駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 お待たせしました。
 初投稿で毎日どんな感想が来るんだろうと暇があればサイトを覗く毎日。
 イベントにはほとんどノータッチ、攻略も詰んでますが、書けるうちに書かないと書けなくなるので気にせずどんどん投稿します。
 それでは2話目ですどうぞよろしく。



第一話 彼女たちの宴

「ではでは、我ら姉妹と皆様の華々しい前途に、乾杯なのです!」

「「乾杯!」」

 フレッチャーの乾杯の音頭を皮切りに、駆逐艦・軽空母合同送別パーティーが始まった。

 アメリカは艦娘の建造を一度に行い、一括して訓練・教育を行うことで、現代戦用の設備とも連携できる質の高い艦娘を一挙に投入する計画を立案した。そのためにサンフランシスコ近郊に多額の資金を投入し、艦娘の教育や建造・開発研究機関とその関連施設を一体化した軍産複合都市を建設した。今私がいるノートン・スタジアムもその一角である。可愛らしい少女の見た目にも関わらず身体能力が人間の比ではない艦娘のスポーツ戦が見られるため、合同体育大会では多くのマニアが詰めかける多目的スタジアムは、今や出店や料理の大鍋と皿が並び、舞台では艦娘のロックバンドが演奏するパーティー会場となったいた。

 報道陣として私は記者仲間のジュネットとその上司のトンプソンさんとともに、このパーティーの取材をしていた。

「まるで文化祭の後夜祭だな。こんなに楽しいパーティーはハイスクール以来だ」

 トンプソンさんは軽空母の少女達への取材から帰ってくるなりこんなことを言った。私もジュネットもあまり喋る方ではないのだが、トンプソンさんは軽空母のかたまりを見るなりその中に入って行き、あっという間に仲良くなって談笑していた。ある意味艦娘以上にこのパーティーを楽しんでいる。そのくせ情報はしっかり聞き出してくるあたりは大先輩といったところだ。

「小学生がやってるように見えて少しシュールですが」

 ジュネットが返す。彼はトンプソンさんとともに他誌の記者で、駆け出し時代からの付き合いである。物静かで少しだけ皮肉屋なところがあるが、見る目は有り、たまにいい記事を書くと見せ合う議論仲間だ。

「そういえばちらほらアメリカ国旗以外の旗を掲げた子達を見かけますが」

 私はふと疑問を持ったことを口にした。するとトンプソンさんが答えてくれた。

「さっき聞いたんだが、彼女らは海外貸与艦らしい」

「貸与艦ですか?」

 ジュネットも食いついた。

「ああ、戦中や戦後にアメリカが海外に貸し出したり売却した艦は、またその国に派遣されるそうだ」

「それは随分太っ腹ですね」

「艦娘保有量世界一が成せる技だな。それに、アメリカはいち早く艦娘を開発したイギリスや日本に大きく後れを取っている。各国に恩を売って、いずれは世界の主導権を取り戻したいんだろう」

 艦娘に関する技術は、妖精たちが握っている。独自の科学体系を持ち、歴史の闇の中で時に人類に知恵と技術を貸し与え、産業革命と科学の発展によって人類が独り立ちすると忘れ去られた存在。深海棲艦の登場に際して再びその技術を掘り起こしたのは、オカルトの先進国であった日本とイギリスであった。逆に、科学の光で闇を払うことに最も長けていた超大国アメリカは、妖精との関係構築に時間がかかり、今日この日まではユトラント海戦で艦娘の多くを喪失したドイツを僅かに上回る水準であった。

「艦娘なら、盗用される心配はありませんしね」

 ジュネットが補足する。艦娘は古い船の記憶を宿した艤装と、寄り代となる若い女性が必要となる。それゆえにそれなりの規模と歴史を持つ海軍でなければ建造は困難であり、いまのところ艦娘を保有するのは日本、英仏独伊を主力にその他の小国の艦娘を編入したEU海軍、それと未確認ながら、ロシアが超国家主義革命以来失っていた艦娘建造技術を復活させたという噂が流れている程度である。

「今日のパーティーがより盛大なのも、そんなところだろう。同じ海軍ならともかく、別の軍じゃ、合う可能性もめっきり減るからな」

「そうなのよ~。私のお気に入りのラングレーちゃんもフランスに行っちゃうの・・・」

 突然誰かが話に割って入った。見ると昨日の演習で空母部隊を指揮していた妙齢の空母であった。

「あなたは確か・・・」

「あら~、あなたは揚陸艦から私をカメラにとっていた」

「記者のアレン・C・ハミルトンです。今後とも宜しく」

「ああ、やっぱり記者さんでしたか。私は正規空母ミッドウェイ。よろしくね」

 どうやら彼女が無線上でドン引きを食らっていたロリコン空母のようだ。とはいえ世界一の通常動力空母の登場に、昨日の演習のことを知らないジュネットたちは興奮気味であった。

「これはこれは、超巨大空母のミッドウェイさんでしたか!私はオーシャン・ジャーナルのトンプソンです」

「同じくアルベール・ジュネットです。しかし、なぜあなたがここにいるんですか?正規空母はパブ・アンジェラで宴会だったと思いますが?」

「随分と情報通ね。確かにそうだけど、エセックス級の子たちってね~、なんて言いえばいいのかしら?ちょっと成長しすぎで私の趣味じゃないんですよ~。けど軽空母や駆逐艦はあどけなさと危なっかしさがあって見てて楽しいのよ~」

「面倒見がいいんですねぇ、弱い者は守りたいと思う素晴らしい心がけですな」

 トンプソンが納得してジュネットも首を縦に振る。いや、ただのロリコンだろう、と私は心の中でつぶやいた。

「ホントはラングレーちゃんと一緒がよかったんだけど、あの子は軽巡洋艦の方に行っちゃって。あの子は軽巡ベースだから姉妹水入らずがいいのはわかるけど、ちょっと寂しいわねぇ・・・そうだ、今から行けばいいんだわ!」

「いや、姉妹水入らずなら邪魔をしないほうがいいと思うが・・・」

 嫌な予感がした私の咄嗟の静止も気にせずに、ミッドウェイは続けて言った。

「トンプソン達もついてきたらどうかしら?移動中に話ができて、一石二鳥よ」

 

 

 

 結局トンプソンさんとジュネットはミッドウェイについていくことになった。

「それじゃあハミルトン君、雑誌に記事が乗ったら連絡してくれよ」

「いい記事が書けたらまた会おう」

「ああ、トンプソンさんもジュネットも気をつけて」

 私はトンプソンさんたちを見送ると、再びパーティー会場に戻って取材対象を探した。

「海外貸与艦か、いいネタになりそうだが・・・」

 私はアメリカ以外の旗を立てている艦娘を探してみる。ドイツ、スペイン、チリ、コロンビア、ブラジル、トルコ、台湾・・・どれも面白そうな国ばかりだ、どこからにしようか?記事にするなら、遠くに行く方がウケがいいか。できれば定期的に連絡を取れるようにして、連載記事を書いてみたい。などと考えていると、ふと目についた旗があった。

「日の丸?あの子達は日本に派遣されるのか?」

 アメリカは戦後日本に船を貸与したり建造したりして、緊密な関係を構築していたのは知っているが、今や戦前の海軍力を回復した日本に派遣するのは少し妙だ。

「聞いて見ればわかるか・・・」

 私は日本の旗の方に足を向けた。近づいてみると、二人の駆逐艦娘がいた。一人はグラスに入れたレモンティーのような薄いブラウンの肩まで伸びた髪に、日米の旗をあしらったデザインの2本のヘアピンを交差させてまとめた、明るい印象を受ける女の子。もうひとりはボサボサの黒髪に不規則に金のメッシュが混じった、野良猫のような毛並みと猫目が気だるそうな感じの女の子で、もうひとりと同じヘアピンを並列にしてつけていた。

「ねえ、君たち。君たちは日本に派遣されるのかい?」

「はい!」

 ブラウンの髪の少女が答えた。黒髪の子は警戒しているのか、ブラウンの子の後ろで様子を伺っている。

「私はユナイテッド・ミリタリーのハミルトンだ。よろしくお嬢さんたち」

 会釈をすると、ブラウンの髪の女の子もにっこり笑って自己紹介をしてくれた。

「わたしはヘイウッド・L・エドワーズ。エディって呼んでくれていいわ。よろしく」

 エドワーズが手を差し出したので握手を交わした。黒髪の子にも会釈するが、人見知りなのか伏し目がちだ。エディはため息をついた。

「リッチ、そんなシャイじゃダメだよ。もっとフレンドリーに挨拶しようよ」

 エドワーズがリッチと呼んだ少女を私の前に押し出した。

「リチャード・P・リアリーです。よろしくお願いします・・・」

 リチャードは恐る恐る手を伸ばす。怖がっているのだろうか?

「あ、いや、怖がらせたのなら済まない」

「大丈夫よ、リッチは戦艦に魚雷を撃つぐらいのガッツはあるの。わたしと違ってホラー映画もあんまり怖がらないしね。あ、わたしのほうがお姉さんなの」

 エドワーズが大分的外れなフォローをした。

「よろしくエディ、リッチ。実は海外貸与艦について取材したいんだが・・・」

「ええ、いかにもわたしたちは海外貸与艦よ。わたしたちは日本に派遣されるの」

「そのことだが、どうして日本なのかとかも教えて欲しいな」

 なぜ戦力の十分な日本に派遣する必要があるのか、質問はそこに尽きる。

「わたしたちは戦争が終わった後、日本に貸与されたの。だから、また日本に帰るの」

「けれど日本は戦力が十分だし、どうして君たちに命令が出たのかな?」

「うーん、海外経験のある子達はみんな派遣されるみたいだけど・・・わかんないや、リッチはなにか聞いてる?」

 エドワーズはリチャードに話を振った。突然話かけられて動揺したのかリチャードは目を泳がせてしばらく考え込んだあと、チラチラとこちらを見ながら答えた。

「えっと、私には政治のことはわかりませんが、多分これからはアメリカも積極的な攻勢に出るために、日本軍との連携が必要になってくると思います・・・そのためにも、日本とアメリカの事情をよく知る私たちが先んじて派遣されたんだと思います」

「そう、日本語のわかるわたしたちが先に日本の艦娘さんとお友達になれば、日本とアメリカが友達になるための架け橋になれる。ほかの派遣艦のみんなも架け橋になって、みんなで深海棲艦をやっつけるために協力すれば、どんな敵が現れてもきっと勝てるわ。どう、素敵でしょ?」

「でも日本の艦娘は敵としての君たちしか知らないよ、溝を埋めるのは難しいんじゃないかな?」

「わたしはね、わたしを産んでくれたアメリカのことが大好きなの。それと同じぐらい、日本のことが好きなの。あの厳しくも優しい自然が好き。そこに暮らす人びとも、彼らが生み出した文化も、アメリカにはない不思議な魅力のあるあの国を守りたい。わたしのもう一つの祖国を守りたい。この気持ちを素直に伝えればきっとわかってくれると思うの。だから、きっと大丈夫」

 そう語るエドワーズの顔に迷いはなかった。リチャードも安心した表情になる。

「そういえば派遣にあたってほかに随伴員や指揮官はついていくのかい?」

 これに対しての回答は珍しくリチャードのほうが早かった。

「我々は明日にはここをたって、明後日に商船団とともに日本へ移動、日本に到着次第、完全に日本軍の指揮下に入ります。同時に米軍の軍歴もなくなります。最低限装備に必要な機材と整備妖精は輸送船で持ち込みますが、士官や随伴員は連れていきません」

「異国の地に2人だけで心細さは感じないのか?」

「私はエディさえいれば・・・寂しくはありません」

「みんなとはなれるのは寂しいけど、わたしもリッチがいればどんなところへ行ってもへっちゃらよ。それに、友達は向こうでも作れるよ」

 エドワーズは無邪気に笑み浮かべた。

「わたしの夢を知ってる?わたしの夢はここにいる沢山のわたしの姉妹よりもっともぉっとたくさんの友達を作って、フレッチャー大姉さまに自慢することなの。その夢はきっと海の向こうにある。わたしはそう信じてるの」

 それはある目線から見れば、無知な少女の妄言と言えるかもしれない。だが、大きく手を広げ、輝かしい笑みを浮かべて夢を語る彼女の姿は、これ以上ないほど説得力があるような気がした。社会を変える人間は皆こういうものなのかも知れない。

「ありがとう、素晴らしい話を聞けたよ。最後に一言聞かせてくれないかな?」

 宴も終わりが近づき、舞台のロックバンドも最後の曲を演奏し始めた。

「わたしはこの故郷を離れて、新しい友達を作るために出かけます。そこで出来た友達を守ることで、わたしたちの家族を守れると、わたしは信じているから」

「軍務を全うし、日本のために任務を全うします。国は変わっても軍人の心は変わりません」

 エドワーズとリチャードはそれぞれの言葉で意気込みを述べた。二人共、思うところは別だが、その信念は見た目以上に強いことがわかった。

「そうだ、ハミルトンさんも友達になろう!連絡先教えて、手紙書くから!」

 エドワーズが提案してきた。彼女と連絡がとれれば、長期的な記事のネタもできるだろう。それ以上に、この少女の不思議な魅力に惹かれていた私に断る理由はなかった。

 仕事用と個人用の連絡先を交換した頃には、宴会最後のイベントである国歌斉唱が行われ、宴は終わった。

「結局1組しか取材できなかったな・・・」

 帰り道、海沿いの道を車で走りながら、私は今日のことを思い返した。

「彼女達の行く国は、どんな国なんだろうか」

 そして、彼女達はそこでどんな物語を紡ぐのだろうか。なにか機会があれば、日本へ行きたい。そう私は思った。

 

 

 

 

 その頃のミッドウェイ御一行。

「ミッドウェイさん、ちょっと飲み過ぎじゃないですか?」

「そうですよ~。それに、ここってどこですか・・・」

「いいでしょぅ、今日でラングレーちゃんとも会えなくなっちゃう・・・ほかの軽空母とも、あ〜あ~私の楽園がぁ、ようじょ天国がぁ~」

 場末のパブ・マダムミシェーラで、ジュネットとラングレーは酔っ払ったミッドウェイの対応に追われていた。ミッドウェイはクリーブランド級軽巡の宴会場に着くや、ラングレーや他の改造空母を誘拐しようとした。クリーブラント1・2番艦の奮闘により他の軽空母は守られたがラングレーだけは連れ去られて、ジュネットたちともどもこのパブに逃げ込んだのであった。こうしてジュネットたちはミッドウェイの絡み酒に付き合わされることとなり、頼みの綱のトンプソンはあっという間に酔いつぶれ、事態は収集不可能となっていた。

「ジュネットも飲みましょうよぉ~・・・あぁ!・・・うふふ//あたしにばっかり飲ませていやらしいコトしたいんでしょぅ?ジュネットも隅に置けないわねぇ~」

「そんなわけ無いでしょう!・・・(もうやだこの人)」

「あのぅ?ジュネットさん・・・いやらしいこと・・・するんですか?」

「ラングレーちゃんも酔っぱらいの言うこと間に受けないでください!」

 こうしてクリーブランド姉妹がミッドウェイの居場所を見つけて乗り込むまで惨劇は続き、ジュネットがハミルトンを電話で呼び出して家に帰る頃には、朝日が海を照らしていた。

 




ちょっとだけキャラ紹介

ヘイウッド・L・エドワーズ
 フレッチャー級の一隻として建造された船のうち、戦後日本に貸与されたのがわたし、「ありあけ」ことヘイウッド・L・エドワーズです。日本では一時期武装を撤去して訓練艦として使用され、その後近代化改修を受けて護衛艦として運用されて、戦後の海上自衛隊の礎として活躍したの。えっへん!

リチャード・P・リアリー
 フレッチャー型の一隻として就役した私は、アメリカ軍の反撃に参加して上陸支援や航空機の迎撃を行い、敵の戦艦「ヤマシロ」に魚雷を撃った事もありました。戦争が終ったあと、私はかつての敵国に派遣されてその海軍力再編の一端を担いました。我ながら数奇な一生を送ったよ。

ミッドウェイ
 総搭載機数145機を誇る史上最大の通常動力空母、それが私、ミッドウェイですの。
 世界大戦には間に合わなかったけれど、改修を受けながら運用され続け、冷戦期のアメリカを支え続けたわ。

ラングレー
 ラングレーはクリーブランド級の流用したインディペンデンス級の護衛空母です。第58任務部隊などで対日戦を戦い抜きました~。戦後はフランス海軍に引き渡されて、ラ・ファイエットとして63年まで活躍したよ~。台風はちょっと苦手です・・・
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