次以降の話は時系列が戻りますのでご注意ください。
会社関係は自分の妄想なので深くは突っ込まないでください。
大学を卒業し数年が過ぎた。
就職先を色々考えていたが結局、目白家の財閥に就職した。
まぁ養う家族が多いので、自分の食い扶持だけ稼ぐだけでは足りないからなぁ……
アルダン達もレース等の賞金や仕事もあるので、好きな事をして欲しいと言ってくれた。
だが、それじゃ俺のプライドが赦さんのじゃ! 意地があんだろ、男の子には!
爺さんから目白家関連の会社には、コネで入る事は禁止された。
勿論、俺も最初からそのつもりだったので、母方の苗字で面接まで漕ぎ着けた。
流石に最終面接まで行くと、俺の事を知っている社員もいるので完全な実力とは言い難い。
正直、ただのコネ入社だと役員には思われ、俺に聞こえる様に陰口などを言われている。
……まぁ、ある意味その通りだが。少し前に自分の我儘を通した事も有り、最近は特に顕著だ。
だが、そういう声は真正面から実力でねじ伏せれば良し。
という訳で、今は関連会社の一般社員をしている。役員会議とかには参加しているけどな。
……ちょっと、水戸〇門とか〇れん坊将軍みたいで楽しいのは内緒だ。
さて今は、今日の業務も終わり帰宅している。
金曜日という事もあり、帰りの電車内もどことなく浮ついた空気が漂っている。
まぁ、かく言う俺もその一人なのだが……今日は用事もあるので寄り道をせずに帰路につく。
通り慣れた道を歩き、相変わらず田所一家の経営するアパートに帰ってきた。
……鍵が開いてる。まったく、今日は誰だ? いい加減慣れて来た。
「あ、おかえりなさいませ兄様♪ お食事にしますか? お風呂にしますか? それとも私?」
「ただいまアルダン。……どこで覚えて来るんだ?」
「もう、いけず……うふふ、お友達が教えてくれるんです♪」
「……そうかぁ。いい友達だなぁ……そういえばパーマー達はどうした?」
アルダンは大学に入ってから、友人に色々教わったり、遊んだりしている内に世間知らずな部分も減った。
成長している事は嬉しいんだが……恋人兼兄貴分として、こういう成長はどうなんだろう?
まぁ、俺も人の事言えた立場じゃないし……ってか俺のツレの方が酷かったわ。
アルダンを筆頭に、彼女達は大学部に入学すると、俺の住んでいるアパートに引っ越して来た。
なので、今住んでるアパートは全部屋がメジロ家で埋まっている。
瞳さんが滅茶苦茶、喜んでたけど……そりゃ全部屋埋まってたら嬉しいわな。
セキュリティ大丈夫? って思ったが爺さんが札束でぶん殴って、セキュリティ問題を解決した。……俺の部屋以外。
何故か俺の部屋の鍵を、彼女達全員が持っている状況に……なんでや!
なので、必然的に俺の部屋が溜まり場になる。
……うん、嬉しいよ? 嬉しいんだけど……その、俺にもプライベートな時間をください。
「彼女達は友人と遊びに行ったり、レースの調整の追い込みで帰って来れないそうですよ?」
「そうか」
「二人っきりですね……♡」
「俺はすぐに出るけどな。だから先に寝てていいぞ。自分の家でな」
「あら、つれないですね……なんて冗談です♪ 今日は飲み会ですよね?」
「あぁ。だからアルダンは明日……な?」
「……はいッ♥ コホンッ! 荒谷さんが日本に帰って来たんでしたっけ?」
「そーそー」
「そうですか……目一杯楽しんできてください♪ 私は明日……お願いしますね♥」
荒谷は大学を出てすぐに世界旅行に出かけた。昔からそれを目的に金儲けをしていたらしい。
愛車とバックパック一つで世界を周り、昨日帰国した……アイツすげぇな。
そういう事も有り、久しぶりに四人で飲もう、って事になった。
「じゃ、行ってくる……いい子で待ってろよ?」
「はい♡」
「なんでいつもの店じゃないんだ? 久しぶりにマトンのオッサン揶揄おうと思ったのに」
「もう、そこ無いぞ?」
駅で集合し再会の挨拶もそこそこに居酒屋へ移動してた。
注文を済まして、荒谷はお通しの枝豆をモソモソと食べながら俺達に疑問をぶつけて来た。
そういえば、荒谷は知らなかったな……
「ストレイ・シープなくなった!? マジかよ……」
「丁度、お前が世界旅行に出かけた辺りで閉店した」
「トーマスさんのお店は居心地が良かったんだけどね……残念だよ」
「あぁ、種の繁栄がどうのと言っていたな。それがどういう意味なのかは知らんが」
あの店どんだけ騒いでも、なんだかんだ許してくれたから都合が良かったんだが……
ダッサいグラサンして白いスーツ着て、ややヘタレのマスター……好きだったんだけどなぁ。
奥さんに浮気がばれて殺されかけたって話を、何回もしてくるのは止めて欲しかったが。
「じゃぁアメリカで見た店はマジでマトンのオッサンの店だったのか……寄れば良かった」
「あぁ? あのマスター、今アメリカで店してんの?」
「へぇ、あのつまらないパズルゲームの筐体も置いてあるのかな?」
「あれの何が楽しいのか、オレには未だに分からん」
あのマスター、何やってんだ? もう結構な歳だったろうに。
まぁ、あの歳で新しく挑戦するってのもすげぇ話だ……
「まぁ何はともあれ、荒谷が無事に帰ってきた事に……乾杯!」
「「「乾杯!」」」
話が途切れたタイミングで、丁度良く酒が来たので俺が音頭をとる。
という訳で、久しぶりのバカ共との酒宴が始まった。
「そういえば、最近仕事はどうなんだ?」
「俺は目白の関連会社の方で働いてるな。まぁ役員会で嫌味を言われる日々だな」
「僕は父の法律事務所で修行中の身だね……なかなか学んだ事と現場の違いに戸惑っているよ」
「オレはただ淡々と仕事をしているだけだな……個人的な研究は完成したが採用されなかった」
荒谷の旅行中の話や、最近あった事など話していると荒谷がそう聞いてくる。
酒も進み、気分が高揚して口も軽くなった事も有り愚痴の様な言葉が出てしまう。
「そういや、烏丸は知り合った時から何か作ろうとしてたな」
「あーなんかパーツがどうのとか言ってたっけ?」
「へぇそうなんだね。どんなものを研究していたんだい?」
何かを作っていた事は知っていたが、具体的に聞いた事なかったな……
じゃ、その話を酒の肴にでもして盛り上がるか!
なんて考えていたんだけどなぁ……
「あぁ……オレが研究していた物はな────────―」
「……なぁ荒谷。俺はそこまで経営とかに詳しい訳じゃねぇけどよ……勝算高くね?」
「……勝算しかねぇよ。むしろコレでコケたら、相当な無能だ」
「僕は門外漢だけど凄い事は分かるよ。でも、具体的にどのくらいなんだい?」
「やってる事がほぼ医療革命」
荒谷がボソりと呟いた。
だよなぁ……医療革命に近いよなぁ。
てか、この情報コンプライアンス的に大丈夫か? 絶対に外に漏らしちゃダメな情報じゃね?
「会社では、夢物語だと言われた。オレ個人で作った試作機でも上手くいっているんだが……」
「お前さ……会社内で嫌われてない?」
「ああ、嫌われているだろう。だが、むしろ必要最低限の話で済むから楽だ」
烏丸は言い方がなぁ……昔から勘違いされやすいからそのあたりか?
いやだとしても、こんな好機を逃すか普通?
……なんとか出来ないのか? 散々俺を救ってくれたコイツ等に何か報いる事が出来ないのか?
ふとある考えが思いつく。
「なぁ……俺達で会社作らねぇ?」
「……資金とコネが無ければ難しいね」
「資金面は俺が目白から引っ張ってくるか、部門を立ち上がらせるから問題ねぇな。あとコネに関しては荒谷……お前どうせ世界中に作って来ただろ?」
「それに関してはバッチリだ。ついでにそのまま販路に出来るぜ。ついでにロボexpoにでも展示すりゃいいだろ」
上田から意見が上がるが、資金面は俺がコネに関しては荒谷が問題をクリアできる。
あと、どうせそんな事だろうと思ったが、やっぱ荒谷はコネを作って来たか。
前から思ってたが何なんだよ、お前のそのコミュ力。
「烏丸、仮に生産するとして安定生産と技術盗用の対策は?」
「生産に関してはパーツ事に作りアセンブルする事で、ある程度量産は出来ると思う。盗用対策としてはOSはオレ独自の物を使用しているし、スパゲッティコードにしてあるから解析は困難だ。
保守についてはオレが居れば問題ないが、それ以外は諦めろ。またリミッターを設けているから巨大兵器などの軍事転用は不可能にしている。絶対に兵器にはさせてない、絶対にだ」
お、おう……そうか。
とりあえず、生産性と盗用対策は烏丸を信じて大丈夫だろう。
しかし、軍事転用か……盲点だったな。
だが烏丸がこれ程までに言っているなら、兵器にはならないだろう。
「上田、お前が企業内弁護士になれ」
「まったく急だね……でも面白そうだし、吝かではないよ」
上田の親父さんには悪いが、引き抜かせてもらおう。
正直、俺を含めて法律関係に詳しいのは上田しかいない。
引き抜きが無理なら顧問弁護士で雇入れするか。
「後は会社名か……なんか案ある?」
「アノールロンドってのはどうだ?」
「……なんだか、最終的に乗っ取られそうだから却下」
何だろう……最初は栄華を誇るが、その内寂れて、変な奴に乗っ取られそう。
「レイクヴィラっていうのはどうだろう?」
「んー保留だな。良い名前だけど別に湖の近くでもねぇし、別荘でもねぇ」
その名前にするなら、北海道洞爺湖町に本社を置かなきゃいけない気がする……
「ストレイド」
「迷っちゃダメだろ」
よりによって、企業の名前としたらダメだろ。
「ごちゃごちゃ言いやがって! ならお前の案はなんだよ!」
「……シュープリス」
「はぁ!? 散々ダメ出ししておいてそれかよ!? なんで断頭台なんだよ!!」
「あー俺達が世界を変えるって事で、今までの常識と決別する的な?」
「お前ってやっぱりバカなんじゃねぇの? バカだったわ」
「アハハ……流石に擁護できない」
「笑止」
「うるせぇ! うるせぇ!」
自分でもどうかなぁって思ったけど、そこまでボロカスに言わなくてもいいじゃねぇか!
あれやこれやと意見を言っては誰かからダメ出しが出る。
最終的には俺がひねり出したシンプルな意見でようやく纏まった。
「じゃぁ会社名は“NEXT”って事でいいな?」
「いいと思うよ。次のステージに行くって意味でも素敵な名前だ」
「革命家気取りか? まぁ、お前にしては、いい案だと思うぜ?」
「世界は俺達が変える……か。随分とロマンチストじゃないか」
「……うるせぇ」
ロマンチストな革命家気取りか……なんだか水没しそうな響きだな。
でも、キャラとしては面白いかもしれん……
「世界は俺達が変える。さぁ“NEXT”のお披露目だ。諸君……派手に行こう。……なんてな!」
「なにお前カッコつけてんの? アホなんじゃねぇの? アホだったわ」
「……正直、まったく似合ってないよ?」
「自分に酔っているな……」
「……」
え? 普通そこまで言う? 酔ってテンションが上がっただけじゃねぇかよ……
それからギャーギャーと騒ぎ散らし時を忘れて騒いだ。いやぁ酒が美味い!
アーハハハ! 今日はいい日だ! コイツ等とつるんで会社を作る!
心が躍ってしまうな! これから絶対に楽しくなる!
荒谷達との久しぶりって事も有って、めっちゃ楽しい宴会だった……飲み過ぎるくらいに。
「荒谷君、彼を送ってくれないかな?」
「オレは帰る。荒谷、あとは頼んだ」
「ふざけんな! 今日は俺が主役じゃねぇのかよ! なんで酔いつぶれたコイツを送んなきゃなんねぇんだ!」
「つぶれてませ~んwwwちゃんとおきてま~すぅwww」
まったくぅ! 俺はそんなに酒弱くないぞぉ?www
久しぶりだからって忘れんなよぉwww
「なぁ……そこら辺に捨てちゃダメか?」
「「ダメ」」
「クソが」
荒谷に肩を借りながら、なんとか家に着く。
文句を言いながらも送ってくれる荒谷は、相変わらず良い奴だなww
口は悪いけどwww
「兄様♪ おかえ……あら? 荒谷さん? お久しぶりです」
「あーえっと? あぁメジロアルダンか……このクソを引き取ってくれ」
「誰がクソだぁw俺かぁwwwアルダン達傷つけたもんな……すみませんでした」
はぁ……ゴメンなぁアルダン……ダメで情けない兄貴分でゴメンなぁ……
「……お前まだ引きずってんのかよ。まぁどうでもいいけどよ」
「……フフ」
「え? 今ので笑うの? もしかして、お前性格悪い?」
「あぁ!? アルダンが性格悪いだと!? てめぇコロちゅぞ!! 天使だろうが!!」
さっき散々アルダン達の、素敵さや可愛さや可憐さや優しさを語ってやっただろう!!
親友のお前といえど俺の愛する天使達の悪口は許さんぞぉ!!!
「黙れ酔っ払い」
「笑ってすみません……兄様がこんなに泥酔しているのを見るのは初めてです」
「はぁ? それがどうしたってんだよ」
「きっと嬉しかったんですよ。荒谷さんが帰って来てくれたのが……少し嫉妬します」
「おーww俺はお前が無事に帰って来てくれて嬉しかったぞぉwww」
心配したんだぞぉ? お前が海外でトラブルに見舞われてないか……
でも無事に帰って来てくれて、また遊べるようになって良かったぞぉ!!
「野郎に好かれてもなぁ……」
「顔赤いですよ?」
「……うっせぇ」
「www相変わらずのツwンwデwレw……やっぱキモいわ」
本当にキモいわ……アルダン達みたいな可愛い子ならまだしも、お前のツンデレは求めてない。
「ブチのめすぞテメェ。まぁいい、それじゃ確かに送り届けたからな。俺は帰る」
「あら? もうお帰りですか? お茶でも飲まれていってください」
「そうだそうだぁww 俺の部屋で二次会しようぜぇwww」
家には酒はストックしてねぇから宅飲みするなら買って来ねぇとなぁ……
「絶対に嫌だね! なんで独り身の俺がお前の妹分との惚気話を延々と聞かなきゃなんねぇ!」
「そうですか……今日はありがとうございました。またいらしてくださいね」
「……」
独り身が寂しいのかぁ? そうかそうかぁ……俺に任せろぉ! もうちょい待ってろよぉ!
「……まぁ機会が有れば考えておく。あばよ酔っ払い」
「おぉ! また飲もうな! 気を付けて帰れよぉwww」
「荒谷さん、ありがとうございました」
えぇ……帰っちまうのかよぉ。なぁんだよつまんねぇなぁ……
でも日本にいるんだ……またすぐに飲めるからいいかぁ!
アハハハ! え? なにアルダン? シャワー浴びろ?
えーめんどくさいなぁ……飲み足りないからお酒買ってくるぅ……
……あ、すみません。すぐに浴びますので、そんな悲しそうな顔しないで……
シャワーを浴び少し酔いが醒めた。あぁ飲み過ぎた……
アルダンに介抱されながら、今日の事を思い出しながらベッドに倒れこむ。
ベッドに潜り込んできたアルダンを抱きしめウトウトと微睡む。
「なぁアルダン……また走りたいかぁ?」
「酷い事を聞くのですね……当たり前じゃないですか……でももういいんです。諦めました」
「そうかぁ…………」
そうか……走りたいか。まぁ当たり前だよな……なら、全力だ。
「ふざけるな! 会社は貴様の玩具ではないぞ!!」
「会長の孫だとしても、もう我慢ならん!」「ふん……コネで入れさせて貰った分際で……」
「ふむ……勝算は高いな。ウチの主導にならんかなぁ……ならんよなぁ」
「……もし本当ならば、これは確実に取り込まねばならんぞ」
先日の荒谷達との会社の件で部門設立か、株式に金を出すかを決めて貰う為、役員会議の議題にあげた。
プレゼン資料を読み終えた辺りで、一部の役員たちが口角泡を飛ばさせながらがなり立てる……うるせぇなぁ。
「そもそも農園の取り込み自体我儘が過ぎる! しかも聞けば旧知の仲の農園ではないか! 会社は仲良しこよしで経営するものでは無い!」
「まったくもってその通り!」「ふん、我儘を言っても許される立場とは……是非とも肖りたいものですな」
「……いやそれに関しては利益を上げているのでいいのでは?」「彼奴等はただケチ付けたいだけだろ」
俺の我儘で目白財閥に農業部門を作り、豊さんの農園を組み込んだ。
豊さんの経営能力があまりにお粗末過ぎたので経営をこちらに任せて貰い、豊さん自身は新しい作物の品種改良に集中してもらってる。
豊さんは最初難色を示していたが、瞳さんの鶴の一声(物理)で参入が決まった。
結局、豊さんはなんだかんだ言っていたが経営に関わらず、好きな様に作物を作る方が肌に合ったみたいだ。
人参を皮切りに、次々に野菜の改良に成功している。
葡萄園も任せてみたら、新品種の開発に成功した……あの人マジで品種改良に関しては、天才以上の存在だった。
という訳で、目白ブランドの野菜が最近は人気を博している。
「静粛に! 君の案が有用なのは理解している。だがそれでも新しく部門を立ち上げるとなればそれ相応のリスクもあるのは分かるな?」
「それは理解しています」
取り纏めの専務の鶴の一声で、会議室は静まり返る。
専務は俗に言う反会長派の頭目。爺さんとは一応対立する立場にある。
まぁ無茶苦茶言っているのは自覚はしているが、これに関しては……悪いが譲れないな。
「利益を上げているとはいえ、前に君の我儘を聞いている。それでは皆も納得できまい」
「はい。納得は重要ですからね」
「だが、実現性が高い事もまた事実だ。そこでだ……君には株式会社を立ち上げて貰い、期限を設けよう」
「期限?」
「五年間。それが君のタイムリミットだ。それまでに何らかの形で実績を残して貰おう。それが出来なければ、君は今後、経営方針に関わるな」
「クク、五年程度で何も出来まい」「目白の影響力を削るにいい機会だ」
「ふむ……案外、いけるかもしれんな。君はどうするつもりだ?」「私は全力で尻尾振りますね。その方が利益になりそうだ」
内心は分からないが一瞥したところ、賛成4 反対6くらいか……
思ったより賛成が多いな。
「気の長い話だな。オイ、クソ孫。一年間だ。それで成果を上げみせろ。見せてみな、お前の力をさ。お前になら、それが出来る筈だ」
「な!? 会長! 流石にそれは短すぎます!」
「ああ、やって見せるさクソジジイ。……証明してみせよう」
「なに!? 君はそれでいいのか!?」
「別に構いませんよ?」
「君は……いや、よそう。皆、異論はないな? ならば本日の会議はこれで終わりとする」
最終的には俺の意見が通った。
株式会社にして40%を財閥が、60%をメジロ家が保有する事が決まる。
さて……これで準備は万端。後は事を為すだけだ。
そう気合を入れていると爺さんが俺に近づいてくる。
「よぉクソ孫。大変な事になったなw」
「よく言う、誰がそうさせたのか」
「そっちの方が面白れぇだろ! ……お前に教えてやることがある。専務の件なんだがな……」
「あぁ分かってるよ。あの人は俺に対しての隔意ないって事だろ?」
「ほぉ……どうしてそう思う?」
「大方、自分が旗印になって俺へのヘイトを集めて、実績を積ませて俺の発言力を高めようとしてんだろ?」
「なぁんだよ、つまんねえ奴だな。まぁ正解だ。サッサと引退して楽隠居になって曾孫と遊びたいってよ」
まぁだろうな。
あの人の目に特に俺への害意はなく、なんなら孫を見るような眼をしていた。
……そういえばメジロ家のパーティーで何回か会った事あったな。
子供の頃だったから忘れていた。その時も優しかった。
なんならジジイよりも優しかったわ。
「さっきは聞いてなかったが会社のメンツは決まってんのか?」
「前に話したツレ共だよ。社員とかは、まだだけどな」
「……お前もメジロの特性がしっかり遺伝しているようだな」
「あぁ? メジロの特性? なんだよそれ」
まぁた変なワードが出て来やがった。
メジロ家ってなんなの? ビックリ箱かなんかなの?
一回色々と検査した方がよくない?
「お前、ウチが入婿が多い事に疑問を抱くか?」
「は? 入婿なんて別に普通だろ」
このジジイ何言ってんだ? 今、ウチに居る親世代の男なんて親父殿以外は入婿じゃねぇか。
しかも、その大体が元トレーナーとかが大半だろ? ……トレセンって婚活会場かなんかか?
たづなさんも新人トレーナーとくっついてたな……それもあって最近は飲みに行ってない。
たづなさんには、本当に世話になったからな……幸せになって欲しい。
「あのな、世間一般だと嫁に行くのが基本的に普通なんだよ」
「はぁ? そんなの知ってるわ。だからどうし……アレ?」
そういえばおかしくね? 俺の知る限り、ウチで嫁に行った人いなくね?
一般常識を知っている筈なのに、ウチの状況に疑問を抱いていなかった……
なんかゾワッとした。意味が分かると怖い話かなんかか?
「ウチの一族な、基本的に気に入った相手を自然と一族に取り込もうとする。多分、お前が可愛い孫娘達を全員を誑し込まな無けりゃ、そいつらに宛がって取り込んでただろ?」
「言い方ぁ!! ……なら俺がしている事は、その特性って事か?」
「まぁ、そうだな」
爺さんの言葉に俺は、なにも言えなかった。
メジロ家の親戚の中でアルダン達以外の適齢期の女性が居れば、確実に紹介していただろう。
いや、正直に言おう。
爺やにメジロの分家の方で適齢期の女性を探って貰って、もう既にピックアップ済みだった。
勿論、悪意や害意は無い。分家だから強制で宛がうつもりも無かった。
だが意識しない様にしていたが、完全な善意だけでは無かった。
……俺がしている事は、何なんだ?
結局、アイツ等をメジロ家に取り込むという自己満足の為だったのか?
「だがそれの何が悪い?」
「えぇ……散々語っておいてそれぇ……?」
「強制的にって訳じゃねぇし、不幸を願ってる訳でもねぇだろ? だから別にどうでもいいだろ」
「……たしかに!」
「お前の望むようにやってみろよ。それがきっと一番上手くいく」
元々そのつもりだよ。
まぁ見てろよ。新たな地平を見せてやる。
Allegory-Manipulate-System
通称AMS。
ヘッドギアを装着し脳波を感知して義肢を制御する。
この機構を用いることで、従来の義肢とは異なり、非常に精密な機体制御が可能となる。
事故などで失った四肢の代わりになり、AMS義肢を纏わせる事で切除せずとも使用可能。
慣熟すれば歩行困難になったウマ娘でさえが再び走れるようになる。
AMS適性なしでも使用でき、適性持ちは触覚すら感じるというオーバーテクノロジーの塊。
余裕を持って期限の一年を迎え、実績を叩きつけて反対をしていた役員を黙らせた。
……まぁそりゃ勝算しかない勝負なんだ、結果としては予想通りに落ち着いた。
これにより、役員会での俺の発言力が高まったが、正直そこはどうでもいい。
「経営も順調だな。次はどうする?」
「そうだねぇ。まだリソースはあるし違う事にも挑戦するのも面白いかもね」
「オレは特にない」
「……なぁお前等。宇宙目指さねぇか?」
俺の提案に、荒谷達はキョトンとした顔をさせていた。
しばらくして意味を理解したのだろう、悪ガキ染みた笑顔でニヤリと笑った。
きっと俺も同じような顔をしているだろう。
「いいじゃねぇか! 面白そうだ! ついでにコロニーも作っちまえ!」
「まったく、何処まで行くつもりだい? 本当に君と一緒に居ると飽きないよ」
「お前はロマンが過ぎるな……挑戦か。新しい……惹かれるな」
「決まりだな! 次の目標は宇宙というフロンティア! 成長と野心の新しい時代の幕開けだ!」
俺はお前等を救う事が出来ただろうか?
正直、メジロ家の特性とか、恩返しだとかはもうどうでもいい。
ただお前等とまだ見ぬ地平を見てみたいだけだ。
そうそう、気が付いてると思うけど、一応言っておく。
──俺は強欲なんだ、手にした宝物は絶対に手放さない──
バ場は良での発表。芝の状態もまずまずのようです。