「それじゃあみんな、忘れ物は無い?」
「おう、燃料よし!武装よし!機関出力安定!」
「お弁当と各鎮守府へのお土産もあります」
「妖精さんの乗船完了。こっちもOK」
「それじゃあ、準備完了。各員進水!」
出発当日、56駆逐隊は最終チェックを終えると、進水する。港には私と妖精さん達も見送りに集まっていた。
「それではじゅんびも整いましたゆえ、にんげんさん、出航のあいさつを」
PAM代表こと市長さんが私を促す。
「え、しかし、そちらの輸送船が見当たりませんよ?」
妖精さんは輸送船を準備して、私も仕事の間にその積み込みを手伝ったはずだが、港にはそれが見当たらなかった。しかし、その答えは重工社長さん「それはご心配に及びません」という言葉と共に姿を現した。ドックから1人の少女が現れたのだ。エディ達がしているような艤装を着けていた。
「初めまして、軍人さん。辰馬汽せ・・・舞鶴妖精郵船の辰福丸です。砲身とか、長いものなら任せてください」
「艦娘化しました!」
「「えぇ!?」」
まさかの艦娘化に私達は驚いた。確かに私達が積んだ砲身やら、分解された飛行機のパーツやらが船蔵に搭載されている。
「これいじょうにわれわれが安全に海をわたるしゅだんはないですゆえ、ひようは3社で出し合ってけんぞうしました」
それほどまでにこの遠征に期待しているということだろう。
「と、とに角。船団に同行する仲間には変わらないわ。わたしが船団のリーダー、ヘイウッド・L・エドワース。こっちが妹のリチャード・P・リアリーよ。気軽にエディ、リッチって呼んでね」
「よろしく、辰福丸」
「こちらこそよろしくお願いします」
辰福丸は挨拶を終えると早速海に入る。
「おっと、あわわわっ」
しかし、進水しようとしたところで波が来てバランスを崩し転倒しかけた。エディが抱いて支える。
「大丈夫?ちゃんと練習したの?」
「えぇ、昨日練習したんで、感覚は掴めたんですが、いかんせんこれほど大きい大砲は初めてなので・・・」
辰福丸は答える。しかし、その足取りはかなり危うい。エディは荷物以前に練度の問題を感じ取った。
「うーん。練習艦としては育て甲斐のある子だけど、いきなり航海は厳しいよね・・・妖精さん!ちょっと出て来て」
エディは自分の艤装に住む妖精さん達を呼び出した。
「マスターおよびですか?」
「うん。ねぇ、妖精さん。あの子に乗って、ちょっと助けてあげてくれない?」
「そうするとマスターの負担がおおきくなりますが・・・」
「わたしはマニュアルでも大丈夫。少しでもあの子の負担を減らしてあげて」
「りょーかい」
エディの教官妖精達が辰福丸に乗り移る。
「これで出力と操舵から意識を外しても大丈夫だよ。どう?少しは楽になった?」
「はい、大分安定してきました。ありがとうございます」
「エディ、僕もマニュアル操作はできるから、定期的に交代しよう。無理はしないでね」
エディは海上で待機していた他の面々に事情を説明した。辰福丸と駆逐隊が軽く挨拶を交わす。予定を確認しなおして、いよいよ出発だ。
「それじゃあ司令官、行ってきます」
「あぁ。くれぐれも気をつけて、全員無事に戻って来てくれ。エディ、リッチ。リーダーとして、みんなを頼むぞ」
「うん!任せて」
「了解しました」
エディとリッチは凛々しく敬礼した。互いによく分かり合っているこの2人なら、まず問題ないだろう。
「なぁ、司令官!約束、忘れないでくれよ」
「あぁ、深雪もBерныйも、最初のころに比べればかなり伸びた。訓練の成果を十二分に見せつけてこい」
「Спасибо。司令官の期待にこたえられるように頑張るよ」
Bерныйは帽子を直しながら答えた。感情の起伏の少ない彼女も、今日は気合が入った様子だ。あまり関わる機会が少なく、まだまだ未知の面が多い彼女だが、その確かな実力は深雪と合わせて、チームを支える底力として活躍してくれるだろう。
「司令官、うちがおらんくても、ちゃんとええ子でお留守番しときな。もし女連れこんどったら・・・」
「あぁ、心配ないよ。浦風・・・それよりも、今までありがとう。一人前になれるように、この期間で努力するから」
浦風には何から何まで世話になった。礼を言う時間も無かった1月半だが、ここまでやってこれたのは間違いなく彼女のおかげだ。
「・・・ふぅ、それはうちじゃのうて、教官にゆうたって」
浦風は照れくさそうに答えた。あぁ、分かっているさ。だけど、これからやることは、浦風にも伝えていない。自分なりのやり方で、成長する方法を試したかったからだ。
「もう!浦風ちゃん、時間ないから早く行くよ!」
私達を見て焼き餅を焼いたのか、エディは照れている浦風を引っ張っていってしまった。残ったのは私と春雨だけである。
「春雨、調子はどうだ?出発直前で急なこともあったが」
「大丈夫です、護衛任務は得意ですから」
春雨は遊園地についたばかりの子供のように元気に答えた。
「そうか、何かあったら、躊躇わずに仲間に相談してくれ。それと・・・」
私はポケットから薬ケースを取り出した。以前脱衣所で拾得したものだ。
「遅くなってすまない。もしかしてこれは春雨のものじゃないか?」
「はい、確かに前まで使ってました」
「倒れたのがこれのせいだったら、本当にすまなかった」
私はしゃがんで春雨に薬ケースを渡して謝る。しかし、春雨はケースを受け取るとそのまま「えい!」と海に投げ捨ててしまった。
「え?どうして・・・」
「いいえ、心配無用です司令官さん。あれはもう、必要ないので」
春雨は微笑みながらそういった。
「お心遣い、ありがとうございます。おかげで心置きなく遠征にいけます」
春雨は手を握って笑みを浮かべる。握った手の感触は少し冷たかった。もしかするとあの薬は緊張を抑える鎮静剤だったのかもしれない。それが必要なくなったということは、彼女も恐怖から吹っ切れたということだろう。
「それはよかった。もう時間だ、みんなを待たせてはいけない」
「えぇ、それじゃあ司令官。行って来ます」
春雨が船団に戻り全員がそろった56水雷戦隊は、汽笛を鳴らしてその出発を皆に伝える。
「それじゃあ、準備万端!第56駆逐隊、出撃します!」
黒い煙を吐きながら、地平線に消えていく彼女らを見送り、私も私のなすべきことのために動き出した。
那珂「夏・・・終わっちゃったね」
筆者「うん」
那珂「あんまり夏らしいことできなかったね」
筆者「うん」
那珂「水着とか浴衣とか、着てみたかったな(最近ログインしてない)」
筆者「うん。那珂ちゃんの浴衣姿今からでも見たいな」
那珂「丁度ここに花火の筒があるんだけど」
筆者「お、じゃあ今からやってみるか?」
那珂「じゃあ、提督を中につめて」
筆者「え?」
那珂「じゃあいくよ!どっかーん!」
筆者「やっぱりかああああああああああああああああああああああ」ドーン
那珂「たーまやー!」
筆者「というわけで毎度ながら遅くなりました」
神通「提督が妙に意地張って商船を大量に出して収拾つかなくなって1月うじうじしたあげく、泣く泣く1隻に減らして、エピソードも大幅カットして今に至ると・・・」
那珂「ほんと提督の短期プロット能力の低さには呆れるよ。いっそ隔年連載タグをつけたらどうなの?」
筆者「取材で神戸まで足を運んだんだぞ。みすみす得た資料を無駄にはできないよ」
神通「実に有意義な夏休みの使い方ですね・・・学生というのはいいご身分で」
筆者「まったく平和様々だよ。とはいえ、ありきたりな艦これ小説みたいな、日本海軍だけが戦争してるみたいな世界は独善的で気持ち悪い。戦争はみんなでする物だ。それなのに海でバカスカ撃つだけで占領も統治も経済もできない連中だけ描くのは、不平等ってもんだ。だろう?」
那珂「うーん。理解できなくはないけどとってもむかつく言い方・・・」
筆者「それに、妖精さんコロニーやら企業やら、妖精さん独自の経済を始めた以上、コロニー間の物流に何を使うかを考えなきゃいけない。そこで、商船娘が必要になってくる」
神通「確かに佐○急便のトラックで艦娘の兵装が輸送される絵図はあまりいいものではありませんね。その意味で商船娘はありなんでしょうか?」
那珂「話がややこしくなるだけだと思うけどなぁ・・・・」
神通「さて、次回は大湊戦ですね。対戦カードはもう決まってるんでしょうか?」
那珂「初戦だし、あそこは練度も規模もあまり大きくないから、軽巡1~2隻を中心とした水雷戦隊ってところが妥当だろうけど」
筆者「まぁ、そうなるね。重巡以上の主力艦はどこの鎮守府に配置されてるか大体決まってるけど。ただ、駆逐艦とかはひっきりなしに新実装されてるから結構流動的なのよね」
那珂「てことはもしかして、希望もある程度受け付けるってこと?」
筆者「話の展開上必ず出るってわけじゃないけどね」
神通「その前に次回は何時になるかわからないですが・・・」
那珂「まぁ、気長にまっててね」
筆者「それでは」
神通・那珂「「またね~」」
商船娘紹介
辰福丸
「2000tクラスの長尺レール運搬船を元に建造された私達K型標準船は、車両や揚陸舟艇を運ぶのに最適であったことから、陸軍とつながりの強い川南工業によって大量建造されました。特に私は、当時日本国が保有する最も射程の長い砲とされる九〇式二十四糎列車加農の砲身を満州へ輸送する大役を任されました。長物輸送船の冥利に尽きる、とっておきの自慢話です」
川南工業・・・製缶会社が技術者ごと造船所を買い取ってできた造船会社。造船技術は素人同然であったが、製缶業で築いた陸軍とのパイプと大量生産のノウハウから戦時標準船を大量建造して大きな利益を上げた。宗谷を建造したことでも有名。