駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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第31話 雨降って地固まる

「はい、本当にありがとうございました。明日お詫びに伺いますので、よろしくお願いします」

 防空局への電話を切ると、やっと一息つく。深雪の居場所を探すのに、私は狭川大佐を介して空軍の防空局に連絡をした。もちろん脱走ではなく夜間演習としてだが。何とか話をつけたものの、深夜の急な要請だったので、時間に厳しい空軍の人たちにはかなり顰蹙を買ったようだ。明朝お詫びに行かなければならない。

「これでよかったのかな?『余計なことするな』とか言われそうで怖いけど・・・」

 自分を信用していない今のエディ達なら言いかねない。そう考えていると司令室のドアが開いた。

「ただいま!司令官!」

「司令官、帰投しました」

 エディとリッチが入ってきた。

「お帰り、2人とも。よくやってくれた。深雪は大丈夫かな」

 無事ということは聞いているが、ちょっとした「戦闘」はあったようなので、やはり怪我をしてないかは気になった。

「大丈夫です。深雪ちゃん、入ってきて」

 エディ達の後ろに隠れていた深雪が出てくる。深雪の服が海水にぬれて、すそがところどころ焦げているのがわかった。少し疲れているようだが、怪我をしている様子がなかったので、とりあえず一安心だ。

「2人は休んでくれ。深雪と話がしたい」

 私はエディ達を部屋に返すと、コーヒーとタオルを差し出した。

「風邪引くぞ」

 深雪は少し驚いた後、黙って受け取ってタオルで頭を拭いた。暫くうつむいて黙って、ポツリポツリと話し始めた。

「司令官、今回は悪かった。どんな罰でも受けるから・・・その、教官の事責めたりしないでくれ」

「え?」

「私、この艦隊のこと勝手に勘違いして、ここに居ても解体されるだけだと思って脱走したんだ。教官の指導が悪かったとかそういうのじゃない。だから・・・」

「ははは、君にもエディにも悪いようにするつもりなんて最初からないよ。私に解体する権限なんてないし。それよりも、よく戻ってきてくれた。今はそれで十分さ」

 私は最初から深雪を罰したり、事を上に報告しようとは考えていなかった。そんな権限もないし、何より、より身勝手な理由で叔父から逃げてきた自分に深雪を罰する資格はない。

「でも、司令官。それじゃ私の気がすまない。みんなに迷惑かけたんだ、何かしないと」

「それが解ってるんだったら、私は何も言わない。みんなに迷惑をかけたなら、それを取り戻す努力をすればいい。たとえば・・・家事を1ヶ月肩代わりするとか」

 反省していないならともかく、やったことの責任を理解して償おうというなら、気が済むまでさせるべきだ。中途半端に罰して、後悔を残させたり、怨まれたりするべきではない。叔父がよく言っていたことだ。

「それだ!掃除1ヶ月、毎朝早起きして朝飯も作る!ついでに毎日ランニングもするそれと・・・」

 深雪は嬉々として条件を費やそうとした。あまりに際限なく条件を加えようとしたので、さすがにとめて、紙を取り出した。

「それぐらいでいいだろう、私との約束だ。誓約書にサインしてくれ。これは台所に張り出してみんなが見られるようにする。破ったら今度こそただじゃおかないぞ」

「おう!なんかすっきりしたぜ!ありがとう、司令官」

 深雪はいつもの明るい彼女に戻る。これでもう問題ないだろう。

「よし、まだ何か悩み事はないか?」

「ああ、もう大丈夫だ。教官のおかげでやりたいことも見つけたし」

「へぇ、なんだいそれは」

「それは秘密。お休みなさい、司令官!」

「ああ、お休み」

 

 

 事件から1週間後、私は訓練場に来てエディ達の訓練を見学している。あの事件があってから、エディや浦風の報告だけではなく、艦娘たちと直接話し合う機会が必要だと思い、執務の合間にこうして訓練を視察したり、なまった体を動かすために参加したりしている。今日は体育館での格闘の指導だ。

「深雪スペシャル!」

「うわぁ!?」

 深雪が浦風を背負い投げして関節技を決める。艦娘が格闘なんて覚えてどうするんだと最初は思ったが、艤装なしの人間の戦い方を覚えれば艦娘の戦術にも幅が出るのではとの深雪の強い提案で、エディがCQCの訓練を組んだそうだ。他にもレンジャー訓練なども新しく始めたらしく、運動場や体育館も使うようになった。艤装も毎日修理せずともよくなり維持費も少なくてすむので、こちらとしてもいい事尽くめだ。

「そこまで!深雪ちゃん、ナイスファイト!」

「ふぅ」

「ありがとな、教官!お、司令官、来てたのか」

「ああ、差し入れも持ってきた」

「やったぁ!みんな、ちょっと休憩」

「「「「はーい」」」

 私は買ってきたジュースを渡し、エディとリッチの隣に座った。

「司令官、お疲れ様」

「お疲れ様です」

「お疲れ様、2人とも。格闘訓練の調子はどうだ?」

「いい息抜きになってます。特に深雪ちゃんは才能があります」

 深雪は艦娘としてはまだまだだが、格闘に関してはめきめきと頭角を現し、リッチに追いつく日も遠くないといわれるほどだ。

「本人曰く、「素手で戦艦を倒す!」そうです。この伸びだと、本当にそうなってしまいそうで恐ろしいです」

「はは、それは楽しみだ」

 その日には何でも好きなものをおごってあげよう。

「それにしても、深雪があそこまで変わったのはどういうことです?朝から晩まで大忙しなのに、文句ひとつ言いません。どんな説教したんですか?」

 リッチが不思議そうに聞く。

「別に説教したわけじゃない。深雪が好きにやっているだけさ。みんなにも良い影響が出てるし、問題ないだろう?」

「そうですが・・・」

 あの日から深雪は宣言したことを全て厳守している。さすがに全てやるとは思っていなかったので、私も驚いた。しかし、おかげで深雪に倣って艦隊に朝のランニングの習慣ができたり、分担も積極的に手伝うようになったので、結果としてよい方向に向かっている。

「何はともあれ、エディ、リッチ。2人ともよく頑張ってくれた。深雪がここまでよくなったのは、君達が連れ戻してきてくれたからだ。私はこうしてお茶酌みや金勘定しかできないが、君達が居てくれるおかげで艦隊が維持できている」

 距離をとってはならないと思いながらも、労いが少々堅苦しくなってしまう。対するエディの口から出たのは意外な言葉だった。

「浦風ちゃんから聞きました。司令官さんがいろんなところに頭を下げたから、深雪ちゃんが見つかったって。それだけは感謝します」

 司令官になって初めての感謝の言葉。思わず感動しそうになるのを抑える。

「ただ、今度からは浦風ちゃんよりも先にわたしに相談してください。わたし、今回のことがあって気付いたんです。信じなきゃ、信じられないって。わたしもリッチも、もっと司令官さんとお話します。だから・・・その、司令官も、今度からちゃんとわたしを見てください!」

「エディ!?どうしたの?何か悪いものでも食べた?」

「ほら、リッチも」

 リッチは信じられないというように目を丸くしたが、エディに背中を押されて恥ずかしそうに言った。

「そ、その・・・姉さんがそういうなら。僕からも、よろしくお願いします・・・勘違いしないでください、エディじゃなくて浦風に先に連絡したのが気に食わないだけです・・・」

 リッチはそのまま目をそらしてしまう。やはり浦風のことを気にしていたようだ。そこは反省しなくてはなるまい。

「2人とも・・・」

 あれだけ距離を置いていた2人が、また信用し始めてくれたことが嬉しくて涙腺が熱くなってしまった。

「ありがとう。それでは私は仕事に戻るから」

 泣くのを見られるのは恥ずかしいので、ベンチを立って歩き出そうとしたが、溜まった涙で視界がぼやけたせいで、ベンチの脚を見落としてしまった。

「いて」

「うわぁ!?司令官!?」

 躓いた私はそのままエディに覆いかぶさって押し倒した。

「いてて・・・ごめん、エディ」

 エディが下に居てくれたのでそれほど強い衝撃はなく、状況を確認する。上に自分、下にエディ、右手は床を掴んで、左手はなぜか柔らかい。ああ、浦風のときと逆だ・・・ん?左手が柔らかい。私はエディの右胸を掴んでいる左手とエディの顔を交互に見た。エディの顔がどんどん赤くなっていく。逆に春雨とВерныйの顔が青くなり、浦風はくすくすと笑っていた。

「し、司令官のエッチ!」

 エディが叫ぶと同時に私の腹部に強い衝撃が走り、体が宙に浮き、床に叩きつけられた。足を上げたリッチが、汚いものを見る目で私を睨んでいる。

「深雪、今日の後半の訓練はセクハラからの護身術だ。早速司令官をサンドバック、もとい実験体として実演するんだ」

「ま、まて!話せば解る!不可抗力だったんだ!」

「悪いな司令官、私も命が惜しいんだ」

 深雪の手がかけられて、それから数時間の記憶が飛んだ。

 

 




那珂「て~い~と~く~?前投稿した日覚えてる?」
提督「に、2週間前だよ!先週は事情があって作業できなかったし、今回2話投稿したから別にいいだろ!」
那珂「じゃあ、私をあとがきに出したのは?」
提督「そ、それは・・・」
那珂「めんどくさくなってあとがき省いたり、名言で誤魔化したりして、いったい何様のつもりなの?」
提督「作者様だよ!」
那珂「言い訳無用!どっかーん!」



神通「ノルマは達成したので、本題に移ります。27話からの深雪編でしたが・・・」
川内「まさかのCQCとは、相変わらずの超展開だね」
提督「ああでもしないと性能差抜き武装使えない状態で勝つことは無理だから。最初は魚雷持ったエディがスリガオの帰還兵の機動で深雪を仕留めることにしようと思ってたんだけど、深雪スペシャルネタを考えて、気がついたらこうなってた」
那珂「格闘なんて本来艦娘らしからぬ戦いだけど、木曽や天龍は普通に刀抜いてるしね」
神通「舞鶴56戦隊のコンセプト自体、艦娘らしい、ただの砲雷撃戦をして強いだけの日本海軍から外れた、新しい艦娘の創造ですから、そういったあり方のひとつを、深雪さんは見つけたということですね」
那珂「エディとハミルトンの仲は一応改善したね」
神通「ですが、まだつながりを持ち始めた程度ですから、危うい状況には変わりありません。それと、既に浦風さんがハミルトンの秘密を知っていたのは意外でしたね」
提督「本来はもっと後に露呈させるべきだったんだろうけど、ハミルトンが浦風に依存しているっていう状況を作り出したら、こうなった」
川内「深雪が言ってたとうり、56戦隊が弾かれものの集まりだとすると、公式で例のアレがある春雨はともかく、浦風は明らかに浮く存在だからね。浦風の真意が気になるところだけど」
那珂「特に含みもなさそうだし、ただのお節介焼きのスピードワゴンなんじゃないのかな?」
神通「とはいえ、浦風さん自身、ハミルトンが自分に頼ることで、深化していくエディさんとハミルトンの関係にひびが入ることを理解していますし、既にリッチさんは主導権という点でですが、浦風さんの存在を必要以上に警戒しています。ここは大きなしこりとして留意しなければなりませんね」
那珂「一通り見てきたけど、提督が裁ききれるか限りなく不安になってくるね」
川内「まぁ、次回は息抜き回らしいから、何とかなるんじゃない」
神通「次回は提督の頭のようにの気まぐれなあの方達のお話です、では今日はこのあたりで」
川内・神通・那珂「ばいば~い!」
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