駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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第50話 呉鎮守府 夜戦 後編

3時間前

 

「作戦は単純だ、僕等に着いて来て、指示通りに魚雷を撃てばいい」

 リッチが説明する。あきつ丸が用意してくれた地図によれば、呉が指定した海域は瀬戸内海の島が点在する海域で、時間は夜。日本の水雷戦隊が最も得意とする環境だった。

「敵は精鋭呉鎮守府じゃ。連中はウチ達とは比べ物にならんほど夜目が利く。うかうか近づいたら、返り討ちにあう」

 浦風が言う。相手はおそらく夜戦に精通した軽巡に率いられた本格的水雷戦隊だ。まともにやり合えばまず勝ち目は無いだろう。だが、エディ達はあくまで強気だった。

「自信のある相手ほど付け入る隙がある。それに、夜目が利かないなら、見える目を付ければいい」

 リッチがコンテナからヘルメットと暗視スコープを取り出して浦風に投げつけた。

「今日の授業は電探を使った夜間戦闘の擬似体験だ。あと二時間で補給と春雨の応急修理を終わらせて出発だ。それまでに暇を見つけて休息と食事を取れ。解散!」

 

 

 2時間30分後

 

「それじゃあリッチ、気をつけてね」

「姉さんも、武運を」

 訓練海域に到着すると、教官は部隊を二つの分隊に分けました。いつも通りの、ヘイウッド教官のA分隊、リチャード教官のB分隊です。私はA分隊の最後尾について、サイズの合わないヘルメットの紐をいじりながら浦風さんの背中を追います。二つの分隊は距離をとって平行に航行しながら、敵を探します。数十マイル進んだところで、教官は何かを発見しました。

「敵発見。サーマルを着けて」

 暗闇でもはっきりと見えます。教官はこんな風景を見ていたのかと感心していると、艦娘のシルエットを見つけました。大きいのが2つと小さいのが2つです。恐らく軽巡と駆逐艦でしょう。

「間違いない、北上と大井じゃ。駆逐艦は霞と不知火。あかん、教務部隊じゃ・・・」

 浦風さんが急にあわて始めました。教官は知らない様子でしたが、私はその名前には聞き覚えがありました。

「北上と大井って、あの重雷装艦ですか?」

「重雷装艦って何?」

「アホみたいに魚雷を積んだ強い軽巡じゃ。教官、悪いことは言わんから、撤退しよ。あれはマズイ」

 浦風さんが何時に無く弱気です。一方教官は臆するどころか、むしろ楽しそうです。

「それはよかった。呼び出すだけ呼び出して来なかったらどうしようかと思ってたけど、そんなに凄強い、しかも同じ教務部隊と戦わせてくれるなんて」

「なにアホなこと言ってんねん!戦艦も簡単に屠れる片舷20門の酸素魚雷じゃいくら教官でも・・・」

「しっ、敵に居場所がばれちゃう・・・大丈夫、駆逐艦3隻分と思えば怖くない。今リッチの分隊が仕掛けてるから、相手が食いついたらこっちも動くよ。相手が電探を装備していることも考えて、慎重に」

 教官は島影や岩を利用して慎重に敵の背後に回ります。幸い相手はこちらに気付いていません。

「春雨ちゃん。艤装の調子はどう?」

「はい、艦尾に被弾しましたが、訓練弾でしたので、大丈夫です」

 こんな時でも、教官は味方への気配りを忘れません。しかし昼間の攻撃は、トラウマを抉らレて、思い出すだけでも腹ガ立ちます。敵に目を向けると、急に隊列を乱しているのが見えました。どうやらB分隊の雷撃が到達したみたいです。応射するかと思いましたが、落ち着いているのか、すぐに隊列を戻して、B分隊の方へ舵を切りました。

「よし、3カウントで2時方向へ雷撃して。3,2,1ファイヤ」

 私は指示された方角へ魚雷を打ち込みます。赤の他人ですが、昼間の恨ミです。たっぷりと味わせてヤります。

「反転して岩陰に退避、反撃が来るよ!」

 反撃に備えてすぐに位置を変えます。背後で爆発音がしました。

「駆逐艦に命中。グットキル」

 エディさんは振り返らずに言いました。本物の電探では背中にまで目を付けられるみたいです。

「さぁ、追撃をやり過ごしたら、次にいくよ。再装填急いで」

「了解!」

「りょ、了解!」

 浦風さんは焦りながら、私は嬉々とシテ次の魚雷を詰め込みます。夕立姉さんみたいな華やかさはありませんが、今宵は素敵なパーティーになるっぽいです。

「~♪」

「春雨ちゃん。静かに」

「あ、はい・・・すいません」

 

 

「9時方向。3カウント」

 

「2時方向。4カウント」

 

「4時方向・・・」

 

 こうしてエディ達は片方が攻撃しては後退して隠れ、引き付けられた敵をもう片方が背後から襲い、隠れるという動作を繰り返した。目視頼みで碌な電探も装備してなかったらしい敵は、どちらかを攻撃すれば必ず背後から雷撃を受ける形となり、何処に追撃すればいいかわからず脱落者を増やすばかりであった。

「流石はバーク戦術だけある・・・相手も相手だが」

 電探を活用した複数の駆逐艦分隊による襲撃。ポエニ戦役のカルタゴ海軍に着想を得てアーレイ・バークが発案したこの戦術で、当時無敵と呼ばれた日本海軍の水雷戦隊を破り、後の彼の日本での活躍と併せて、日本の海軍史に大きな足跡を残した事跡である。ところが佐竹は教務総監を勤めながらバークの名すら知らず、この致命的な戦術に何の対策も施していない。然るに、この鎮守府のドクトリンは1941年の開戦時で止まって化石化している、そうリッチは評価した。

「力と伝統も、学習しなければこの程度か」

 リッチが1人になって何か喚いている敵旗艦を見つつ冷笑していると、Bерныйが肩を叩いた。

「教官、魚雷は今撃ったので最後だ」

「まだ大井は健在だぜ。どうするんだ?」

 どうやら敵を全滅させるには至らなかったらしい。やはりか、とリッチはため息をつき、次の指示を出す。

「プランBだ。仕上げにかかる。発砲はするな。無傷で仕留める」

 リッチ達は慎重に大井に近づき、じりじりと網を狭めていった。A分隊も加わって敵に近づいていく。

「チェックメイト・・・」

 リッチが大井の耳元で言った。大井が振り向き眼前の砲に気付き、周りを見渡す。リッチの反対側。大井の正面に位置したエディが出てきて「降参してくれますか?」と問う。ただ倒すのではなく降参させることで始めて、呉に打撃を与え、こちらの実力と意図をアピールすることにつながる。

抵抗することも考えられたが、大井は観念したようで「ジュネーブ条約に則った待遇をお願いするわ」と言って武器を降ろした。

 




 その頃の呉の演習観測所

佐竹「・・・」イライラ
瓜生「・・・」(気絶)

北上・不知火・霞「・・・(大井さん(っち)早く帰ってきて!)」ヤベェヨヤベェヨ

瓜生君は犠牲になったのだ・・・演出の犠牲にな!
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