舞鶴鎮守府 第56駆逐隊 旗艦 ヘイウッド・L・エドワーズ
他駆逐艦5隻
損害:小破 浦風
中破 深雪
大破 Bерный
大湊警備府守備隊 旗艦 酒匂
他軽巡1 駆逐艦4
損害:全艦大破
第56駆逐隊の勝利
試合はエディ達第56駆逐隊の勝利で終わった。エディ達は、水雷戦隊が特性上旗艦が先頭に立って指揮する単縦陣をとる『習性』を利用して、先制攻撃で旗艦の注意を引きつけ、側面攻撃に向かった分艦隊への警戒を怠らせた。酒匂は経験不足からエディの意図に嵌り、単艦で応戦して周辺警戒と指揮を疎かにしてしまった。そこに迂回した分艦隊が奇襲を掛け、酒匂は混乱したまま不適切な艦隊機動を行い、減速したところを雷撃を受けて大損害を負って、試合の趨勢は決した。
「どうして龍田さんは教えてあげなかったんです?」
試合が終わった後、帰投したエディは司令官に泣きつく酒匂を尻目に、龍田に尋ねた。
「あら、何のことかしら?」
「分艦隊のことです。龍田さんなら、気付けたはずでしょう?」
先頭が前方警戒をするなら、側方警戒は当然2番艦の役目になる。旗艦が戦闘にのめりこんでいるならなおさらそうすべきだ。3対1で相手を寄せ付けなかった龍田が、それをできないはずもない。
「酒匂ちゃんがそうしろって言えば、してたかもね・・・そうするのが、司令官の命令だし」
龍田はあくまで他人事のように答える。事実龍田は酒匂が助言を求めたときだけ動いた。西川はこの演習で酒匂の指揮能力を測っていたのだろう。もし龍田が指揮を執っていたら、恐らく結果は違っていた。
「エディちゃんは、練習艦として酒匂ちゃんの事どう思う?」
「うーん。視野が狭いっていうか、全然経験が足りてない感じかな。少なくとも今のままじゃ、実戦は難しい」
水雷戦隊を教導する旗艦は敵の砲火を集め、戦隊が適切に攻撃できる位置に誘導するために先頭を走るのである。しかし酒匂は、目の前の戦いにのめり込んで、指揮を怠った。偵察機まで飛ばしてこちらを観察しながら、余りにうかつである。十分な訓練と実戦経験を積んだ艦ならまずありえないことだ。そこから導き出される結論は明らかだった。
「やっぱり、末期建造艦じゃ無理かしら」
龍田が諦めたように呟く。しかし、エディはそうではなかった。
「でも、実戦経験の無い艦も、ちゃんと教育を受ければ問題なく戦えるようになります。今日あなたを倒した深雪ちゃんも、1月前は自分を落ちこぼれだと思い込んでました。だけど、今は特技を見つけて、リッチの指導もあってぐんぐん実力を伸ばしてます」
たとえ過去に華々しい戦果が無くても、艦娘としての適正が低くても、努力しだいでいくらでも可能性が開ける。エディは若い姉妹艦や深雪との関わりを通じてそう確信していた。
「あなた達なら、彼女を変えることができるかしら?」
「はい、わたしは、そのための練習艦だから」
エディは迷い無く言った。龍田はそれを見て安心する。
「うふふ、とっても心強いわ。よろしくね、エディちゃん」
「はい!龍田さん」
エディと龍田は握手を交わした。その後龍田はエディに、今思ったことを酒匂に指摘するように頼むと、今度はリッチの元へ向かう。リッチは、敗北感に打ちひしがれた様子でBерныйに謝っていた。
「すまない、僕のせいで」
「気にすることは無い。お互い当然のことをしたまでさ」
「でも、僕は結局何もできなかった。迷いで僚艦を傷つけるなんて、教官としても、きょうだいとしても、最低だ・・・」
「本当にそうかしら?」
「え?」
突然の龍田の乱入に、リッチは驚き、少し警戒する。
「私を止めた子・・・深雪ちゃんの技。あなたが教えたそうねぇ」
「そうだが・・・だけど、それは彼女自身の努力だ・・・僕は僕の姉さんすら守れなかった」
「あらぁ、そこまで思い上がってたなんて。駆逐艦風情が1人でできることなんて、たかが知れてるのに・・・でも、あなたが彼女の才能を開花させたから、今回エディちゃんを守れたし、そこの子があなたを庇ったから無事だった。結果としては、あなたもエディちゃんも守られた。それはあなたの実力じゃないかしら?」
リッチはそれが余りに身勝手に思えて怒りを感じた。しかし、Bерныйはそれを止めた。
「教官、私は、昔姉妹を守りたくても守れなかったことがあった。だから、教官があの時必死に姉を守ろうとしたのを見て、少し嫉妬した。それぐらい、かっこよかった。だから、教官を庇おうと思ったんだ」
「Bерный・・・」
Bерныйの告白にリッチは心を揺さぶられる。さらに遠くで深雪が睦月型と話しているのが聞こえた。
「それもこれも、教官のおかげさ。教官が教えてくれたこの技があれば、私は戦艦とだって戦えるぜ。ほんと教官は凄いぜ!」
「駆逐艦には返り討ちにあったけどね。はぁあ、あたし、先に帰って寝るね」
「ははは。けど、格闘技か。僕にもちょっと教えてくれる?」
「おう、いいぜ!」
「ほら?これでも違うのかしら?」
「・・・・・・」
リッチは答えることができない。龍田の言う事は一理ある。だが、他人を利用することを是とするのは、卑怯であり、甘えである。リッチはどうしてもそこは譲れなかった。
「それでも・・・それでも、僕は自分自身でエディを守りたいんです」
「うふ、うふふふ。なら、もっと頑張って足掻かないとねぇ」
龍田は妖しく嗤う。嘲笑とも取れる笑み。しかしそれが却って、リッチにやる気を出させる。
「あなたの事は好きになれそうにありません。でも、少し気は晴れました。ありがとうございます、龍田さん」
「うふふ、期待してるわ。あなたがどんな末路を迎えるか・・・同じ姉好きの妹としてね」
龍田は最後に小さく耳打ちすると、颯爽と立ち去った。
「不思議な人だったね・・・」
「あぁ、まったく不愉快だ」
そう言ったリッチの顔は、とても穏やかだった。
那珂「辰福丸はどこへ行った?言え!」
筆者「辰福丸なら俺の隣で寝てるよ」
那珂「どっかーん!」
※辰福丸は普通に宿を取りました。だって急にお客様が増えたなんていえる訳無いじゃん。
辰福丸日記
大湊の妖精さんは揚陸艦のドックに住んでいました。驚きです。ただ、純軍事基地で、補給も行き届いてる様子だったので、砲弾とかあんまり買ってくれなかったな・・・飛行機の部品は売れたみたいだけど、一体何に使うのかな?横須賀では繁盛するといいけど・・・