夏が過ぎ朝方は少し肌寒さを感じ始める、今日この頃……
あたしは駅のロータリーで着替え等をスポーツバッグに入れ、お兄さんを待っている。
秋のレースが本格化する前に、リフレッシュの為にお兄さんが某県のリゾート施設に誘ってくれた。
お兄さんの家に泊まる事はあるけど、泊り掛けは初めてだ……ドキドキする。
SMSの通知音がなりウマホを取り出すと、お兄さんから着いたと連絡が有った。
キョロキョロと周囲を探すと、見覚えのある車を見つける。
運転席を覗き込むと、お兄さんが笑顔で手を振ってくれている。
「おはようライアン。今日も可愛いな」
「おはようございます! お兄さんもカッコイイよ!」
「ハハハ、世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないよ! この車はメジロ家のだったよね?」
前にお爺様がこの車を整備しているのを見たことがある。
お爺様、車大好きだからなぁ……
「あぁ、借りて来た。車買ってもそんなに俺は乗らないからな……」
「そういえばお兄さんが運転するんだね……大丈夫?」
「ペーパードライバーじゃないから安心しろ。流石に爺や同伴のデートじゃ嫌だろ」
「アハハ……流石にね」
爺やにはお世話になってるし、好きだけど流石にデートの時はお兄さんを独り占めしたい。
本当は……ずっとあたしだけで独り占めしたいけど……それは出来ない。
他の子達の想いが痛い程、解っているから
「上に羽織る物は持ってきたか?」
「うん! 言われた通りに持ってきたよ! でも昼はまだ温かいよ?」
「今から行く所は標高が高いから、昼でも結構寒いんだよ」
「そうなんだ……」
お兄さんに言われた通りにちゃんと厚手のカーディガンを持ってきた。
でもちょっと失敗したかな? なんて思ってる。
アスリートとしては論外だけど、抱きしめて温めて欲しい……なんて。
「まぁそれでも寒かったら、俺が抱きしめてやるよ」
「……お兄さんには敵わないなぁ」
あたしの想いを察してくれて、それに応えてくれる。
誰かを思いやる事が出来る素敵な人……本当に大好きだ。
「そういえば、何でこの時期なの?」
「オフシーズンだから、そんなに人が多くないんだ。ライアンは有名人だし美人だから注目され過ぎたらリフレッシュになんねぇだろ?」
「マックイーン達なら分かるけど、あたしは美人なんかじゃないよ……」
「お前はまったく……ライアンは美人だよ。さっきだって色んな男共に見られてたぞ?」
「え? そんな事ないよ! あたしなんか……」
「……はーい。そういうあたしなんかって言う悪い子には罰ゲームしまーす」
「ば、罰ゲーム? な、なにするの?」
お兄さんの事だから、あたしが嫌がる事はしないんだろうけど……
本当に何をするんだろう……?
「赤信号で止まる度に、お前にキスするから逃げるな」
「………………はぇ?」
赤信号に捕まる度にキスをされた。
お兄さんは運転席から顔をあたしに近づけ、目で早くキスしろと訴え掛けて来る。
最初の内は恥ずかしくて出来ないと言っていたけれど、根負けしてあたしからキスをする。
あたしからのキスに、満足そうに笑うお兄さんの顔が可愛かった……
でも恥ずかしいと思ったのは最初だけで、最後の方はあたしの方からキスをしたがっていた。
ただ、不思議なもので望むと赤信号に捕まる事も無くスムーズに高速道路に入ってしまう、
流石に高速道路では危険なのでキスが出来ない……罰ゲームになってないなぁ。
早い時間から向かった事もあり渋滞に捕まる事も無くスムーズに進み、目的地にだいぶ近づいた。
休憩の為、サービスエリアに入ると高速道路でキスを出来なかった分を取り戻す様にキスをした。
10分程してようやく満足したので車を降りる……ウソ……本当はもっとしていたかった。
けれど、これ以上は我慢できなくなるから、後ろ髪を引かれたけど頑張って車を降りた。
「背中がバキバキだぜ」
「お兄さん、運転お疲れ様。待ってて、珈琲を買ってくるよ」
「いや、俺も行くわ。休憩がてら売店でも冷やかそうぜ」
お兄さんはそう言って首を鳴らしながら、あたしの手を握ってくれる。
ギュッと握りしめると、握り返してくれる。
手と心が温かくなる。
「おー、これお土産にどうだ? ここら辺限定のゴーフレット」
「……いいと思うよ?」
「荷物になるから帰りに買うか」
「ハハ……そうだね」
「……ライアンはゴーフレット嫌いだったか?」
「そんな事ないよ?」
「……? そうか。食い方に悩むよな、デカいゴーフレットだと。小さいのにしとくか」
「お兄さんはゴーフレット好きなの?」
「いや別に? 洋菓子ならフィナンシェが好きだな」
上手く誤魔化せたかな?
お兄さんは優しいから他の子達の為にお土産を買ってあげるのだろう。
今はあたしと居るのに、他の子達の事を考えて……
我儘なんだろうけど……あたしだけを見て欲しい。
あたしは本当に嫌な女だ。
「さて、そろそろ行くとするか」
「あ、うん」
「このままだと早いな……ライアンはソフトクリームって好きか?」
「え? あんまり食べないけど好きだよ?」
「なら、丁度いいか。チェックインよりも先に食いに行こう」
高速道路から降り、しばらく車を走らせると広大な牧場に着く。
高原にある牧場という事もあり、肌寒さを感じ持ってきた厚手のカーディガンを羽織る。
牛を見ながら、牧場に併設された売店で買ったソフトクリームを食べる。
「濃厚かと思ったけど、意外とサッパリしてるな」
「うん! 美味しいね! あ、牛が寄ってきた……可愛い」
「…………」
ソフトクリームを食べた事もあり体が冷えてくる。
肌寒さもありブルりと体が震える。……流石に体を冷やし過ぎかな?
「……ほらおいでライアン」
「……うん」
それに気が付いたお兄さんがあたしの手を取り後ろからギュッと抱きしめられる。
背中越しに感じるお兄さんの体温があたしを温めてくれる。
あぁ幸せだなぁとしみじみと感じる。
「この後はどうする?」
「もうちょっとこのままで……居たいです」
「了解。しばらくしたらチェックインしに行こうな」
またそうやって、あたしの精神力を試すような事を……
断腸の想いで満足したと嘘をつくと、再び車に乗りしばらく走ると今日泊まる施設に着く。
いくつかのショップと一体型のリゾートという事で、独特な雰囲気を感じさせる。
チェックインを済ませ部屋に荷物を置くと、お兄さんが話しかけて来る。
「さて荷物も置いたし、飯に行くか?」
「それよりもプールに行こうよ! 波のプール楽しみなんだ!」
それとご飯を食べて膨らんだお腹を見られたくないからね。
受付を済ませ、更衣室へ入り持ってきた水着を取り出す。
……お兄さんに見せる為に買った黄緑色のタイサイドビキニ。
アイネスはこれが可愛いって言ってくれたけど……やっぱり攻め過ぎじゃないかな?
今になって恥ずかしくなって来た! どうしよう!?
でも、あんまりお兄さんを待たせるべきじゃないよね?
……よし! 女は度胸だ!
室内プールなのに打ち寄せる波があって、ビーチを模して作ってあるから開放感が凄いや!
「おぉ来たかライア……」
「お待たせお兄さん。 変じゃない?」
「……凄い似合ってる。可愛いよ」
「えへへ、良かった! お兄さんも……その、カッコいいよ」
群青色のサーフパンツを着たお兄さん。
お兄さんの見慣れた筈の筋肉質な上半身から目が離せない……
パーカーか何かを着てくれればいいのに……周り女の人に見られている。
……この人はあたしのモノだと知らしめるように腕を組む。
お兄さんは笑ってあたしを抱きしめてくれて、額にキスをしてくれた。
いつもなら人前でなんて恥ずかしくて照れていたのに、今は唯々嬉しい。
お兄さんを見ていた女に、見せつける様に唇へのキスを強請る。
なんて醜い独占欲だろう……あたしってこんなに嫉妬深かったんだ。
少し驚いた顔をしたお兄さんだけど、軽く幾度も口付けをしてくれた。
お兄さんはあたしの気が済むまでバードキスをしてくれた。
……本当はもっとして欲しいけれど、外にいる事を思い出した。
きっと今あたしの顔は真っ赤になっているだろう。
頭と顔を冷やす為に、お兄さんと一緒に波のプールで泳ぐ。
まぁ流石に今の水着で、トレーニング程泳げないので軽く泳いだりプカプカと浮いたり、波が出る時間になると二人で手を繋いで波に逆らったり、ビート板をボディボード代わりにして遊んだ。
そういえば、トレーニング以外でプールで遊んだのって、いつぶりだろう?
久しぶりだからか、本当に楽しかった。
一通り遊んで休憩の為にビーチチェアへ向かって、腕を組んでプールの波打ち際を歩いていると、サウナルームを見つける。
サウナで汗を流すのもいいかもなぁ……お兄さんはどうだろ?
それに一緒にサウナに入るなんて経験無いから、ちょっと一緒に入ってみたい。
「お兄さんサウナだって! ここなら一緒に入れるね!」
「あぁ……サウナかぁ……」
「あれ? 嫌いだったっけ?」
「別に嫌いではないんだが……」
お兄さんは少し嫌そうな顔をしている……なんだろう?
もしかして、あたしと入るのは嫌なのかな……?
そうだとしたら悲しい……
「あー言っておくけど、別にライアンと一緒ってのが嫌な訳じゃねぇからな」
「……そっか。よかった」
それを聞いて安心した。
お兄さんがそういう事を言わないって事は分かっているけど、それでも不安になる。
優しい太陽の様な貴方がメジロ家に戻って本当にあたしの心の雨は止んだ。
それでも時折、臆病者な自分が顔を覗かせる。
折角お兄さんと遊びに来ているんだから、こんな事で暗くなっちゃダメだ!
サウナに近寄ってみると看板が設置していて何かが書いてある。
えーっと、なになに?
「あ、世界のサウナフェアだって! ロシア式みたいだ……入っ「待て、ライアン」……どうかしたの?」
「俺が先に中の様子を見る。ライアン……お前は地獄を見る必要はない」
「地獄って……そんな大げさな」
「思い過ごしなら……それでよし」
そもそも、サウナで地獄って何だろう? 高温サウナでもあたしは平気なんだけどなぁ……
お兄さんはサウナの扉をゆっくりと少しだけ開け、中の様子を伺っている。
もっとぉぉおぉ! うぬぅああぁバン!
扉を乱暴に閉めるとお兄さんはあたしに向かって笑顔を向けて来た。
なんだろう……獣みたいな声が聞こえた気がする……
「ライアン! サウナは今度にしよう! な!」
「アッハイ」
……お兄さんの目は全く笑っていなかった。
あの後はプールで普通に遊び、サウナは明日一緒に行く事を約束した。
結局、あれは何だったんだろう?
お兄さんは“知るべきでない事もある。敢えて近づくなど愚かな者の仕業よ……”と言っていた。
……お兄さんはたまに大仰な言い方するよね。
目一杯プールで遊び尽くし、日も暮れ始めた頃にお兄さんが食事をしに車を出してくれた。
心地良い疲労感を感じながら、お兄さんと話していると目的地に着く。
庭園が取り囲む欧州風の建物に着く。
人気なレストランみたいで世間的に休みという事も有り、広い店ながらほぼ満席状態だった。
お兄さんは予約をしてくれていたらしく、スムーズに席に案内された。
「この辺はカレーの有名店が多くてな。ここが気になってたんだ」
「……お兄さんが気になったのはお酒でしょ?」
「バレた? 此処はどっちかっていうとドイツのビアホール的な感じの所だな」
逆になんでバレないと思ったの?
醸造施設とレストランを一体化してるし、なんなら入ってすぐに醸造タンクが見えるんだけど。
うーん……何にするか迷うなぁ。
カレーもいいけど、パスタもいいかも……ステーキもあるのか。
いや、スタンダードにカレーにしておこう。飲み物は紅茶でいいかな?
醸造タンクを置いてだけあってクラフトビールのメニューも豊富だ。……一杯目専用のビールってなんだろう?
お兄さん飲みたいだろうなぁ……あたしが運転できるなら良かったんだけど免許持ってないし……
「5種飲み比べセット……いやいや、我慢我慢。ライアンは決まったか?」
「うん! カレーにしておくよ。お兄さんは?」
「ライアンが迷ったのはどれだ?」
「え? トマトソースのパスタだけど……」
「OK、ならそれとオリーブでも頼むか。すみません注文お願いします」
「え? お兄さんが食べたい物を頼んでよ」
「いいじゃん。俺もパスタ気になってたしシェアしようぜ?」
「……ありがとね」
「え? なにが?」
……まったく、お兄さんは優しいね。
本当にその優しさに心癒されてるし、救われてる。
冷たい雨にずっとうたれ続けたからだろうか?
小さな事でも麗らかな日の光を浴びたように様に心が温かくなる。
先に来たオリーブを味わいながら料理が来るのを待っていると、しばらくしてカレーとパスタが運ばれてくる。
カレーとサラダがワンプレートにのり、その上に厚切りベーコンとレーズンバターが乗っている。
カレーを一口食べてみるとホテルの様な洗練された味ではなく、ただ純粋に上質な素材をひたすらに煮込んだ様に野蛮な美味しさ。
……なんて、評論家ぶってみたけど、メニュー表に書いてあっただけなんだよね。
でも、書かれた通りに美味しい。
「あ、このパスタめっちゃ美味い。……ほらライアン食ってみろよ」
お兄さんがパスタをフォークに巻きこちらに差し出してくる。
家の中ならまだしも、レストランであーんするのはハードルが高いんですが……
お兄さんは全く照れてないし。
……うう、恥ずかしいけど旅の恥は搔き捨て!
「い、頂きます。あーん」
あ、美味しい。アマトリチャーナになるのかな?
ベーコンのスモーク感と旨味が凝縮されていて、玉葱の香りと辛味がアクセントになってる。
唐辛子が少しだけ辛いけど、それがトマトソースを味を引き締めていて本当に美味しい。
「このパスタ美味しいね!」
「だろ? いやぁ……ビール飲みてぇ」
「もー本当にお酒好きなんだから……あの、お兄さんも……あ、あーん」
「お、サンキューな! あーん。カレーも美味い!」
……あれぇ? 全然恥ずかしがってない? もう少し戸惑ってもよくない?
そもそもお兄さんが照れる事あるの?
照れてるお兄さんかぁ……見てみたいかも
とりあえず食事中にあーんを沢山してみたけど全く照れてくれなかった……強敵過ぎる。
むむ……これは対策が必要かもしれない。
……結局、クラフトビールをお土産で買って配送を依頼していた。
お兄さんって本当にお酒好きだよね。
食事を終え、宿泊する部屋に戻ると穏やかに時間が過ぎる。
一緒に居て話をする。ただそれだけで心が満たされていく。
何となく備え付けの冊子を見ていると、気になるタイトルを見つける。
これって……
「なにか気になる物でも見つけたか?」
「あ、お兄さん……あたしが好きだった少女漫画の実写映画があるみたいで……」
「ならそれ見るか。なんてタイトルなんだ?」
「いいの? 恋愛映画だよ?」
「俺は恋愛映画が嫌いな訳じゃ無いからな? それにライアンが好きな物なんだろ? 俺もそれを見てみたいよ」
「そっか……それなら一緒に見よ!」
昔からずっと好きだった少女漫画……お兄さんが家を出てしまっている時に実写化された。
あんなに好きだったのに、何となく気が乗らなくて見ていなかった。
……いや、正直に言おう。
お兄さんを傷つけた、あたしなんかがそんなキラキラした恋愛映画を見る気にならなかった。
輝いてる美しい物語を、臆病者で醜い心のあたしが見るなんて自分が惨めに感じるから……
でも、お兄さんが帰って来てくれて、自分を見つめ直せた今なら見ても大丈夫かな?
ソファに二人で座り、お兄さんがあたしを後ろから抱きしめてくれる。
ドキドキとうるさい心臓の音が聞かれてないかなぁ?
最初の内はハグで集中できなかったけど、映画が進むにつれて物語に引き込まれていた。
「はぁぁ~本当に素敵な話だったなぁ。実写ってちょっと不安だったけど全然大丈夫だった!」
「……そっか、ライアンが喜んでくれてよかったよ」
「……? お兄さんどうかした? やっぱりつまらなかったかな?」
「別にそうじゃないんだけどな……」
なんだろう? 怒ってる程じゃないけど不機嫌?
やっぱり、つまらなかったかな?
無理に付き合わせちゃって悪いことしたなぁ……
「何回生まれ変わっても真っ先にお前を見つけてあげるよ……」
「あ……ふふ、映画のセリフ♪ でもどうしたの? いつもと違うよ? 」
後ろからハグされながら囁かれる原作で一番好きなセリフ。
状況は違うけど、あたしに向けて言ってくれる事が嬉しい。
お兄さんがあたしをギュッと強く抱きしめる。
「……ただ嫉妬してるだけだ」
「そっか嫉妬してるんだね。……え?」
ん? 嫉妬? 何に対して? そもそも、嫉妬する様な事あった?
それにお兄さんが嫉妬? いつも笑ってるイメージしかない。
いや結構、焦ったり、叫んだり、困ったりしてるな……
でも嫉妬しているのはイメージ出来ない。
「アハハ。嫉妬するなんて、お兄さんは冗談が下手だね」
「ライアン……俺だって嫉妬する」
あ、これ本気で言ってる。
お兄さんが乱暴にソファにあたしを押し倒す。
少し顔を動かせばキスできる距離。
お兄さんの瞳は真剣で少しジットリしている視線。
その視線はあたしを……あたしだけを見ている……
「駅でライアンを他の奴らに見られて嫉妬した。他の男にお前の水着姿を見られて嫉妬して見せつける様にキスをした。レストランでもそうだ。牛にすら嫉妬した」
「……え? え? あれ? どういう事?」
「今は映画の主役の男に嫉妬してる」
お兄さんの囁き声は熱を帯び、響くような重低音があたしの耳元に届く。
お兄さんがあたしの為に嫉妬してくれている。
あたしと同じ醜い
……ゾクゾクと快感が背筋を昇る。
……キュンキュンと胎が疼く。
快感で自然と涙が溢れ視界が歪む。
それでもお兄さんの顔だけはクリアだ。
お兄さんの視線も甘い言葉も体温も……全部独り占めして喜んでる。
本当に貴方はあたしにとっての特別。
想いと快感がぐちゃぐちゃに混ざり合って、心から溢れて制御が出来ない。
制御するつもりも……最初から無いのかもしれない。
「ライアン。お前は俺のモノだ。身体も心も魂さえも……全て」
「え……嘘♡ ダメぇ……ッ! 声だけでそんな……ッ♡……あッ♡ ああぁッ♡」
世界が暗転したように視界が黒く染まる。
溶けゆく意識の中、お兄さんの体温だけ感じていた。
唯々それに幸せを感じていた。
「おはよう。俺の可憐で愛らしいライアン」
「……おはよ。あたしのカッコいい愛おしい貴方」
ここは……ベッド?
そっか……昨日ドキドキし過ぎて気絶しちゃったんだ。
勿体ない事しちゃったなぁ……あたしのバカ。
「昨日のは……その、忘れてくれよ。嫉妬と独占欲でおかしくなってた」
「…………ふふ。絶対に忘れてあげない!」
「……え? あれ? ライアンさん? もしかして反抗期!? 忘れて下さいお願いします!」
「うふふ、ダァメ♡」
お兄さんの照れる顔も、恥ずかしがる顔も、焦る顔も、拗ねる顔も……
アルダンさんにも、パーマーにも、ドーベルにも、マックイーンにも、ゴールドシップにも……
今は他の誰にも渡さない。今だけはあたしのモノ♡
──春の麗らかな太陽のような貴方を、今だけは独り占めしていいですか? ──
小雨が降っていますが、バ場は良……?の発表です。