駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 ちょっとバランスの悪い話。2章は全体的にうまくいかない感じ。


第24話 舞鶴基地

「待ってください!いきなりそんなこと言われても。私は民間人です」

 私は渡された制服を返そうとして言った。

「でも確かに紹介状には軍属って書いてあったよ。同行許可証にも日米同盟軍事規定に基づき派遣された士官で、基地司令官の許可のもとで同盟国内で自国と同様の階級相当の権限を有し、また状況に応じてその場の上官の命令に従うと書かれてるはずだし」

 私は慌てて誓約書をみ返した。読み飛ばしていたページには確かに軍事規定があった。

「『大使館』を通して、アメリカ政府にも許可を取ってある。これが認定書類だ」

 見せられた書面には「昨日付」の任官と舞鶴への異動許可申請認可と書かれていた。

 許可証の署名には、ウィリアムス・J・ハミルトン「空軍」大佐・・・私の叔父の名前が書いてあった。

「君の伯父さんの推薦状には君は十分な素養があるから、きっと役に立つと書いてあるよ」

 私の伯父は軍人で私に軍に入るようにしきりに勧めていたのだが、こんな手を使うとは。

「・・・・・・」

「自分の立場はわかったかな?返事がないなら続けさせて貰うよ。安心したまえ。君には自分の身分を口外しないということ以外の自由は与えられている。記者としての仕事もだ。君の職務についてだが、僕は艦娘のことは何もわからないから君に一任することになる。予算はとりあえずこれを渡しておこくよ。好きに使うといい」

 そう言っていきなり彼は札束を渡した。厚さから1000万はある。記者なんてやっていて札束など持ったことのない私は思わず手が震えた。

「おっと。見たところ事務上がりだったからこういうのには慣れてると思ったけど、大金を扱うのは初めてかな?」

「は、はい・・・」

「何、軍隊は金がかかるからね。それくらいならすぐに使い切ると思うよ。追加の費用が必要なら僕に言ってくれれば検討する。もちろん、収支報告も忘れないでね。鎮守府はここから10分のところにあるから、地図に従って行ってくれ。それでは、頑張ってくれたまえ」

 そういうと狭川は有無を言わさず私達を送り出した。

 

 

(なんだか大変な事になったな・・・)

 私は鎮守府に向かいながら途方に暮れていた。昨日までただの民間人だった私が、いきなり士官に任命されるなんて。それも、軍事機密が満載された艦娘のだ。三文小説でもここまでひどいのは読者がつかないだろう。

「あ、あの。司令官さん。荷物持つよ?」

 エディも私が上官と知って余計に萎縮している。無理もない。民間人として接触してきた男が、実は軍人で、しかも自分を追ってきて身内人事で上官になったのだ。普通なら怒ってもおかしくない。リッチは目線を合わせようとせず、俯いていた。

「急にかしこまらなくていいよ。今まで隠しててすまない。ちょっと驚かせたかっただけさ。私とは今までどおりに接してくれて構わないから」

 自分はこんな風に人に嘘をつける人間だっただろうか?そもそも自分は彼女に命令できるような立場ではない。だが、口外するなとやんわり脅されている以上、外に助けを求めることはできない。しかし、これはチャンスと受け取るべきだ。軍属になれば、彼女達とより多くの時間を共に過ごせる。記録も捗るだろう。記事を書くことは一応許可が下りているので、本業にとってもプラスに働くはずだ。

 そう開き直りながら歩いていると、鎮守府に着いた。鎮守府は見た目は古い学校のような場所で、運動場があり、建物は木造2階建ての司令部兼住居棟と、工房と言った方がいいくらいの小さな整備棟があった。隣には妖精の基地と、彼らの居住するミニチュアサイズの町がある。

「あれ?明かりがついてる」

 エディが指差した住居棟の一室に明かりが見えた。換気扇から湧き上がる煙や漂ってくる匂いから、夕食を作っているのだとわかる。

「先に着いた子達がいるのかもね。入ってみよう」

 リッチがそう言ったので私達は居住棟に入ってみる。閉鎖されていたと聞いたが、定期的に誰かが手を入れているのか、荒れた様子はない。とはいえ、細かい掃除が行き届いているわけでもなさそうだったので、とりあえず明日は掃除をしようと決めた。

 2階建ての居住棟入って右奥が、件の台所だ。こちら側は左側と違ってきちんと手入れがされている。おそらく生活関連は右側に、司令室は左側に置かれているのだろう。

「ごめんください」

 私は扉を開いて台所に入った。中には割烹着に身を包んだ2人の少女がいた。急に知らない男が入ってきたので警戒した様子だったが、後に続いてエディとリッチが入ると警戒を緩めた。

「驚かせてしまって申し訳ない。私はアレン・C・ハミルトン。明日からここに着任する者だ」

 とりあえず自己紹介をする。すると2人の少女のうち、髪を後ろで一つ結びにした少女が挨拶してきた。

「いえいえ、長旅お疲れ様です。司令官、私は特1型駆逐艦の吹雪です。隣にいるのは妹の深雪です。ちょうど夕飯の準備ができました。食べながらお話ししましょう」

「よろしくな、外人さん」

 深雪も元気良く挨拶してきた。

「わたしはヘイウッド・L・エドワーズ。エディって呼んで。お皿運ぶの手伝うわ」

「リチャード・P・リアリーです。僕も手伝います」

「おう!助かるぜ!」

 エディとリッチが手伝って全員が食卓に着いた。

「いただきます」

「これおいしい!」

「当り前さ。なんせ吹雪の作った本場の舞鶴肉じゃがだからな」

 深雪が自慢げに言った。

「君たち2人が56駆逐隊の着任者かな?」

「いいえ、着任は深雪だけです。私は深雪の付き添いと、ここの掃除をしに来たんです」

 吹雪は皆の給仕をしながら答えた。あってまだ1時間もたたないが、吹雪は随分ここの勝手が分かっているように見えた。ここの手入れをしているのは彼女かもしれない。

「もしかして、ここが閉鎖される前にいたことがある?」

「え?分かるものですか。はい、私はここで生まれたんです。船としても、艦娘としても。そして、人間としても。ここ、閉鎖される前も訓練学校だったんです。小さいころ、フェンス越しに見てた、海の平和を守る強いお姉さんたち。私にもその才能があって、改造を受けて、この中に入ったんです。私が訓練期間を終了する直前に戦争が激化して、動ける艦娘は全て前線に張り付かなきゃいけなくなって、私が出陣したのを最後に鎮守府も閉鎖されました。でも、何年たっても私の居場所はここなので、近くに来ることがあったら、ここによって思い出に浸ったりします」

 吹雪は部屋に吊り下げてあった時計を眺めて言う。天板が黄ばむほど古い時計も、彼女の思い出の風景なのだろう。

「深雪ちゃんは私よりも後に入ってきたので、教育というものを受けていません。だから、舞鶴に学校が再建されるって聞いて、私も行きたかったんですが、深雪ちゃんを預けようと決めました」

 吹雪にとって鎮守府の再建は望外の喜びだったのだろう。

「お調子者で騒がしいとこともありますが。深雪ちゃんをよろしくお願いします」

 吹雪は深々と頭を下げる。深雪もそれにならって頭を下げた。それを見て私はたじろいでしまう。何の知識もない民間人が、彼女たちの期待に応えることなどできるはずがないからだ。どうしたものか?思案していると、エディが先に立ち上がった。

「解りました。深雪ちゃんは私がしっかり教育して立派にして返してあげるからね」

 エディは深雪の手を取る。

「深雪ちゃん。私の知ってることは少ないけど、一緒にがんばろうね」

「おう!、じゃなかった。解りました。教官」

「そんなかしこまることないよ。私は専門家じゃないし、あなたと同じ駆逐艦だから」

「ん?じゃあ、エディ、それとリッチもよろしくな!」

 こうして和気あいあいと食事は進んだ。

 

 

 あの後、泊まっていかないかという誘いを断り旅立った吹雪を見送って、エディ達を先に風呂に入れ、自分は今日の分の出来事を日記にまとめる。しかし、あの司令室の出来事で手が止まった。

(まさか伯父がこんな手を使ってくるとは・・・)

 うちは独立戦争以来代々軍人の家系で、父は軍人ではなかったが伯父が空軍に入った。欧州へ出張に行った父が深海棲艦の海上封鎖で帰れなくなったとき、私は伯父夫妻に預けられたこともあった。伯父は私を大変気に入って基地に案内し、伯父の戦闘機の操縦席に乗せてもらった。私が軍事に興味を持ったのも彼のおかげで、彼から戦闘機のプラモデルや図鑑を買ってもらい、夏休みには伯父の家に遊びに行って、基地に入り浸った。

 私が8年生の時伯父の妻が亡くなると、子供のいなかった伯父は私に軍人になるようしきりに勧めるようになった。丁度この時両親が離婚し、家に居場所のなくなった私は、伯父の家に居候しながらハイスクールに通った。昼は学校に通い、夜は基地のバイトをするか、伯父に空戦理論や戦術、軍事史を学ぶ日々が続いた。3年生のときには、防空司令部の士官並みの知識を持っていると基地司令に褒められた。

 しかし、歴史を学んでいくうちに私の関心は政治に移っていった。目先の問題解決を目指す軍事より、社会学や政治学が面白くなったのだ。しかし、私に期待をかける伯父に言い出すのは困難であった。折よく両親がよりを戻し、家に戻ってきてほしいと手紙が届くと、私は密かに受験していた大学の合格通知を伯父に見せ、伯父の家を出た。

(いつか謝らなければならないと思ったが、先に復讐されるとは・・・)

 あれ以来伯父にはほとんど会っていない。私は会いたくなかったし、伯父も出世して司令部勤めになったため、会う機会も無かった。それでも私は伯父が嫌いではなかったので、いつかは謝りたいと思っていた。しかし、想像以上に伯父は私を憎んでいたらしい。そうでなければ異国の海軍に引き渡すこともないだろう。

 私は空軍についての知識はプロ以上の自信がある。だが、海軍については仕事上必要なことと、航空機に関することしか知らない。まして昔の艦船の知識などは、空母を除いて皆無に等しい。

(空のことでも引き出せることがあれば使っていきたいが、果たしてみんなの期待に応えられるだろうか?)

 やるからには全力を尽くしたいが、エディ達の期待に応えられるいい指揮官になれるかは微妙だ。とりあえずやることは・・・・

「勉強だな」

 ハミルトンはネットストアから、「大日本帝国艦船年鑑」と、「海戦入門」、「一日で覚える経理」を購入した。

 

 

「深雪ちゃんは寝たかな?」

 エディは深雪が眠ったことを確認すると、リッチと同じベッドに入った。リッチは布団をかぶった状態で、小刻みに震えていた。

「リッチ、怖がらないで。まだそうと決まったわけじゃ・・・」

「あいつはCIAだ。僕達をまた利用する気だ」

 リッチにとって忌まわしい記憶が蘇る。

「そうとも限らないよ。もしそうだったら、日本に来る前に接触してきた理由が解らない。それに、司令室での動揺からして、もしかしたら民間人かも」

「民間人がいきなり大尉になれるわけないよ。あんな解りやすい茶番、隠す気もないって表れだ。奴が日本かアメリカか、どっちにしろ何をさせられるかわかったもんじゃない」

「とにかく今はハミルトンさんの出方を見ないと。それに、もしCIAで、日本に不利な行動をすれば、あいつを特高に突き出せばいいわ」

「エディ。必ず帰ろう・・・横須賀へ」

「もちろん。2人でね」

「うん、だから・・・そのときは・・・」

 リッチはそのまま寝てしまった。エディはリッチを抱いたまま、静かに祈った。

「神様、わたしの任務を全うして、2人そろって無事に横須賀にかえれますように」

 それが、今彼女にできる唯一のことだった。

 




 ハミさんの設定はエスコン5まんま。伯父が軍人設定もそのままはっつけた感じです。
 そう言ったフラグ挿入してなかったので、ちょっと強引にねじ込んでしまいました。

 ハミさんの現状スペックは操船D砲撃D水雷D航空A潜水Cの航空編重
 参考に山岸のスペックが操船B砲撃B水雷A航空B潜水Cの万能型です


 

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