駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 私生活に落ち着きが戻りました。やっぱり日常は大事。


第16話 FF

 闇夜を縫うように、島風とリッチは敵艦隊のいる方へ向かう。幸い敵は輸送船を探してか、探知灯をつけていてどこにいるか丸わかりだ。

「間抜けね。こちらの思うつぼだということを教えてあげるわ。100まで近づいたら魚雷発射よ」

 島風はさらに距離を詰めようとする。が、敵の軽巡洋艦は何か思い出したかのように探知灯をこちらに向けた。光が島風を照らし、数秒後には発砲炎が見えた。

「見つかった!発砲開始!」

 島風達も応戦する。狙いは探知灯を照射している軽巡だ。

「当たれ!」

 何発か撃ったところで命中弾が出た。探知灯にあたったのか明かりが消える。

「このまま突っ込む!リッチ、援護して!」

「了解」

 島風は機関の出力を上げて発砲炎のある方へ距離を詰める。リッチはそれを背後から支援した。リッチの攻撃により駆逐艦が炎上、派手に爆発した。

(よーし、そのまま、そのまま・・・)

 島風が敵を照準一杯にとらえ、魚雷発射管に手を掛けようとしたその時、背後から衝撃を感じた。

 

 

 

「ねえ漣ちゃん。島風ちゃんたちは大丈夫かな?」

 船団へ向かうエディは島風達のことが気にかかっていた。

「島風さんはそう簡単にやられないから大丈夫だよ。リッチも弱いわけじゃないし、きっと帰って来る。何がそんなに心配なの?」

 漣はエディに問う。島風の実力は折り紙つきのものだし、リッチの能力も低いわけではない。エディには二人を心配する何か特別の理由があるように感じられた。

「嫌な音が聞こえるの。日本に来るときに聞こえたのと同じ」

「敵の音?」

「違う、でもとにかく気持ち悪いの。リッチたちのいる方に近づいてる!?漣ちゃん!わたし、やっぱりリッチのところに行く!」

「ちょっと待って・・・」

 漣が止めようとするが、エディは行ってしまった。

「はあ・・・とりあえず鎮守府に連絡したほうがいいかな」

 漣はため息をつきながら無線機を取った。

 

 

 

「ひゃ!?」

 突然の背後からの被弾に島風は姿勢を崩す。深海棲艦もそれを見逃さずに魚雷を発射した。無数の魚雷が島風に殺到する。

「舐めるな!」

 島風は体制を立て直しつつ最低限の動きで魚雷を回避、その間に連装砲が攻撃して駆逐艦二隻を撃沈、島風自身も発砲して最後の駆逐艦を撃沈した。

「d8$aq4t%@9gh!!」

 最後に残った雷巡チ級が何か叫びながら島風に突っ込んできた。しかし、リッチが斉射した127㎜砲弾がチ級左舷に命中。左手足と頭を失い、腹部に大穴の開いたチ級は糸が切れた人形のように崩れ落ちて沈んでいった。

 島風はあたりを見回して残敵がないかを確認すると、一息ついてから振り返ってリッチを睨みつけた。

「よくも撃ったわね」

「手が滑っただけさ」

「魚雷発射管に当たったら死んでたのよ。夜戦での誤射は仕方ないけど、しっかりしてよね」

 島風は背中に背負った魚雷発射管を指差しながら言った。

「動ける?」

「この私がちょっとやそっとの被弾で・・・あれ」

 島風は機関を動かそうとするが出力が上がらない。無理に上げようとしたら煙が出て動けなくなってしまった。どうやら被弾でボイラーが故障したらしい。

「もー!動けないじゃない!」

「仕方ないよ。回収班を呼びたいけどなぜか電波状態が悪い」

「一隻いた小型艇が妨害電波を流してるのかもね」

「じゃぁ、周囲を警戒しながら私が曳航するよ」

 リッチは島風を鎖でつないで曳航する。

「ねえ、ほんとにこっちで合ってるのかな。私が思うに北は反対側だと思うけど」

「そうかな?妨害のせいかGPSも羅針盤も働いてないし正しいことはわからないけど、多分こっちで合ってると思うよ」

「はあ・・・遭難だけは勘弁ね」

 空には雲が立ち込めて月も見えない闇の中、島風達は進んだ。

「あれ、5時方向!何か光ってるよ」

 島風が発行する何かを確認した。

「敵かな?・・・発行信号、ワ・レ・エ・ド・ワ・-・ズ。エディよ!回頭しましょ!」

 島風も発行信号を送り、島風達はエディに合流した。エディは島風達の下に着くと泣きながら二人に抱き着いた。

「ふぇぇ、二人とも大丈夫だった?変な音が鳴ってて心配したの」

「大丈夫も何も、リッチが誤射した上に危うく遭難するとこだったわ」

「エディこそ、あんなところで単艦で発行信号なんてやってたらいい的だよ」

「危うくボイス先輩から聞いたサボ沖の間抜けな敵重巡みたくなるところだったね。今度から気をつける。漣ちゃんに護衛は任せてるから、わたしたちも戻りましょ」

 エディも島風をけん引する。

「ところでエディ、帰り道はわかるかい?」

「えっと。とにかく変な音の方に向かってきたから・・・わかんないや」

「これはほんとに遭難したかもね」

 島風はため息をついた。

 

 

 

「愚か者め!どうして勝手に戦闘した!」

 鎮守府に戻った島風達は佐々木司令に大目玉をくらった。

「漣が連絡しなければ今頃サメの餌になっていたのだぞ!」

 結果を言えば本格的に遭難して途方に暮れていたエディ達は、海軍の哨戒機に発見されヘリで救助された。残っていた燃料も僅かで、救出が遅れていれば本当にサメの餌になっていたかもしれない。

「心配かけさせおって。とにかく、島風はしばらく出撃停止と掃除当番をしてもらう。リッチもじゃ。エディと漣は反省文を書け。いいな!」

「はい・・・」

 皆肩を落として反省する。

「それと漣は残ってくれ、少しやってもらうことがある」

 

 

 

 ―――――数時間前

 

 東京湾海上。他の輸送船段が入港を許されたが、トライデント号はまたしても臨検に引っかかり、洋上停泊する羽目になった。原因は売れ残ったまま船室に放置した戦車砲の砲身である。

「今頃他の船団の連中は丘の土を踏んでるんだろうな・・・、まったく羨ましいことだ」

 副船長のロジャー・ビットスは甲板で煙草をふかしながら、東京の摩天楼を見つめて漏らした。船長ペリーも隣で葉巻に火をつける。

「不眠不休で延々と荷物を運びこむ仕事がしたいなら、今からでもカッターを下していいぞ。少なくともここにいれば、深海棲艦の襲撃もなければ荷物運びもない」

「おかげで腕がなまっちまいそうですがね」

 そう言ってロジャーは懐からM92を取り出して弄り回す。

「見せびらかすのはそこまでだ・・・あいつも返ってくる」

 ペリーは時計を見ながら言った。程なくして甲板から海に垂らしてあった縄梯子から誰かが上ってくる。身長170㎝程、競泳用水着に身を包んだ、悪くないスタイルの女性である。濡れた長い金雑じりの黒髪でふさがれて顔は見えない。

「戻ったぜ」

「お疲れさま」

 ロジャーはタオルを女性に渡す。女性は頭を拭いて、髪をピンで留めた。整った顔に、肉食獣のような獰猛な目が印象的な少女の顔が現れる。

「髪ぐらい縛ったらどうだ。毎度気持ち悪いぞ」

「うっせーよ豚。あたしにも一服させろよ。ここの警戒網は厳しくて、神経使ってイライラしてんだ」

「その前に戦果報告だ。どうだったんだ?」

「残念ながらNOだ。あと一歩のところで邪魔が入って、チャンスがないままヘリに掻っ攫われちまった」

「そうか・・・」

 ペリーは報告を聞くと、ロジャーに目配せする。ロジャーはシガレットの箱とライターを少女に渡した。

「お、サンキュー。で、どうすんだ大将?まだ粘るか、撤退するか」

「今回はマッチの先に火をつけたが、ダメだった。なら話は簡単だ、もっと大きいボヤを起こせばいい」

 ペリーは煙を吐き出すと甲板を歩き出す。

「アメリカは変わった。上は小さな脅威と安い融和の名の下に、ジャップと対等になろうなどと言っている。だが」

 ペリーは船首に立つと、葉巻を海に投げすてた。

「我らの先祖は、欲しいものは何でも手に入れた。人の物は奪ってでもな。インディアン、イギリス、スペイン、ドイツ、そして日本から。それがフロンティア精神であり、アメリカの正義である。我々軍人は、その最後の体現者であるべきだ」

 ペリーは船室に向かって歩く。ロジャーと少女もそれに続いた。

「明日からが決戦だ。今夜はゆっくり休め。彼女にも作戦と回収地点を伝えろ。世界最強の強盗の正義。今こそ見せる時だ」

 ペリーたちは暗い船室に消えて行った。

 




 早くも黒幕登場。前回のホモといい、私は何をやってるんだろう。
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