駆逐艦「ありあけ」出撃します!   作:創生路ハイローラー

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 後編です。どうぞ!


第6話 逃走航路 後編

《消火活動急げ!延焼を防げ!》

「可燃物を船内に入れろ、燃え移るぞ!」

《魚雷第二波来ます、回避してください!》

《黒煙で前が見えない!どっちへ回避すればいいんだ!》

《艦橋に煙が充満している!浸水止まりません!もうだめだ!総員退避!》

「海に飛び込んでも誰も拾ってくれない!どこへ逃げればいいんだ!?」

 

 

 海域は悲鳴と怒号と黒煙に満ち、地獄絵図となっていた。シエラー号は船首右側に触雷した。艦橋ごと船首が吹き飛ばされ、操舵を失ったシエラー号は右に回頭し、後続を走っていた油槽船ミンダナオに衝突、燃料に引火して大火災となった。後続の船舶は回避しようとバラバラに回頭したために、船団の隊列は完全に崩壊し、さらにミンダナオの火災で発生した黒煙によって再び陣形を整えることすらままならなくなった。

《攻撃を受けているぞ!護衛は何をやっていたんだ!この間抜け!》

 船団から遅れていたため唯一黒煙を回避することができたトライデント号のペリーも、無線に怒鳴り散らしている。キンバリーはヤーネルとマラニーを乗員救助と船舶の誘導に向かわせると、他の艦娘に潜水艦を探すように指示した。

《おい、どうしてくれる!シエラーは弾薬の一部が積んであったんだぞ!海軍はどう責任を取るつもりだ!》

《お言葉ですがペリー船長。シエラーには危険物取り扱いの記録はないはずです。どうして危険物を積んでることをご存じで?》

《だ、黙れ!貴様らが無能なせいでとんだ大損だ。帰ったら必ず「船長!大変です!」・・・な、なんだ?この大変な時に・・・ん?・・・なんだと!?すぐ・・・しろ!・・・とにかく、この船に何かあったら本国の連中から軍に圧力をかけて貴様らを縛り首か銃殺刑してやる!この船だけは必ず守れ!》

 

 

 懸命の救助活動が行われる中、エディは音探から手を放して船団の惨状をただ茫然と見ていることしかできなかった。見かねたトワイニングが注意する。

「おい、何やってんだよ!今は人手が足りないのがわかってんの?」

「わたしの・・・せいだ・・・わたしの・・・」

 エディは自分のミスでこの惨状が起きたことに動揺していた。トワイニングはため息をつくと、エディの頬を思いっきりひっぱたいた。

「エディ!確かにこの状況はお前に責任があるかもしれないけど、どうしようもないことに悩んで今起きてることに最善を尽くさないのはもっと悪いことだぜ!」

「う、うん」

「解ってるなら今すぐ動け。みんなエディの力が必要なんだ」

 トワイニングはエディの肩をたたく。エディは涙をぬぐうと再び音探に手をかけた。

「さっきまでのノイズはない・・・敵は海中深くから静止状態で魚雷を撃ってきた・・・深海深くの音も見逃さずに・・・」

 エディは呟きながら意識を水中に沈める。深く暗く、気の遠くなるような広い海の中にある、小さな異物を探り当てるのだ。

《・・・いた!3時方向、距離44深度60です!!》

「よしもらった!」

 トワイニングは時限信管を修正すると、対潜ロケット弾「ヘッジホッグ」を発射した。扇状に散会した爆雷が着水、数秒後には大きな水柱が上がった。

《反応消失。撃沈です!!》

《やったー!》

《よくやった》

 船団から称賛の声が上がる。直後のウェーキィの言葉に、船団は凍りついた。

《敵艦隊距離200!完全に追いつかれました!》

 

 

 追手は目と鼻の先となり、はっきりと確認できる距離まで近づいていた。

《こちらキンバリー、もう敵に食いつかれてるわ!鬼ごっこは終わりよ!全艦後列へきて!》

 キンバリーは味方全員を集めると、単縦陣で切り込みをかけて、時間を稼ぐと説明した。

「重巡までいるのに勝ち目はあるのかい?」

 リッチは当たり前のことを聞く。キンバリーは振り返らずに答えた。

「援軍はあと30分。私たちが全滅するまであと15分といったところね。ぎりぎりまで近づいて魚雷を撃つ簡単なお仕事よ」

「ほかに手はないの?」

 エディも不安そうに聞く。

「駆逐艦は艦隊の盾、身を犠牲にしてでも護ることが本分よ。今更死ぬなんて怖くないわ」

 そういうとキンバリーは振り返って笑って見せるが、顔は蒼白だった。

 敵が近づくにつれて砲火が激しくなる。キンバリーは彼女らしくもないニヒルな笑みを浮かべた。

「手厚い歓迎ね、でも当たらないわ。『駆逐艦が道を拓く』よ!全艦攻撃開始!」

「「了解!」」

 昼間の駆逐艦の突撃は愚の愚だ。だが窮鼠猫を咬むというように、今の彼女たちは極限状態の中で最大限の力を発揮しつつあった。

「めんどくさいけど、ちょっとは活躍しないとね」

 ヤーネルは敵の最後尾にいた一番動きの鈍いイ級に狙いを定めた。

「一番槍、もーらい!」

 発射された127㎜砲弾はイ級に直撃し、イ級は爆発四散した。だが、それによって敵の意識がヤーネル一人に向かい、ヤーネルは集中砲火を受けて大破した。

「よくもヤーネルを!」

 トワイニングとマラニーは重巡に攻撃を仕掛ける。手に持った1門と、背中に背負った伸縮アームで自在に動かせる4門の127㎜単装両用砲は対空戦では絶大な効果を発揮するが、重巡リ級相手には豆鉄砲も同然だった。

「砲がだめでも、魚雷なら!」

 トワイニングとマラニーは魚雷を発射した。だが魚雷は簡単に回避されてしまう。

「うわぁ!?」

「なに!?やめて!」

 魚雷を撃つため背後の警戒が薄くなっていたトワイニングとマラニーに背後からロ級が噛み付いた。

「うぅっ・・・やめろ!離れろ」

「いやっ・・・離して・・・ああッ!?」

 ロ級は艤装に食いついて噛み砕こうとする。キンバリーが助けようとするが、暴れて撃つことができない。そこに軽巡ホ級が攻撃し、キンバリーも大破した。

「そこだ!」

 エディとリッチはホ級がキンバリーを攻撃するために自分たちに背を向ける瞬間を逃さなかった。リッチは砲撃でホ級の頭を潰すと、エディが魚雷でホ級を仕留め、トワイニング達に取り付いていたロ級も破壊した。

「リッチ、危ない!」

 エディがリ級の攻撃からリッチをかばう。砲弾は逸れて当たらなかった。

「あいつを仕留めよう」

「うん、リッチ。わたしがひきつける」

 エディとリッチは散開した。エディは果敢に攻撃してリ級の気を引こうとする。だが思惑は外れ、リ級はリッチを狙いだした。

「お願い、こっちへ向いて!」

 エディは必死に攻撃を仕掛けるが、リ級はエディを見ようともしない。リ級がリッチを主砲にとらえた。万事休すと思われたが、エディは思わぬ行動に出た。

「リッチを、守ってみせる!」

 エディはリ級に駆け寄ると、そのまリ級に飛びついた。

「今よリッチ!撃って!」

「でも、それじゃあエディが!」

「わたしは大丈夫!早くしないと持たない!」

 パワーはリ級のほうが強い、エディが振り落されるのは時間の問題だった。

「当たれえええええええええええええええええええええええええええ」

 リッチは魚雷を全弾発射した。魚雷は確かにリ級を捉えていた。だが、魚雷はリ級の目前で爆発した。生き残っていたロ級が、リ級を庇ったのである。

「そんな・・・」

 リ級はロ級の残骸を蹴飛ばすと、リッチに向けて主砲を乱射した。リッチは至近弾を食らって吹き飛ばされ、気を失ってしまう。やがてエディも振りほどかれて海に体を叩き付けられた。

「まだ、戦える・・・」

 立ち上がろうとするエディをリ級は蹴飛ばし、腹部を踏みつける。

「ぐぁあっ」

 苦悶に顔をゆがめるエディを見てリ級は笑みを浮かべ、主砲を向けた。

(・・・わたし・・・しぬの・・・かな・・・死にたくない・・・いやだ!・・・こわい・・・)

 エディの心を絶望と恐怖が蝕み始める。エディの心が壊れるか、体が壊されるか、もはや彼女の命は風前の灯であった。

 時間が過ぎるのが遅く感じられる。リ級が嗜虐心に満ちた凶悪な顔つきで、ゆっくり主砲のトリガーを引こうとする。

 その時、水柱がリ級の背後で上がり、リ級注意が逸れた。エディはリ級の頭に主砲を向けて、残弾をすべて打ち込んだ。頭に多数の砲弾を受けて頭をズタズタにされたリ級は倒れた。

(・・・勝った・・・の・・・かな?)

 エディの意識は闇に沈んでいった

 




 戦闘回終了です。一気に書ききったので、意外と早く終わりました。

 春のイベントはサボってしまいました。
 小説書きだしてから鎮守府に行ってない・・・夕張と早くケッコンカッコカリしないと・・・
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