駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 今週は少し忙しくなりそうなので、早めに投稿します。最悪2週間開くかもしれないのでご容赦のほどを。



第8話 着任前 病室にて

 病室の窓にさわやかな朝の日差しが差し込む。まぶしい光に誘われて、エディは目を覚ました。しばらくはうつらうつらとしていたが、朝の冷えた空気が、次第に意識をはっきりさせる。

「ここ・・・どこだろう?」

 見知らぬ部屋にエディは少し困惑した。だが、窓辺から漂ってくる潮のにおいと、そして自分の片割れであるリッチがベッドそばで眠っているのを見つけると、自然と不安は消えていた。部屋にはテレビがあり、ベッド横の机にはリモコンもある。体はまだ痛んでいるが、動くのに支障はない。リモコンに手を伸ばして、テレビをつけてみる。テレビからは、日本語の放送が流れた。

『今日の天気は全国的におおむね晴れで、日中は暖かな春の陽気に・・・』

『昨日午後、アメリカの商船団が襲撃を受け・・・』

『レイテ島をめぐる深海棲艦と米軍との攻防は激しさを増し、日本軍も派兵を・・・』

『来週のサザエさんは・・・』

『うち屋上あるんだけど』『ああ、いいっすね・・・』

「・・・・・・」

 エディはテレビのチャンネルを変えて、面白そうなアニメがあったので見ることにする。リッチも起きだしてベッドに腰掛け、一緒にテレビを見ていた。すると病室のドアが開き、眼鏡をかけた若い女性が入ってきた。

「起きていましたか、お加減はよろしいですか?」

「まだ体が痛みます。あなたは?」

「横須賀鎮守府の事務を預かっている軽巡洋艦大淀です。よろしくお願いします」

 大淀は病室の椅子に座った。リッチも警戒していないので、悪い人ではなさそうだとエディは判断する。

「ここはどこですか?」

「海軍横須賀基地附属病院よ。あなたは大怪我をしてここに運び込まれました。着任予定日には退院できるそうですが、まだ安静にとのことです」

「ここが日本ってことは、わたし勝ったの?」

「ええ、敵重巡洋艦撃沈。駆逐艦としては大戦果です」

「やった!わたし勝ったんだ!生き残ったんだ!」

 エディは大喜びしてリッチの首に抱き着いた。

「ちょっと、エディ!?」

「やった!初陣で大勝利だよ!大姉ちゃんにも自慢できるよ!」

 まるでアイスの当たりが出た時のように喜ぶエディに、大淀の表情も緩んだ。ひとしきり喜んだ後に、エディは台湾組のことを思い出した。

「キンバリー達は大丈夫でしたか?」

「みんな無事よ。彼女らは今日の午後には船団と一緒に横須賀に着いて、修理を受けるらしいわ」

「よかった・・・みんな生き残って」

 エディが安堵すると、大淀は持ってきたカバンから書類を取り出した。

「まあ雑談はこれぐらいにして、本題に入ります。ヘイウッド・L・エドワーズさんとリチャード・P・リアリーさん、知っていると思いますが、あなた達の正式な着任は明後日です。横須賀鎮守府へはここから自由に出入りできますが、エドワーズさんはお医者様から暫くは安静にするようにと言われてますので、外出はできないものと思ってください。もしかしたら暇な子たちが見に来るかもしれませんが、正式な顔合わせも着任式に行います。それとこの資料は・・・」

 大淀は次々と説明を加えていった。リッチは後でエディから聞くと食堂に朝食を取りに行き、エディ達は食べながら説明を聞いた。

 

「では以上で説明は終了です。何か質問や必要なものはありませんか?」

「大丈夫です。ありがとうございました」

 大淀が出ていくと、エディも一息ついて軍規や基地の情報などの資料を読み始めた。

「ねぇリッチ」

 エディは資料を読みながら、リッチに話しかける。

「なんだいエディ?」

「わたし達、うまくやってけるかな?」

「エディはいつも、きっとうまくいくって言ってた。だから大丈夫だと思う」

「そうね、そうだったね。リッチ、ありがとう」

 エディはリッチに感謝の言葉を述べると、リッチは嬉しかったのか顔を赤らめて下を向く。

「いや、私は別に・・・それより、昨日はエディを守れなかった。ためらって撃たなかったせいで、駆逐艦が庇いに入ってしまった。でも、これからはどんなことがあってもエディを守るから。そして、ここではずっと一緒にいよう」

「当たり前じゃない。そんなこと」

「当たり前でも、私にはエディと一緒にいられるのが何よりも幸せだから」

「それは彼氏に言いなさい」

 リッチは真剣に言ったつもりであった。が、エディは単に軽口と思ったのか、まじめに返そうとしなかった。

「どんな友達ができるか、楽しみだね。そうだ!リッチだけでも見てきなよ」

「無茶言わないでよ。知らない海域に単艦突撃なんて無謀すぎるし。第一、エディと離れたくない」

 そう言ってリッチはエディに抱き着いて頭を向ける。いつもリッチがエディに甘えるときにする仕草だ。

「もう、仕方ないわね」

 エディはリッチの頭をなでる。エディは基本的に、リッチとのこういったじゃれあいを拒まない。リッチがコンプレックスを感じている金雑じりの黒髪や、猫のような金の瞳は、エディの眼には宝石のように映っていた。自分にはないリッチの細くしなやかな体は、腕で包んで愛でるにはちょうどいいのだ。

「くすぐったいよ」

「リッチがかわいいから、つい」

 こうして二人はしばらく休憩をはさんだ後、再び書類を読み始めた。

 

 

 結局、書類を読んだり休憩を入れたりでその日は終わった。5時になると船団からエディ達の私物の入った荷物が届いた。荷物には台湾組からの手紙が添えられていた。船団は最低限の修理と補給を行うとすぐに出航するため、見舞いに来られないことを詫びていた。

 書類を読むにしても体力を使うものである。夕食を取った後、二人はそのまま眠ってしまった。

 

 

 次の朝、エディの体にはまだ痣が残っていたが、痛みはだいぶ治まった。普通の人間なら半月は掛かる怪我だが、艦娘は治癒力が高いのだ。無理して鎮守府へ行きたいというエディをリッチがとめていると、病室のドアが少し開いているのに気が付いた。

「誰かいるんですか?」

 エディが声を掛けると、裏から何やら話し声がした。

「!?みつかった!」

「どうしよう、鬼畜米に捕まったら食べられちゃうっ」

「とりあえず撤退よ!まったく貧乏くじね」

「え!?ちょっと待って!」

 そんな声が聞こえると、逃げていく足音がした。途中で誰か転んだのか、ゴツンと鈍い音がする。リッチが扉を開けてみると、エディ達と同じぐらいの年頃に見える、ピンク色の髪の少女がいた。

「いたた」

「何やってるんですか!」

 リッチは少女を捕まえると、部屋に引きずり込んで鍵をかけた。

「やめて!私にいやらしい事するんでしょ!ご主人様みたいに!!」

 少女は涙目になりながら叫んだ。

「大丈夫。そんなことはしないから安心して」

 エディはとりあえず少女に安心してもらおうと椅子に座るように促して、飲み物にと水差しから水を取り出した。少女は警戒して飲もうとしなかったが、エディが飲んで見せると、安心して口をつけた。

「あなたの名前は?」

「駆逐艦・・・漣です」

「漣ちゃんね、どうしてここに来たの?」

「アメリカの子がいるって聞いて。ご主人様が見に行ってもいいって言ったんだけど、みんな怖かったから駆逐艦のみんなでくじを引いたの。そしたら潮ちゃんが当たっちゃって、潮ちゃんだけじゃ心配だから私とおねぇちゃんたちがついてきたの」

 漣はこちらをチラチラ見てる。

「なんで私たちが怖いの?」

「だってアメリカは敵だったから。みんなあなた達に殺されてるから。私も・・・」

 漣はわずかに震えていた。エディが何か言おうとしたが、先にリッチが答えた。

「アメリカ人だってたくさん殺されたさ」

「えっ?」

「私達は兵器だから、命令ひとつでどうにでもなる。あの時はたまたまそれが殺し合いだっただけさ」

 そういうとリッチは窓の外を見た。

「あなたはわたしが怖いかもしれないけど、わたしもリッチもただの駆逐艦よ。足は速いけど装甲が薄くて、撃たれればすぐに大破して、重巡に出くわした時はこの世の終わりみたいな気分になる。でなけりゃここで入院してないわ」

 エディは服を脱いで一昨日の戦闘の痣を見せた。だいぶ治ったとはいえ、まだ傷は残っていた。

「ひどい、大丈夫なの?」

 漣は心配そうに傷口を見た。

「大丈夫。あなたがそうであるように、明日には何も残らないから」

「同じ・・・なんだね」

 漣はすっかり緊張を解いて、エディとリッチを見た。エディは安心して彼女がここにいる目的を切り出した。

「ねえ、わたし達と友達にならない?わたしはそのために日本に来たの」

 エディは手を差し伸べる。漣は少しためらった後、手を取った。

「よろしく、漣」

「よろしく、エドワーズちゃんにリチャードちゃん」

「わたし達のことはエディとリッチって呼んで」

「うん。エディ、リッチ。よろしくね」

 三人は顔を見合わせて笑った。

「そういえば、私初めてあなた達の名前を聞いて、ごつい男なんじゃないかって思ったの」

「エドワーズにリチャードなら、仕方ないよね」

「ねぇ漣ちゃん。漣ちゃんはどんな男の人が好き?」

「それは・・・」

 それからエディとリッチと漣は、故郷のことから身内自慢や好きなアニメまで、さまざまな話をした。駆逐艦寮の夕食の時間まで話は続き、別れの時間が来ると、明日続きを話そうと約束した。

 

「漣ちゃん。いい子だったね」

 漣が返るのを見送ると、エディはリッチに話しかけた。

「初めての友達としては、順調だね」

「これからもっと友達が増えるといいね」

「うん・・・頑張ろう・・・」

 リッチが少し躊躇ったことに、エディは気づかなかった。

 




 実は私、エディ達がどう動くかだけ決めて、肝心の日本の子たちのキャストを決めてませんでした。好きな子たちを出せばいいと言えばそれまでですが、他の鎮守府とバランスを取りながら配置したいですし、新実装組もどう入れてくかとかも大変で、あれこれしてたらここまで書いてしまって、慌てて私の初めての子である漣ちゃんを放り込みました。
 とんでもなく先行きの不安な始まりですが、エディ並みのポジティブシンキングで見ていただければ幸い。海外艦ネタが増えてくれたら万歳三唱ものです。またあったらよろしくお願いします。それでは失礼、さいなら御免。
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