駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

76 / 85
重大発表あり、詳しくはあとがきをお読みください


第72話 余計なお世話

 横須賀で、私達は手厚い歓迎を受けた。聯合艦隊旗艦直々に私達を案内してくれたのだ。これが横須賀名物『駆逐艦好き長門』か。案内中終始彼女の口からエドワーズ達の自慢話を聞かされた。リチャードの話した真実とはかけ離れた美談であったが、子供のように語る長門は本当に敬愛の念を持っているようであり、彼女の立場と人柄を伺わせた。

 ここでの演習は、2水戦の神通が相手でどうにもならず、あっさり敗北してしまった。その後横須賀の駆逐艦達と交流を持つこととなったのだが、リチャードは辰福丸の様子を見に出てしまった。軽巡達と一緒にいるのが辛いのだろう。

「あぁ・・・大体解った。俺が見てきてやるから、お前は休んでこい・・・安心しなって、龍田も結構面倒な奴だから、世話焼きには慣れっこだよ」

 哨戒から戻ってきた天龍がそう言って出て行った。私も気になって後をつけてみる。天龍はしばらく歩き回ると、工廠裏のベンチの近くで立ち止まった。

「よぉ」

「・・・・・・」

 ベンチにリチャードが座っていた。彼女は黙ったまま天龍をにらんでいたが、やがて口を開いた。

「何の用?僕を叱りに来た?」

「そうするんなら、魚雷の1本や2本じゃすまないだろうな」

 やはり例の件を許す気はないらしい。当然だろう。

「龍田に会ったんだよな。あいつお前のこと気に入ってたんだぜ。何か言われたか?」

「油断ならない奴だった。僕の秘密まで知ってた。話したのはあんただろ」

「向こうでは上手くやってんのか?エディ以外にも、友達とか?」

 天龍は次々質問をしていく。リチャードは変わらず邪険に返す。それを気にせず天龍は新しい話題を出していった。

「どうしてそんなこと君に話さなきゃならないんだ?」

 ついにリチャードが我慢できずに天龍に食いついた。天龍は少し黙って、そして話し始めた。

「アルバコアに聞いたんだよ。昔のお前の事」

「!?」

「お前、自分がエディ以外に愛されてないなんて思ってるみたいだが、結構あいつ心配してたぜ。お前が基地に行った後、俺も含めて、あいつにやられた奴全員で『ちょっとした仕返し』に行ったんだ」

 その話は彼女から聞いた。いったいどんな手段を使ったかは知らないが。

「手に負えなかっただろう?」

「傷が治ると暴れだして大変だったぜ。流石に最後は死んだマグロだったが。おかげで今はメール仲間だ」

 彼女は端末を見せびらかして言った。

「そん時によぉ。あいつ、お前の名前を呼んでたんだ。お前はどうなったかとか、お前は悪くないとか。舞鶴に隠すことになったって言ってやっと大人しくなったぜ」

 やはりアルバコアとリチャードには、只ならぬ繋がりがあるようだ。艦娘になる前の記憶がないというリチャードは決してそれを認めようとしないが。そんな彼女に、天龍は爆弾を投下した。

「お前は本当に覚えてないのか?ルーチェ」

「ッ・・・!」

 リチャードは彼女の頬をはたいていた。

「僕をその名前で呼ぶな・・・僕は・・・私は、あいつと・・・あんな裏切り者とは・・・違う!」

 その話し方に私は違和感を感じた。

「・・・まぁ、俺が言いたかったのは少しは他人を信用しろってことだ。誰かにばっかり依存してると、見えるもんも見えなくなるからな。お前を気にかけてる人間は、もっとたくさん居るはずだぜ」

 天龍はリチャードの元を去ってこちらへと歩いてきた。私はリチャードに教わった隠れ方でやり過ごした。天龍が去ると私はリチャードに駆け寄った。

「姉妹・・・」

 私は彼女に触れようとした、しかし彼女は私を見ないまま、小さく呟いた。

「僕の家族は、姉さんだけだ」

 その言葉が私の心を刺し貫いたのは言うまでもない。私は自分の孤独のあまり、性急な思い違いをしていたのだ。彼女と私では、家族の考えが違った。傷ついたと同時に、恥ずかしくなって、私は彼女が止めるのも聞かず走り去っていた。

 

 

 Верныйがなぜ僕のもとから走り去ったのかわからなかった。その後、僕は彼女に聞こうとしたが、彼女は「盗み聞きをしてすまなかった」と言うだけで取り合ってくれなかった。あの時、僕は混乱して何を言っていたのか覚えていないくらいだった。ゆうぐれとしての自分を思い出した時、断片的に覚えのない記憶が流れ込んで来たのを感じた。それは夢のように曖昧だったため、Верныйには話さなかった。

 しかし、天龍があの言葉を言った直後、いろいろな感情が溢れ出て来た。悲しみであり、悔しさであり、痛みであり、そして胸が苦しくなる恋しさであった。

「どうして僕の中にアイツが・・・」

 アイツと会ったのはCIAの実験施設の檻の中だったはず。なぜ、なぜ・・・僕は自分を保つために、姉さんが僕の唯一の家族だと呟いた。それが彼女が傷ついた理由だと、この時はわからなかった。

 その後は呉に向かった。空母から爆撃で歓迎され、鎮守府へたどり着いたと思ったら服を着た(自主規制)が姉さんを殴った。思い出すだけで腹が立つ。

 陸軍は僕達に協力を申し出た。敵の敵は味方というわけだ。おかげで連中の鼻を明かすことが出来た。相手の旗艦だった大井に色々と因縁をつけられてしまったが、気にすることはないだろう。一応釘はさして置いたが、陸軍との親密な関係はこちらの計画にとって利益が大きいので、今後も維持していきたい。部隊としては、実りの多い訪問だった。

 とはいえ姉さんの顔に傷をつけてしまった事実には変わりない。姉さんを守ると言いながら、姉さんの歩みについていけていないのが現状だ。人前でキスしてきたのは姉さんが先だが、不安から姉さんに甘えてキスしたのは反省すべきだ。

 宇品に帰還した僕達は久々に一緒に風呂に入った。今日は自分の甘えが過ぎた気がしたのと、改めて理由を聞き直すためだ。

「旅も終りが近いな」

「うん。リチャード・・・」

 どこかよそよそしい感じがして落ち着かない。姉さんだけで完結していた僕の世界では、こんな経験はなかったから、どうして良いのかわからない。姉さんは話さなくてもなでてくれる。好きといえば大好きと言ってくれる。僕は彼女に、なんて言えば良いのか?

「ねぇ、どうして2人きりなのに『きょうだい』って言わないんだ?何に怒ってる?」

 姉さんみたいな綺麗な体があれば、抱きついたり、甘えてみたり出来たかもしれない。そういう魅力がない僕は平易なことを言うしかなかった。すると、Верныйは僕に覆い被さってきた。

「私は、君の姉妹になれたと思ってた。でも、それは私の思い違いだった・・・私じゃ、君の『家族』にはなれないのかな?」

 吐息が肌に伝わるほど顔を近づけて寂しそうに彼女が言う。儚げな彼女の美貌が、目の前を覆った。

「エドワーズが君にしたみたいに、もう一度君にキスすれば・・・君は」

 彼女は瞳を閉じて妖艶な唇を僕へと近づけた。

「え、ちょっ、待って!待って!」

「・・・・・・っふ、冗談だよ。でも、寂しいんだ。君達を見てると」

 今更何を言っているんだ・・・僕と姉さんが恋人同士なのを羨ましがるなんて。

「家族に会えないのが我慢できなくなったのか?」

「・・・・・・」

 彼女は答えない。年上のはずの彼女が、とても幼く見えた。僕は一体どうすればいいんだ?あんなに知的でクールだった彼女が、見たこともないぐらいにしおれている。

「ねぇ・・・僕のこと、代わりにしても構わないよ」

 僕はそう言うしかなかった。

「うん、嬉しいよ・・・ありがとう。姉妹」

 そう言うと、彼女はいつもの様子に戻っていた。その目にまだ寂しさが残っていたことに、僕は気付けなかった。

 




重要!

 連合国艦娘実装に伴う今後の小説展開について、相談したいことがあります。
 詳しくは活動報告に掲載しますが、連合国実装で公式との設定矛盾が生じるリスクが高まっており、今後の連載について、皆様の意見を聞きたいと思っています。この小説の目的は、あまり知られていないアメリカの艦を紹介する意図があったので、その願いが一区切りした今、この小説はどうあるべきか、皆様にお聞きしたいと思います。
 詳しくは作者ページ活動報告『連合国艦娘実装とありあけ連載の今後』を読んでいただいて、そちらに返信していただけるようお願いします。

                             以上
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。