呉鎮守府提督、加賀さん嫁提督は要注意
後書きはネタバレも含むので無理に見なくていいです
エディ達は横須賀を発つと、一路西の呉へ向かう。前回までと違い、航海は数日を予定し、海上キャンプを経てようやく紀伊水道まで到着した。
「ふぅ。やっとここまで来れた」
「流石に海上排泄は・・・恥ずかしかったです」
「みんなもうすぐだから、あとちょっとだけ頑張って。着いたら、シャワーもベッドも好きなだけ使おう」
エディは皆を元気付ける。他は訓練をしているから何とかなっているが、民間船で初航海の辰福丸には荷が重すぎたようだ。名古屋あたりに寄港した方がよかったかもしれないと少し反省していると、レプシロのエンジン音が遠くから聞こえてきた。
「ん?あれって・・・」
「ジーク(零式艦戦)、サリー(97艦攻)、ヴァル(99艦爆)。ざっと40機。編成からして空母機動部隊だね」
「あれは、たぶん加賀の隊だな」
深雪が言った。近くで海上訓練でもしているのだろう。
「呉の航空隊なら挨拶しないと・・・おーい!」
エディは発行信号と手信号でコンタクトをとった。航空隊はこちらを認識すると、真っ直ぐ船団まで接近してきた。
「歓迎してるみたいですね」
「・・・いや、待て。この編隊と高度は・・・!?回避!」
リッチが言い終わる前に、97艦攻が爆弾を投下した。
「きゃああああああああ」
「どうなってる?どうして攻撃を・・・」
「上空の航空隊!こちら舞鶴56駆逐隊、こちらは味方だ!攻撃を止めろ!」
リッチは警告するが、敵部隊は攻撃を止めない。99艦爆もダイブを仕掛ける。
「3時方向、総員右旋回!」
「ひぃ、助けて!」
辛うじて回避するが、すぐ近くに爆弾が降り注ぎ、辰福丸がパニックを起こした。さらに戦闘機隊が突入して銃撃まで加えてくる。
「ひぃ!?」
「くそっ、教官!発砲許可をくれ!」
「だめ、深雪ちゃん!空母側にコンタクトを取れるかもしれない。深雪ちゃんとBерныйちゃんは辰福丸ちゃんを守って!近づいたときに威嚇発砲だけ許可!」
「了解!」
「わ、わかったよ!」
「周辺の空母、聞こえますか?こちら舞鶴第56駆逐隊です。現在所属不明艦載機の攻撃を受けています。すぐに航空隊に攻撃中止命令を出してください。攻撃が継続され、船団に被害が及ぶ事態が生じた場合、必要な自衛措置を講じます。繰り返します、攻撃中止及び帰還命令を出してください。実力で排除します!」
エディは必死に繰り返す。そうしている間にも戦闘機の銃撃が装甲板を掠めるが、まだ発砲許可は出さない。
「春雨、狙われてる!回避!回避!」
「え、きゃぁああ!?」
単独になった春雨に急降下爆撃機が殺到し、爆弾の1つが春雨に命中した。
「春雨ちゃん、大丈夫!?」
「はい、損害軽微。訓練弾のようです。問題ありません」
「4時方向より増援確認・・・姉さん、まずいよ」
リッチが言う。他の隊員も我慢の限界のようだ。エディも腹を括る。
「全艦へ、実被害発生により、所属不明艦載機を敵と認識、必要な自衛措置として射撃を許可します!責任はわたしが持つから、好きに撃って!」
「まってました!」
「やるさ!」
「了解です!」
56駆逐隊は増援部隊に照準を定めた。しかし、航空隊は射程ギリギリで引き返した。
《こちら、標的艦大浜。遅くなってすまない、航空隊はこちらが誘導する。以上》
大浜と言った艦娘は無線で一方的にこう伝え、通信を切った。
「どうしてこんなひどいことを・・・呉は一体・・・」
「畜生!ちくしょう!・・・あいつら」
エディは突然の襲撃に困惑する。一方で深雪は怒りと悔しさを露にする。
「兎に角、呉鎮守府へ急ごう。説明と落とし前はそこでつければいい」
エディは船団を纏めると、不安を抱きつつも瀬戸内海へ入っていった。
「ふぅ、あぶなかった。陽炎の言うとおりか、こりゃ荒れそうじゃ・・・」
ただ1人、最後尾で無線機を持った浦風は、面倒なことになった、と顔を歪めた。
明石海峡大橋を渡って瀬戸内に入ると、行き交う船が一気に多くなる。大陸航路に近く深海棲艦の心配もないこの内海では、未だに海上輸送が盛んであり、漁船なども頻繁に見られた。艦娘にも好意的で、漁師達は手を振ったり、物資を差し入れたりしてくれる。しかし、エディ達には賑わう海を楽しむ余裕は無く、ただ視線を避けるように警戒しながら航行し、ようやく呉にたどり着いた。
最大規模の鎮守府だけあって、呉鎮守府は施設の一つ一つが非常に大きく、重厚で、威厳のある建物群が聳え立っていた。
「・・・随分と寂しいところですね」
春雨が呟いた。その設備全てが、まるで誰もいないかのように静まり返っている。ただ重々しく高い建築群が威圧感を発して、エディ達を拒むように見下ろしていた。
「浦風ちゃん。確か呉所属だったよね」
「うん、案内するわ。昨日閉店したわけじゃないはずじゃけぇ。たぶん中には誰かおると思う」
浦風の案内を受けて、港に入る。
「ねぇ、あれって?」
エディはドックに入っていく人影を見つけた。サイドテールに弓を装備した艦娘。恐らく空母が、盾のような甲板を装備した特殊な艦娘を1人引き連れている。
「加賀だ!アイツの航空隊が爆撃を!」
深雪が言った。エディはあとを追ってドック入った。加賀は士官と思しき男性に何か報告していた。
「あの、すいません!」
「あら、何かしら?」
加賀は素っ気無く答えた。エディは、すぐには加賀を糾弾せず、まずは士官とコンタクトをとる作戦に出る。
「わたし達は舞鶴鎮守府第56駆逐隊です。演習と通商の為に呉鎮守府に来ました」
「ほう、貴様らがか?話は聞いている。貴様がヘイウッド・L・エドワーズだな」
「はい、燃料の補給と休息のため、入港を希望します。ここでの立ち話もなんですし」
エディは上陸しようとドックの階段の手すりを掴んだ。直後、パシッという音と共に鋭い痛みがエディの頭に生じた。
「毛唐ぅ!」
若い士官の手にはいつの間にか海軍精神注入棒と書かれた木刀が握られていた。階段を上ろうとしたエディを、上から叩きのめしたのである。打たれた所が熱くなり、冷たい血がエディの顔を伝った。
「何をする!」
リッチが反射的に武装を展開した。加賀についていた艦娘・・・恐らく無線で交信した大浜であろう・・・が慌てて盾の様な甲板に隠れる。一方士官は先ほどまでとは一変して敵愾心むき出しの態度でエディ達を罵倒する。
「上陸していいなどと誰が言った!毛唐風情が、易々と御陛下の地に入るな!」
士官は怒りの形相で叫ぶ。エディはリッチに撃たないようにと視線で牽制し、翻って士官に問う。
「わたし達は、事前に手続きをして、期日通りにこうして演習のために来たのに、どうして殴られなければならないんですか?」
エディは少々の迫害はもとより覚悟の上であったので、怒りを抑えて毅然として話した。しかし、士官は悪意と憎悪を露わにして返す。
「確かに演習をすると約束した。だが、毛唐を上陸させることも、物資を譲渡することも最初から約束していない!この佐竹、岸田司令の留守を預かる身として、毛唐のいる部隊を上陸させるわけにはいかん!」
「そういうことよ、さぁ、早く出て行きなさい。育ちの悪いアメリカ人はこの鎮守府にはふさわしくないわ」
加賀が冷たくあしらう。
あまりに露骨な態度に、リッチは引き金に手をかけた。士官と加賀の頭上のクレーンに狙いを定める。しかし、リッチの恫喝に気付く前に、深雪が怒りを爆発させた。
「さっきから言わせておけば、好き勝手教官を馬鹿にして!育ちが悪いのは、先に手を出したお前達だ!加賀、お前が私達を待ち伏せして爆撃したのはわかってんだぞ!」
「あら、誰かと思えば、駆逐隊をはじき出されて基地で留守番していた腑抜けじゃない?根も葉もない言い掛かりはよしてくれるかしら?うちの子達は指定された座標にたまたまあった標的に訓練弾を投下しただけよ」
「でも、加賀さんあの時急に爆撃座標を変えまし・・・むぐぅ」
加賀がうっかりこぼした大浜の口を塞いだ。
「とにかく、訓練海域にのこのこ入って来たあなた達が悪いの。私の感知するところではないわ」
加賀は全く取り合おうとしない。深雪は我慢できずに飛びかかろうとするが、Bерныйとリッチが止める。
「響離してくれ!こいつらを締め上げなきゃ気がすまねぇ!」
「だめだ、教官はそんなこと望まない」
B分隊の2人でもってしても深雪は押さえられず、浦風と春雨が加わってやっと押さえつけた。その間にも加賀は深雪のみならず他の隊員を罵った。
「ふふ、いい気味ね。爆撃に当たるようウスノロに6駆のアカかぶれ、17駆の家出娘まで。11駆の落ちこぼれのあなたにはお似合いね」
加賀の罵詈雑言は止まらず、佐竹もそれに便乗してエディ達を非難する。
「そうだそうだ!第一貴様ら艤装に描かれたその落書きは何だ!御陛下より賜りし神聖なる艦体に、あろうことか旭日旗と星条旗を描き、あまつさえ旭日を下にしている!これは国家と天皇陛下への不敬に・・・ふごっ!?」
次の瞬間、右側頭への強い衝撃とともに佐竹の体は宙を舞っていた。一瞬遅れて、ガシャンという音と共にエディの艤装が地に落ち、佐竹の建っていた場所・・・加賀の目の前に、エディが着地した。艤装の出力を使って瞬間的に脚力を上げてすぐにパージ、軽くなった状態でジャンプして、1メートルの岸壁を跳び越して蹴りを食らわせたのだ。
「な!?」
「・・・取り消して」
時間が止まったかのような静寂の中、エディが加賀に言う。大浜はひぃ、と悲鳴を上げて盾の裏に隠れた。
「さっきの言葉、今すぐ取り消してください」
エディは今までの雰囲気とは全くかけ離れた、決然とした怒りの表情で言った。その気迫に加賀は後ずさりする。
「わたしの事は好きに言っても構いません。それを覚悟で、わたしはここに来たから・・・だけど、わたしの家族を、祖国を、生徒を悪く言うことは、絶対に許さない!」
苦楽を共にした仲間、生まれ持った二つの祖国への思いが詰まったエンブレム。エディにとってかけがえの無い大切なもの。それを自分のために馬鹿にされる事をエディは許さないのだ。
「だから、謝ってください!みんなの名誉を傷つけたことを、みんなの団結の印を侮辱した事を。話し合いがダメなら、戦ったって構いません!わたし達は、絶対に勝ち抜く。1度でダメなら、何度も挑む!」
「なんなの・・・なんなのよ・・・」
エディは力強く話しながら加賀に詰め寄る。一方加賀は自らの半分程の身長しかない相手の気迫に押しやられ、後ろへ下がった。
「しまった!?」
「加賀さんを、呉を倒して、わたし達を認めさせます!そしたら・・・」
壁際に追い詰められた加賀は地面にへたり込む。エディはさらに歩み寄り、ついに、加賀がエディを見上げる側になった。
「わたしの・・・友軍になって、人類のために一緒に戦ってください!」
エディは満面の笑みをたたえて、加賀に手を差し伸べた。突然のオファーに加賀も、第56駆逐隊も、周りにいた全ての艦娘はポカンとした。
「え?え?・・・わたし何かおかしい事言った?」
「はっはっははは!流石、教官じゃ」
「そこは普通、土下座させる、とかだろう!」
「そこまでしつこくしておいて、それはおかしすぎるよ」
浦風も深雪もBерныйも、怒りを忘れて笑いこけた。エディは困惑した様子で慌てふためく。
「え?何でみんな笑ってるの?だって、仲悪いままじゃ、一緒に戦えないよ!『一緒に戦いたい』から、わたしは日本に来たんだから。もう!」
エディは大真面目に言って頬を膨らませた。
「わけがわからない、何がどうなってるの・・・あなた達は、一体?」
加賀は全く違う生物を見ている気分になって言う。それに対して浦風が答えた。
「さぁ?教官の言うことはようわからん。でも、うちはそれで楽しいから、未来が見えるから、ここにおるんじゃ」
「理解できない。艦娘が未来なんて・・・なんだか、疲れてきたわ、今日はもう帰りた・・・」
「ふざけるな!」
加賀が思考をパンクさせて気絶しそうになっていると、突然狂ったような喚き声がドックに響き渡った。さっきまで伸びていた佐竹だ。
「くそっ、この俺が、鬼畜米ごときに!ありえない!」
うわごとを呟く佐竹。エディはそれを哀れみの視線で見る。
「・・・深雪ちゃんがやったら、無事じゃすまなかったとおもうよ。提督さんも、すぐにみんなに謝って・・・」
「黙れ黙れ黙れ!偽善者!先祖殺し!大量虐殺者!日米に友好などあるものか!警告を無視した挙句、提督であるこの俺に!今すぐそこに直れ、帝国海軍で上官に逆らうとどうなるか、貴様に叩き込んでやる!」
「いけない!姉さん!避けて」
リッチが叫ぶ。佐竹は海軍精神注入棒を掴み、エディに襲い掛かる。反応が遅れ、さらに振り返ろうとしたところで加賀の足に躓いて尻餅をついた。
「痛ッ!?ちょっと、やめて!」
佐竹は左手でエディの髪を引っつかんで強引に持ち上げる。
「ははは!どうした!威勢がいいのは口だけか!毛唐は永遠に敵だ!国境を跨ぐ貴様は売国奴だ!」
「違う!今はバラバラになって戦うときじゃない。世界が1つになって戦わなきゃ、人類が生き残れない!バークが成し遂げた様に、わたしも!」
エディが危機的状況にあってもその意志は揺るがない。彼女の信念が記憶を揺さぶり、彼女の人格を決定付けた男の名を口にさせた。かつて誰よりも勇敢に日本(てき)と戦い、その後に銃口を向けあった者達と和解し、日本(とも)の為に尽力した英雄の名を。
「世迷い言を!貴様のその口、二度と利けんようにしてくれる!」
しかし佐竹は無慈悲に腕を上げ、不条理の暴力を下さんとする。海上自衛隊の歴史を忌まわしい従属の歴史と切り捨て、旧海軍で時間が止まった呉鎮守府の提督教育は、その功績を忘れ去らせたのだ。
悪意と憎しみに満ちた凶器が、今まさにエディに振り降ろされんとする時、佐竹の右手を誰かが掴んだ。
「・・・やれやれ、まだ海軍さんではこんなものを使わないと兵士を統制できないのでありますか。全く驚きでありますね、大佐殿」
「あぁ、どう見ても悪党だ。俺達以上のな・・・」
那珂「提督、最近投稿ペース良いね」
筆者「ここら辺はやりたいことがはっきりしてたし、時間の使い方を見直したからな。戦闘があると早く仕上がるし」
那珂「でも、後書きが無いのはどうしてかな?」
筆者「それは・・・その・・・投稿時間が遅いから眠いし、疲れるし、第一、最近あとがきで喋りすぎてるから、コメントがこないと思えてきて・・・」
那珂「問答無用!どっかーん!」
筆者「爆破オチなんてサイテー!」
那珂「ということで、今回はとんでもない胸糞回だったね。呉がここまで酷かったとは」
神通「佐竹中佐が特に先鋭的な反米主義の提督で、今回は当たりが悪かったとも言えます。とはいえ、呉の体質からして、他の提督が居てもまともな待遇は期待できませんね」
川内「だからって、よその艦娘を理由も無く殴って、流血させたら軍法会議ものだよ。こんなことがまかり通ってていいの?」
神通「あれでも佐竹中佐は昼間砲撃戦のエキスパートとして知られた呉の若手エースで、階級は低いですが後輩提督や艦娘に人気があり、呉では教務監督として大井さんと辣腕を振るって取り巻きも多いのです。もし彼を裁判にかけようものなら若年提督たちが黙っていないのです」
那珂「リッチちゃんの秘密を握っている以上、こっちからも手が出せないし。厄介なのに感付かれちゃったね」
神通「彼自身、国を愛し、艦娘を愛する模範的な提督ではあるんですが、憎悪に染まって本当の敵を見失っている人間の1人なんです」
那珂(どっかで聞いた事のある話だな・・・)
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ハミルトン「へっくしょん!」
堤「どうした、坊主?」
ハミルトン「いえ、ただの風邪です。ヘリの収容が終わりました。現在待機中です」
堤「了解。気をつけてくれ、航海中の艦内感染は致命的だ。せめてマスクはしておけ」
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川内「ところでさ、エディちゃんの信念って、結局何なのか良くわからないよね。私達って基本、過去の無念を克服して、国家に勝利をもたらしたいってのが普通なのに、エディちゃんはそういった兵器らしさが全く無い、かといって平和主義者にしては好戦的過ぎるし」
那珂「それについては、読者のみんなも誤解している人が多そうだし、ここで一つ整理しておいていいかもね。神通ちゃん、そこのところ、提督から何か聞いてないの?」
神通「はい、彼女の最終的な目標は『日米、延いては人類一丸の、対深海棲艦戦線構築』だそうです」
川内「こりゃまたスケールの大きい・・・」
神通「提督曰く『彼女はその艦歴から、戦ったことのある相手となら正しくその力を理解しあって協働できるという確信を持っている』そうです」
那珂「パットン将軍の『海兵隊員を最も良く理解しているのは彼ら自信とその敵である』の理屈だね」
神通「同時に、彼女は深海棲艦との戦争を1国の問題に留まらず人類全体の存亡に関わる事態と見ています。NATOによって、アメリカ海軍、英連邦海軍、EU海軍を傘下に連合国として一定のまとまりを見せる中、2番目の艦娘保有国である日本が連合軍に参加していません。そこで、かつて日本海軍と最前線で戦ってその強さを知り、かつ日本に居たことのある自分が日本に行けば、彼らと解り合って、人類戦線を構築できるのではと考えたわけです」
那珂「敵だった相手だからこそ解り合える・・・エディちゃんが仲良くなる手段に『戦い』を含めるのはそういうわけなんだね」
神通「えぇ、艦娘の姿として生まれ変わった意味を、かつて命を削りあった戦友と互いの勇戦を称え合い、心の中で戦争が続いている子がいたら、戦いを終わらせる手助けをして、新しく友として迎える。そしてもう終わった戦争から開放された彼女達と共に『過去の無念を晴らすための投影』でなく、今を生きる人々の脅威を取り除く『未来のための闘争』として、深海棲艦戦争を戦う事を目指しているんです」
那珂「多くの提督が持つゲームとしての艦これのイメージへのアンチテーゼだね。私達艦娘って、歴史って言う『固定された設定』によって人格を定義付けられて、嗜好や性格も全部それに左右されてる。当然後悔や無念も一緒に持ち込んでいて、ゲームのストーリーも史実を模したものになってるから、提督たちも、歴史を克服したい、IFを作って幸せにしたいって少なからず思ってる。でもそれって、過去の戦争で実際に戦った、血の通った、同じように悩み、怒り、喜び、そして努力した敵国の将兵達を何の個性もない化け物である深海棲艦に投影して、それで勝った勝ったと喜んで、戦争の本質である個々人の集団たる人間同士の対峙から目を逸らしている。そう捉えることもできると思う。
エディちゃんという登場人物は、その中で唯一戦争を過去の出来事の一つとして受け入れて、その上でかつての敵と直接会うことで、決められた歴史書の中から、無限の可能性のある未来へ向かわせるキャラクターなんだね」
川内「でもさ、その人格も、過去の艦歴・・・バークさんって人から得たものってことは、エディちゃんもまた、過去にとらわれた艦娘ってことじゃないのかな」
神通「確かにその通りです。そもそも彼女の理想は戦争後の平和ではなく、それに必要な戦いに置かれています。彼女は『結果』ではなく、『過程』のために動いているのです。こういった意味からも、彼女は本質的にどこまでも兵器なのです。むしろ冷血な兵器のように見えて、国家への忠誠や過去の記憶への執念が一切なく、ただエディさんへの愛という後天的な特質を抱き続けるリチャードさんのほうが、はるかに兵器という前提から逸脱しているのです」
那珂「へぇ、そうなんだ~♪」
川内・神通(まぁ、公式一番のイレギュラーはダントツで那珂ちゃんですが)
川内「つまり、エディちゃんはただみんなで馴れ合いたいような博愛主義者じゃなくて、むしろ相手を知るには殴りあったほうが早い、『戦いこそが人間の可能性なのかもしれない』がモットーの主任系女子ってこと?」
神通「それで間違いないと思います。ですから、戦争経験のある艦娘には強いシンパシーを抱く一方で、現実の敵味方ははっきりしているので深海棲艦は駆除対象としてばっさり殺します」
那珂「本文の対深海棲艦戦が妙にえげつないのはそんなわけだね。全方向に対して博愛主義全開の雷電姉妹とは、意外と相性が悪そう」
神通「彼女達は一種の騎士道精神ですからね。Pixy式エース区分にするなら雷さんがナイトエース、エディさんはソルジャーエース、リチャードさんがマーセナリーエース。似ているようで本質はバラバラなんです」
那珂「さて、筆者が4時間書き続けている後書きも、そろそろ終わりにしないとね」
川内「本文の半分ある後書きなんて、どっちが本編かもうわかんないね」
神通「次回は提督のスケジュールの関係で少し遅くなるかもしれませんが、いつものように気長に待っていただけると幸いです」
那珂「佐竹の暴力でぼろぼろにされたエディちゃん、そこに現れた謎の影。陰謀渦巻く呉鎮守府で、何が起きる?次回、お楽しみに!」
一同「「「ばいばーい!」」」
艦娘説明
大浜
「標的艦、大浜です。標的艦とは、航空機を用いた爆撃訓練で的役になる船のことです。低速であった前型の波勝よりもよりもより実戦的な訓練が出来るよう、秋月型と同系のタービンを用いて、30ノット台の高速を実現、戦況悪化に伴い一定の武装搭載も可能でした。ですが就航が戦争末期でしたので、実際には訓練する飛行機すらなかったですが」