駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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校正殿が海外へ行ってしまわれた。1月は帰ってこないので、暫く文法がおかしくなるかもしれません(広島便がおかしいのは仕様です。誰かタスケテ・・・)。


第27話 Faulty maintenance

 翌日、目覚ましで起床して、外に出ると部隊の艦娘たちも集まっていた。彼女たちと一緒に体操をする。昨日の夜に毎日の生活に関することについてみんなで話し合って決まったことだ。その後で、朝食を摂り(準備は当番制)ながら、今日のスケジュールを確認する。

「それで、演習の組み分けについてだが・・・」

「はい!司令官、ここはエディとリッチ、響対私と春雨、浦風でするのはどうだ?」

 深雪が勢い良く立ち上がって提案した。

「うちもそう思います。教官の戦い方とか、実演してほしいです」

「わ、私も」

 他の日本組も賛同する。

「エディ達はどう思う?」

「私も特に反対しないよ。リッチは?」

「僕も姉さんと同じです」

 エディとリッチも賛成する。

「Верный、後は君だけだが・・・」

 Верныйは何か言いたげだったが、少し考えた後に「頑張るよ」とだけ言った。シャイなのだろうか?

「それでは、演習は海外組対日本組で実行します。各自時間までに艤装の準備をしてください」

 

 

 エディ達が艤装調整と試験航行をしている間に、食料品の買い出しに行く。帰って来たときには皆艤装をつけて、海上で航行練習をしていた。演習用の観測台に上ると、拡声器で連絡して、演習まで艦娘を待機させる。

 開始時間まで待機していると。観測台に誰か上がってきた。

「やあ」

「狭川大佐、仕事はよろしいのですか?」

 執務室にひっきりなしに仕事が入ってくる忙しい人のはずだが。

「基地内業務の視察も立派な仕事だよ」

 ああ、サボりに来たんですね・・・

「艦娘の演習なんて久しぶりに見るからね。どういう試合かな?」

 狭川は扇子片手に観測台据付の双眼鏡を覗き込んで見物と決め込むつもりらしい。ご丁寧に手土産とばかりに缶コーヒーを手渡してきた。

「艤装の試験もかねた海外組対日本組の演習です」

「へぇ、君はどっちに勝ってほしいのかな?」

 どっちが勝つと思うかではなくどちらが勝ってほしいかと聞かれて、私は驚いた。

「正直なところ、海外組が勝つと踏んでこの組み合わせにしました。エディとリッチはアメリカで教育を受けてますし、Верныйだって終戦まで生き延びています。弱いはずはありません。部隊を編成する以上、まず力関係を示す必要がありますからね」

 エディとリッチは教導艦をやる以上、他の艦の尊敬を集める必要がある。日本艦達も今回の演習をアメリカ艦の実力の試金石と考えてるであろう。どちらにしろエディには勝ってもらわなければならない。

「へぇ、結構計算高いんだね、君」

 狭川は双眼鏡を覗き込んだまま言った。

「上手くこちらの思惑通りになると良いですが」

 そろそろ時間だ。私も双眼鏡を覗き込む。

「さぁ?世の中、早々思う通りにはならないかもよ」

 見ていなかったが、この時たぶん狭川の口元はニヤついていた筈だ。なぜならこの演習は、海外組の惨敗で終わったからだ。

 

 

 

 少し前

 

 買い出しに行ったハミルトンを見送ると、チームに分かれて準備に取り掛かった。日本組は早速艤装をつけて海に出て行ったが、エディとリッチは倉庫で艤装の梱包を解かなければならなかった。

 エディは東京決戦以来はじめての演習なので鼻歌交じりに梱包を解いていたが、次第に表情から余裕が消えていった。同じようにリッチも険しい表情になっていく。

「それが君たちの艤装?魚雷はないみたいだけど、そういうコンセプトかな?それと、その箱は何だい?」

 Верныйが不思議そうに艤装を見つめて言った。

 駆逐艦や軽巡の艤装は、大抵脚部か腰に魚雷マウントが付いていて、エディ達フレッチャー級も例外ではなかった。ところがエディとリッチの艤装には魚雷マウントに発射管が無く、代わりに用途不明の長方形の箱が固定されていた。

「え、えっと・・・うーん、よくわからn」

「魚雷の有効性が低下したから、よりレーダーを使った射撃に特化させるために魚雷を撤去してCICを増設したんだ」

 うっかり口を滑らせそうになったエディを抑えて、とりあえずリッチがそれらしい説明した。

「ぷはっ・・・そ、そうだよ。対空性能は飛躍的に上がったんだからね・・・」

 エディも便乗して言い訳するが、目が泳いでいる。しかしВерныйは納得した様子でエディの肩を叩くと、そのまま埠頭に歩き出した。

「Хорошо!じゃあ、私は先に海に入るよ」

 Верныйが立ち去ると、2人はほっと一息つき、お互いの艤装を再び観察する。

「ねぇ、リッチが言った事ってホントなの?こんな艤装見たこと無いよ」

「僕もわからないけどああいうしかないよ。これが僕らの記憶とつながるものなのか、誰かの作為によって改造されたものなのか・・・」

 リッチは艤装を見回して詳しく観察する。箱は脚部マウントに固定されており、取り外すことはできない。取り外されたのは魚雷発射管だけでなく、3番砲もなくなっている。

「三番砲塔はどこだろう?手持ちがないと寂しいかな・・・ん?箱に何か入ってるよ」

「艤装に意識を接続・・・うん、FCSやレーダーはあんまり変わってない。けどヘッジホッグや20mm機銃が撤去されてる。対潜は爆雷だけか。少し不便だね」

 エディとリッチは埠頭から海に降りて、Верныйと単縦陣で航行する。

「排水量に変化は無いし、運動性は変化無さそう」

 この時運動試験のために割と激しく動かしていたが、Верныйはきちんとついてきてくれた。

「後は射撃試験もしたいけど・・・」

《5分後に訓練を開始します。開始位置に移動してください!》

「・・・射撃はぶっつけでやるしかないみたいだね」

 

 

 演習開始のブザーが鳴り、陣形を整えた両者が一斉に走り出す。

「エディ、解ってると思うけど」

「うん。ここで勝たなきゃ、みんなに見くびられちゃう。フラグシップは、常に基地のトップランカーであるべき・・・だよね」

 エディの身に緊張が走る。

「Верныйちゃん、日本の駆逐艦の電探性能ってどれぐらい?」

 エディはВерныйに尋ねる。

「電探を積んでるのは駆逐艦じゃ陽炎型ぐらいだよ。それも実戦レベルじゃない」

 うまり浦風が電探をつんでいる可能性があるということだ。おそらく旗艦も彼女だろうと見当をつける。

「よし。姉さん、電探ではこっちに分がある。相手に魚雷を発射させないように操艦して、砲撃で沈めよう!」

「解ったわ!Верныйちゃん、ついて来て!」

「了解!」

 艦隊は正面から浦風を先頭に接近する日本艦隊を発見、右に回頭してT字に持ち込んだ。

 エディは3番砲塔の変わりに艤装の武器腕に装備した1番砲を持って射撃体勢に入ろうとした。

(・・・?)

 エディは1番砲が以前よりずっしりと重くなっているのを感じた。武器腕に装備された2、4、5番も展開が遅くなっている。

「教官、早く射撃許可を」

 準備に入ったВерныйが指示を求める。日本艦隊は絶好の射撃位置にいる。エディはすぐに1番を撃つ。砲撃は敵の上を通り越して行った。リッチも同じような結果になった。何度か砲撃を繰り返すが、砲弾は予想より上を通過する。

(砲の射程はあがってる・・・のかな)

 日本艦隊は先制砲撃を受けたが、命中弾を受けず近づこうと追跡してくる。海外艦隊はレーダーで日本艦隊の動きを予想し、リーチをとりつつ砲撃を続けるが、回避運動も相まって命中弾を上げられず、逆に相手の砲撃の精度が増してきた。

「姉さん、残段が少ない。このままだとまずい」

 そう言ったリッチの足元にも砲弾が落ちた。次は当ててくるだろう。

(このままじゃじり貧かな・・・リスクが高いけど。やるしかない!)

「反転して!単横陣で突入して乱戦に持ち込むよ!」

 艦隊は180度回頭すると、一直線に敵艦隊に切り込みをかける。日本艦隊は待ち受けたと3時方向に回頭する。

「魚雷がくるよ!回避して!」

 エディが叫ぶとすぐに魚雷の波が来た。エディとВерныйは上手く回避できたが、リッチは避けきれず被雷した。

「しまった!?姉さん、ごめんなさい!」

「リッチ!」

 日本艦隊はさらに砲撃を仕掛けてくる。エディは距離をつめようとするが、弾幕をすり抜けられず次々と被弾していく。

「くらえ!深雪スペシャル!」

「うわぁ?あれ・・・出力が上がらない!?」

 ついに深雪のはなった砲撃が機関を直撃し、機関停止したエディは集中砲火を受けて戦闘不能になった。

「・・・」

「きゃあ!?」

 残るВерныйが春雨に一撃与えて中破させた。しかし数の差はどうにもならず、撃破されて試合終了となった。

 

 

《・・・・・・Верныйの撃破を確認。よって日本艦隊の勝利》

 演習終了のサイレンが鳴り、エディは力なく膝を付いた。緊張していた筋肉が緩み、ただ力なく、呆然とへたり込む。数瞬頭が空っぽになって、その後に悔しさと恥ずかしさで顔が熱くなり、涙腺から涙があふれ始めた。

「すまない、力になれなくて」

 Верныйが駆け寄ってきた。申し訳なさからすぐに泣き出しそうになったが、立場を思い出して力の入らない頬の筋肉を無理やり締めて、涙を押さえようとした。

「あ・・・Верныйちゃんのせいじゃないよ。ごめんね、情けないことして。うん、私は大丈夫だから・・・」

「エディ、君はもしかして・・・」

「エディ!」

 Верныйが何か言おうとしたその時、リッチが割り込んできた。

「リッチ、ごめんね。負けちゃった」

 エディは必死に取り繕おうとするが、やはり涙を押しとどめることができなくなり、リッチの胸に身を預ける。

「うぅ、ごめんね。ごめんね・・・」

「僕に謝る必要はないよ。それより、プランを立て直すほうが先だ」

 リッチが手を差し出してエディを引き起こす。

「ありがとう。ついでにだけど引っ張ってくれないかな?また壊れちゃって」

「もう、仕方ないな・・・Верныйも手伝ってほしいが機関は大丈夫かい?」

「了解。問題ないよ」

 Верныйも加わって、エディを曳航する。

「こんなとき、大姉さんはどうしてた?」

「そうだね、大姉ちゃんはこんなとき、確か・・・」

 

 

「あ、あれ?勝った?」

 ブザーが鳴り、勝った日本組は余りにあっけない勝利に拍子抜けした。

「変な感じですね。勝ったのにつまらないというか・・・」

「・・・妙に逃げまわっちょると思うたら、急に突っ込んできて負けて。あれがアメリカの戦いなんか?魚雷も撃たなかったし」

 勝利の喜びよりも、奇妙な試合をした教官への懐疑が日本組の間に広がり始めていた。

「うーん、こないなこって大丈夫か・・・」

「何か調子が悪かったのかも知れませんし、きっと何か説明してくれますよ」

「ま、せいぜい見ものやな。向こうも帰るみたいじゃけん、はよ帰ろう」

 疑問を残しつつも浦風と春雨は帰途に付く。終始黙っていた深雪も続くが、エディを曳航して帰還する海外艦隊を睨んでいた。

「・・・・・・何が教育だ。くっだらねぇ」

 そう吐き捨てた言葉は、誰に達するでもなく、暗い海の深遠へと落ちていった。

 




提督「よし、2話も投下したし早く退避・・・」
那珂「どっかーん!」
神通「投稿お疲れ様です。提督(殺気を漂わせながら)」
川内「ドーモ。テイトク=サン。ヤセンです。」
提督「アイエエエエエ!」
那珂「ねぇ提督、驚いた?怯えてた?失禁しちゃいそう!?」
提督「な、何で今になって・・・前回は出てこなかったじゃないか!」
川内「あれは提督が後書きめんどくさくなって・・・」
神通「姉さん。あまりメタい話は止してください。あの時は提督が反省している雰囲気だったので、従然と罰を受ける提督を爆破しても面白くないと思い、調子づいて反省しなくなる頃合を見計らってたんです」
那珂「そういうわけで提督、何か言い残すことは?」
提督「香取実装おめでとう!俺も鞭でぶって!」
那珂「どっかーん!」


神通「という茶番は置いておいて、次は解説です」
那珂「結局これといって謝罪はしないんだね」
提督「引かぬ、媚びぬ、省みぬ」
那珂「脳を物理的にいじらない限り直りそうにないね(提督の脳に電極装着)」
提督「ナニカサレタヨウダ」
川内「それはそうと、今回随分とエディちゃんの艤装が変わってたけど・・・」
神通「それについては専門家に聞きましょう。夕張さん、入ってきてください」
夕張「あ、どうも。へぇ、舞台裏ってこんなんなんだ」
那珂「それじゃあ早速、具体的にどういったところを改造したの?」
夕張「基本的には1959年引き渡し改装のありあけ型(wiki参照)を元にしてるけど、いくつかのところに独自の改造を加えてるわ。具体的にどんな感じかといえば、以下の通りよ」
    旧             新 
主砲 38口径Mk30 5インチ砲5基→3番砲塔を撤去 砲身を50口径12.7cm砲に換装
魚雷 53.3cm5連装魚雷 2基   →撤去 ???に改造
対空 ボフォース40mm連装機銃  →25mm3連装機銃に換装
   エリコン20mm単層機銃   →全て撤去
対潜 ヘッジホッグ       →撤去 爆雷投下軌条装備
電探・ソナー・火器管制     →変更なし
機関変更なし、速力、運動性共に変化なし。

那珂「改めて見るとフレッチャー型ってすごい重装備だね」
神通「何気に5連装魚雷2基搭載ですから、残念魚雷でなければ、対艦攻撃力でも日本艦に迫る性能ですね」
川内「電探・音探も常備だから、夜戦ですらこちらが負けるかも・・・夜戦、T字、レーダー砲撃・・・うぅ、頭が」
夕張「まさに戦場の何でも屋っていうコンセプトを突き詰めた駆逐艦の決定版ね。しかも彼女たちは量産されている。たとえアメリカが戦時中に空母と戦艦を建造しなかったとしても、戦争には勝ってたかもしれないわ」
那珂「それは置いといて、改装後の性能は中身はそのままだけど武装面を大きく削って、まさに練習艦スペックになってるね」
神通「引き渡したあと改装でわざわざ魚雷を外させたのは、大戦期の日本の魚雷技術への恐怖が強く残ってたからかもしれませんね」
川内「んで、肝心の箱の中身って何なの?魚雷まで外したんだから、きっとすごい夜戦兵器なんでしょ?」
夕張「え?あれはただの箱よ」
川内・神通・那珂「は?」
夕張「史実では講堂ってことになるから、ゲーム実装されたら香取さんみたく経験値ボーナスアイテムになりそうだけど、劇中じゃ取り付けただけで経験値が振り分けられるわけじゃないし、実際重要になってくるのは本人たちの素質・・・まぁ、解り易く言えば練習艦としての記憶ってところじゃないかしら」
神通「ですが、当の本人は自分の名前すら思い出してないですが・・・そこはエディちゃんの今後の頑張り次第って所でしょうか」
那珂「それと気になるのが、主砲砲身・機銃を日本の駆逐艦のものに変更したところだね。これはどういう理由?」
夕張「これは単純に弾薬の調達コストの問題。彼女たちが持ち込んだ弾薬もそろそろ品切れだったから(研究用に横領したのもあるけど)」
川内「今回は慣れずに苦戦したみたいだけど、口径が上がったら主砲の威力も射程が上がっていい事ずくめじゃないの?」
神通「そうとも言えますが、重量の増加によってMk30の長所である両用砲としての取り回しの良さが失われてしまいます。ただし日本の場合、高射砲であっても40口径ですから、こちらを積んでも重量増は避けられませんね」
夕張「私も迷ったけど、他の子と同じ武器を使ったほうが運用上断然良いと山岸さんに言われてこっちを選んだわ」
川内「体に合う銃を探すより銃にあう体を作れって陸軍ではよく言うらしいね・・・私達は海軍だけど」
那珂「こうしてみるとフレッチャー級の長所をとことん殺す改造だね。実戦は大丈夫かな?」
神通「それは本人のセンス次第じゃないでしょうか。それよりも深刻なのは今回の敗北で隊員に見くびられてしまったということです。もう力では彼女たちは従いません」
川内「どうやってバラバラになった隊員の信頼を取り戻すか、腕の見せ所だねぇ」
夕張「むろん、外した分装備もつけられないこともないから、そっちも楽しみね。また兵器解説があったら呼んでくれる?」
那珂「もちろん!それじゃあここまでお付き合いしてくれた読者のみんな!次回もお楽しみに!」
一同「またねー!!」
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