駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 今回は腕によりをかけて料理したつもりですが、お口に合うかはわかりません。


第18話 Capital Defence

 海へ出ると、護衛艦がひしめき合いながら出航し、一部の船はすでにミサイルを発射していた。上空では空軍と敵艦載機の空戦が繰り広げられ、何本もの飛行機雲を空に描いている。遠くから沿岸砲と敵戦艦の打ち合いと思われる重い砲声が響いていた。

《こちらイージス艦「とさ」。艦娘水雷戦隊へ、敵がECMを展開してミサイルが誘導できない。貴艦は本艦を護衛しつつECM艦を探してくれ。ああ、貴艦の内誰かがレーザーポインタを持っているようだな。レーザーポインタを照射すればこちらの主砲で攻撃可能だ。援護が必要なときは敵にレーザーポインタを照射してくれ》

「誰がレーザーポインタを持っている!」

 天龍が叫ぶ。

「私です!」

 夕張が装置を掲げながら答えた。

《こちら軽巡五十鈴。被弾、上部兵装がやられた。敵に囲まれて身動きが取れない。至急救援を!》

「了解しました。30分持ちこたえてください。必ず助けます」

《わかったわ。大潮、霰。みんなが来るからそれまで耐えて!》

 無線越しの五十鈴の声もいくらか落ち着いた様子になった。

「五十鈴さんたちの救援を最優先に!急いでください!」

「「「了解」」」

 

 

 

11時44分

 

 

「間もなく敵艦隊との交戦距離に入ります!準備はいいですか!」

 敵を目視し、神通は最後の確認をする。皆元気に答えるが、エディは異音のせいで聞く余裕もなくなっていた。

(うぅ・・・頭が・・・割れそう・・・もう、だめ・・・)

 ふらふらと隊列を離れたエディは、隣を航行していた潮に衝突。胸に頭を突っ込んだ。この時、図らずも潮は機雷を海に落としてまった。

「う、うあぁ!?エディちゃん、大丈夫ですか?」

「体調が悪いのですか?エドワーズさん!」

 慌てて神通達が駆けつける。

「ごめんなさい・・・日本に来る時から、ソナーがおかしくて・・・変な音がして頭が割れそうなんです」

「ならソナーは切ってください。通信と対潜警戒は私達がしますから。エディさんは目の前の敵に集中してください」

 そういうと神通はエディの耳に着けているイアホンを取った。まだ少し聞こえるが、だいぶ楽だ。

「では、改めて敵艦隊に突入します。僚艦を見失わないように、しっかり旗艦についてきてください」

「了解!」

 

 

 

11時55分

 

 

「当たってください!」

 神通の発砲を皮切りに、深海棲艦前衛艦隊との戦闘が始まった。

 天龍、神通、木曽を先頭に三部隊がそれぞれ単縦陣で敵艦隊に突入し、五十鈴を探しつつ敵を串刺しにする作戦だ。

「天龍様の攻撃だ!おっしゃあ!」

「弱すぎる!」

 艦隊を先導する天龍と木曽は砲を乱射し、或いは刀で敵を切り伏せて艦隊の進路を拓く。沿岸砲台に気を取られて反応が遅れた敵艦隊は次々と倒されていく。

「楽しいなぁ!木曽!」

「まったくだ!川内もいればもっと面白いだろうな!」

 大笑いしながら敵を撃破していく木曽と天龍を援護しつつ、駆逐艦たちも突入していった。

 

 

「さあ、いろいろ試してみても、いいかしら!」

 夕張はレーザーポインタを木曽に主砲を向けようとしているリ級に当てた。

《目標を確認!主砲、うちーかたはじめ!》

 「とさ」の205mmAGS砲が火を噴き、リ級へ向けて降り注ぐ。リ級は両手の主砲マウントで咄嗟に防いで被害はないが、マウントに直撃して主砲が抉り取られてしまった。

「敵重巡戦闘不能!お見事!」

 夕張は次の目標を探した。

 

 

 第7駆逐隊も敵中で奮戦していた。

「漣、左の敵を押さえて。私は殿をするから。曙と潮は2時方向の敵を仕留めて」

「わかったわ朧姉さん。潮、続きなさい!」

「が、頑張ります」

 曙と潮は敵の方を向く。駆逐艦が3隻、向かってきた。

「敵は3隻。ふふん、そう来なくちゃ」

 曙は一気に加速した。潮もそれに続く。

「私が2隻、潮は1隻仕留めるて!」

 2対3の反航戦。曙は先頭の駆逐艦に狙いを定めて主砲で攻撃。初段で命中させて中破させる。隊列を乱したところで潮も敵2番艦を撃沈した。

「弱過ぎよ!」

 曙は一気に1番艦と3番艦を沈めた。

「こんだけぇ?大したことないわね」

 曙は一周気が緩むが、次の瞬間背後で爆発が起こる。慌てて振り返ると曙のすぐ後ろに炎上するロ級がいて、銃口がまだ煙っている主砲を持った潮が安堵の表情を見せていた。

「曙ちゃんは調子に乗ると注意が散漫になります」

「だからあんたと一緒にいるのよ。あら、増援ね。また貧乏くじ。あんたと組んだ時ぐらいは、当たりを引きたいってのに」

「ここで戦果を挙げれば、今日はあたりになるかも・・・違いますか?曙ちゃん」

「潮も言うようになったわね。いいわ、花火の中に飛び込むわよ!ついてきなさい!」

 曙たちは新たな敵に牙をむく。

 

 

「五十鈴さん!どこにいますか?」

 エディ達は五十鈴を探していた。エディが電探を使って探すが、妨害のためになかなか見つけられない。

「あれじゃないの!おーい!」

 子日が何か見つけたようだ。手を振って確認する。向こうも手を振った。敵に包囲されてかなり厳しそうだ。

「イ級5隻抜きか。少々厳しいのう」

「やるしかない!行くよ!」

 エディが先頭になって強行突破を試みる。まずエディが正面のイ級を砲撃して撃沈、次に2隻目を砲撃して中破させた。中破したイ級は子日を攻撃した。

「狙い撃ちするなんてひどいよ・・・」

 子日が被弾したが突破速度を緩めない。

「姉さん・・・危ない!」

 若葉が初春を庇って中破した。

「大丈夫か?若葉!」

「ああ、悪くはない」

「おのれよくも若葉を!始末してくれるわ!」

 初春は若葉を撃ったイ級に容赦なく砲弾を浴びせて沈めた。これで3隻目。ここで敵の軽巡チ級が立ちふさがり、イ級もまとまって攻撃してきた。エディの進行速度も遅くなる。

(攻撃が激しくて突破できない・・・)

 エディがたじろいでいると、背後から誰かが飛び出してきた・・・初霜だ。

「一隻でも一人でも、救えるなら私は満足なの!」

 初霜は敵の弾幕を躱して止めようとしたイ級を両手の主砲で撃破した。踵を返すとチ級に突撃する。チ級はこれ以上近づけまいと魚雷をばら撒いた。魚雷の一本が初霜に命中して、初霜は中破する。

「ま、まだ・・・沈んだりは、しないわ」

 初霜は突進を続ける。チ級は主砲で応戦するが、気圧されているのか全く当たらない。ついに初霜の主砲がチ級の頭を捉える。

「これで終わりです!」

 乾いた砲声。倒れる二人。壮絶な戦いの結果は相討ちだった。

「初霜ちゃん!」

「初霜さん!」

 エディと、合流した五十鈴達が初霜に駆け寄った。腹部を打ち抜かれた初霜は瀕死の重傷だ。

「・・・五十鈴さん・・・無事ですか。なら、いいの・・・」

 初霜の意識はそこで途絶える。

「初霜ちゃん!しっかりして!」

「落ち着いて。まだ息はある。すぐ鎮守府に戻れば助かるわ。あなたは早く連絡して!」

 五十鈴はとりあえずエディを落ち着かせる。エディは震える手で無線機に手をかけた。もう異音は聞こえない。

「神通さん。五十鈴さんを救出しました。しかし、初霜さんが重傷。子日ちゃんと若葉ちゃんが中破しました」

《了解ました。五十鈴さんたちは初霜さんを連れて離脱してください。他の艦は敵に包囲される前に一時南の方へ離脱、陣形を立て直し次第敵の掃討を続行します》

「了解・・・五十鈴さん。頼みました」

「必ず初霜さんは助けるわ。任せておいて」

 12時20分、五十鈴水雷戦隊救出。

 

 

 

12時30分

 

 

 各水雷戦隊は敵戦列を南に突破すると、神通の下に集合した。夕張が的確に支援要請を出したので、離脱は順調に終わった。

「ではこれより、敵本体の攻撃に移ります。本部からの情報を分析した結果、敵のECMは敵艦隊中央の戦艦二隻に守られた軽巡ホ級が発しているとわかりました。夕張さんがレーザーポインタを照射するため突撃しますから、夕張さんの隊と私の隊は攻撃終了まで夕張さんを護衛します。天龍さんたちは間もなく到着する長門さんの浮遊要塞破壊チームの護衛をしてください」

「了解」

 

 

《作戦本部から浮遊要塞攻撃隊へ、浮遊要塞が東京湾から江の島方面へ進路を変更した。付随の敵艦隊もそちらへ向かっている》

 司令部からの報に神通はほっと息をつく。下手をすれば上陸される可能性はあるが、こちら側の敵がこれ以上増えないに越したことはない。

「魚雷一斉射!当たってください」

「どっかーん!」

 突入前に魚雷を一斉射する。艦娘は前に魚雷が打てるので便利だ。敵艦隊は回避行動をとったが、間に合わなかった重巡1隻と駆逐艦4隻を撃沈。敵戦艦の一隻も舵が損傷したのか動きが鈍くなった。

「それ、ワンツー!」

「攻撃よ!攻撃!」

 舞風と陽炎も次々命中弾を出す。流石に錬度が高い。

《こちら戦艦長門、湾外に突破成功!援護を感謝する。ついでに砲弾もプレゼントするぞ》

 次の瞬間、長門の40.6cm砲弾が頭上から降り注いだ。砲撃は敵重巡と戦艦に命中。重巡は大爆発を起こし轟沈、戦艦も大破した。

「見えた!レーザーポインタ照射!」

 夕張が頭にやたら大きなアンテナの付いたホ級を捉えた。

《イージス艦「とさ」、ミサイル発射!》

 「とさ」がミサイルを発射した。しかし生き残っていた戦艦が副砲で夕張を薙ぎ払った。夕張は命中弾を多く受けて大破してしまう。

「っ、まだレーザーポインタは無事よ!誰か照射を続けて!」

 夕張は痛みに耐えながらレーザーポインタは守り抜いていた。

「初春さん!若葉ちゃん!夕張さんをお願い!」

 エディはレーザーポインタを拾って再び照射した。レーザーポインタの存在に気付いた敵がエディに殺到する、が。

「贈り物は鎮守府を通してね!」

「絶対に守ります!」

「怖くて声もでねぇか?オラオラ!」

 合流した天龍達がエディを守る。その時、ミサイルがホ級に直撃し、派手に沈没した。

《こちらイージス艦「とさ」、ECM消滅を確認した。1分後に残存敵艦へのミサイル攻撃を開始する。艦娘諸君は退避せよ》

《こちら沿岸砲台。レーダー照射開始!目標敵戦艦。攻撃を開始する》

「味方の砲撃が来ます!退避してください!」

 神通が指示して、慌てて皆退避した。

《味方の離脱を確認!ミサイル発射!》

《砲撃開始!》

《ミサイル、弾着まで十秒!》

「じゅうびょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 漣が謎の奇声を発したが、エディには元ネタが解らなかった。10秒後にはミサイルと砲弾の雨が敵艦隊に降り注ぎ、木端微塵に粉砕する。

「イヤホォォォォォォォォォォォオオオオ!最高だぜぇぇ!」

「Yeah!やったぜ!」

「これでもくらえー!」

 皆思い思いに歓声を上げる。通常兵器であっても、管制された圧倒的な火力の前では戦艦ル級も無力だ。次々とミサイルの直撃を受けて、四肢や胴体が射抜かれ吹き飛んだ首が艦娘達の足元に転がってきた。

「ひぃ!」

 潮が悲鳴を上げるが、那珂は首を拾うと、ズタズタに撃ちぬいてサッカーボールのように蹴飛ばし海に棄てた。

「神通ちゃん、帰ろうか」

「任務完了。帰投します」

 那珂が笑顔で言う。神通も指示を出して全員が帰路に着こうとした直後、けたたましいヘリの音が聞こえた。固定翼機の胴体と主翼、そして翼端に可変式ローターをつけた輸送機・・・V-22オスプレイだ。後部ランプが開いて手招きしているのはなんとリッチだった。

「リッチ!どうしてここに!?」

「説明は後でするから!エディは早く乗って!」

 




 皆さん、お口に合いましたか?

注釈
イージス艦「とさ」:日本海軍は2033年、艦娘と連携した新たな海軍ドクトリンを設定、艦娘を支援するための新設計の護衛艦を建造する計画を立てた。その中の「きい」型イージス艦の2番艦が「とさ」である。「きい」型の船体はステルス性を考慮した平面を多用したデザインである。従来の護衛艦の127㎜速射砲では巡洋艦型深海棲艦に対してパワー不足であった教訓から、大口径205㎜AGS(誘導砲弾)単装3門を搭載し、近接砲戦においても深海棲艦と互角の戦闘が可能である。もちろんイージス艦の強力な索敵能力と対空カバー能力もあり、衛星や地上レーダー、哨戒機とのデータリンクによる現代戦にも優れてた能力を発揮する。
 現在、「きい」「おわり」「とさ」の3隻が保有されており、「きい」と「とさ」が横須賀に存在し、第一護衛艦群旗艦「きい」は東京湾防空と索敵を、「とさ」は敵艦隊迎撃部隊の旗艦として出撃した。

艦娘と現代兵器の連携:艦娘は艦船並みの兵装を持ちながら小回りが利き、素体が人間であるため艤装以外にも様々な装備を使いやすい汎用性があるため、艦隊戦の戦力というより、海上を歩ける歩兵といった戦術の位置づけもできる。
 こうした理由から、艦娘と通常兵器をうまく連携させてより効率の良い運用ができるようにする研究も日夜行われてきた。過去には深海棲艦がジャミングでレーダーを無効化し、ミサイルの長射程を無力化された通常艦船が近接戦で大損害を被ることがあった。現在では艦娘が索敵、位置情報を知らせ、レーザーポインタなどで誘導兵器を仲介して後方の通常艦船に攻撃を要請し、低火力な駆逐艦娘や軽巡娘の支援を行う体制が整っている。また夜戦時にサーマルスコープを艦娘に装備させるなど「文明の利器」を使う試みなどが行われ、次第に通常兵器での深海棲艦撃破率も上がっている。
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