場所は日本、冬木市。
その街にある商店街の中を歩く男性と少女の姿があった。
少女は紫の衣服を身に纏い、肌や髪色は雪のように白く日本では見かけない紅い瞳が特徴的だった。そんな少女と連れ立って歩く男は真反対の印象を抱かせる黒一色の出で立ちで、正しく日本人といえる見た目だった。
そんな異色の組み合わせである二人は周りからの視線も気にせず、ゆったりとした足取りで歩いていた。
「ねぇ、キリツグ。このコロッケ?っていうの美味しいね!」
「あぁ、ボクはあまり食べる機会はなかったけれども...悪くないな」
半分に切られた小さな紙袋から出たコロッケを二人で食べている、異色ながらも年齢や組み合わせから見るに親子のように見えてくるのは不思議なものだ。
そんな二人はそのまま商店街を抜けて丘の上にある言峰教会こと冬木教会へと向かってゆく、坂を上り終えると目的の建物が見えてくる。
「此処が言峰教会...此処に、アイツが」
「らしいな、つーか俺ちゃんこの格好でいいのか?例の神父様興奮しちゃうんじゃね?」
「いいのよ、むしろ宣戦布告するような方がデッドプールも燃えるでしょ?」
「わぉ、俺ちゃんどっかのバンジーガム使う奴みたいな思考してると思われてる?まぁ、嫌いじゃねぇけど」
綺麗に舗装された石畳を踏みしめつつ二人は教会の扉の前へと立つ、中にいるのはイリヤの親の仇であり直接的ではないものの切嗣が死んでしまう原因となった男。
意を決して扉を開けば左右に並べられたチャペルチェアが目に入る、そしてその奥には男物の修道服に身を包んだ男が一人。
「ようこそ、アインツベルンのマスター。そして...そちらが君のサーヴァントかね?」
低く響く声は教会内に木魂しイリヤとデッドプールの鼓膜を揺らす。優しげな声色ながらも黒く淀み何処か裏のある声は静かに威圧感を感じてしまう。
「えぇ、そうよ。私がイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、バーサーカーのサーヴァントを召喚したわ」
震える足を必死に宥めながらスカートの両端を摘めば恭しくお辞儀をする、傍から見れば背格好に似合わぬながらも淑女たる所作を表している。
「あー、マスターが紹介してくれたバーサーカーだ。アンタの事はなんやかんやで知ってるよ…この姿見てどう思った?怒った?興奮した?ま、俺としてはどうでも良いんだけど、マスターの意向でアンタを殺す事になるかもって事だけ覚えといてくれ」
嘗ての敵であった男のなりをした者からの言葉、加えて当時の男からは決して放たれないであろう言葉の数々。
それは傍観者を決め込み最期の時に動くつもりでいた男の心を強く揺らした。俗に言う
「…面白い、聖杯戦争特にこの冬木市の聖杯戦争においてイレギュラーは最早日常茶飯事。何が起きようと文句は出ないだろう、此処に盟約は完了した。何れ会おう…アインツベルンのマスターよ」
バーサーカーの啖呵に珍しく笑みが溢れる、鉄面皮な自分がまさか笑ってしまうとはと気付けば滑稽だなと内心で独り言を呟いて。
「じゃーな、言峰綺礼。精々首を洗って待ってな、綺礼だけに」
互いのやり取りが済めば踵を返して二人は教会を後にする、扉を閉める寸前にデッドプールは中指を立てるのを忘れてはいなかった。
「わぉ、何アイツ。ロシアの川に沈めようがクソ激辛な食いもん食べさせようが表情変えなさそー、気持ち悪」
「ねぇ、さっきは黙ってたんだけどキリツグの顔と声で下品な言葉遣いは止めてくれないかしら。最悪の気分になるから」
教会を出た二人は来た道を下りながらそんな会話を繰り広げていた。
目指す場所は冬木にて嘗て行われた聖杯戦争の際、イリヤの両親が拠点としていた城だった。
◇◇◇◇◇
「それにしても、まさか衛宮君がセイバーのマスターになるなんて思わなかったわ。どんな因果律なのかしら?」
「俺だって知りたいよ、いきなり聖杯戦争?ってのに参加させられて…オマケに遠坂までマスターだったって頭の整理が追い付かないよ」
黒髪のツインテールの女性とオレンジ髪の青年、そしてその後ろを歩く晴れているにも関わらず黄色の雨合羽を被った人物が言峰教会から続く坂を下りている。
会話から察するに青年と女性は知人同士、後ろの人物は二人どちらかのサーヴァントだろう。他愛もない話を繰り広げながら坂を下っていると突然三人の前に小さな人影が現れた。
「初めまして、お兄ちゃん。名前は…衛宮士郎、そしてアーチャーのマスター遠坂凛。雨合羽の人はセイバーのサーヴァントでアーサー・ペンドラゴン、で良かったかしら?」
小さな人影は間髪入れずに三人の名前、更には聖杯戦争では命取りであるクラスまでピタリと言い当てて見せた。
この時間に何故子供が?何故聖杯戦争の事を知っている?あらゆる事が重なった所為で凛と士郎は対応が遅れてしまう。
唯一反応出来たであろうセイバーも後ろから突き付けられた鉄の塊により身動きが取れずにいた。
本能的に分かるのか今動けば確実に自身は聖杯戦争から脱落、下手をすれば、士郎諸共凛まで巻き込みかねない。
「ハロー、俺ちゃんバーサーカーのサーヴァントのデッドプール。…こうして文字に起こすとめっちゃ横文字だらけで読みにくいな、なんか読みやすい方法あったら感想から送ってくれよな?聞くのは俺ちゃんじゃなくて作者だけど♡」
背後から聞こえる声は士郎とセイバーには聞き馴染みのある物だった、片やまるで父親の様に接してくれていた様な…片や録な会話など無かったもののマスターとして共に戦った声。
「「
後ろを振り返ればそこには確かに衛宮切嗣が居た。然しながらその直後、切嗣は赤と黒の全身タイツの男へと変貌を遂げる。
「よぉ、主人公ズ。色合い的に言えばキャップとバッキーってとこか?あー、凛は…あー、デアデビルか?もしくはMJ?」
セイバーの後頭部に突き付けた銃を離せばヘラヘラと笑うデッドプール、相変わらず困惑する三人に対して小さな人影…イリヤは不敵な笑みで三人へと言葉を投げた。
「私達と手を組まない?バーサーカー…いえ、デッドプールなりに言うならチームアップってとこかしら」
その言葉に三人は相変わらず固まったままだった。