駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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第36話 それぞれの焦り

「速度も舵も遅い船団に対して敵艦隊が最も攻撃しやすいのは船団側面であり、然るに船団は三重横列を維持した上で通常コルヴェットで側面を固め、艦娘は船団4方に展開し、小回りの良さを生かして周辺哨戒を行う。さらに、対潜哨戒機或いは護衛空母タイプの艦娘によるエアカバーを行えば、万全の体制で船団を輸送できる」

 リチャードが黒板の図を指して解説した。ハミルトンの指摘を受けて、エディとリッチはアメリカ時代の教本を取り出し、戦術の座学授業のシラバスを作った。

「凄い徹底ぶりじゃ」

「実質盾役だけど、上陸支援以外で通常艦との共同も初めて見たね」

 Верныйが言った。艦娘に比べて1世紀以上の世代差があり、長射程・精密射撃ができる通常兵器は、人間サイズ故の隠蔽性とそれに見合わぬ超火力をもち、海中からの奇襲、至近距離での乱戦、そして無尽蔵の物量攻勢を行う深海棲艦の前に無用の長物と成り下がった。

「通常戦力が艦娘の補助なんてできるのか?燃費も悪いし小回りも利かない、正直足手まといにしかならないんじゃないか?」

 深雪が言う。ことに基礎国力が低く、かつ早い時期から艦娘の戦力化に成功した日本では、建造に多くの資材と人員を割く通常艦よりも少数精鋭の艦娘を重視する傾向にある。軍内部において鎮守府が異常なまでに他の指揮系統から独立していたり、通常艦不要論が議会で唱えられることもあるそうだ。

「でも、いつでも艦娘が満足に投入できる状況とは限らない。対応力と瞬間火力では艦娘にはどうやっても勝てないのは仕方ないにしても、精密さと総火力においては通常艦の火力投射量も捨てた物じゃない。潜水艦型の耐久力なんてたかが知れてるから、ハンター&キラーの要領で艦娘が敵を見つけて、攻撃範囲の広い通常兵器で対応したほうがかえって効率がいいんじゃないか?」

「なるほど、さすが司令官!」

 ほとんど直感で言ったことなんだが、私の説明に皆頷いてくれた。

「そうそうそんな感じ・・・って、さっきから何で司令官がここにいるの?」

「私も少し興味があって、覗いてみたんだが」

「これぐらい海軍学校で散々勉強したはずでしょう?」

 そんなことをいわれても、海上戦闘にはまるで素人なのだ。浦風には大丈夫だと言われているが、やはり司令官として最低限の知識は欲しい。

「教官さんもそうかっかせんでも・・・」

 浦風が割って入るが、エディはかえって機嫌を悪くした。

「浦風ちゃんは司令官に甘すぎるよ・・・まぁ要するに、こちらが適切に誘導すれば、通常戦力も深海棲艦に十分対抗できるってこと」

 エディはため息をつきながらも解説を再開する。

「司令官、こういった護衛戦術の実証なら、隊の方針にも合って比較的安全に遂行できます。ご検討いただけないでしょうか?」

 リッチはここぞとばかりに実戦を提案してくる。確かに悪い話でもないが・・・

「あぁ、確かに素晴らしいね。共同訓練は打診してみよう。ただ、いきなり実戦はできない。十分な装備と練度が整ってから、正規の任務は実行する」

 やはり万一何か起きたら怖い。今のところそういった任務もないし、海軍との折衝もしなければならない。実績のない部隊の提案を聞いてくれるかすら怪しいのだ。

「そもそも、うちの海軍だと満足な護衛空母艦娘もありませんし。そういった艦娘をたくさん持ってるアメリカならともかく、護衛空母艦娘すらいないうちの鎮守府では難しいと思います」

 春雨が付け加えた。うちの様な後方の弱小鎮守府に空母が配備される筈はないし、日本海軍は艦娘の絶対数が少ない割りに依存度が高い以上、我々においそれと貸してくれるとは思えない。

「うーん。そこを調整するのが司令官の仕事だと思うんだけどなぁ」

 エディはこちらを見る。

「そこは勿論努力する。ただ、都合のつくまでの間は制空権の確保できる圏内での航行。安全確保は絶対。いいね」

「はい、司令官」

 正論を言ったつもりだったが、エディは残念そうにうなだれた。

「まぁ、そんなに落ち込まないで。今の提案も、すぐにできることばかりじゃない。もっと単純なことから考えていこう。さぁ、授業の時間はもう終わり、次は砲撃演習だ。皆準備を整えておくように」

 リッチはエディを慰めると、次の授業に向かった。他の艦娘達も続いて出て行く。私も執務室に戻るためノートを持って立ち上がった。

 

 

「もう!司令官のわからずや!根性なし!」

 エディはいつものように弾薬庫で書類をまとめながら愚痴を言っていた。

「エディ、確かに気に入らないが、急な提案じゃ仕方ないよ」

「教官の言うとおりさ。経理や折衝も任せてるんだし、あまり無茶を言うべきじゃない」

 リッチとВерныйがたしなめる。深雪の事件以降、Верныйはたびたび弾薬庫の集まりに来るようになった。最初は警戒していたが、経験豊富で日本の実情に詳しいВерныйは有力な情報源であり、また訓練を重ねる間にリッチとの関係に変化があったのか、リッチが率先してВерныйを引き入れるようになっていた。

「でも、このままじゃ何時までたっても外に出れないよ」

 気の早いエディは早くも先行きに不安を感じて焦っている。リッチも落ち着かない様子だ。あまりに差し迫った事情を感じ、Верныйは2人に質問した。

「教官達はどうしてそんなに功を焦るんだい?」

「それは・・・その」

 2人は口ごもった。スパイ行為をしていたなんて知れたら、流石のВерныйも信用しなくなるのは目に見えている。2人は目をそらそうとしたが、Верныйの鋭い視線がそれを許さなかった。

「言えないならそれでいい。ここのメンバーが訳ありなことぐらい私もわかっている。司令官が君達にとって都合の悪い存在だって事も。だけど、私たちの本当の敵は司令官じゃなくて深海棲艦だ。内部争いの片手間で戦える相手じゃない。そのために君達はこの国に来たんじゃないか?」

「・・・・・・」

 2人はもはや反論のしようが無かった。

「ごめん、自分のことしか考えてなかった・・・」

 特にエディは、世界の架け橋になる夢を持ってきたというのに、小さな基地の中で争っている自分を見つけて恥じ入った。

「いや、こちらこそ教官相手に出すぎたことを言って申し訳ない」

 Верныйは慇懃に頭を下げる。エディ達は慌てて言った。

「そんなことないって。目を覚まさせてくれたんだから、感謝してるよ」

「Верный、ここにいる以上、僕らは”きょうだい”だ。上下は無い」

「”きょうだい”、か・・・ありがとう、リチャード」

 リッチの”きょうだい”という言葉にВерныйも名前で呼ぶことで返す。エディはリッチとВерныйがいつの間にか親密になっていたことに驚きを感じた。それこそ、少し嫉妬してしまうほどに。

「とにかく、具体的なプランを立てよう!」

 少しだけ乱暴に会話に割り込むエディの心中を察してか、Bерныйは微笑みながら返す。

「了解。状況は悪いけど、同時に緩慢。焦らずに当面は信頼作りに勤めるべきだ。とりあえずは・・・」

 

 

 翌日、私は基地内会議に出席するために舞鶴基地司令部を訪れた。鎮守府以外にも多くの部署を抱える舞鶴基地では、週に一度各部の代表者が集まるミーティングが行われる。

「それじゃあ、今日のミーティングは終了。お疲れ様」

 狭川司令がそう言うと、予定よりも早く会議が終わり、それぞれ仕事の戻る者と、他の部署との打ち合わせや単なる雑談をする者とに別れる。狭川司令と私はすぐに立ち上がってお目当ての人物に話しかける。

「どうも、こんにちは。第3護衛隊群司令の堤大佐ですね?」

 年は中年といったところだががっしりとした質実剛健を体現したような人物。舞鶴の通常艦艇部隊を取り仕切る堤博之大佐だ。

「あぁ、そうだ。君は確か、舞鶴鎮守府の?」

 堤大佐は見た目どおりの野太い声で返してきた。こちらを見る目線があまりいいものではないように感じられたが、いつもの取材のつもりで笑顔を作った。

「えぇ、アレン・C・ハミルトン大尉です」

「堤さん、今日は彼の隊が企画している新しい運用実験について話があるみたいだ」

 狭川司令が耳打ちした。一応4階級も違うので、先に狭川に頼んでいたのだ。私は堤大佐に資料を手渡した。

「我が部隊は、艦娘の新しい運用と戦術について研究しています。その一環として、艦娘と通常兵器が連携する新戦術の実験を・・・」

「君は、軍艦の出航にどれだけの時間がかかるか知ってるかね?」

「えっ・・・」

 堤大佐の突然の問いに私は答えることができない。

「艦娘の司令官には理解できないでしょうが、我々は年単位で作られた計画表によって運用されます。整備も修理も1日とかからない艦娘とは違いますよ。我々では足を引っ張ることは目に見えてます。どうぞお引取りください」

 堤大佐は私に資料を返そうとした。

「ま、待ってください。これが成功すれば、通常艦の戦闘力も」

 私も負けずに押し返そうとするが、堤大佐は一人話し始めた。

「昔は国防の志を持って海軍の門を開いたものだったが、最近は小娘の尻を追いかけて入るものも多いと聞きます」

「・・・」

「まして海軍予算の4割と特権を使って企業と結びついて作った資本で私腹を肥やし、何の実績も無い、佐官でもない若造までもが基地を任され幕僚気取り。これでは若者は小銃を担ぐことも、櫂を漕ぐ事も止めて、大層な修辞と参賞ばかり書かれた歴史書の暗記だの女への付き合い方だのばかり学ぶようになるのも当然ですな」

「堤さん、そこまで言わなくても・・・」

「兎に角、実績も無い尉官の命令を受けたとなれば、我が隊の名誉に傷がつきます。これ以上話すことはありません。私は艦に戻ります」

 堤大佐は不愉快そうに言うと、そのまま何処かへ行ってしまった。私は呆然と立ち尽くした。

 

 

 同時刻 鎮守府第一教室

 

「じゃぁ、さっき言ったやり方で自己紹介してみて」

 村雨姉さん。お元気ですか?今日は英語の授業がありました。2カ国間の共同作戦を円滑に進めるための訓練だそうです。凄い事です。駆逐艦の私が艦長や航海士さん達が受けてたのと同じ教育を受けてるんです!

「えっと、あい、あむ、みゆき、ないす、つー、みーつゆう」

「深雪ちゃん、やり直し」

「えぇー」

「次、春雨ちゃん」

「はい、えっと・・・」

 英語はとても難しいように思えます。アルファベットというのは艦娘になって何度か見たことはありましたが、平仮名の母音と子音を分けた文字であったことは初めて知りました。「あ」の発音だけで3種類の文字を使うらしいです。

「春雨ちゃん上手!」

「えへへ、ありがとうございます」

 実は金剛型の皆さんや鎮守府で見た哨戒艇さんの真似をしただけだったのですが、褒めてもらえました。そういえばあの人もアメリカ出身でしたね。怖がらずにもっと話しかけてればよかったかもしれません。

「あぁ、もうやだ」

「深雪、もう少し頑張ろう」

 深雪さんは相変わらずの不器用で、意外なことにBерныйさんも苦戦してました。同じ文字でも大陸の西と東では発音がまるで違うらしいです。

「文法もまるで違うしよぉ、通訳(こういうの)は士官の仕事じゃないのか?」

「そうかもしれないが、実際に行動するのは僕達だ。爆弾が真上から落ちてきて、気付いた僚艦がとっさに英語で注意したら?もし意味が解らなければバラバラに・・・」

 カタン、っと何かが落ちる音がして、墨を流したように視界が暗転しました、轟音、船体(からだ)の軋む音、海の音、いろんな音が頭からあふれ出して止まらなくなりました。首を絞められたような苦しさと体がちぎれる感覚が私を襲ってきました。

「春雨?はるさめちゃん!」

 声を掛けられてはっと意識が戻ります。ヘイウッド教官でした。

「鉛筆、落としてたよ」

 手には私の鉛筆が握られていました。どうやら落としてしまったようです。

「あ、はい・・・ありがとうございました」

 まだ心臓が鳴り続けて、いつの間にか下着がべっとりと汗にぬれていました。慌てて鉛筆を受け取ります。

「すいません。寝不足でした」

 私は怒られると思ってすぐに謝りました。ヘイウッド教官とリチャード教官は私を見つめてましたが、ヘイウッド教官がリチャード教官を一瞥して、その場はそれで終わりました。後で何か罰があるかもしれませんが、一安心です。

 ヘイウッド教官はそのまま私達の真ん中に立って、講義を再開しました。

「・・・深雪ちゃんの言うことは正しいかもしれない。でも、わたし達は一人ひとりが心を持った艦娘なんだよ。折角、命をかけて一緒に戦う仲間なんだから、お友達にならないと絶対に損だと思う。わたしはわたしが深雪ちゃんに日本語で歩み寄ったみたいに、みんなにも他の国の艦娘たちとお互いの言葉で理解し合えるようになって欲しいな」

 ヘイウッド教官は不思議な人です。指導の説明はいつもリチャード教官にまかせっきりで、私達の演習に雑じって一緒に訓練します。(浦風さんもですが)訓練が終わると決まって何処かにいなくなってしまいますが、それ以外のときはいつも私達の中に混じって同輩のように振舞うのです。リチャード教官が北風なら、ヘイウッド教官は太陽、でしょうか?

「・・・まぁ、そんな感じで。次のところ、一緒に読んで」

 できればこの陽だまりにずっといたい、そう思ってしまう自分がいます。でも、教官達は前に進もうとしてます。そのときが来たら、私はどうすればいいんでしょう?

 

 

 私はもう、前に進むことも、逃げることもできないのに

 

 




那珂「うぐ・・・ぐすん・・・」
提督「な、那珂ちゃん。どうしてそんなに泣いてるの・・・(てっきり殴られると思ってたが)」
那珂「だって、馬鹿で怠け者の提督でも、1周年記念に何かきっとあげてくれると思って、パーティーの準備もしたのに・・・」
(テーブルクロスは埃をかぶり、腐りきった料理、割れた窓、ところどころ破れたリボン)
那珂「ゲームだって1年ぶりにログインしてくれた。だからきっと来てくれると思ってた・・・だけど来なかった」
提督「・・・・・・」
那珂「ねぇ、提督・・・提督は那珂ちゃんが嫌いになっちゃんたの?・・・提督がログインしなくなったのって私を改二にした後だったし、いつも提督を爆破して肉片にして、そんなことばっかのわたしに飽きちゃったの?」
提督「違う・・・」
那珂「何が違うの?小説はほっぽり出して!アニメも見ない、漫画も買わない、ゲームも、提督にとって艦これは何なの?那珂ちゃんはもう過去の女なの?」
提督「違う!それだけはちがう。自分が艦これを始められたのは、島風や金剛じゃなくて、那珂ちゃん。君がいたからだ。確かに1番は夕張だけど、那珂ちゃんへの感謝はずっと変わらない」
那珂「・・・本当?」
提督「本当だ(キリッ」
那珂「・・・じゃあ、食べて(腐りきったケーキ)」
提督「じょ、冗談じゃ」
神通「アメリカだと天井裏から大昔のフルーツケーキが出てくるらしいですよ(提督を椅子に縛り付ける)」
提督「明らかに生クリームとイチゴだよ!」
川内「人の妹泣かせたんだし、責任は取ってもらうよ(口をこじ開ける)」
那珂「じゃあ、提督。召し上がれ」
提督「ぎゃああああああああああああああ」
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