駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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リアルがガチで殺しにかかってきて死にそう・・・・


第56話 絶対強者

 数分前

 

 VRアリーナ 制御室

 

 

《LC長良大破!舞鶴チームの勝利デース!》

 相手チームの旗艦が大破し、金剛が勝利を宣言すると、私は椅子にもたれて息を吐く。

「ふぅ・・・終わった」

「お疲れさん。あれだけ細かい指揮は呉でもしないぞ。まるでドッグファイトを見てるような執拗な裏取りだったな」

 一宮瑛輝がコーヒーを差し入れてくれた。回頭や攻撃のタイミングまで直接指示していたので、戦闘後一気に緊張が解けて頭がぼんやりする。何とかカップを手にして流し込み、意識を呼び起こす。

「零してんぞ」

「あぁ、すまない。ついつい気を詰めすぎてしまった」

 叔父にもよく指摘されたことだが、どうにも私には極端に没頭しすぎてしまう癖があるらしい。瑛輝も呆れたようにこちらを見る。

「おいおい、几帳面なのは結構だが、生真面目すぎるのも考えもんだぞ。シュミレーターなら兎も角、実戦じゃ・・・」

 瑛輝の携帯が鳴る。相手の名を見て、瑛輝は舌打ちしつつ電話に出た。

「なんだよ・・・え?あいつを・・・あぁ、今は第4アリーナで訓練中だが・・・チッ、わかったよ・・・」

 通話を切って舌打ちすると、すぐにスタッフに指示を出した。

「クソ、ババァから連絡だ」

「なんです?」

「番組としてはアリだが、佐世保が負けるのが気に入らん。尺は余ってるから猟犬を放り込めだとよ。ほら、もう一仕事だ。目覚ましとけ」

 瑛輝は私の肩を強く叩くと、再び指揮に戻った。

 

 

「夕立?アリーナのトップがなぜここに?」

 Верныйは金髪の少女を見て驚愕する。一方エディは「誰あの子?」とつぶやいた。その質問には春雨が答える。

「私の・・・姉です」

「あ、匂いがしてたけど、春雨もいるっぽい?」

 夕立はひどく怯える春雨を見つけて、ひらひらと手を振る。その様子は一見無邪気な子犬のようで、深雪を一瞬で倒した相手とは思えなかった。

「強いの?」

「あぁ、第三次ソロモンでは単艦で敵に突っ込んだ猛者だ」

 Верныйが説明する。エディはその話に聞き覚えがあった。

「第三次ソロモン・・・大姉ちゃんがそんなこと言ってた気がする」

 エディの姉、第三次ソロモン海戦の参加者であるフレッチャーは夕立の突撃を目撃しており、そのことを妹達に話していたのだ。

「でもどうしてそんな奴がここに?」

「わかりません。アリーナは全ての泊地に設置されてますから、何かの間違いでこのサーバーに紛れ込んだのでは・・・」

 エディ達はあれこれ詮索するが、意図がつかめない。夕立はしばらく春雨に手を振ったりエディを観察していたが、突然話しかけてきた。

「ねぇ、貴女達がアメリカ人っぽい?」

 間の抜けた語尾で夕立が問いかける。リッチは「君のほうがよっぽどアメリカ人っぽいだろ」と皮肉った。エディは毅然とした態度で聞く。

「そうだけど、どうして夕立ちゃんはここにいるの?」

「ん?提督さんの命令だよ!貴女を倒せって!だから・・・一緒に素敵なパーティーはじめましょう!」

 直後、夕立が何かを投げつけた。飛んできたそれはエディの目の前で炸裂した。

「照明弾だ!」

 強い光にエディ達は目を背ける。次に目を開けた時には夕立の姿はなかった。

「姑息な真似を」

「上等よ、挨拶もできないわんちゃんは、わたしからしつけてあげるわ!」

「に、逃げましょうよ~」

 完全に怖気づいている春雨をよそに、エディ達は戦闘態勢に入った。

 

 

 夕立は閃光弾でアメリカ人達の目を眩ますと、闇に紛れて反応を伺う。最初の一撃で三人は倒せる自信はあったが、春雨に気を取られて姿を見られてしまった。アメリカ人はすぐ倒すなと命令されているので、取りあえず唯一顔の分からなかった特一型を沈めたのだ。

「見えてないっぽい?」

 アメリカ人は電探を装備していると聞いている。鼻が効く夕立にとって電探の何が怖いのか未だに理解できないが、自分より長生きしていた時雨にしつこく話を聞かされ、何より吉川艦長もそれが原因で戦死したと知ったので、少しばかり用心していたが、接近してもこちらに気付く様子はなかった。

(いける)

 確信した夕立はすぐに行動を取る。相手はこちらの居場所がわからず取りあえず輪形陣で警戒していた。

「まず何から撃とうかしら?」

 自分のことをよく知っている春雨、高い危機察知能力を持つ響は気づかれる可能性がある。狙うのは浦風だ。機関を暖めつつ、騒音を抑えて近づく。隠れられるギリギリの距離から一気に速度を上げてパーティー開始だ。

「ソロモンの悪夢、見せてあげる」

「!?」

 浦風が報告する前にこちらの魚雷が浦風を鉄くずにする。混乱した相手が反応する前に、夕立は輪形陣の中に滑りこむ。

「こいつ!いつの間に!?」

「よりどりみどりっぽい?」

 まずは旗艦らしい茶髪のアメリカ人に一発食らわせ、すぐに反転して響を牽制する。

「!!」

 背後からの強い殺気を感じ取った夕立は飛び退いてそれを回避する。金混じりの黒髪のアメリカ人が砲をこっちに向けていた。かなり素早い。まだ地面につかないうちに体を捻って強引に旋回すると主砲をアメリカ人の顔面に打ち込む。

「あぁあああ!」

「きゃっ、教官!?やめてください!」

 アメリカ人は直撃を食らって主砲を乱射する。案の定同士討ちが起き、春雨が被弾する。

「教官!落ち着いて!やめるんだ!」

「響は自分の心配をした方がいいっぽい?」

 アメリカ人を助けようとした響に蹴りを食らわせ、遅れて再装填した主砲を打ち込む。

「Верныйちゃん!もう!司令官!どうして通じないの!」

 旗艦のアメリカ人が突貫してきた。黒髪の方も落ち着きを取り戻して同時攻撃を仕掛ける。その時、魚雷の再装填が終わった音がした。夕立は2人の攻撃を回避しつつ引きつけ、2人を魚雷の散布界に引き込む。

「これでどう?」

 魚雷が発射され、2人に直撃する。旗艦のほうが落ちた。もう片方は身を強引に捩って紙一重で全壊を免れて突貫したが、勢いが死んだ突撃が夕立に効くはずがなく、鶏のエンブレムを夕立の印象に残しつつポリゴン結晶化して消えた。

「あぁぁああ・・・」

「もう春雨だけっぽい?」

 夕立は最後に残った春雨を見る。春雨は先程の被弾で燃料漏れの判定が出たのか、APが減り続けている。どちらにしろもう長くはないだろう。上がほしいのは自分がアメリカ人を倒す映像だ。目的は果たしている。久々に会う自分の妹に話しかけることにした。

「行き先も言わず急にいなくなるから、みんな心配したっぽい」

「・・・」

「白露も時雨も心配してたよ。村雨姉さんにこっそり手紙を送ってたみたいだけど、最近は来なくなったせいで、音信不通だったし」

「・・・」

 春雨は震えて俯いたままだ。

「春雨がおかしかったこと、気付いてたよ。あの時のことを恨んでるんなら、私、謝るよ。もう一人にしないから。だから・・・」

「近づかなイで!」

 春雨に触れようとした夕立の手を、春雨が払いのけた。恐ろしいほど冷たい感触に、夕立は本能的に主砲を向ける。

「・・・こわいノ、イヤ・・・沈みタく・・・なイ」

 春雨の声にノイズが走る。いや、声だけでない、姿そのものが霞んでいく。ゲームオーバーによるポリゴン化でもない。春雨の体が灰色の何かに書き換えられていく。いや、さっきからここにいるのは春雨ですら・・・

 

《全ターゲット撃破。演習を終了します》

 

「あれ?」

 急に意識が戻される。まだヴァーチャルの世界。命令されるまで姉たちと演習をしていたアリーナの空間だ。白露と時雨、村雨が自分を見ている。

「おぉ!夕立戻ってきた!」

「お疲れ様。急な呼び出しだったけど、大丈夫だった?」

 2人は興味津々に聞いてくる。夕立ははっきりしない意識のまま「春雨がいた」とだけ答えた。

「えぇ!?」

「急にいなくなったと思ったらそんな所に居たのか。大丈夫だった?」

「えっと・・・うん。向こうに馴染んでるっぽい・・・」

 夕立はどう答えればいいかわからなくなり、お茶を濁した。

「ふーん。ってそれよりも試合はどうだったの?アメリカの人だったらしいけど」

「そうだよ!そのアメリカ人どれぐらい強かった?」

 村雨と白露が例のアメリカ人の事を訊き、ようやく思考が回り出す。

「うーん。一人は普通っぽい。もう一人は少しはキレるっぽい?」

「まぁ、夕立基準じゃ誰だってそうだよね」

「あっ、でも。なんだか時雨とおんなじ臭いがしたっぽい」

「へぇ、興味深いね。他の隊員は・・・って、そろそろ使用期限だね。続きは食堂で聞こう」

「そうだね!夕立は何食べる?」

「うーん・・・鶏、ぽい?」

 

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