「私がこの水雷戦隊の指揮官のアレン・C・ハミルトンです。専門は・・・航空関連で、水雷戦については未熟ですが、司令官として、部隊の厚生に尽力していく所存です。よろしくお願いします」
私が挨拶をすると、小さい拍手があがった。席に着くと、皆に自己紹介をするように促す。まずはエディ達が立ち上がって自己紹介を始めた。
「アメリカから来たDD-663フレッチャー級147番艦、ヘイウッド・L・エドワースよ。みんなとは生まれも立場も違うけど、日本にちょっとした縁があって、ここの部隊に配属されました。部隊では教導艦ということになるけれど、同じ駆逐艦として、私のことはエディって呼んでほしいな。よろしくね」
「DD-664、フレッチャー級148番艦、リチャード・P・リアリーです。姉さんと同じく、日本に縁があってここにきました。また、この56という数字も、僕たちがあの戦争で所属していた部隊番号なので、2重に縁のあるこの部隊の名に恥じぬ働きを姉さんとしていくつもりです。よろしくお願いします」
「148人姉妹!?特型全部でも24だぞ」
深雪が驚くように反応する。ほかの艦娘も目を丸くしている。
「ちなみに総生産数は174隻、19水雷戦隊です!」
エディが笑顔で言った。
「・・・うち、目が回りそうや・・・」
「じゃあ、次はみんなも自己紹介してくれるかな。できれば、この鎮守府でやりたいことも教えてくれるとうれしいな」
エディが提案すると、着任順に席を立って自己紹介を始めた。
「特型駆逐艦4番艦の深雪さまだよ!演習中に他の駆逐艦・・・てか、響の妹で、大まかな分類で特型の末っ子とぶつかって事故ったこともあるんだ・・・実戦はまだやったことはないから、先生からいろいろ学んで、前線でバリバリ活躍できるようになりたいぜ。よろしくな!」
「白露型駆逐艦五番艦の春雨です。ここに来る前は姉さんたちと共に第二駆逐隊にいました。輸送や護衛任務は、少し得意なんです。私も、もっともっと強くなって、姉さんに追いつけるようになりたいです。はい」
この2人は向上心が高いようだ。エディもリッチもうれしそうに頷いた。
「特型駆逐艦のВерныйだ。昔は響って名乗ってたけれど、新しい記憶に目覚めてこの名前に変更しました。心機一転して頑張るつもりです。Очень приятно(よろしくお願いします)」
「・・・響、なんか感じ変わったな」
深雪がつぶやいた。
「ソ連海軍って謎が多いから、Верныйちゃんにはいろいろ聞かせてほしいな」
「僕も、鉄のカーテンの向こうには興味がある」
「・・・そう、つまらない昔話でよければ、いくらでも話すよ」
エディとリッチも興味津々のようだ。浦風が立ち上がる。
「陽炎型の浦風や。生まれは大阪、前の所属は呉。大戦では真珠湾からガタルカナル、台湾海峡で沈むまで太平洋を駆け回ったんじゃ」
「浦風は陽炎ちゃんの妹なんだね。変わったしゃべり方だけど」
「生まれも育ちも訛りが強いとこじゃったけん、いろいろ雑じってもうてな、ははは!」
浦風は陽気に笑った。
「あ、そういえば舞風ちゃんも陽炎型だったっけ」
「せやせや、舞風は横鎮やったな。舞風もうちと同じ造船所生まれじゃけど、何でか方言はうつらんかったな・・・黒潮はこてこてなのに」
エディはその言葉に何か引っかかるものがあった。
「くろしお?潜水艦の?」
「何言っちょる、黒潮は駆逐艦じゃ」
浦風は不思議そうに返した。
「うーん・・・くろしおは潜水艦だったと思うんだけどな・・・」
エディは考え込むが、うまく思い出せないようだ。
「・・・ま、それは置いといて、やりたいことは潜水艦の対処かな。よろしく!」
「それならわたし達の得意分野だから、任せてね!」
浦風が席に着いた。そのまま和気藹々と食事をしつつ、皆で親睦を深める。
「司令官!航空関連勤務って言ったけど、もしかして空母航空隊上がりか?」
「いや、そっちも目指してたけど、ほとんど陸で事務をやってたから」
「ってことは幹部か?エリートじゃないか!」
なんだか変な誤解を生んでいる気がする・・・
「そういえばエディは何年就役ですか?」
春雨が聞いた。
「わたしは44年1月。リッチは2月だけど」
その言葉に皆驚く。
「え?若いですね!」
「そんなに?」
「ここにいるのはみんな戦前生まれだよ」
響が言った。日本軍は戦前の軍備を切り崩しながら戦ったのだと叔父に聞いたことがある。
「私なんか、29年就役の34年沈没だから、軽く親子だな」
深雪も自嘲気味に言う。
「み、深雪ちゃんのことはビッグママって呼ばないと・・・」
「別にいいって、船は若いほど性能いいから、むしろ羨ましいくらいだぜ」
深雪は笑いながらエディを撫でた。
「まぁ、本当に強いかどうかは戦ってみないと判らないし、混成部隊である以上、各艦の実力と性能を測定しなければならないから、そこのところを明日演習でテストするのはどうでしょう?司令官」
「賛成!特型だって戦えることを見せてやるぜ」
「教官の実力も見てみたいしな」
リッチが提案すると、ほかの皆も賛成する。私も艦娘同士の演習には興味があるので、反対する理由はない。
「ああ、リッチの言う通りだ。明日は演習にしよう」
「じゃあ、今日の仕事はパパッと終わらせて、明日までに艤装を準備しよ!」
楽しい昼食は続く。
夕方
「お掃除完了!みんな協力してくれたから早く終わったよ!」
「同じく、備品の集計が完了しました。こちらが報告書になります。確認を」
昼食の後、掃除を手伝ったり、その様子を撮影したりしていたが、司令官も暇ではないでしょう、とリッチに遠まわしに追い出されて、資料室から持ち出した業務日誌を取り出して読んでいると、掃除を終えたエディ達が入ってきた。
「ありがとう2人とも。とりあえず今日の業務は終わりだから、手の空いているもので夕飯の準備をしてくれ」
「「了解しました」」
エディ達が部屋を出て行くと、報告書を読んで予め準備した電子出納表に入力する。出納表はネットに接続されているらしく、メールボックスに妖精重工、フェアリー・サイエンスグループ、ぴくしぃ・あーまめんつ社等複数の会社からメールが届いていた。どうやら燃料、弾薬、兵装を造る会社らしい。
部下からの報告書を読み、コーヒーを傍らにデータを入力、試算を立てつつ発注を決定する。こうしているとなぜか落ち着く。遠い昔に大陸のはずれの小さな島で過ごした日々、あとは窓の外から戦闘機の爆音が聞こえれば・・・ん?なにを考えてるんだ私は・・・
慌てて作業に戻る。日も暮れ始めた頃に今度は狭川大佐が入ってきた。
「やあ、軍服姿もなかなか様になってるじゃないか」
「こ、これは基地指令!ご無沙汰しています」
突然の基地指令の来訪にあわてて敬礼し、お茶の準備をする。狭川はさほど気にかけず、ソファに座る。
「あ、コーヒーでいいよ。いや、いい部屋だね。こっちは基地指令だから、同じ執務室でもひっきりなしに人が入ってきて落ち着かないんだよ」
狭川がソファから部屋を見回して言った。
「あ、ごめん。皮肉に聞こえたかな?まぁそれは良いとして、どうだった?初めてのお仕事はさ?」
狭川はさも楽しそうに聞いてくる。
「解らないことだらけで苦労してます。業務日誌があったので、今それを読んでいたところです」
「へぇ、そこに目をつけたか・・・まぁ、あくまで端から見てた感想だけど、僕が知る限り、提督業は艦娘からの人気さえあれば、サボろうと思えばいくらでもサボれる仕事だからね。君って顔も悪くないし、そんなに気を張らなくてもやっていけるんじゃないかな?」
彼の知る提督とはいったい誰なんだろう・・・というか、税金で食ってる身分でそれはどうかと思う。そんな奴に税金は払いたくない。
「は、はぁ・・・ですが、一応業務なので最善を尽くすつもりです」
そんな提督にはなりたくもないので、私はピンと背筋を伸ばし、まじめに答えた。
「ははは、怒らせちゃった?ま、知ってるその人を見てもうひとつ思ったのは、真面目にやった時の仕事量も際限ないってことだから、頑張りたいんなら、とことんやってみると良いよ。あ、それと・・・」
狭川は持ってきた2つの箱を開けた。細長い桐の箱の中にはよく装飾されたサーベル拵えの日本刀と、短剣が入っている。もう片方の小さいケースの中には拳銃が入っていた。これは・・・
「決闘ですか?」
「あはっ、君って真面目な顔してジョークもいけるんだね。軍刀と短剣は儀礼用のやつ。式典とかで着けるんだ。拳銃は・・・まぁ、お守りだね。携帯許可証と説明書も置いてくよ。自動式だから、定期的に整備しないと、すぐダメになるよ」
拳銃は叔父に習っている。カメラも暇があれば分解しては組み立てるので、説明書さえ読めば問題ない。確かここを外せば・・・
「おや、興味津々だね。何なら警備部隊の自動小銃を貸してあげるけど・・・」
狭川指令は私が拳銃を分解するのを見るて、ふざけて基地内電話に手を伸ばす。
「拳銃だけで良いです」
私はあわてて止めさせると、バラバラになった拳銃をすぐに組み立てて言った。
「おお、さすがにアメリカ育ちなだけあるね。練習したかったら、警備部隊の詰め所を使うと良いよ。あ、それと毎月2日の基地内ミーティングには参加してね。じゃあ」
それだけ言うと狭川は部屋を出て行った。
「・・・はぁ、何なんだあの人は・・・」
再び1人になった執務室で出納表をまとめる。弾薬や魚雷はまだ使えるものもあるが、互換性のない旧式の物や耐用年数を越えているもの、他の艦種のものもあり、3割は処分したとのこと。備品についてもいくつか買い換えなければならないものもある。
「まだ予算に余裕があるし、暫くは何とかなるか・・・」
いくらか弾薬と燃料を購入して、パソコンを閉じようと・・・・
「なっ!?初回特典、今なら1式陸攻1ダースが半額だと!?買うしかない!」
魔が刺したんです、ぶっすりと。飛行機マニアの血が騒いで、我に返ったときにはボーキが消えていた。
「・・・経理は厳しいものになりそうだ」
机下に置いた金庫の中の予算(血税)を眺めつつ、無駄遣いしないと心に決めた。