駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 早く書きあがったので投稿。でも次は少し開くかも


第10話 演習前

 ブリーフィングルームを出て食堂に来たエディ達は、そこで気まずい昼食を取った。曙が威圧感を発していたためエディもリッチも話しかけることができず、無言のままただただ食べるだけであったのだ。

「ねぇ、何か話そうよ」

 エディはなんとか話を振ろうとするが、曙は無視したままだ。

「食堂のメニューのおすすめは?暇な時に何してるの?ファッションのポイントは?」

 エディはめげずに質問を浴びせるが、曙は何も反応しない。

「もう!曙が話さないならわたしが一方的に話すよ!ヘイウッド・L・エドワーズ。1944年1月26日にボストン海軍工廠で就航した、フレッチャー型の一隻よ。日本にも貸与されたらしいけど、そこらへんはまだ思い出せないからまた今度。太平洋戦争では・・・」

 エディは自分の身の上話を始めた。曙は無視を決め込もうとするが、エディも負けじと5分、10分と話し続けた。

「・・・その時はずっと私が勝ってたの。なのにスタンリー姉が来た途端に負けだして、すっからかんにされちゃった。イカサマしてるんじゃないのって喧嘩になって・・・」

「ああもう五月蠅いわね!どんだけ話し好きなのよ!」

 曙も耐えかねて口を開いた。

「やったぁ!曙ちゃんと話せたよ!」

「おめでとうエディ。友達が増えたよ」

 エディは大喜びして、リッチも拍手した。曙はたまったもんじゃないと反論する。

「ちょっと、何勝手に友達にしてんのよ!」

「いいじゃん。わたしは曙ちゃんとも、いいえ、鎮守府のみーんなとお友達になりに来たんだもん」

「誰があんたなんかと友達になるのよ!そうやって私から全部奪うつもりなんでしょ。メリケンはいつもそう!あんたなんて嫌い!近づくなバカ!」

 曙は机を思いっきり叩いて怒りの眼差しでエディを睨みつけた。

「いつもそうよ・・・自分たちだけ正義面して、奪われる私たちのことも考えずに一方的に殺して。私はただ仲間を守りたかったのに、漣を守りたかったのに・・・」

 曙は涙を流して悲壮な過去を思う。目の前で妹を奪い、敗走を重ねる自分たちに情け容赦なく砲弾の雨を降らせたアメリカ人が、今度は漣の心まで奪おうとしていることが、曙には許せなかった。

 エディには曙の事情は分からなかったが、過去の傷が未だに曙を蝕んでいることはわかった。それと同時に遠い失われた記憶の一部が心の奥から浮かび上がってくる。

「わたしが初めて日本に来たのは、戦争が終わってすぐだった。わたしはほとんど前線に出なかったから、日本人の怖い噂しか聞かなくて、とても不安だったの。でも、そんなことはなかった。そこにいたのは、アメリカ人と変わらない人たちだった。日本に引き渡された時も同じ。国が違っても、時代が変わっても、誰かを守りたい心は同じだった。なら分かり合うのは簡単なことだと思うの。争いが起こるのは、きっとみんなが分かり合えないと思い込んでるだけ。それで悲しい出来事が起こるのかもしれない。でも、いつまでも敵でいるわけにはいかない。いつか必ず向き合って握手できる日が来る。わたしは国を越えたことがある艦として、そして今国を越えた艦娘として、あなた達を知りたい。分かり合いたいの。もちろん、曙ちゃんも」

 エディは迷いなく言い切って曙を抱きしめた。曙は次第に泣き止み、どこかすっきりした様子でエディを見つめた。

「甘いわね、胸焼けがするわ・・・漣があんたを好きになる理由がわかった。ついてきなさい。勝つ準備をするわよ」

 3人は立ち上がった。

 

 

 演習場へ向かう前に、発進場の隣の工廠に艤装を取りに行った。そこには大破したエディ達の艤装がすでに修理されて置かれていた。

「すごい!新品みたい」

「規格も違うだろうに、ここまで再現できるなんて。ここの妖精は優秀だね」

 エディはピカピカに磨かれた艤装を見て、大喜びで装着し始めた。リッチも装着し、いよいよ海へ入った。

「最初に聞くけど、あんた実戦は何回やったの?」

 曙はとりあえず聞いてみた。

「実戦はここに来た時の1回だけだよ。訓練は一応してるけど」

「はぁ?全然使えないじゃない。それでよくうちでやってこうと思ったわね」

 曙は呆れた表情で言った。エディはむっとして言い返す。

「じゃあ曙はどれぐらい強いの」

「半年従軍して出撃が37回。戦闘になったのが13回。駆逐艦32隻、軽巡3隻撃沈したわ」

 深海棲艦は海上であれば無尽蔵に何処にでも発生する。よって2、3年従軍すれば撃沈数が3桁に届く艦娘もいる。それでも曙の戦果は並外れていた。

「すごい!大エースじゃない!」

「うちの一位はこんなもんじゃないわ。軍全体じゃ私でもせいぜい中の上よ」

「こんなすごいところに勤められるなら大姉ちゃんに自慢できる!」

 エディは子供のように大喜びする。曙はため息をついた。

「とにかく時間が無いし、艦隊行動の訓練をするわ。単縦陣で距離を保ちつつ、私についてきなさい」

 曙はそう言うと、まずは簡単な回頭からはじめて、次第に複雑な機動に変えていく。エディ達は列を乱さずについてきた。

「ふぅん、少しはやるじゃない。ここまでは肩慣らしよ。ついてきなさい」

 曙はそういうと、予告もなしに急な旋回を繰り返した。しかし、エディ達は綺麗に曙の後を追い、余裕の表情さえ見て取れた。

「や、やるわねぇ。よっぽど訓練バカなんじゃないあんた達?」

「そんなことないよ。エディは訓練校ではかなりのいたずら好きだったし、私も成績は並だったよ」

「そ、そう。ちなみに艦隊行動の訓練したの?」

「丸々2年。1000時間位じゃないかな」

「なるほど、2年も軌道訓練だけしてたらそうなるわね」

 リッチの回答に曙は無理やり納得しようとするが、エディがさらに続けて言った。

「同じぐらい模擬戦もやったよ。あと電子機器の扱い方とか、地上訓練でレンジャー過程もやったかしら?高等教育も受けたし、選択でいろいろな資格もとれたけど。わたしは看護師と教員と大型2種を取ったよ。リッチは何取った?」

「弁護士と大型特殊。あとは・・・」

「もういい・・・そろそろ訓練が始まるわ。戻りましょう」

 曙は脳内がパンクしそうだったので、帰還することにした。

 




注釈 ヘイウッド・L・エドワーズの来日について。
 史実のエディは戦後すぐに大湊に来ていて、そのあと46年にいったん退役し、59年位に日本に貸与されました。劇中の初めて日本に行った時と引き渡されるときに言い分けてるのは、そういう理由です。

日本とアメリカの艦娘の教育
 日本:船の記憶あるし戦闘は体で覚えろ。lv1から戦闘だ!
 アメリカ:まともに訓練受けてない奴が戦えるか!lv20改造してフル改修してから実戦投入だ!

アメリカの艦娘学校の教育課程
*必修*
1.各艦級に合わせた戦闘訓練
2.高卒レベルの一般教育
3.レンジャーレベルの陸戦訓練
*選択*
4.各種文理の大学教育
5.各種資格

注.戦艦、空母の必修には士官教育が、軽空母および巡洋艦にも下士官並みのクラスが追加。貸与艦は貸与国の言語を必修。
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