「改めて誕生日おめでとうアルダン」
「ありがとうございます。兄様」
先日、私は誕生日を迎え、成人になった。
誕生日当日は、メジロ家でパーティーが盛大に開かれ親戚一同がお祝いをしてくれた。
特にお婆様には、メジロ家の成人としての心構えを説かれた。
心から私を想っての言葉は、正しく金言といっていいでしょう。
兄様を絶対に逃すなとも言われましたが……それについては言われるまでも無い事です。
もう二度と兄様の元から離れる事など、ありはしない。
あの子達からも、いっぱいお祝いをしてもらった。
パーマーは朗らかで優しく、温かみを感じさせる太陽の様な香りの香水。
ドーベルは白い文字盤の自動巻きのシックな小さな腕時計。
ライアンは亜麻色のフェルトのウマ娘用のつば広ハット。
マックイーンは淡紅藤色に染めたブライドルレザーの長財布
丁度、兄様と対になる様に……本当に私は周囲の方々に恵まれている。
兄様もプレゼントを買ってくれると言ってくれたが、それは待ってもらった。
「しっかし、良かったのか? 誕生日プレゼントが俺とbarに行きたいなんて……別にプレゼントとしてじゃなくても一緒に行くが?」
「いえ、いいのです。前から決めていたので……成人したら兄様にbar連れていってもらうと」
「まぁアルダンがいいなら、俺は別にいいけどよ……それじゃ行こうか」
「えぇ、そうしましょう」
兄様と腕を組み、撓垂れ掛りながら歩き出す。
歩調は私に合わせてくれてゆっくりと……
兄様の体温を感じながら歩くのは本当に幸せですね。
しばらく歩き、兄様に連れて来られたのは小洒落たバル。
「……ここは?」
「俺の学生時代からの行きつけのイタリアンバルだよ」
兄様の行きつけ? しかも、学生時代からの?
非常に気になる。気になるのですが私の希望はbar。
ここでお酒を飲むのでしょうか?
「barに行かないのですか?」
「腹に何も入ってないと悪酔いするし、胃が荒れるんだよ」
「そうなのですか? 兄様は博学ですね」
「経験済みだ……」
兄様は遠くを見るような目つきで自嘲的に笑った。
あっ……ま、まぁ何事も経験とも言いますし!
ダメです、全然フォローになっていません……
「まぁ、そういう訳で先に飯を食おう」
「かしこまりました」
「店長どうも。予約した目白です」
「ん? あ、そっか君は目白になったんだったね。ハハ、慣れないなぁ。こちらの席へどうぞ」
店長さんだったのですね。
三十代程の年若い男性だったのでウェイターさんかと思いました。
まだ、兄様が母方の姓を名乗っていた時のお知り合いという事は二十代でお店を?
これは楽しみですね。
兄様が頼んでくれていたのは略式のコース料理。
前菜はスモークサーモンのブルスケッタ、サーモン自体の美味しさは勿論、燻製の香りが独特な風味を出している。パンのサクサクとした歯ごたえも楽しい。
スープはビシソワーズ、元がジャガイモとは思えない口当たり滑らか。それでいてジャガイモの味をしっかりと味わえる
魚料理は真鯛のポアレ、魚特有の生臭さは全くなく、ともすれば肉と勘違いしてしまう程の旨み。皮目の香ばしい香りもカリッとした食感も素晴らしい
口直しは洋ナシのソルベ、洋ナシの爽やかな甘さが口の中をサッパリとさせてくれる。
肉料理は牛肉のタリアータ、肉は柔らかく噛めば噛むほど肉の旨味が溢れ出て来る。バルサミコ酢の甘味と酸味、そしてローズマリーの清々しい香り。ルッコラの辛味とパルミジャーノチーズの塩味も合わさりとても美味しい。
デザートはパンナコッタ、生クリームのコク、牛乳の風味と蜂蜜の甘さ。ブルーベリーのソースの甘酸っぱさが上品に纏め上げている。
兄様はエスプレッソ、私は紅茶を飲みながら余韻に浸る。
「いやぁ凄く美味かった。いつも美味いけど段違いだ」
「そうですね……このお店にはよく来られるのですか?」
「あぁ、ここはリゾットカレーが絶品なんだ。今日はお前の誕生日だからコースにしてもらったけど、今度はそれも一緒に食べに来るか?」
「えぇ! 是非!」
ふふ、デートの約束が出来ました。
次回のデートに思いを馳せ、心躍る。
しばらく雑談をしていると兄様が立ち上がる。
「さて、それじゃそろそろ向かうか」
「ふふ、ワクワクしてます。barはよく行かれている所ですか?」
「いつも行っていたbarはもう閉店しちまってな。それに今日はアルダンのハレの日なんだ。俺の知る限り最上位のbarに行く」
バルから出て再び、しばらく歩いていると都内のホテルの前で兄様が立ち止まる。
此処は……兄様が帰って来たあの日のホテル。
そういえば、兄様が部屋に来る前にお爺様と一緒に飲まれていましたね。
ホテルに入り受付を済ませるとbarのある階へ向かう。
「お待ちしておりました。今代様、お嬢様」
「マスター、またお世話になります」
「本日はよろしくお願い致します」
初老のマスターさんが綺麗な一礼と共に私達を出迎えてくれる。
とても上品な方で柔和な笑顔は少し緊張していた私の心を解かして下さいました。
「……意外と早く約束を守られましたね」
「俺も予想外でしたけどね」
何やら私の知らない所でお約束をしていた様子……
むぅ……なんだか仲間外れの様で少し不満です。
表に出さない様にしていた筈ですが、マスターさんは目敏く気が付いた様で私へ水を向ける。
「お嬢様。私はしがないバーテンダーで御座います。お見知りおきを」
「あら? ご丁寧にありがとうございます。
「……今代様も存外……いえ或いは……」
私の自己紹介に何かを感じ取ったのか、マスターさんは私を見ながら何かを呟いている。
見定める様な視線ですが、不思議と不快感は無い。
「マスター……人の事情を詮索するとは、感心しないな」
「……これはご無礼を、あまりに甘そうな秘密だったのでついつい……私もまだ未熟者ですね」
「まったく……食えない人だ」
まるで男の世界だと言わんばかりのやり取りに、少し嫉妬してしまう。
私って狭量なのでしょうか?
「もう、兄様。男性同士だけでズルいです」
「おっと、失礼致しました。……さて私の本分を全うしましょう。何に致しますか?」
「俺はグレン〇ベットのロックを。アルダンは酒初めてだろ? ノンアルコールで頼むか?」
「いえ兄様。私、飲みたいカクテルがあるんです。x・y・zをください」
「お前、そんな強いカクテルを……まぁいいさ。彼女にチェイサーに、そうだな……シードルを」
「……かしこまりました。少々お待ちください」
初めてみるカクテルを作る姿に目を奪われた。
決して急いでいる訳ではないのに、その動作は無駄がなく洗練されて素早かった。
「愛するアルダンの新たな門出に……」
「それでは、兄様と過ごせる、この素敵な夜に……」
「「乾杯」」
カクテルグラスに口を付け傾ける。
口に含むお酒の初めての酒精。
口の中を突き刺すような、痛みにも似た刺激に瞳に涙が溜まる。
なんとか飲み込むと、食道を焼くような熱さ。
いまお酒が通っている場所がはっきりと解る。
胃に到達しても、なお熱く暴れているような
美味しくは感じなかった。それでも嬉しさがある。
少しでも兄様に近づけたという喜び。
たった一杯……いや一口で酩酊と世界が揺れる。
フワフワと肉体が覚束ない。
水中にいる体の様に、思考に抵抗を感じる。少し理性の箍が外れた様な気がする……
兄様は普段からこんなものを……?
「まったく……最初からそんなに強いカクテルを飲むからだ。寄こしな」
「あ……それは私の……」
「……柑橘類の爽やかさと甘み、そしてちょっぴりの苦みがアクセントになっていて美味い」
「……美味しいのですか? 私にはまだ分からない感覚です」
兄様が頼んでくれたチェイサー? と呼ばれるモノを少しずつ嚥下する。
あ、これもお酒なのですね……
林檎の爽やかさとアルコールの独特な香りと、外国の林檎のような酸味と渋みと仄かな甘味。
痛みに似た刺激が、じんわりと癒えていく。
そんな私の姿を、見守っている兄様が揶揄う様に微笑んでいる。
「アルコール慣れしてなければ、度数の高い酒なんてそんなもんだよ」
「そういうものなのですか? 兄様は苦も無く飲まれていますけれど……」
「散々飲んできたんだ、そりゃ慣れたさ……まぁ慣れた所で、別に偉くもなんともないがね」
私の言葉に兄様は笑いながらお道化ながら呟く。
私の事を励まそうと……しているわけではなく、これは本心から言っていますね。
「所詮、酒は何処まで行っても嗜好品だ。飲めたところで生きていく上で意味なんてねぇよ」
「……意味がない?」
あの……それってbarで言っていい事なのですか?
チラリとマスターさんの方を見てみると怒った様子は無く、聞こえて居るだろうに我関せずを装っている。
「あぁ、意味なんてないさ……だからこそ価値がある」
「価値がある……」
意味がないのに価値がある? どういう事でしょうか?
視界の端でマスターさんがニヤリと笑った気がした。
「これは持論だがな。生きるだけなら飯食って、寝て、子孫を残せばそれでいい。だがな……人間ってのは音楽を聴き、物語を読み、趣味に熱中する。それらは生きていくだけなら無意味だろ? だがそれらを価値が無いなんて言う奴はそうはいない」
「それは……そうですね」
成程、確かに言われてみれば“意味が無い”と“価値が無い”は同意義ではないかもしれません。
それこそ、私達ウマ娘のレースなど最たる例。
生きていく上で必要が無く、意味も無く、それでもなお観客は興奮し熱狂し価値を見出している。
「価値ってのは各々が見出す事だ。だからお前もお前自身で価値を決めてみな? それで何かを好きになるなら、それはきっと素敵な事だ。まぁ説教臭くなったが、お前の好きな様にしてみろって事だ。俺がそうであったようにな」
「私自身で価値を決める……?」
思えば、私の価値観を決めていたのはメジロ家だったかもしれない。
それが悪い事だとは思わない。
誰しも教育や環境によって、価値観を築き上げていくものでしょう。
そして成人した私は、自分の責任で物事を決めれるようになった。
きっと兄様は、私に人生の楽しみ方と責任の重さを教えてくれたのでしょう。
それは幼い頃、私を導いてくれた様に優しく微笑んで見守ってくれている。
「あぁ……そうそう自分の価値観の押し付けはやめておけ。それをすると下手すりゃ
「それは勿論、承知しています」
「そりゃなにより。俺はそれに気が付くまで、あのバ鹿共と殴り合いだったからな。ハハハ」
それほどまで感情をぶつけ合い、喧嘩をして、貶し合い、それでも間柄は断金。
一度お会いした事がありますが、その時の兄様の表情は心に焼き付いている。
信頼、仁、親愛、甘え、信用、友情、義……色々な感情が籠った表情。
嫉妬してしまいそう。……嘘、本当は嫉妬している。
兄様の大切な御友人に対して、深く嫉妬を抱いている。
私は無理矢理、思考を変える。そうしなければ嫉妬に狂った醜い表情になってしまうから。
「私の好きな様にですか……そうですね。私はそのカクテルを飲みきりたかったです」
「よく言う。その綺麗な瞳に涙を浮かべていたくせに」
「それでも飲みたかったです。折角、色々調べたのに……」
「……こんなもの飲まなくても、お前は俺のモノだ。そして、俺もお前のモノだよ……永遠にな」
「あ……」
私が永遠に兄様のモノ……そして、兄様が永遠に私のモノ……
ドクドクと全身に血流が巡る感覚……血が滾り体が熱くなる。
お酒を飲んだからでは決して無い。
天にも昇る様な感覚……あぁ……何処まで、何処まで貴方は私を悦ばせるおつもりですか?
もう、これ以上無いくらいに好きなのに……愛しているのに……
それでも、なお溢れ出る想い……この想いは何と名を付ければいいのでしょう?
好きでは到底不足していて、愛でも言葉が足りず、偏執にも似た、この想いの名は……?
「ねぇ兄様、我儘かもしれませんが、もう一つだけプレゼントを頂けませんか?」
「ん? 勿論だ。むしろプレゼントした気がしてなかったから丁度いいくらいだ。何か欲しい物でもあるのか?」
「……今日は私に気を遣わずに、貴方の好きな様になさってください」
「……はい?」
もう、私が秋波を送っているのに、分からないフリをするなんて……
本当にいけずな方ですね……女に皆まで言わせるなんて♡
今の想いをこの場で口にする……お酒も相まってクラクラする♡
「ですから、ケダモノの様に乱暴に私の事を、お「言わせねぇよ!?」してください」
あら? 聞き返されたので分かりやすく言い換えたのですが、遮られてしまいました。
兄様が頭を抱えてる……どうされたのでしょうか?
兄様は深いため息をつくと、ウィスキーを呷ると真剣な表情で私を見る。
じっと私を見詰めている兄様の瞳に、獣欲の炎が見え隠れする。
アハぁ♡……素敵♡
「……本当にそれでいいのか?」
「えぇ……それがいいのです」
「……後悔するなよ?」
「……はい」
いつも私の事を想ってくれている兄様。
壊れ物を扱うように優しく、傷つけない様に慎重に、緩やかで包み込むような愛
それを嬉しく思う気持ちは、決して嘘ではありません。
でも、私は野性的に、少し乱暴なくらいに扱って欲しいという思いも、また嘘ではありません。
「わかったよ……マスターありがとうございました。また近いうちに……」
「えぇ、次の機会を心よりお待ちしております」
「マスターさん、ご馳走様でした。初めてで不作法があったでしょうけれど、お許しください」
「いえいえ、とてもスマートでしたよ。それではアルダン様も……いい夜を」
部屋に着くと扉に押し付けられながら荒々しく唇を奪われる。
あぁ……貴方のモノだと実感できて心が満たされる。
手首押さえ付けられ、身動きを封じられる。
兄様の舌が私の口腔内を蹂躙される。
何時もとは違い余裕がない接吻。
それだけ私を強く求めてくれているという満足感。
僅かな時間すら惜しいと思ってくれているという充実感。
すぐ外に人が通って聞かれてしまうのではないかという背徳感。
獣の様なキスが終わり、ベッドへ誘われる。
私を引っ張るその手には、配慮というモノは一切なく少し痛い。
付き飛ばすような勢いでベッドに寝かされると一瞬兄様の動きが止まる。
疑問に思い視線の先を確認すると私の右脚があった。
貴方の瞳が私の右脚を捉える度に、ゾクゾクと背筋に快感が走ってしまう。
貴方の顔が私の右脚の事で後悔で歪むのを見る度に、暗い悦びを得てしまう。
貴方の手が私の右脚を労わるように這う度に、胎の奥底が蟻が這う様にムズムズとしてしまう。
貴方の唇が私の右脚にキスをする度に、脳髄の奥が震える様に気をやってしまう。
なんて私は度し難く愚かなんでしょう。
貴方が傷つく姿など見たくないと思っているのに……貴方のその表情に欲情している。
他の子達は見れない表情が私だけのモノと言うだけで……薄暗い悦びを感じている。
あぁ……胎の奥が疼く……たまらなく重く響く疼き。
その疼きを耐える為、自分の腹部を両手で押さえて隠そうとしました。
でも、隠そうとする腕を掴まれベッドに押し付けられ、兄様の瞳が私を貫く
ドロドロとした欲望をチラつかせ、燃え盛る獣欲を滾らせて……それでいて愛おしそうに。
あぁ……なんて綺麗なんでしょう。そこに私は吸い込まれそうな宇宙を見た気がする。
夜空の様な瞳に心を奪われて、魅入り、思考が出来ない。
私に出来る事は唯々、兄様からもたらされる
私のすべてを……身も心も……魂すらも貴方に捧げたい。
だからもっと、私を求めて下さい。
もっと首に血が出るほどに噛み締めて、貴方のモノである証を下さい。
もっと私の血を舐め取り、その身に取り込み、私の血で酔って下さい。
貴方の思うままに、願うままに、気の済むまで……
もっと、もっと、もっと、もっともっともっともっともっともっと……
どうか、この愚かな私を
あのG1レースを初めて勝利し、ウイニングライブを踊りきった時の様な……いえ、それ以上の心地良い疲れ。
朦朧としる意識が最後に捉えたのは貴方の愛おしい顔だった。
ふと目を覚ますと眩い朝焼けが私の瞳を刺す。
横を見ると兄様が、規則正しい寝息を立て寝ている。
あの宇宙の様な瞳は、今は瞼に隠されている。
あれ程、雄々しかった表情は、今は何処かあどけなく可愛らしい。
愛おしい想いが溢れ、起こさぬように兄様の頬を撫ぜる。
兄様の寝顔は安らかで、そこに痛苦は見えない。
ですが、私は知っているんです。
私達に見せる明るい笑顔の裏側に隠している苦悩を……
私達の前から消えた事を、貴方はいつも後悔している……
私達が引け目を感じている事を、貴方は気に病んでいると……
私達を傷つけたと、貴方が苦しんでいると……
私は兄様の為と嘯いて、無理をして二度と走れなくなった事で貴方を傷つけてしまった……
もう二度とターフの上を駆け抜ける事が出来ないこの身に、後悔が無いと言えば嘘になる。
私には勿体ないくらいの素敵な友人達と共に走れない事に、後悔が無いと言えば嘘になる。
どうしようもない程に、私の本能はレースを……あの戦場を渇望している。
兄様の為ならこの身体など惜しくないと誓ったのに……本当に私はどうしようもない愚者です。
それでも……私はこの壊れた右脚を誇りに思う。
兄様は私を手に入れた時に、誇らしく思って頂けたでしょうか?
……きっと思ってくれていないでしょう。
貴方は優しく愛の深い方だから、自分のせいで傷ついたと思い、心の傷になっているでしょう。
事が済んだ後にそこに気が付くなど……私は救われない程、無様だ。
朝焼けに照らされた愛おしい貴方の唇に、私の
いつか見た夢の様に、貴方と貴方との子と……そしてあの子達と笑い合う
体温を感じたくて貴方の体にそっと寄り添い、再び眠りに落ちる。
三女神様……どうかこの人を守り、癒してください。
この人を囚える
昼に身支度を整え、チェックアウトの準備をする。
私が身支度を終えると、兄様が花束を贈ってくれた。
「本当は昨日サプライズで渡す予定だったんだけどな……おめでとうアルダン」
「ありがとうございます。本当に兄様には色々と貰ってばっかりで……」
「んなこたぁ、いいんだよ。俺がしたい様にしてるだけだ」
兄様から頂いたのは、21本の薔薇の花束。
21本の薔薇の花束の意味は“心からの愛”
しかもご自身で育てていた薔薇を、私の誕生日の為に温室を作り開花を早めてくれたらしい。
……本当に素敵な想いが詰まったプレゼント。
その想いが私の胸をキツく切なく甘く締め付ける。
「ホントは成人だし、20本の薔薇の花束にしようと思ったんだがな……意味がなぁ」
「ふふ、お気遣いいただきありがとうございます。……あら? 一本だけ黒い薔薇?」
「あーそれだけ花屋にしてもらったんだ。チョコ風のワックスでコーティングしてもらった」
「本当に……本当にありがとう……ございます」
黒薔薇の花言葉は“憎しみ”“恨み”
ですが状況的に、この言葉は除外。
残るの意味は“決して滅びることのない愛”や“永遠の愛”
本当に素敵な言葉で思わず頬が赤くなる。
そして……“貴方はあくまで私のモノ”
本当は良くない意味の筈の花言葉。
その言葉が私の心を、鋭く無慈悲に甘美に貫いた。
きっと貴方の事だから、意図してではないでしょうけれど……
「それじゃあ、行こうか
「……えぇ、
ねぇ兄様……私は今、涙が出る程に幸せです。
だから……だからね。愛おしい私の兄様………………
──私をもっともっともーっと貴方の色に染め上げて下さい。きっとそれが貴方の水銀のような
今、情報が来ました。バ場状態は稍重から良……?に持ち直したようです。