東方孤傀劇Ⅱ~ナラクのアリス   作:因田司

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今回は、少し場所が変わり、霊夢達が行動していた時の
別の人物の行動を見ていきます。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪




危ぶむ森のリリパット

SHINMYOUMARU

~影の森

 

 

「……………」

 

 

其の時私は、薄暗い森の一本の大きな木の洞の中に潜んでいた。

洞に続く狭い入口から少し顔を出して外の様子を窺っている最中だった。

 

敵がいないことを確認すると、顔を引っ込め洞の中に戻った。

 

 

其にしても、気持ち悪い……何なの此の森……

 

何もいないはずなのに……いつも見られてる様な気がする………

でも……入った時は人間どころか、生き物の気配は何ひとつ感じられなかった。

 

其でも感じた……人の様な獣の様な……得体の知れないモノの視線が……

 

此の洞にいても其の視線を感じていた。思わず見渡す。

でもこんな狭い空間には私と持ってきた物以外に

何も……誰も存在する筈がなかった。

 

 

所狭しと並んでいたのは、今や私にしか扱えない『打出の小槌』。

霊夢さんにせがんでなんとか貰った和菓子が数種類と

最低限必要な生活用品……そして霊夢さんが「御古」と称して譲ってくれた

赤と黒の板みたいな電話機。

私の被っているお椀と同じ色で、私としては気に入っているわ。

 

でも、どれも大きかったから持ってくるのに、かなりの労力を使ったけど……

 

 

 

私は正邪に騙されて異変を起こした其の後、

霊夢さんの神社に居候をして、小槌の魔力の回復を待っていた。

 

でも、ある日旅に出たくなって、博麗神社から一人で旅だった。

 

 

目的は簡単だった。

 

今後は騙されないように自分を鍛え、更生する事。

そして私を利用し、挙げ句に見捨てて逃げた正邪への復讐。

 

最近、遂に其の復讐を成し遂げられたのだが、同時に新たな敵の存在も知った。

 

 

 

 

マリス。

 

正邪に使役され、そして正邪を喰い殺したとされる黒い異形の化け物。

そして正邪達を雇った主人にも其の手を伸ばし、おぞましい化け物に変えてしまった

此の世のものとは思えない存在。

其の後、彼女達の行方が判らなくなっているのも、其等が何か関わっている事には

間違いはない……

 

!もしかしたら、遺体を何処かに運んだのかも……まるで黒い蟻の群れの様に……

 

私は霊夢さん達と共闘した時まで、其の存在を知らずにいた。

旅の道中で人と出会う事があまりにも無かったため、情報を得れずにいたのだ。

 

 

!マリスに刃向かった私は…もしかして…狙われている……?

じゃあ…今まで感じていた視線は…まさか……!!

 

其の時、

 

 

 

 

ガサッ………ガサ…………

 

「誰かいるわ……見えないけど…隠れているわ……いないいないしているわ……」

 

 

 

声が聞こえた。コロコロと球を転がした様な、幼い少女の声……

音からして草むらを搔き分けて進んでいる様だ。

 

誰かしら?洞から顔を出して確認したい衝動に駆られたが、抑えた。

 

もし敵なら…マリスなら、其の瞬間には出した首が飛ぶかも知れないと思ったからよ。

 

 

「判るわ……判るわ……居るのは見えない透明っ子……?

其とも、無邪気な小人さんかしら……?」

 

 

耳を疑った。汗が噴き出した。敵は……私の種族を言い当てた。

もしかして……私の事を知ってる……?

 

やはり……マリスなの……??

 

そして声の聞こえ具合からして、間違いなく此の木に向かってきている……

私はとっさに傍にあった縫い針の様な『輝針剣』に手を伸ばし、其の柄を握った。

 

 

 

ザスッ……ガサガサァッ………!

 

 

 

草を掻き分ける音が近づいている。

 

小さい身体の中で、私の心臓が暴れまわっている。

いつか身体を突き破って出てきそう……そんな気もする。

 

そして声も近づいてくる……

 

 

「何処かな…何処かな…かくれんぼしてないで出てきた方がいいわよ?」

 

 

!何でだろう……私じゃ太刀打ちが出来ない様な気がしてきた……

 

近づく声を聞くたびに、其に、無邪気さとは裏腹に何かとてつもない……

とてつもない危険が含まれている……そう感じる様になったのだ。

 

じゃあ、太刀打ち出来なければ……私はどうしろと……?

此のまま殺されるのを待つだけなの……?

 

 

 

!此の事を…連絡しないと……

 

私は針の柄を握ったままそばにあった電話機の上に乗り、身体全体を利用し、

慣れた手……体つきで画面のロックを解除して、連絡欄を開ける。

急ぐのよ、私……!早くしないと……!!

 

出てくる名前……とはいっても、今のところは博麗霊夢さん、魔法使いの

霧雨魔理沙さん、メイドの十六夜咲夜さんしか名前はありませんでしたが……

すぐに一番上にあった博麗霊夢の名前を剣を持ってない手で押し、通話の準備を始める。

 

 

…後は其の機器の上に耳を当てればいいんだっけ。

私は横たえていた機器の上に寝そべり、機器の上部に近付き耳を近付けた。

 

よし……私の耳に、霊夢さんの最近新しくアレンジされたテーマ曲が聞こえてきた。

確か、霊夢さんの方には、私のテーマが流れる筈……

 

そしてアレンジ曲が突然ブツリと切れ、

 

 

『……もしもし…?』

 

 

……潜めてはいたけど此の声……懐かしい……!

でも、そう思ったのがいけなかった。

 

 

そう思った瞬間、私の頭のタガが、外れてしまった。

 

 

「霊夢さん!!!」

 

『!?な……なんて言ってるの!?いきなり怒鳴って…!!』

 

「私です!!針妙丸です!!!少名針妙丸ですよ!!!

助けて下さい……!!襲われそうなんです…!!!」

 

『~~良く聞こえないわ!!………ちょっと…そんなに喚かないで……』

 

「!?どうしてそんなに平然といられるの……?

助けを求めてるのに……私…殺されるのよ!!?

お願い!!助けてぇ!!霊夢ぅう!!!!」

 

 

 

 

 

其の時頭の上で声がした。

 

 

 

 

「見ぃーつけたぁ♡」

 

 

見上げた其の瞬間、

 

 

 

バキバリバキキィィイィイ!!!!!!!!

 

 

 

隠れていた洞を強引にこじ開けられ、伸びてきた大きな手に身体をむんずと

掴まれた。

其の衝撃で『輝針剣』を取り落とし、反撃する事が出来なかった。

 

暗闇の中から、一気に明るいところに持ち上げられた。

掴んでいる少女の顔が見えた。

 

 

「フフフ……隠れようたってそうはいかないわ?」

 

 

声の通り、まだ幼さが残る少女の顔で透き通るような金髪、

そして血の様に赤く大きな瞳が私を見ている。

 

其の少女の上では、数匹の妖精が陣を組んで私を見ている。

 

まるで少女が大きなお碗を被ってる様だった。

でも、親近感を持つ余裕はなかった。

 

 

すると其処へ、もう一人の人物が近づいてきているのに気が付いた。

 

 

「……フラン?動いてるマリスを見つけたのね?」

 

 

私を掴んでる少女と同じ年齢に見えたが、此方は落ち着いた

雰囲気を持ち、賢く見えた。

まるで長い時を生きていて全てを知ってるような雰囲気があった。

 

其でも刺すような赤い瞳は変わらなかった。

そしてフランと呼ばれた少女と同じ様に、頭の上を妖精達がカバーしている。

 

 

「レミリア御姉様、捕まえたよぉ!!」

 

「良くやったわ……でも殺すのは待って」

 

 

レミリアと言われた、蝙蝠の羽を持った少女がフランに近付いた。

彼女は興味津々で私を見ながら、私を掴んだまま手をレミリアに突き出した。

 

……御姉様?此の二人…姉妹の様ね……?

いや、姉妹という設定のマリスか……

 

 

私の目の前に来たレミリアが、口を開いた。

 

 

「……よくも私の咲夜達を酷い目に逢わせたわね……

私達を怒らせたらどうなるか……覚悟は出来ているかしら……?」

 

 

冗談抜きの威厳がたっぷりと含まれていた。

其を聞いた私は、思わず震え上がった。

 

でも私の頭に引っ掛かった言葉もあった。

 

……咲夜?其ってもしかして……?

 

しかし自らのピンチで其どころではなかった私は、負けじと精一杯に

皮肉を言っていた。

 

 

「……私を殺しに来たのね?……正邪を餌にして蟻みたいに

活力つけて範囲拡めてるのかしら……マリス?」

 

「マリス?」

 

 

すると其を聞いた彼女が更にずいと顔を近づけてきた。

カンカンになっていた。紅い目が怒りに震えている。

 

 

「お前達みたいなろくでなしの人殺し共と一緒にするな。

私達は片っ端から潰すのよ……お前達にとって屈辱的な方法でね」

 

「え……?」

 

 

思わず絶句した。

 

もしかして……私がマリスと勘違いをされている?

 

其の瞬間私は、彼女マリスに対する並々ならない憎しみから、

彼女達はマリスでは無いことを知った。

 

でも其で安心はできなかった。

同時に私は別の危機にさらされた事を知ったから。

 

其は『マリスに殺される』のではなく、『マリスと勘違いされて殺される』という

事だった。

 

マズいわ……!

私は急いで弁解をしようとした。

 

 

其の時私は、見てしまった。

怒りの言葉を発する口から覗く、不自然に伸びた上下2対の犬歯。

 

まさか……!!

 

 

「~~きゅ…吸血鬼……!?」

 

 

顔が青ざめていくのが判った。

 

今の私の体は小さい。牙をたてられたら、身体を貫かれ、

血を吸い尽くされる前に死ぬという事になる……!

 

冗談ではないわ……すぐにでも誤解を解かないと……!!

 

 

ところが、

 

 

「御嬢様!さっき其奴が潜伏していた穴の中に何かあります!」

 

「!?何ですって……?」

 

 

私がいた木の洞だった割れ目の中を見ていた妖精が、私の所有物を発見したらしい。

 

マズい……『打出の小槌』まで奪われたら……!

 

即座にレミリアが命令した。

 

 

「其処から重要そうなものを持って来て頂戴!?最低二つよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてレミリアに妖精から渡されたのは

案の定『打出の小槌』とさっきまで私が霊夢さんと話していた通信機だった。

 

レミリアは其を両手に持って訝しげに見ていた。

 

 

 

其の時、閃いたものがあった。

 

私は叫んだ。

 

 

「其は、『打出の小槌』よ!!

其ばかりは、マリスと言われた奴等や貴方達みたいな吸血鬼と言えど、

私達小人族の様に扱う事は出来ないわよ!?」

 

 

しかし、其の言葉の本当の意味は、

 

 

「私はマリスじゃないわ!!小人族なのよ!!

だからお願い、殺さないで!!?」

 

 

そう言いたかった。

 

でも正直に言って、逆に白々しく思われたらおしまいなのは判っていた……

だから暗にそういう意味を込めた。逆転の発想よ。

 

二人は、

 

 

 

 

「ふぅーん……」

 

 

 

 

其っきりだった。

 

私には其の一言が死刑宣告にしか聞こえなかった。終わった……

力なく頭がうなだれた。

 

此処で……小人族は絶滅するの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でも、咲夜から一応お前の存在は聞かされていた…此があるという事は

どうやら本物の様ね……?」

 

 

其の声を聞いて思わず顔を上げた。

 

レミリアが小槌を軽く振りながら、興味があるのか無いのか判らない目で

其を見ていた。

 

マリスとは違う事は認められた……らしい。

思わず長い溜息が洩れた。

 

 

「ついでに此、ちょっと借りるわよ?」

 

 

彼女は、今度はもう片方の手に持っていた、私の携帯通信機を振りながら言った。

私が承諾すると、其を持って少し操作して、

 

 

「!霊夢と話してた経歴があるわね……其もかなり新しい……

まだ話し終わってそう経ってないなら、まだ繋がるといいけど……」

 

 

そう呟いて、其を耳にあてた。

 

 

「……霊夢?びっくりしてる?私よ、レミリアよ。近くにフランもいる。

悪いけど、針妙丸って小人は私達が預かってるから。心配はないわ」

 

 

少しの沈黙…そして、

 

 

「……取って喰いはしないさ。小人は血が少なくて満足できないし……

私達がマリスの擬態ではないのは判ってる筈よ……奴等は私達を喰う事は出来ない」

 

 

しばらくの沈黙……そして、

 

 

「……良いわよ?小人に宜しくと言っておくわ……じゃあね」

 

 

片手で親指で通話を終わらせるレミリアさん。

私には到底真似できない芸当だった。

 

 

「…霊夢は安心してたわ、感極まって涙声になってたもの。ククク……」

 

 

おかしそうに笑っている。

 

せっかくなので、気になってた事について質問をした。

 

 

「……マリスって……いったい、何者なんです?」

 

「!?そんな事も知らないなんて……!?」

 

 

姉妹そろって驚かれた……そんなに噂になってるのかしら?

 

レミリアさんが溜息をつきながら、

 

 

「……まぁ、詳しくは飛びながら説明するわ。

此処は物騒すぎる……私達がいるから手出ししないんだろうけど……

其に此以上住民を喰わせて操らせるのも癪だしね」

 

 

!?癪って……どういうことですか……!?

其、私の事第一に考えていませんよね……??

 

 

……!手出し?……!!

 

 

「じゃあ、此の…森には……!?」

 

「とにかく出るわよ……私は守りながら戦うのは苦手だ……

洞の中の荷物を取って頂戴!?」

 

「かしこまりました!!」

 

 

レミリアさんの後ろからメイドの格好をした数匹の妖精が出てきて、

巨大な割れ目となっていた洞から、私の荷物を取り出してくれた。

 

数時間かけて隠したものを、数分で出してくれた。

 

そしてメイド妖精が手分けして其等を持った。

御嬢様であるレミリアさんもフランさんも、何故かその一部を担当してくれた。

 

私は、『打出の小槌』を両手で大事に抱えた。

一応フランさんは其の為に両手を出させてはくれたけど、

 

 

「面白そう!」

 

 

って、解放してはくれなかった。

 

すると何も持っていないメイド妖精達がレミリアさんとフランさん、そして

掴まれている私の上で飛びながら肩を組み、広がっていった。

 

 

「日光を一筋でも漏らしたら……お前達の心臓から血が漏れる事になるわよ!?」

 

「かしこまりました!!!」

 

「行きましょう、御姉様!」

 

 

そして、私達は紫色の森から脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~~~~~~~~~!!?!?!??!?」

 

 

………荷物も一緒に持って来てくれたのは嬉しいけど……

 

 

 

私を鷲掴みにしたまま飛ばないでえぇえ~~~~~~!!!??!????

 

せめて両手で、優しく包んで飛んでぇぇえ~~~~~!!!!!!!

 

 

「御姉様!!此の御菓子、とっても美味しいわ!!」

 

 

!!?ちょっとフランさん……!??

私を包んでくれたはずの片手で、私の御菓子を勝手に食べないでぇえ!!?

其のみたらし団子……特に楽しみにしてたのにぃ……!!!

 

もしかして、つまみ食いの為に一部を……???

 

 

 

其より……首が!!!風圧で首が……折れるぅうぅぅ~~~~~~~!!!!!!!

 

 




如何でしたか?

針妙丸はマリスにやられていませんでした。
レミリア達と行動を共にしていく事になりましたが、
ろくな事が無さそうに見えますね……

次回も再び場面は変わります。が………

其では、次回もゆっくりしていってね♪
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