駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 第零話です。主人公もいますが登場はしませんのでご注意を。



エディとリッチ
第0話 いつもの戦場


 美しい浜辺の近い、とてもとても静かな海。霧に包まれて傍からは何も見えないが、白いもやの中では現代的な5隻の揚陸艇が、その腹から2000人近い兵員を吐き出している。更にその周りを囲むのは、船の煙突やら、大砲のようなものを装備した奇妙な少女たちである。『艦娘』と呼ばれるこの少女たちは、かつて星条旗の盾として戦った艦の意思を宿し、今の世に蘇った「生きた兵器」。30年前に現れた謎の生命体である深海棲艦に対抗する人類の切り札だ。

   

《こちらAWACSオーバーロード。作戦は予定通りに決行する。各艦目標を射程に捉えしだい交戦を開始せよ》

 無線機から通信が入る。遙か地平線の彼方で監視しているAWACSである。私の詰めている揚陸艦のCICにも緊張が走った。揚陸艦の艦長がマイクを取ろうとするが、その前に無線から女性の声がした。

《こちら艦隊旗艦巡洋艦アラスカ、了解しました》

 艦娘たちを率いるアラスカが返答したようだ。作戦前に取材したときに見た彼女は、透き通るような白い肌に長い銀髪が垂れる長身の美しい女性で、落ち着いた雰囲気が印象的な艦娘であった。小麦色の肌に金髪という活発な容貌の姉妹艦グアムとは対照的だ。

 艦長が再びマイクをとり了解の意を伝える。CICのモニターにはAWACSのデータが送られており、味方の配置や敵の反応、上陸地点の情報がリアルタイムで伝えられる。しかし、敵の予想位置には霧が掛かっているようなポイントが多い。AWACSから再び通信が入る。

《深海棲艦は占領地にジャミングを展開することが多く、小型ゆえステルス性が高い。レーダーに頼らず、偵察機を出してジャミング装置を破壊しつつ前進せよ。自分たちの目が頼りだ》

《こちら上陸部隊指揮官のモーリス大尉だ。揚陸艇は全て発艦完了した。あとはお嬢さんたちと陸まで移動するだけだ。デートの日にしちゃ天候は最悪だがしっかりエスコートを頼むぜ!》

《義務を果たすまでです。それと、女性にエスコートされるのはみっともないと思いますが・・・》

《陸では俺たちがエスコートしてやるから安心しな!》

《はい。って、あれ!?///》

 モーリスの受け返しにアラスカは一瞬戸惑い、照れたような反応をした。すると海兵と艦娘たちの笑い声が無線から溢れる。中でも一番大笑いしていたグアムがアラスカに殴られ、緊迫した雰囲気のCICも幾分か和んだ。ひとしきり笑ったところで、アラスカが仕切り直す。

《と、とにかく、予定通り作戦を開始しますよ!各戦隊は状況を報告してください》

《こちらは空母ミッドウェイです。今日は妖精さんの機嫌がいいから、きっと大戦果を挙げてくれるわ。チビちゃん達もみんな調子がよろしくて。今日は特別ナデナデしてあげたいわねぇ》

《こちら砲撃支援班のオレゴンシティ、さっさとぶっぱなしたいんだけど、まだ我慢しないといけないの?》

《こちら前衛水雷戦隊の軽巡デンバー、ミッドウェイさんがうちの妹に手を出さないか以外心配事はありませんよ。サンディエゴちゃん?ちょっと見張っててくれませんか?》

《あらあら人聞きが悪いわねぇ、みんなでお昼寝したり、夜に添い寝してあげたりしてるだけよ。ねえ、ラングレーちゃん《そうだよ~、ミッドウェイおば・・・お姉さんとっても優しいよ~》》

《うわぁ・・・それはドン引きなのです・・・あっ、こちら揚陸部隊直掩兼切り込み部隊のフレッチャーです。全艦位置につきました。いつでもいけます。あと海兵さんがくれたチョコ美味しいです》

《フレッチャー、知らない人からものをもらってはいけませんと言ったはずです。海兵隊も駆逐艦に餌付けしないでください》

《ははは!そういや作戦が終わったらパーティーをするそうじゃないか、菓子はそんときにまとめて送っておくぜ。アラスカ姉妹は酒のほうがいいか?》

《ッ!茶化さないでください!もう・・・》

 アラスカのため息がこちらにも聞こえてくる。まもなく戦闘海域とは思えないほど気の抜けた会話だが、レーダーを見ると滞りなく陣形が整っていく。仕事はきちんとしているようだ。

《こちらミッドウェイよ、偵察機が戻ったわ。座標B31・E43敵艦隊発見よ。私たちで仕留めておく?》

《いいえ、そっちは水雷戦隊で何とかする。航空隊は予定通り陸上爆撃を。ただし7割で3割は不測の事態に備えて待機》

《了解したわ。チビちゃん達、訓練の成果を出してね。発艦はじめ!》

 発艦の瞬間をカメラに捉えようと、私は急いでCICを出て揚陸艦後方の空母部隊の方へカメラを向けた。もう霧は晴れている。望遠レンズ越しに、長弓を構えた金髪に紫のグラデーションの不思議な髪を持つミッドウェイが、クロスボウを手にした幼い少女たちを指揮して矢を放つ。放たれた矢は艦載機に変わり、レプシロのエンジン音とともに私の頭上を飛び越していった。感嘆しながらカメラを操作していると、通信士の一人が気をきかせてインカムを持ってきてくれた。これで無線を聞きながら撮影ができる。

《水雷戦隊は敵の艦隊を排除しなさい。火力支援班はここから支援砲撃。敵を分断しなさい。上陸部隊は敵排除まで待機》

《了解!》

 数分後には爆音が聞こえだした。どうやら始まったようだ。CICに戻ろうかと思ったが、やはり生で見たほうがいい記事が書けるはずだ。

《重巡型目標破壊!敵艦隊戦力低下です!》

《航空部隊が戻ったわ。陸上目標は5割を破壊できたみたい。ただちょっと硬いのがいるの。座標を送るからそっちで片付けといてくれないかしら》

《了解。砲撃支援班は陸上目標への攻撃を開始せよ。私も加わるわ》

《やっとぶっぱなせるぜ!まかしときな!!》

 揚陸艦前方に展開している重巡4隻と、グアム・アラスカの砲撃が始まった。水雷戦隊の軽巡洋艦や駆逐艦よりも重い轟音と衝撃波が揚陸艦の上にいる私にも伝わってくる。数秒後には大きな爆発が確認され、目標と思われる砲台が崩れ落ちていった。

《偵察機より報告。目標の破壊を確認したわ。あとは大した驚異は残ってないわねぇ》

《頃合ね。砲撃停止!上陸部隊は前進を開始してください。水雷戦隊は護衛隊に合流、直航空隊と連携して直掩と残敵掃討を開始してください》

《了解でし!》

《あとは俺たちの仕事だな、任せとけ!》

 

 

 揚陸部隊と駆逐艦隊の制圧作戦はトラブルもなく、作戦開始からわずか4時間でビーチの確保が完了した。こうして米軍の離島奪還演習は無事終了した。この演習により、艦娘と通常軍との連携作戦の貴重な経験が得られた。この成果は現在太平洋における深海棲艦掃討の主導権を日本軍からアメリカに移す転機となるだろう。

               

               ユナイテッド・ミリタリー 2044年4月号

                   レポート アレン・C・ハミルトン

 




あとがき
 みなさんこんにちは華範です。今回は触りとして米軍の演習を書きました。
 ホントは演習はちゃちゃっと終わらせて主人公登場に入りたかったのですが、細かく書き込んでしまって主人公登場は2話になってしまいました。
 悪い癖でついつい細かく書き込んでなかなか本筋に入れないです。こんな感じで迷走して更新が遅れるかもしれないので、そこのところは温かい目で見守っていただければ幸いです。
 
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