────衛宮邸浴室
湯気の立ち込める中に二つの影があった。
片方は金髪の少女、片方は黒髪の童女、セイバーとアーチャーが二人で湯船に浸かって居た。
「ふぃー、儂の生きた時代にも風呂はあったが…よもやこうも簡単に湯が沸く時代になっておるとはな。この蛇口?とやらを捻れば湯が出るとは、奇っ怪ながらも見事な物じゃ」
「我々の時代には湯に浸かる文化はありませんでしたからとても新鮮です、精々が湯で濡らした布で身体を拭く程度でしたから」
先程まで切った張ったを繰り広げていたとは思えない風景。バーサーカーの返り血を盛大に浴びた二人は、士郎から勧められて入浴中となったのである。
「それにしても、儂の知るセイバーと瓜二つじゃな。髪型こそ違えど髪色、顔付きが似ておる、胸は…よもや彼奴サラシで潰しておったのか?」
顎に手を当ててぶつぶつと独り言を漏らすアーチャーを見ながら小首を傾げるセイバー、衣服の違いから生きた時代も生まれも違うと気付いてはいるものの自身と似たセイバーとはどんな人物なのだろうと思ってしまう。胸云々の部分は完全に無視しつつ。
「アーチャー、貴女の言うセイバーはどんな人物だったのですか?」
セイバーからの問いかけにセイバーへと視線を向けるアーチャー、暫く見つめた後にまた視線を反らせば
「んー、何と形容すれば良いか…儚げながらも苛烈?優しそうな振りして現実主義?まぁ、お主の様に常に張り詰めた奴では無かったかの。あ、良く喀血しておったな…その癖に大丈夫ですの一点張りで理解に苦しんだわ」
「…はぁ、なるほど。なのに私とその別のセイバーを見間違えたと」
「喧しいのう、顔が似てたんじゃから見間違うのも無理は無い。是非も無しじゃ!」
「是非も無し、で済む話ではありません!似ているからと言って撃たれた私の身にもなってください、貴女だったらどう思うのですか!?」
「儂なら返り討ちじゃ、今まで何度もそういう目にはあっておるからな!似てる似てない関係無く殺されそうになった事など何度もあるからな!」
「…はぁ、そういう話では無いのですが」
ため息と共に言葉を漏らせば、カクリと肩を落とすセイバーだった。
一方その頃、衛宮邸の居間にて。
「まさかアーチャーが俺ちゃんの知らないアーチャーだったとはな…なんでだ?」
「知らないわよ、バーサーカーがアーチャーの特徴を言い当てた時は驚いたけど…やっぱり貴方の情報って眉唾なんじゃないの?」
座卓を囲んでバーサーカー、イリヤ、凛、士郎の四人が話し合いをしていた。
今後の動向に関しての擦り合わせも兼ねてと思い集まってはみたものの、まさかの出鼻を挫かれる事態にバーサーカーは困惑していた。
「俺ちゃんが知ってるアーチャーは双剣使いの筋肉モリモリマッチョマンの料理人だったんだ、だけど蓋を開けたらウチのマスターが2Pカラーになったみたいなアーチャー…オマケに士郎を襲ったランサーも得物が同じなだけで別人らしいし。え、チートじゃん!って意気込んでたの俺ちゃんの勘違いなの?」
「だから知らないってば、それよりも衛宮君。貴方を襲撃したランサーの特徴は?バーサーカーが知ってる情報と擦り合わせたら少しは手掛かりが掴めるかも知れないわよ?」
凛がさり気なく士郎へと話を振る。現場に居合わせたのは士郎とセイバーの二人のみ、ならば士郎の話とバーサーカーの検索能力?を駆使すればランサーのサーヴァントの能力や真名が探れるのではと思っての提案だった。
「ん、凛って学校でランサーと一悶着あったんじゃねぇの?確か俺ちゃんの見たFateのストーリーじゃその一悶着を見た士郎が…って流れだったぜ?」
「は?何よそれ、私はランサーと対峙した事無いわよ。私はアーチャーから新しいサーヴァントが召喚されたって言われたから衛宮君の所に来ただけ、だからランサーの事は知らないわ」
凛からの返答にデッドプールは座卓へと頭突きを放ちそうになる。自身の知る情報の優位性が一気に崩れ落ちてゆく、ジェンガでだるま落としをしたかの様にがらがらと。
「え、ちょっと待て。サーヴァントどころか歴史まで改変されてんのか?…what's A F**k」
「あー、バーサーカー。一先ず、遠坂の言う通りランサーの特徴を伝えるからさ…調べてみてくれないか?」
「………まぁ、士郎に言われたんじゃしゃあねぇな。言う事聞かねぇとウチのマスターから何言われるか分かったもんじゃねぇし」
士郎の言葉に膨れっ面のままイリヤを一瞥するバーサーカー、見られたイリヤは無言のまま笑みを浮かべて見つめ返す。意訳するならば’’可愛い弟の言う事が聞けないのか’’とでも言いたげだった。
そこから士郎の証言を元にバーサーカーは虚空を指先で弄り始める。えんじ色の服に長い髪、手にした得物は深紅の槍、髪は長く女性。
「あー、居たわ。何々…ランサー、真名は…スカサハ」
その名を聞いた瞬間、凛とイリヤは驚愕からか目を見開く。
続いて読み上げられる説明にバーサーカーも段々と目を丸くしてゆく。
「ケルトの英雄クーフーリンの師にして神殺しの異名を持つ…圧倒的な戦力は並ぶ者無し?」
長々と語られるランサーの武勇の数々、明らかに敵う相手では無いのは確かだ。それ相手に生き残った士郎は何者なんだと視線を向けるバーサーカー。
「お前、よく生きてたな?」
「いや、セイバーが助けてくれたからな…あぁでも’’近い内にまた会うだろう、貴様には素質がありそうだ。楽しみにしている’’って言われたけどなんの事だか俺にはさっぱりでさ」
頬を掻きながら言葉を漏らす士郎を見てはふとランサーの説明の一部を思い出す。
’’素質ありと見れば鍛えたくなる性分、ただし並の人間ならば死ぬレベルのスパルタ’’という一文、バーサーカーは平静を装いつつ心の中で合掌した。
「にしても…文章だけじゃよく分かんねぇな。画像でもありゃ…ん?」
更に詳しく調べようとバーサーカーは虚空へと指先を滑らせていると、不意にある物に気付く。『スカサハ 画像』の文字、それに触れると画面が切り替わりスカサハの姿が映し出された。
「わお、おっぱいがタイツ着てら」
「「何見てんのよ!?」」
思わず漏れ出た言葉、その言葉を聞いた凛とイリヤは反射的にバーサーカーの顔面へ拳を打ち放っていた。