メジロ家の愛のターフのバ場事情   作:ボブソン888

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土日に投稿といったな……あれは嘘だ


綺麗で素敵な緑の美人

「じゃお先っス……」

「おぉ、お疲れ」

 

 俺は今日のバイトを終え帰路についた。

 本当に疲れた……マジで……

 来る日も来る日も延々とタルト生地を作って、クレームダマンド作って、人参を飾り切りをして、グラッセを作って……

 当初の予定よりもバズった。

 テレビにも取り上げられそのせいで数量を増やす事が決定。

 そして俺が酷使される。

 時給はアップしたが、それ以上に忙しい……

 労働とは斯くも過酷なモノなのか……

 まぁその甲斐もあり豊さんに家賃を渡せるようになったのだが。

 

 とりあえずゴールドシップにあげる分は確保した。

 アイツも女の子だから甘い物には目がない。

 フフフ、きっと喜んでくれるだろう。

 

「あ、あの! もうローザキャロットってもう売り切れちゃいましたか?」

「はい? えぇ、有難いことに売り切れです」

「そうですよねぇ、どうしよう……」

 

 俺が店から出ると女性が走ってきて店の前で止まり俺に話しかけて来た。

 第一印象は緑の美人。

 

「どうされました? ご予約は御座いますか?」

 

 バイトは終わっているが流石に対応しないのもなぁ……

 という訳で、しょうがないのでサービス残業。

 

「実は予約は一杯で……当日のキャンセルがあればと思い仕事が終わり次第に来たんですけど……」

「あーそうですね……キャンセル自体はあったんですけど売れちゃいましたね」

 

 キャンセル自体はあったのだが丁度その時にいた常連のマダムが買っていった。

 

「そうですよね……ごめんなさい理事長……」

 

 えぇ……そんなに悲しまれると凄い居たたまれないんだけどぉ……

 ……まぁゴールドシップには申し訳ないが流石にこれを見逃すのはなぁ……

 

「あの……これもしよければ差し上げますよ」

「え? コレって⁉」

 

 俺はゴールドシップにあげる予定のタルトを緑の美人に渡した。

 

「いいんですか⁉」

「ええ、まぁ大丈夫ですよ。その代わりにまたのご利用をお待ちしています」

「それはもちろん! ……でも貴方が買ったものでは……?」

「あー大丈夫です。個人的に研究目的で取って置いた物なので……あーえっと」

「私は駿川たづなっていいます。たづなって呼んで下さい」

「そうですか。じゃあたづなさん、俺はこれで失礼しますね」

 

 ゴールドシップには今度、個人的に何か作ってやるか。

 アイツが物凄い楽しみにしていたから許してくれるか分からないが……

 最悪、俺が拉致られればいいだけだし。

 拉致に慣れている自分が悲しい……

 

「あ、待ってください! お金を……!」

「いえ、お気になさらず……」

「なら! せめてお礼をさせて下さい!」

「本当に大丈夫なんで……あの、たづなさん……離してくれますか? ねぇ……離して? たづなさん、ちょ……すごい力だ!」

 

 たづなさんは俺の腕を掴み離さない……

 あれ? マジで離さないなこの人! 

 

「お礼を! させて! ください!」

「いらないから! そんなのいらないから! あ、めっちゃ痛い! イタタタタ! 離して! それが一番のお礼だから!」

 

 アカン! めっちゃ力強い! 骨がミシミシ言ってる! ミシミシ言ってるから! 

 

「それじゃお礼になりませんから!」

「現在進行形で無礼だよ! なんで関節キメてんだテメェ! 合気でも抜けれねぇだろうが! たづなぁ! 離せぇ!」

 

 たづなさんは俺の肘をその怪力でロックしてる。

 一応、抜け方はあるが、それをすると流石にタルトの箱が壊れる! 

 アッカーン! 腕が折れるぅ! 

 

「お礼!」

「あ、ダメなやつだコレ! 絶対に意思を曲げないやつだ! わかった! お礼してもらうから離して! 腕が折れる! 曲がっちゃダメな方に曲がっちゃうから!」

 

 なんて頑固な人だ! 普通そこまでしてお礼しようとしねぇだろ! 

 RPGの無限ループとちゃうねんぞ! 

 

「はい! お礼させて頂きますね。それにしても私みたいな手弱女に大袈裟ですねぇ」

「あー折れるかと思った。お前マジでふざけんなよ? なにが手弱女だこの駄バが!」

「あ”?」

 

 俺の言葉に地獄の獄卒も真っ青な重低音を響かせる……めっちゃコワイ!  

 

「あ、すみませんでした。たづなさんは綺麗で素敵なウマ娘です」

「いえいえそんなことありませんよ。それにウマ娘ではありませんよ?」

「……そうですか。俺の勘違いですね。失礼しました。綺麗で素敵な美人のたづなさん」

 

 ……人には色々な事情もある。

 深く詮索しない方がいいだろ。

 

「ありがとうございます。そんなに褒められると照れてしまいます」

「じゃぁそういう事で……」

「逃がしませんよ?」

 

 折角いい感じにフェードアウトしようと思ったのに通じなかった……

 

「……ッチ。はぁホントにラーメンとかでいいんで……っぐは! なんだ!?」

 

 その時、俺の体に物凄いの勢いで重い何かがぶつかって来た。

 とんでもない衝撃にたたらを踏むが体幹をなんとか維持して体勢が保つ。

 

「何よその女! 俺の瞳に乾杯した夜を忘れたの!? 酷いわ!」

「オレと一緒の時が一番楽しいと言っていた。あれは嘘だったのか?」

 

 俺に抱き着きウザ絡みしてきたのは荒谷と烏丸だった。

 あまりの事態に思考が一瞬停止する。

 何やっとんねん……ッ! くねくねするな! しなをつくるな! キモォ! 

 

「気安く触らないでくれるかしらん! この泥棒ポニーちゃんたちぃ! ……あ、やべぇ」

 

 よくわからないオネェ口調で話しかけて来たゴールドシップだったが小声で何かを言うと全力で走り去っていった。

 あいつはなにがしたかったんだ? 

 

「なんだよアイツつまんねえな。最後までやれよ」

「走り去って行ったな。やはりウマ娘、速い」

 

 こいつらの言い方的にまだなにかあったんだろう。

 しかしやけにゴールドシップは俺の方を見て焦っていたな……何かに怯えるように。

 後ろにはたづなさんくらいしかいないのだが? 

 まぁ角度的にたづなさんはゴールドシップを見ていないだろうけど……

 

「で? マジでなんだよ。恥ずかしいから止めろや」

「だってお前が逆ナンされてんだもん。邪魔しようと思って」

「オレはこいつに誘われてやった」

「逆ナンじゃねぇよ……」

 

 仮に逆ナンだとしても邪魔するんじゃねぇよ。

 お前ら……ほんまにそうとこやぞ。

 

「うふふ、仲がいいんですね」

「……えぇまぁ。悪友ですけどね」

 

 クスクスと笑われてしまった。

 少しばつが悪い。

 

「で? 誰なん?」

「私は駿川たづなっていいます。彼には限定ケーキを譲っていただいて、お礼をしようとしていたんです」

「やはり逆ナンでは?」

「お礼ですよ? そうだお二人も一緒に行きませんか? そうですねぇ、バルなんてどうでしょう?」

 

 烏丸の言葉をスルーしてたづなさんは可愛らしく手を叩き二人も誘う。

 それを聞いて荒谷はパッと笑顔になる。

 

「え? いいんすか? やったぜ! ただ酒! ただ酒!」

「ふむ、御相伴に与ろう」

「たづなさんいいんですか? それだとお礼が過ぎますよ?」

「いえいえ、私が楽しみたいだけですから」

「でもケーキが……」

「あ、そうですね……持って帰るのも時間が掛かりますし……どうしましょう?」

 

 困り顔のたづなさんはオロオロとしながらタルトの箱を右に左に行き来させる。

 実際問題タルトをそのまま放置するのは衛生的に避けたい。

 

「あーそういう事ならウチで預かっといてやるよ」

「社長? いいんですか? ってか聞いてたんですか?」

「そりゃあれだけ店の前で騒げばな」

 

 いつの間にか俺たちの後ろに立っていた社長。

 そりゃここまで大騒ぎすれば聞こえるか。

 

「お、仁ちゃん久しぶり!」

「元オーナーもお久しぶりです」

「え? 面識あるのか荒谷? しかも元オーナー?」

「オーナーってよりも出資者ってのが正解かな」

「店の立ち上げの時に世話になってな。まぁ明日にでも来てくれたら渡すよ」

 

 本当にこいつは何者だよ。

 最近流行りの学生起業的なものなのか? 

 それにしてもこいつの金儲けに対する嗅覚は何なんだ。

 

 

「それなら明日の分を取り置きしておけばいいのでは?」

「もう人参のグラッセのストックがないだろ。しばらくは無理だ」

「あーそういえば豊さんの人参も品切れでしたね」

「そーゆーこった。ホレ、営業妨害だから冷蔵庫に入れてサッサと行け」

「うぃーッス」

 

 まあそういう事ならタルトも悪くならないだろうと店の冷蔵庫に入れて戻ってくると社長がナンパしているのが聞こえてきた。

 

「ありがとうございます。何から何まで!」

「美人の頼みですからね! 任せてください! 今度個人的にお酒でも如何です? いいbarをしってるんですよ!」

「社長……奥さんにチクっときますね!」

「ゴメン、やめてくれる?」

 

 社長は真顔だった

 

 

 

 

「じゃあこの出会いを祝しまして乾杯!」

「「「カンパーイ!」」」

 

 あの後、奥さんにきっちり連絡を入れ、震えている社長を置き去りにして俺たちは小洒落たバルに来ていた。

 何故か荒谷の仕切りで乾杯をする。

 普通そこはたづなさんちゃうの? 

 

「いやぁ悪いっスね! 俺達も奢って貰っちゃって」

「感謝する」

「本当に良かったんですか? このバ鹿共も一緒で。ラーメンくらいで良かったんですよ?」

「いえいえ、私も楽しいですから。職場環境的になかなか飲み会も出来ませんし。それに私そこそこの高給取りなんですよ?」

「へぇ、そうなんですね。じゃあまぁ散々断っといてなんですけど、今日はとことん飲んじゃいましょう!」

「ええ! そうしましょう! 私このデミグラスチャーシューが気になります!」

 

 俺たちは酒を飲みつつメニューを見てあーでもないこうでもないと注文を済ませ、来た料理に舌鼓を打った

 

 

 

 

 宴もたけなわ、結構飲んだ筈なのに顔色が変わらないたづなさんは話題を振ってきた。

 

「皆さんはどのウマ娘が好きなんですか?」

「ウマ娘? レースの事? 俺は見ねぇな。ボートとか競輪の方がいい。賭けれるならするけど出来ねぇし」

「オレはそもそもスポーツ観戦に興味がない」

「えぇ……そうなんですね。貴方はどうなんですか?」

 

 たづなさんは荒谷と烏丸の言い分にションボリしていたが俺に向けてキラキラした顔で聞いてきた。

 どうしよう……凄く答え辛い。

 

「あーこいつはウマ娘が嫌いなんだよ」

「え?」

「正確ではないな、現在は好きでもないが嫌いでもないだろう」

「そう……なんですか?」

 

 こいつらは本当に好き勝手に言う。

 事実だけに言い返せないのが悔しいが……

 

「お前ら勝手に人の事を言うなよ……でもまぁ好きではなかったですね」

「なかった? 今は違うんですか?」

「ックク、今でも笑えるけどウマ娘に勝ちたくて超長距離のレースを従妹のウマ娘として勝ってるからなw」

「ああ、聞いた話だが見事な作戦勝ちだった」

 

 ねぇ? 何で言うの? 

 自虐ネタは自分が言うからネタになるのであって他人に言われるのは辛いんですけど? 

 なんで俺、こいつらに相談したんだろう……

 

「え? 勝ったんですか!?」

「あーまぁ勝ったは勝ちましたけど罠に嵌めたようなもんですから。今では別段ウマ娘に対してどうってないですね」

「……そうだったんですか。じゃぁレース等は見られないんですね」

「いえ、まったく見ない訳じゃないですよ?妹分たちのレースぐらいなら見ますから。まぁ彼女たちは俺なんかに見られたくはないでしょうけど……」

「……すみません、あんまりいい話題ではなかったですね」

「こちらこそすみません。しんみりさせちゃって」

 

 荒谷と烏丸の巻き込み事故だけどたづなさんの申し訳なさそうな顔に失敗したなぁと思う。

 あんなに懐いて慕ってくれていたのに俺のした事は俺が納得する為だけに彼女達を傷つけた。

 きっと彼女達はこんな俺の事を恨んでいるだろうから。

 そんな俺が見ているなんて知ったら彼女達は怒るだろう。

 ともあれ飲み会でするには場違いな話題だった。

 

「別によくね? 勝ちは勝ちなんだし」

「オレは何故お前がそれを卑怯だと思うのかがわからない」

 

 うん、そうだね! でも納得の問題だからそこは関係ないんだ! 

 あと飲みの場で初対面の人に他人の恥を暴露するのも違うからね! 

 

「お前らちょっとは空気読んでくれない? 今話題を変える場面だよ? バ鹿なの? バ鹿だったわ」

「モー照れちゃって!」

「照れてねぇよ」

「話題を変えればいいのか? 脳波と神経系の電気信号の解析と応用についての件なんだがな」

「話題を変えれば何でも良い訳じゃないよ? 何でそれをチョイスしたの? アホなの? アホだったわ」

 

 もうヤダこいつら! なんで頭はいいのにバ鹿なの! アホなの! 

 

「……ップ、アハハハ! 本当に面白い人達ですね」

「ほらぁお前らのせいで笑われたじゃねぇか」

「遺憾の意を表す。お前のせいでもあるだろう」

「そーだそーだ! やーいバーカバーカ!」

「本当に楽しいです! また飲み会に来ましょうね! その時は奢ってください!」

「この状況で凄いっスね! あーハイハイわかりましたよ! まったく!」

 

 結局宴会は閉店するまで続いた。

 なんだかんだ言っても滅茶苦茶楽しかった。

 相当な量を飲んでいるが泥酔者はいなかったのが幸いだな。

 

 

 あとたづなさんは相当なザルだった。




明日はメジロ家視点になります。
次回の話を見返しましたがやはり稍重でした。
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