屠自古視点で御送りします。
原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
TOZIKO
~永遠亭
「……何だ、此処は……?」
私、蘇我屠自古は衣玖を運ぶ永遠亭の玉兎達をついて行き、辿り着いた部屋を見て
唖然としていた。
真っ白な部屋だった。立方体の空間の中、一つの照明と一床のベッド以外何もなかった。
窓すらも無かった。
其のベッドの上に、衣玖の身体が慎重に、丁寧に寝かされた。
「此処は、『カタルシスルーム』っていう部屋ウサ」
一息ついた兎の一羽が私の方を向いて話した。
永遠亭の兎達のリーダー格である、因幡てゐに間違いない。
どうやら運んでいる途中にも私の存在に気付いたらしい。
後ろから一言も声をかけなかった……ましてや私は亡霊だから足音も立てなかったのに……
「何もないぞ?どうして此処へ……?」
「此処は、『孤毒』の本格的な蔓延が始まる前に、師匠が地上の鬼達に急速に作って貰った
場所なんだ。
余計なものは一切無い。まさにカタルシス……摘出手術にピッタリな空間なんだウサ」
『孤毒』専用の手術室……って訳か……
「だが、何で医療器具が無い?其じゃあ治療出来ねえだろうが?」
「此処とは別の部屋で、完璧に消毒して保管してあるウサ」
成程…衛生管理は徹底してるんだな……
「これから私達は医療器具を取ってくるけど、どうする?」
てゐが訪ねてくる。私は両手に持っていた、衣玖の帽子と羽衣を
見下ろしながら言った。
「私は…此処に残るよ。衣玖を、一人で残すと心配だし………」
衣玖を運ぶ兎達を追っていた途中で通った、私と衣玖達がいた病室から
急いで取ってきたものだった。
入院の許可がおり、完全に消毒され奇麗に畳まれたまま窓際にほったらかされていた。
「摘出を始める時には素直に退室する……駄目か?」
「消毒してるんでしょ、其の帽子と羽衣は?」
其の問いに頷いた。
「なら、問題はないよ。其に患者さんは誰かがついていると、一番安心出来るウサ」
……さっきも院長さんと同じ事を言っていた。
流石……師匠と弟子だな……
そして玉兎達は器具を取りに部屋を出て行った。
真っ白な何もない部屋に、私と衣玖だけが残った。
同じ薄いピンク色の病衣が二人残った。
目の前で衣玖がベッドの上に横たわっている。
私は其の顔を暗い気持ちで見下ろしていた。
粘液は丁寧に取り除かれていた。
私が帽子と羽衣を取りに行った間に、別の部屋で素早く処理したんだろう。
整った奇麗な顔だった……肌が紫色である事を除いては。
「………衣玖……」
今までずっと、太子様が復活なされる前にも操られていたのか……
『孤毒』を持つアリスをも操る黒幕に……
其の時私の脳裏に、ある言葉が蘇ってきた。
『……私達も見ましたよ、貴方達の主の宗教合戦を……』
……此の言葉は……
『信仰を得るために、他の宗教家達を平気で蹴落とす……幾ら熱狂的な戦いでも
……其の真意には返吐が出ますね』
衣玖と二度目に戦った時に、嵐の中で私に吐いた太子様への暴言だった。
じゃあ、あれも……本心からではなかったのか……言わされていたのか…
体内のマリスに……
「~~~クソッタレめ……!!」
衣玖やアリス、そして天子までも利用して此処までの惨事を……
こんな事を平気でする輩が此の幻想郷にいたなんて……
だが、淀んだ衣玖の目を見ると、たちまち怒りは失せた。
「……………」
……死んでるわけじゃねぇのに……どうしてこんなに悲しくなるんだろうな……
……自分で言うのもなんだが、情に脆い事でも有名だ。
此の事は、九代目阿礼乙女が記した、太子様や他の頂点達による会合の記録にもある。
自分では、其程気にはしていなかったが……
私は羽衣を小脇に抱え、空いた手を瞼に被せ、其のまま顔の下に動かした。
手を離すと、目は閉じられていた。
そして衣玖の頭に帽子を被せた。両手でつばを持ってリボンの位置を調整する。
あぁ……衣玖らしいな……
その其の両目が突然開いた。
「!?」
上半身を素早く起こし、私の胸倉を掴んだ。
「!衣玖……!!お、お前……!?」
私を見る淀んだ紅い瞳の中に、微かに生気が戻っていた。
衣玖が喘ぎながら言った。
「……ハ、速ク……此ノママデすト……私……!」
「!?どうしたんだ…!何が……!?」
突然の回復……?ど…どうなってんだよ……??
「う、兎達に知らせる……!待ってろ!!……」
「!駄目……デす…!!」
衣玖の両手を振りほどき、慌てて入口に戻ろうとした私を衣玖は制した。
「!?何でだよ!?」
「其ハ……なリマセn!グキギィィ……ィ……!!!」
すると、衣玖が呻きだした。
「!衣玖!!」
慌てて衣玖のもとに戻った。
下半身を両手で押さえている。
其の手の上からも判る程、太ももが不自然に波打っていた。
「!何だ……??」
そしてもはや衣玖のものかも怪しい、奇怪な声が続けた。
「……私ヲ……!殺セ……」
……何?
「私ヲ……殺スンデス!!屠自己サン!!!」
次の瞬間、私は両手で思い切り突き飛ばされた。
信じられない距離を飛び、私の体は地面を転がった。
「~~~痛ぇ……!!」
……龍宮の使いに……此程の腕力があるのかよ……??
だが、起き上がって衣玖の方を見ると、
「ヴウ……ゥオグゥヴ……!!!」
身体を折り曲げて喉の奥から絞り出す其の声は、もう衣玖の喉から出る声
ではなかった。
「衣玖!!!」
たちまち病衣の下の体を紫色ではなく黒色のシミが覆っていった。
ベッドが軋み、徐々に沈み込むのが判った。
「!!!」
永江衣玖は、私の目の前で、おぞましい変貌を遂げていった。
TOZIKO
~永遠亭 カタルシスルーム
「!い、衣玖……!!」
私は重みで粉々に砕けたベッドの残骸が、片っ端から飲み込まれるのを見た。
「ヴルルルルゥ………!!!!!!」
……まさか、此処まで運ばれる間に体内で繁殖していたのか…!?
此処まで衣玖を変異させるまでのマリスが……!?
淀んだ衣玖の紅い目の下からは、二つの蒼い瞳の目玉が私を睨んでいる。
いつ生え変わったのか、不揃いの牙を剥き出し、紫色の涎も垂れていた。
頬の一部が変質し、黒色の鞭のようにしなっている。
被せたばかりの帽子のリボンの端がまるで龍の髭の様に伸びている。
そして病衣を突き破り、まるで黒い龍神の様に伸びた下半身は床にとどまらずに
壁や天井にまで伸び、其処から出ている数多の足が四本の爪を立てていた。
其の獰猛な顔つきには今まで見てきた、穏やかな衣玖の表情とはあまりにもかけ離れていた。
するといきなり変異により爬虫類の様になった四本指の手を、勢い良く伸ばしてきた。
後ろに下がってかわし、距離を取る。
……あの手の動き、明らかに私を狙っている様な動きではなかった……
だけど、他に何が……?
!待てよ……もしかして……
「此の羽衣が狙いか……マリス!?」
脇に抱えていた羽衣に視線を向ける。
羽衣は、龍宮の使いに飛翔能力を与える。
まさか……変貌させた衣玖ごと脱走する気か!!
もう何も見ていない衣玖の目を見る。
衣玖…………
「…こんな形で…再戦したくはなかった………」
だが……チラッと後ろの扉に視線をやる。
今の衣玖を、絶対此の部屋から出してはいけない…!
マリスの被害を…永遠亭の中に広める訳にはいかない……!
そして……お前を……此以上苦しませはしない!
意を…決するしかねぇ!!
「絶対に連れ戻してやる!……行くぞ!!衣玖!!!」
如何でしたか?
遂にマリスの治療手段を持つ永遠亭の中でマリスが発生……
事態は深刻化していきます。
次回は屠自古が衣玖の変貌を目撃していた時の
霊夢達の様子を紹介していきます。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪