駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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2話連続投稿です。1つ下がってご覧ください


第61話 Sea Serpent

 駆逐棲姫は重い30cm砲をこちらに向けると、引き金を引いて発砲した。主砲は派手な轟音を炎と衝撃波に変えてエディの肌に伝え、その後に砲弾が続く。しかし砲弾はエディ達の頭上遥か上に逸れる。駆逐棲姫は発射位置から大きく後退して息を荒くした。それを見てリッチはつぶやく。

「やはり反動制御ができてないか」

「主砲は見た目ほどの脅威じゃなさそうだね。さて教官、作戦は?」

 Верныйが訊く。

「訓練を信じろ。言ったように撃て」

 リッチは短く答える。

「わかりやすくて助かる。行くよ、深雪」

「了解!」

 エディとリッチはいつも通り2手に別れて攪乱戦術を取る。駆逐棲姫は戦艦の主砲で追尾するが、やはり反動が大きすぎるのか当たらない。さらに、重い砲のせいで動きも遅かった。

「動きが鈍いうちに叩くよ、一斉射!」

 エディの号令で、全員が主砲を撃つ。駆逐棲姫は30cm砲を盾にして防いだ。分厚い砲身と防盾で被害は緩和されるが、30cm砲の砲身は曲がって機能しなくなった。

「よっしゃ!このまま・・・」

 追撃をしようとした深雪の背後に衝撃が伝わる。深海棲艦の駆逐艦だ。リッチは無線に怒鳴りつける。

「司令官!ヘリ部隊はどうした!」

《陸軍のヘリ部隊は弾薬が切れて補給に向かった。こちらの火力支援も反撃の危険があってロック距離まで高度を下げられない。すまない、味方が復帰するまで3分待ってくれ》

「陸軍め、使えるやつだと思ったのに!」

 リッチは舌打ちをして無線を切る。深雪は焦りを感じながら深海棲艦を牽制する。Верныйも、前方の駆逐棲姫と後ろの深海棲艦の大群を見比べて「この数を相手にするのは厳しい」と忠告した。

「とにかく囲まれないように動こう。エディ、そっちは大丈夫?」

《うん、敵は少ない。早くこっちに逃げて》

「わかった。分隊、移動するぞ!」

「了解!」

 リッチは深海棲艦の包囲の薄そうな場所を探して集中攻撃する。

「あそこだ!急げ!」

 突破口へ向かって全速力で離脱しようとするが・・・

「くそ、機関の調子が悪い!」

 先ほどの被弾の衝撃で深雪の機関の出力が上がらない。機関そのものは無事だが、動力が伝わりにくくなっている。

「大丈夫か?」

「もう少しで動くんだ。くそ、早く動けってんだよ、このポンコツ!」

 深雪が艤装を叩くと、少しずつ速度が上がり始めた。

「ふぅ、やっと動き出し・・・」

「後ろだ!深雪!」

 安心したのもつかの間、背を向けた深雪達に駆逐棲姫が追いすがってきた。

「うわぁあああ!」

 深雪は狙いを付ける間もなく主砲を撃つ。砲撃はかすめるだけで、それどころか、駆逐棲姫に右手で砲身を掴まれてしまう。駆逐棲姫はうわ言のように何かつぶやき、右手からは黒いなにかが流れ落ちて主砲を侵食し始めた。

「モット・・・ツヨク・・・」

「ひぃ」

 深雪は咄嗟に主砲から手を離して駆逐棲姫を突き飛ばした。直後駆逐棲姫の魚雷発射管が発射され、間一髪で深雪は難を逃れる。

「深雪に近づくな!」

 駆逐棲姫が深雪から離れたところでВерныйが砲撃して牽制する。

「深雪、援護する。走ってでもなんでもいいからこっちに来い!」

 リッチ達が駆逐棲姫を牽制している間に、深雪は必死で合流した。次に振り返ると、駆逐棲姫は奪った深雪の主砲を黒い液体によって変形させ、深海棲艦のものに変え、リッチ達の間に入った深海棲艦と戦闘を始めた。

「あいつ、触ったものを何でも自分のものにしてる」

「吸収すればするほど、春雨は強くなる。次のヘリ支援が来るまで消耗してくれればいいが・・・」

 Верныйは祈るように言った。だが、駆逐棲姫に突撃した深海棲艦達に待っていたのは、一方的な死であった。駆逐棲姫は深海棲艦を確認するやいなや、まっすぐに突撃した。激しい砲火を姫級の強靭な肉体で突破し、敵のど真ん中に躍り出ると、一方的な虐殺が始まる。反撃もままならず、混乱し、同士討ちすら起こしてスクラップと化していく深海棲艦。エディ達はその動きに見覚えがあった。

「・・・あの動きは、昨日の夜の・・・」

 敵陣へ強引に突っ込んでの大立ち回り、まさしく駆逐艦夕立の得意な戦術だった。

「まじかよ!どうやって相手にすりゃいんだ!」

「深雪、落ち着いて。昨日と違って今日は見える」

「そうだよ!それに、春雨ちゃんの記憶からあの動きをしてるなら、春雨ちゃんの意識はまだあるかもしれない。チャンスは有るよ」

「!?・・・こっち向いた!来るで!」

 掃除が終わった駆逐棲姫がエディ達に向かって突っ込んでくる。エディ達も身構えた。

「弾幕を張って!突破させないで!司令官、支援はまだなの?」

《陸軍は補給に手間取ってるが、春雨が暴れてくれたおかげで下は片付いたから砲撃支援は可能だ!》

「了解!みんな、魚雷発射!今!」

 深雪、Верный、浦風が一斉に魚雷を発射する。必中距離から発射された魚雷は、駆逐棲姫へ直進した。避けられはしない。リッチは勝利を確信した・・・しかし、

「ヤラセナイヨ!」

 駆逐棲姫は咄嗟に主砲を水中に向けて発射して魚雷を自爆させた。そのままスピードを緩めることなく、エディ達へ向かう。

「ひぃ」

 喰われる!恐怖が深雪の体を包む。主砲は効かない、頼みの魚雷も迎撃された。目の前には武装を全開した姫級。もう助からない!深雪は思わず怯んだ。他の面々もそうだった。

「みんな、下がって!下がって・・・ってわぁ!?」

 後退を指示して自らも下がろうとしたエディは不意にバランスを崩して尻餅をつく。

「エディ!」

「いてて・・・は?!」

 顔を上げると完全武装の駆逐棲姫が自分を見下ろしていた。愛らしいかつての仲間にそっくりなそれは、ゆっくりとエディに主砲を向ける。エディの震える瞳が、駆逐棲姫と合った。そして・・・

「・・・きょう・・・官?・・・」

「春雨ちゃん!わかるんだね?!」

 春雨の意識があると確信してエディは必死に春雨に呼びかける。

「春雨ちゃん!わたしだよ!」

「教官・・・私・・・うぅ」

 春雨はしばらく朦朧とこちらを見ていたが、突如頭を抱えて苦しみだした。エディは思わず春雨の手をつかむ。

「うぅ、ダメ!ああああああ」

「春雨ちゃん!大丈夫?今助け・・・」

《いかん!エディ離れろ!》

 無線からハミルトンの声が聞こえた。直後エディの腕を春雨がつかむ。手からは血のような黒い液体が流れ落ち、危険を察したエディはすぐに振り払おうとするが、春雨のものとは思えないような強い握力で阻止されてしまった。

「きゃあああああああ」

「危ナカッタガ、一ツ片付イタ・・・」

 駆逐棲姫は黒い液体を侵食させ、首に回してエディを持ち上げた。

「くっ、ケホ・・・あ・・・あなたが・・・春雨ちゃんを・・・!」

「ソウダ。ワタシガ彼女ノ『恐怖』ダ!春雨ノ意識ガ戻ッタノハ想定外ダッタガ、モウ逃サン」

 黒い液体が全身を拘束して締め上げる。エディの身体が引っ張られ、痛みと恐怖が脳に直接流れ込む。

「ヲマエモ私ノ一部ニナレ!」

「いやあああああああああああああああああ」

 エディの身体から力が抜け、手足がだらんと垂れ下がる。リッチ達はそれを遠巻きに見ていることしか出来なかった。

「そんな・・・教官が・・・」

「なんちゅうこっちゃ」

「・・・同じだあの夢と・・・」

 リッチはかつて見た悪夢を思い出す。

「駄目だ!エディ!エディ!エディぃいいいい!」

 




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