暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょう。
では、第2章。開幕です
第22話 転属命令 前篇
司令室に入ると、佐々木司令に加えて、この基地のもう一人の提督である山岸少佐が座っていた。傍らには秘書官と思しき緑色の髪の艦娘が立っている。
「ヘイウッド・L・エドワーズ及び、リチャード・P・リアリー、ただいま到着しました」
エディがかしこまって言う。
「うむ、今回の機動部隊侵攻阻止は大儀だった。上層部も君たちの活躍を大いに評価している」
「ありがとうございます」
褒められているというのに、2人とも妙に緊張している。少佐は厳しい人なのだろうか?
「上層部は君たちの多彩な能力に注目し、アメリカ式の訓練課程を模した艦隊を新設することとなった。アメリカと正式な軍事顧問派遣の交渉に入っているが、先だって君たちには舞鶴に転属してもらい、新設される水雷戦隊の指導をしてもらう」
エディとリッチは顔を見合わせ、拍子抜けした表情だった。マイヅルはどこの基地だろうか?私も着いて行きたいところだが・・・
「ハミルトンさんも専属記者として同行許可を取りました」
「ほんとですか!?ありがとうございます」
「うむ、夕張、誓約書を渡してくれ」
突然で驚いたが、渡りに船だ。緑髪の子はユウバリというらしい。誓約書には取材に関する長い規約と禁則事項が書かれていた。私は適当に読み飛ばして、書類にサインした。
「ハミルトンさんは車を運転できますね?」
「はい、普通MTなら。国際免許ではありませんが・・・」
「誓約書記入事項の15ページ見てください。その規約書に国際免許事項もあります。あなたの持っている免許証と許可証をセットで持てば、運転も問題ありません」
それはありがたい。日本は鉄道が便利だが、車が使えるに越したことはない。
「宿舎についてもこちらが確保しておきました。エドワーズとリチャードは着任が6月15日の12時。三日後だ。艤装はこちらで送っておく。それまでに現地に移動するように」
「艦隊旗艦としての栄転じゃ。しっかり励んでくれたまえ」
「了解しました!」
佐々木が激励する。エディ達も大任に緊張しているのか、硬い面持ちで敬礼した。
「伝えたいことは以上です。それでは、先日の東京決戦における二人の活躍の話をしましょうか」
ハミルトンの取材を終えて、部屋に戻ったエディとリッチが見たのは、箱詰めされて整理された私物であった。
「引越しの手伝いってわけじゃなさそうね」
「パソコンも操作された形跡がある。僕が入院してる間に一時的に押収したんだろう。通信機以外には無くなったなったものはないね」
リッチが箱を開封して、中身を並べながら言った。
「とりあえず解体されずに済んだけど・・・」
「少なくとも文字通りの『栄転』ではないだろうね。説明からして、移動手段も自分たちで手配しなきゃいけないし、実質の左遷だね」
「ハミルトンさんへの対応もおかしいよ。専用随伴員の手続きとか、どう考えても都合がよすぎる」
「もしかしたら彼は日本の諜報員で、最初から僕らを監視するために接触してきたのかも・・・」
「とにかく、何が起こるかは行ってみないとわからないね・・・さすがに外交道具の私達を捨て艦に使うなんてことは考えてないだろうけど・・・」
エディはリッチを見つめる。
「ごめん。これは僕が起こした問題だからね。姉さんの夢も遠ざかる結果になるかもしれない」
「リッチがいればえんやこらよ。今は2人一緒にいられることを喜ぼうよ。問題は行ってから」
「ありがとう。この償いは僕の一生を懸けてするから。とりあえず今は・・・」
「この荷物の片付けと、マイヅルの場所を調べないと・・・」
<<少女片付け中>>
エディは部屋に置かれた漫画の山と格闘していた。艤装は軍が輸送するようだが、それ以外は自己負担ということらしく、それぞれスーツケースとリュックに収めることとなったのだ。
「うーん、どの漫画を持ってこうかな?」
エディはたくさんある漫画の処分に困っていた。さきほど夕張が来て持っていかない分は引き取ると言ってくれたが、悩みどころである。
「本は電子書籍で買えばいいのに」
「だって紙で読みたいじゃん」
「ゲームは何持ってく?」
エディもリッチも意外とゲームはする方である。
「これも結構かさばるね。今度からはディスクじゃなくてダウンロード購入にしよう」
「充電器はどこにあったかな・・・」
エディは段ボールの中身を探る。大人の玩具箱と書かれた箱をどかしてみるとコードがあった。
「これじゃない?」
「ああ、ありがとう」
リッチはコードと、それと大人の玩具箱を慌てて鞄に詰め込んだ。
「ええっと、後は・・・」
扉が開いて、初春たちが入ってきた。
「おい、エディ。お主の栄転を祝って駆逐艦達で宴を準備したぞ。荷造りなら妾も手伝うから早く来るのじゃ」
「ありがとう、初春ちゃん。今いくね」
時間が迫っているので準備を続けたかったが、彼女らの好意を無駄にしたくないので、行くことにした。