色に変色して
内容が何一つ読み取る事が出来なかった。
でも、まぁ…ちょっと濡れてるし……私のスペルも原因だと思うけど……
「……駄目だね……何が書いてるか、全っ然読めなくなってる。
手紙としての機能を失くしちゃってるよ」
でも此の手紙、本当に何を書いてたんだろう…?
マリスに襲われる直前まで手に握ってたという事は、
何か大事なことが書いてたんだろうか?
其とも、其を書き残す途中だったんだろうか……?
「!……手紙?」
すると、今までずっと泣いていた屠自古が、
こっちを見上げた。目が赤くなってる。
「!どうしたの、屠自古?何か知ってるの?」
思わず私は声をかけて、今度はピョォオーーーーンと
龍宮の使いを飛び越して皆の処へ戻った。
「……手紙なら、私にも来ていた。私のベッドの下にあったよ……」
屠自古は、懐から封筒を出した。
真っ白な小さな封筒で、
小さな細い羽衣型のリボンで封をされていた。
「其の中にある…衣玖からの手紙だ………私は先に読んだ……
……もう、見たくない……声にも出さないでくれ……!」
そうぶっきらぼうに言って其を私にやや粗雑に渡し、
すぐに腕組みをして後ろを向いた。
其っきり何も言わなくなってしまった。
私は、リボンをほどき、中の便箋を引っ張り出した。
中の手紙も真っ白だ。
其を広げて見た。字もはっきりと見える。
屠自古以外の皆が私の傍から其を覗き込んだ。
【こんにちは、屠自古さん。結い籠めた此の手紙を読んでいるという事は、
貴方は既に私の失踪に気付いてることでしょう。
許して下さい……こんな愚行に走る、無様な私を。
気扱いも必要ございません。畏愛の念を抱いて下さった貴方に、
寧ろ私は感謝をしたい一存です。
栄枯盛衰……ですが私も、ぬくぬくとしている訳にはいかないのです。
気付かれる前に……。真実を伝えに行かなければ……。
堕ちゆく雁の様な者 永江衣玖】
……ずいぶん難しい文章で書いてあるなぁ。でも……
私は背を向け、うなだれてる屠自古を見て、
そして壁の龍宮の使いを見た。
「真実」……?
私の頭に其の言葉がよぎった。
其処でポケットからさっきまで龍宮の使いが持っていた
紫色に変わったメモを出した。もう一度じっと眺める。
もしかしたら此処にその真実が……?
でも、どうして其をこんな処で……?
「!ちょっと待って下さい……追伸があります…!」
早苗が小さく声を出し、文面の一番下にある、小さく書かれた文章を指差した。
私達も其に目を向けた。
【P.S.
ベッドに置きました此の伝言は、地に堕ちる雁の様になっているかもしれません。
ですが私は……真実が伝わるにはそうなる覚悟をしなければならないのです。
迷惑をおかけした事を、どうか御許し下さい……皆様…
そして、魔理沙さん……】
…………ちんぷんかんぷんだった。
「……どういう事?」
理解できなかった。
でも屠自古に出来るだけ聞こえない様に呟いた。
「つまり、最初はベッドの上にあったっていう事よね?」
「!え……此って……比喩?」
隣で白蓮が小さく素っ頓狂な声を上げた。
「!ちょっと待って下さい……!
さっきの本文を見せてくれてもよいですか?」
「!良いよ?ほいっ…!」
神子さんの要求に応え、畳んでいた手紙の上部分を
もう一度広げた。
其を食い入る様に見る神子さん。
「……最後の一文の何か違う『いんとね~しょん』……
そして…諏訪子さんが持っている其の文面……」
小声で呟き、必死で考えている。
すると、
「……まるで、衣玖が口封じをされたかの様ね」
ふと、傍で考えていた霊夢の口からこんな言葉が出てきた。
「!え……?」
そして、
「……恐らく此の異変には……衣玖じゃなく、
更に別の黒幕がいると思うんだわ、私」
「!?えぇええ……!???」
此の言葉が出てくるのであった。
やっぱ早苗より凄いかも、アンタ。
如何でしたか?
作中で屠自古、そして衣玖の両者を知っていた
諏訪子らしく話を書いてみました。
次回は、霊夢がそう思った理由を
説明していきます。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪